2018年1月14日日曜日

止まらない北朝鮮によるサイバー攻撃の脅威 ~我が国におけるサイバーセキュリティ体制~

北朝鮮が仕掛ける怒涛のサイバー攻撃の実態
ある意味核開発より脅威だ
著者のドンフイ・パーク氏は、ワシントン大学ヘンリー・M・ジャクソン国際研究大学院の博士候補生、ジェシカ・ベイヤー氏は同大のサイバーセキュリティ専門の博士研究員。このコラムはパーク氏とベイヤー氏個人の見解に基づいている。
北朝鮮が熱心なのは、核開発や大陸間弾道ミサイル実験だけではない!
北朝鮮がサイバー戦争を強化している。先月下旬には米政府高官が、昨年5月に病院や銀行、企業に被害をもたらした「ワナクライ」攻撃の責任があるとして北朝鮮を非難し、フェイスブックやマイクロソフトも最近、悪名高い北朝鮮のラザルスハッカーグループに対抗する措置をとったことを明らかにした。しかしこれは氷山の一角にすぎない。
9月下旬、セキュリティ会社の米ファイアアイ・スレット・リサーチは、「北朝鮮政府関連とおぼしきハッカー集団として知られる者によって」米国の電力会社に送られたフィッシング詐欺メールを発見した。攻撃を阻止した同社によると、攻撃は初期段階の偵察のようであり、「必ずしも切迫した破壊的なサイバー攻撃を示唆するものではない」。ハッカーが攻撃を通じて何らかの情報を得たのかは不明だ。
少なくとも6000人の「サイバー兵」が
北朝鮮が核兵器を使うことなく重要なインフラを破壊するという可能性はほとんど見過ごされてきたが、同国は深刻な被害を引き起こすのに十分なサイバー攻撃能力を備えている。2014年、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントに対するサイバー攻撃では、ファイルを破壊し、機密の内部メールをネット上に流出させた。米国政府はハッキングの責任があるとして北朝鮮を非難し、同攻撃の後、北朝鮮のネットアクセスを約1週間にわたって遮断したと言われている。
さらに最近伝えられたところによれば、米軍サイバー司令部は、北朝鮮の強力な諜報機関、「朝鮮人民軍偵察総局(RGB)」 へのオンラインサービスを、複数のソースからのトラフィックを殺到させることで妨害しようと試みたという。RGBは国防委員会に直接報告を行う組織であり、北朝鮮指導者である金正恩の支配下にある。
とはいえ、北朝鮮が孤立しているがゆえに、米国が北朝鮮のサイバー攻撃に対抗する効果的な戦略を考案することは難しい。同国社会が閉鎖的であるということは、米国政府は情報収集を外的な情報源に頼らなければならないということを意味しており、また、北朝鮮国民のインターネットアクセスが限られていることは、同国のサイバー戦力は国外で活動しているということを意味している。
韓国の国防白書はソニーへのサイバー攻撃があった2014年、北朝鮮には約6000人のサイバー兵士がいたと明らかにした。これに対し、2009年にオバマ政権によって設立された米サイバー司令部は、700人の軍人と民間人を擁しているほか、サイバー防衛部隊の人員を6200人規模で維持するという目標を掲げている。
多くの人が核攻撃を恐れている間にも、北朝鮮は核計画から注意をそらすため、サイバー攻撃を一貫して行っている。20095月の北朝鮮2回目の核実験以降、核実験が行われるたびにサイバー攻撃は韓国の重要なネットワークを標的にしている。
20132月に行われた3回目の実験の後、韓国のテレビ局と銀行は、320日に「ダークソウル」として知られるサイバーテロ攻撃の標的となった。北朝鮮が4回目の核実験を実施した20161月には、韓国の公務員を狙った大規模なフィッシング詐欺があり、コンピュータにマルウエアを送られた。 同年9月の5回目の実験後は、韓国軍が軍事機密資料の在処を失うという攻撃を受けた。
核交渉において優位に立てる可能性も
こうしたサイバー攻撃が多発するなかで、北朝鮮の攻撃パターンや戦略を解明するのは難しい。しかし、北朝鮮による韓国へのサイバー攻撃を、北朝鮮の大局的なサイバー戦略の暗示とみるならば、最近明らかとなった北朝鮮による米電力会社へのサイバー攻撃は、米国のシステム脆弱性を調べる初期調査の一環であった可能性がある。
北朝鮮が米国の重要なインフラを攻撃する能力を欲していることは明らかだろうが、北朝鮮はまた、米国のシステムに侵入する能力があるというシグナルを広く送りたいと考えている。国際社会にこのような脅威を気づかせるだけで、北朝鮮は核交渉において優位に立つことが可能となるからだ。
米国に拠点を置く電力会社を狙っているのは北朝鮮だけではなく、ロシアとイランも試みている。だが、最近明らかになった北朝鮮による韓国電力会社への攻撃は、米国にとって、北朝鮮のハッキング戦略を理解するための「ひな型」となった。
2017年、韓国産業通商資源省は、ハッカーが国営電力会社の2社、韓国電力公社(KEPCO)と韓国水力原子力発電(KHNP)に対して、過去10年で約4000回もハッキングを試みたとして非難した。KEPCOの公式な報告書は、20132014年に起きた施設への攻撃のうち、少なくとも19回は北朝鮮によるものだと確認していると、韓国与党党首、秋美愛氏は語った。
201412月、北朝鮮のハッカー集団は、韓国の原子力事業者であるKHNPの設計図やテストデータを流出させた。「Who Am I」と呼ばれるそのハッカー集団の目的は、ソーシャルメディア上で盗んだ情報を流して韓国社会にパニックを引き起こし、エネルギー政策を混乱させることだったとみられる。
韓国当局は、重要度の低い原子力に関するデータのみ流出されたと主張するが、同国が放射能汚染だけでなく、停電のリスクにさらされていた可能性は無視できない。
北朝鮮は、韓国に対して実践してきたものと同じ作戦で、米国の電力網を攻撃しようとしている。全米規模で電力会社を攻撃するということは、地方の発電所が、多くの場合が古いマニュアルのシステムに基づいてさまざまな技術を使用しつつ、互いに独立した運営を行っていることを考えれば、困難だろう。
サイバー攻撃で「カネ稼ぎ」も
とはいえ、物理的な攻撃であろうとサイバー攻撃であろうと、どんな大規模攻撃でも偵察が第1段階である。ウクライナの電力網に対するロシアのサイバー攻撃では、ロシア人ハッカーが長期間、電力会社のネットワークに侵入し情報収集していた。この攻撃も、特定の標的を狙った大規模なフィッシング詐欺から始まっていた。
この脅威に対抗すべく、米国は、他国が直接的、並びに間接的に北朝鮮のサイバー攻撃を支援するのを止めなければならない。北朝鮮は中国のネットプロバイダーを通じて外界にアクセスし、北朝鮮のハッカーたちは中国内から通信を行っていると伝えられている。
最近では、ロシアの企業が北朝鮮とのネット接続を開始し、イランは機器を提供している。北朝鮮のハッカーたちは、南アジアや東南アジア諸国で活動しているといううわさもある。ドナルド・トランプ政権は、北朝鮮の同盟国と新たな関係を構築し、その国で活動する北朝鮮ハッカーを弱体化しなければならない。
おそらく最も喫緊な課題として、北朝鮮との最終決戦を見極める必要があるだろう。ワナクライは、制裁の影響に対抗し現金を生み出す試みだった可能性が高く、調査によると北朝鮮のハッカーたちは、2016年に起きたバングラデシュ中央銀行や、ビットコインやイーサリアムのような仮想通貨取引所へのサイバー攻撃により数百万ドルを獲得している。

北朝鮮が米国の電力網を調べようとしていることは、同国が米国と交渉することになった場合、有利となるような切り札を求めていることの表れである。核開発計画と同じく、北朝鮮は米国との「本物の」戦争に踏み込むことは避けると同時に、同情的な国からの支援を得てサイバー戦略を発展させ続けるだろう。われわれは依然として核攻撃を最も恐れているが、サイバーの力を利用するという脅威と能力は深刻な懸念要因となっている。
〈管理人〉北朝鮮は、弾道ミサイル、核弾頭はおろか日本人拉致被害者も関わっている特殊工作員による浸透戦術、金正男を殺害したVXガスに代表される化学兵器、細菌兵器の分野では天然痘ウイルスを入手して保管しているといいます。弾道ミサイルに核弾頭を搭載できれば、電磁パルス攻撃も可能でしょう。その上でのサイバー戦部隊の存在があります。つまり通常戦の他に「戦争」の選択肢が選べる国と考えていいかと思います。どこかの国のように自衛戦争自体にさえも法的な縛りをかけている事実もありません。

高度なセキュリティー装置を入れても
サイバー攻撃から企業を守れない理由
企業のセキュリティー対策について、いま、担当者が頭を悩ませているのが、サイバー攻撃の手法が日々巧妙化していることだ。例えば、近年では特定の組織をねらった標的型攻撃が猛威を振るっている。なりすましメールなどを使ってユーザーの心理的な隙につけ入ったり、システムの脆弱性を突いたりといったかたちで、マルウェアなど不正なプログラムを攻撃対象となる組織のネットワークに侵入させ、感染、外部との通信、拡散といった攻撃をしかけてくる。そして最終的に、個人情報などの機密データを奪取するといった複雑なプロセスをたどる。
 巧妙化するサイバー攻撃に対応するために、企業はいくつものセキュリティー装置を配置して多層防御の体制をとっている。しかし、いくら高度なセキュリティーシステムを導入しても、その管理が正しくできなくては、いざ攻撃を受けた場合にそのダメージがどの程度なのか、そしてどう対処すべきなのか判断ができない。つまり、せっかくの装置が宝の持ち腐れとなってしまう。セキュリティー投資は「システム+プロの運用」を前提に考えなければいけないのだ。
 だが実態は、日々複雑化するサイバー脅威に対応する要員を社内に常駐させるのは非常に難しい。そのため、外部からのアドバイスも必要になる。しかし、だれに助言を乞えばいいのかもわからない。どうすればいいのか。
 日本アイ・ビー・エムでは、こうした課題に対応するため、セキュリティー運用の人員やコストの課題を解決するだけでなく、未知の高度な攻撃に備えることもできる新発想のセキュリティーサービス「コグニティブ・セキュリティー」を提供開始した。コグニティブ・セキュリティーとは何か。またその価格などの全体像については、下記から無料ダウンロードできる資料に詳しく書かれている。セキュリティー対策の現場で運用に苦しむ担当者、セキュリティー投資の効率化を図りたい経営者にとって、一読に値する資料だ。
サイバー攻撃を恐れるITリーダーたちの意外過ぎる現状認識

IT部門責任者を対象とした調査によると、彼らはサイバー攻撃を恐れ、適切な対策が取れていないことを懸念している。にもかかわらず、IT部門責任者たちは現状認識について驚くべき回答を寄せた。

 英国、フランス、ドイツ、米国のIT部門責任者500人の半数近くが、今後12カ月以内に自社が大規模かつ破壊的なサイバー攻撃を受ける可能性は高いと考えている。

セキュリティソフトウェア企業Varonis Systemsが委託して実施した調査によると、自社がそのような攻撃に遭遇する「可能性を意識している」が、適切な対策は取れていないと考えている企業が約90%に達したという。
 この調査は、回答企業の40%が機密情報をロックダウンするための措置を取っておらず、機密情報が漏えいの危険にさらされていることを示している。
 「need to know」(情報は知る必要のある人のみに伝え、知る必要のない人には伝えない)の原則に基づいて機密情報へのアクセスを完全に制限している組織は、米国では66%、英国では51%しかなかった。これは、ネットワークへの侵入に成功した攻撃者が、横方向、つまり同じレベルであれば比較的簡単に組織全体を移動できることを意味する。
 信用格付機関Equifaxで起きたデータ侵害は、ネットワークに侵入した攻撃者が、データ侵害に気付かれることなく数週間から数カ月にわたって潜み続け、機密情報を盗み出せることを証明していると調査報告書は指摘する。
 また、約4分の1が、過去2年間にランサムウェアによる攻撃を受けたり、データを失ったりしたことを認めている。ドイツの企業への攻撃が特に激しく、34%が過去2年間にランサムウェア攻撃を受けたと報告した。
 こうした危険性があるにもかかわらず、回答企業の80%が驚くべき回答を寄せてきた。

【国家的なサイバー攻撃へのセキュリティ体
制の整備が進む】
社会に役立つサイバーセキュリティのお仕事
対サイバー攻撃、新組織設立方針 
被害情報、官民で共有
毎日新聞2018114日 東京朝刊 https://mainichi.jp/articles/20180114/ddm/003/010/088000c
 政府は、民間企業などがサイバー攻撃を受けた際、被害の深刻度や対応策などの情報を官民で共有する新しい組織を設立する方針を固めた。事務局を内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)に置き、民間企業が被害情報を提供しやすいよう、匿名性を確保する仕組みを検討。2020年東京五輪・パラリンピックに向けたサイバー防衛強化の一環で、22日召集の通常国会に、新組織に関するサイバーセキュリティ基本法改正案の提出を目指す。

 新組織は、民間のコンピューターセキュリティー事業者やインターネット通信事業者などがメンバーとして参加。サイバー攻撃が起きた際に情報提供を受ける窓口となり、被害があった場合には社会的影響が大きい電力・金融などの重要インフラ事業者にも情報提供を求める。提供された情報はNISCが中心となって集約・分析して公表する。

 NISCによると、サイバー攻撃は同時期に広範囲に行われるケースが多く、被害の拡大を防ぐには迅速な情報共有が必要になる。しかし民間企業は、会社の信用やビジネスへの影響を恐れて被害公表に時間がかかったり、公表せずに自社だけで対応したりする事例が少なくない。
 このため、匿名性を確保した通報の仕組みを構築する。例えば、ウイルスを送りつける標的型メール攻撃の情報や被害例を政府が公表する場合、個人名やビジネス情報などの固有名詞を省いて企業が特定されないように配慮する。新組織のメンバーには守秘義務を課すなどし、厳格な情報管理を図る方針だ。

 サイバー攻撃への情報共有体制として、警察庁を中心とする「サイバーインテリジェンス情報共有ネットワーク」や、重要インフラ事業者などが参加する「サイバー情報共有イニシアティブ」など、既存の枠組みと連携できるよう、システムの共通化も検討。政府全体で国内へのサイバー攻撃の対処を強化する狙いだ。【遠藤修平】

〈管理人より〉我が国のサイバーセキュリティは、内閣サイバーセキュリティセンターが中核であり、その外郭団体を強化するという理解でいいのかな?
サイバー防衛隊はあくまで、自衛隊や防衛省のシステム保護ですからね。

サイバー攻撃対策で連携 

日エストニア首脳会談

【タリン共同】安倍晋三首相は2018112日午後(日本時間同日深夜)、欧州歴訪最初の訪問国であるエストニアのラタス首相と首都タリンの首相府で会談した。2020年東京五輪・パラリンピックを見据え、「IT先進国」であるエストニアとのサイバー攻撃対策を巡る連携強化で一致した。
 日本の首相のエストニア訪問は初めて。両首脳は、エストニアを含むバルト3国との協力促進に向けた「日バルト協力対話」の創設で合意した。18年度に初会合を開く。核・ミサイル開発を進める北朝鮮への圧力強化も申し合わせた。
中国の海洋進出を踏まえ、法の支配に基づく「自由で開かれた海洋秩序」の重要性を確認し、緊張を高める一方的な行動に反対することで一致した。安倍首相は、中国潜水艦が沖縄県・尖閣諸島周辺の接続水域を航行した事案が念頭にあるとみられる。
 会談後の共同記者発表で、安倍首相は北朝鮮問題に関し「核武装を認めず、圧力を最大限に高めることが必要との認識で一致したのは大変有意義だ」と述べた。

〈管理人より〉ようやくエストニアという国との連携の重要性がわかっていただけましたな。


【関連リンク】

アメリカの兵器調達の「お財布」日本 ~共産中国の台湾、尖閣戦略、北朝鮮の五輪戦略?~

「アメリカの財布」と化している日本の兵器調達

むやみに超高額兵器を買っても日米同盟の強化にはならない
北村淳
 ルーマニア・デベセルの軍基地で行われたイージスアショアの配備式典に出席する米軍兵士ら(2016512日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO / DANIEL MIHAILESCUAFPBB News


 防衛省が昨年(2017年)暮れから新年にかけて、北朝鮮の軍事的脅威の高まりへの対処を口実として、様々な兵器を「輸入調達」、あるいは「輸入調達を検討する」方針を打ち出している。具体的には、アメリカ製イージスアショア弾道ミサイル防衛システム、アメリカ製長距離巡航ミサイル、ノルウェー製長距離巡航ミサイル、アメリカ製F-35ステルス戦闘機(数十機の追加購入)、アメリカ製電子攻撃機などである。
 このような武器購入に関しては、「北朝鮮危機のどさくさに紛れて敵基地攻撃能力を手に入れてしまうのは問題である」「長距離巡航ミサイルや空母艦載機、それに電子攻撃機といった攻撃兵器の取得は、専守防衛の原則を踏みにじるものだ」などといった問題提起がなされているが、そうした日本固有の空想的平和主義者による議論はさておいて、より軍事的に重大な問題が横たわっている。それは、日本政府・国防当局の「戦略なき武器調達」、それも「安易に輸入に頼る調達」という姿勢である。
追加調達が見込まれる米海兵隊バージョンのF-35Bステルス戦闘攻撃機(出所:米海兵隊)


日本は特異な輸入国
 いうまでもなく主要兵器の調達先のほとんどはアメリカである。日本政府や国防当局には、アメリカから主要兵器を輸入することによって日米同盟が強化されるという考え方が存する。また、弾道ミサイル防衛システムや新鋭戦闘機のような超高額兵器、それほどではないにしても極めて高額な水陸両用戦闘車輛などの高額兵器を多数購入することにより、日米貿易におけるアメリカ側の貿易赤字低減に資するとの考え方もある。
たしかに、自衛隊とアメリカ軍で共通の主要装備を用いることにより、相互運用性が高まることは事実である。その結果、日米同盟が強化される、というのは、いかにももっともらしい説明ではある。しかし、自衛隊とは比べものにならないほどアメリカと同盟関係が強固であるNATO諸国の軍隊が、アメリカ軍との相互運用性を高めるためにアメリカ製の超高額兵器を大量に調達しているわけではない。
NATO構成諸国の中でも、先端技術を駆使した各種新鋭兵器を造り出す技術力が存在しない国ならば、他国から中古兵器を購入せざるを得ないだろう。しかし、ある程度の新鋭兵器を生み出せるイギリス、フランス、ドイツ、カナダなどが、日本のようにアメリカの言いなりになって超高額兵器を気前よく次から次へと輸入調達することは決してない。
アメリカ側の歓心を買うことが目的
 要するに、日本政府が言うところの「アメリカからの主要兵器の購入によって日米同盟が強化される」などという論法は、日本特有の言い回しにすぎない。日本側には、国際常識に則った軍事戦略レベルあるいは重要な戦術レベルで軍事同盟を強化する能力が欠落しているため、アメリカ製高額兵器を購入してアメリカ政府やアメリカ防衛産業の歓心を買うことによって同盟関係を維持しているようなものである。
(ちなみに、アメリカ製主要兵器を日本に売却するか否かを決定するのは、アメリカ政府、そして連邦議会であり、売却価格はアメリカ政府が決定する。日本側が拘束される売却条件もアメリカ政府が一方的に決定する。そして、日本に売却した金額のおよそ4パーセントがアメリカ政府の懐に転がり込むことになる。また、アメリカ軍がアメリカ製兵器を調達する場合、国防総省や連邦議会の厳しいチェックがあるため、企業側の利益は抑制されざるを得ない。しかし日本に売却する場合、アメリカ政府はアメリカ軍向けに利益を抑えた分の何倍もの利益を生み出す価格を日本に提示して、アメリカ防衛産業を保護することになる。)
戦略なき高額兵器の輸入
 近年、中国の海洋侵出や北朝鮮の核ミサイル開発など、日本周辺の軍事情勢が急激に焦臭さを増している。日本がそのような情勢に自主防衛能力を適応させるのはあまりにも難事業である。そのことに気がついた日本政府・国防当局は、「日米同盟の強化」によって日本の防衛能力が強化されるという宣伝をにわかに強化し始めた。
 しかしながら、軍事戦略レベル、あるいは重要戦術レベルでのアメリカとの軍事同盟強化を計る能力など日本側には存在しない。そこで、アメリカからの超高額兵器や高額兵器の輸入調達を加速させてアメリカ側の歓心を買うことで、同盟を強化しているつもりになっているのである。
 その結果、確かに弾道ミサイル防衛システムや新鋭テルス戦闘機などの新鋭兵器が自衛隊の保有装備リストに付加されていくことは事実である。しかし、それらの新鋭兵器のほとんどは、日本国防当局(本来は、国会が関与しなければならないのであるが)が策定した防衛戦略の必要性から調達が検討されて輸入されたものではない。端的に言ってしまえば、なるべく多くの高額兵器をアメリカから買ってアメリカ側を喜ばせて日米同盟を強化しようという姑息な発想に突き動かされて取り揃えられた新鋭兵器である。したがって、輸入調達を決定してから、あるいは実際に調達してから、「何のために、どのように、使うのか?」を模索する結果となりかねない。
やがては“笑いもの”になる日本
 日本は、オスプレイ中型輸送機、F-35Aステルス戦闘機、AAV7水陸両用装甲車、E2D早期警戒機、グローバルホーク無人偵察機、EA-18G電子攻撃機、F-35Bステルス攻撃機などの購入、あるいは輸入調達の検討を進めている。AAV7水陸両用装甲車などは新鋭兵器ではなく老朽兵器であるが、日本国防当局はその時代遅れの兵器をアメリカ側も驚くほどの高値で50輛以上も購入した。そうした状況を知る米軍関係者の中からは、「何のために買いまくっているのか?」「メンテナンスコストまで含めると莫大な金額になるが、他の(アメリカからのお買い物ではなく、通常の自衛隊の訓練や施設などの)予算は大丈夫なのか?」「日本防衛当局は国産化をリードする意思はないのか?」といった声が上がっている。

 もちろん、アメリカ人にとっては日本がアメリカ製高額兵器を気前よく買ってくれることに対して不満に思う道理はいない。しかしながら、日本政府はアメリカとまともな戦略レベルの突っ込んだ議論ができず、「ご機嫌取りのアメリカ詣で」のような状況が続いていることを熟知する“心ある”米軍関係戦略家たちの間からは、「アメリカ側の言いなりになって超高額兵器を買いあさる日本は“アメリカの財布”と見くびられ、“属国根性もここまで来たか!”と国際社会の笑いものになりかねない」といった危惧の声すら漏れ聞こえている。

〈管理人より〉補足すると兵器装備の開発能力のある国が、同じく開発能力のある同盟国から高価な新型兵装備を次々に戦略性もなく購入するのがどうか?ということでしょう。我が国は優れた兵装備を開発できる力は十分にありますからね。ただ我が国の戦略性を考えるとすると、今回の兵装備購入は、アメリカの新型兵器を購入することにより、最新の兵器のスペック、仕組み、使い方などのノウハウを購入しているのではないか?という疑問があります。安倍内閣になってから防衛産業の活性化をはかっているところがみられますから、将来の防衛産業の開発力醸成を念頭において、国防の最前線となる最新兵器の仕組みを研究させるのではないか?
兵器は実際に使ってみなければわかりませんからね。むろん実戦での使用ではなく、演習での使用ということになりますが。そのあたりの戦略性にわずかに期待するところです。


待ってはくれない共産中国

我が国の辺境防衛体制、法規的な不備、国民の意識の低さという軍事だけではない我が国の「脆弱性」を態勢が整わないうちに「攻撃」し、国家の戦略目的を達成してきます。尖閣諸島は、「台湾省」の一部として領土編入を狙っています。懸念はもちろんですが、そこが彼らの「脆弱性」にもならないでしょうか?
何にせよ我が国のリアルな最新軍事装備の充実を待って潔い戦いをしてこないのは間違いないことです。どんな形にせよ戦は「勝てばいい。」「労せず国家戦略を達成したい」という思いがある限り、共産中国の脅威はなくなることはないでしょう。

台湾問題で何としても「実績」をあげたい習近平

岡崎研究所
 台北タイムズの2018125日付け社説は、中国による台湾囲い込みのための「分割征服」戦略と「統一戦線」戦術が10月の共産党大会後変化を見せているとして、事例を挙げて描写し、台湾政府に対処計画があるのか懸念を示しています。要旨は次の通りです。
「分割征服」戦略が長らく、台湾を囲い込もうとする中国の「統一戦線」戦術において枢要な役割を果たしている。
 中国のアプローチは、台湾で統一プロパガンダを広めるための「代理人」となる政党、政治家、ビジネスリーダーの育成に重点が置かれ、中国に敵対的な政治的イデオロギーをもつと看做される人物を無視してきたが、最近の例は、中国がその路線を変更し、台湾人全体にエンゲージすることを最優先にしようとしていることを示唆する。
 この変化は、10月の第19回共産党大会における習近平の演説と軌を一にしており、用い得るあらゆる手段によってアイデンティティの共有と台湾人の人心獲得を促進することが、台湾への侵入および政治的逮捕とともに、今や中国の台湾政策の基礎をなしていることを示唆する。
 党大会閉幕から1か月もたたないうちに、台湾人は、中国の戦略がどのように実施されるのか、目の当たりにしている。
 最近、深圳で開催された両岸学生野球リーグは、中国が如何にしてアイデンティティの共有を促進しようとしているかの見本である。張志軍・中国国務院台湾事務弁公室主任は、「両岸は一つの家族」と書かれた旗の前に立って決勝戦の開幕を宣言した。両岸野球交流協力委員会の徐勇委員長は、野球を通じて「より多くの台湾の若者が中国を訪問し中国をより理解すること」への希望を表明した。
 試合は友好的で罪のないものだったかもしれないが、旗は、台湾人に情緒的に訴えつつ、「一つの中国」原則を言い換えたものに他ならない。
 中国は、この「両岸は一つの家族」のフレーズが台湾人の中国との感情的絆を強めることを望んでいるが、これは2013年に習が当時の蕭萬長副総統との会談で初めて用いた政治的意味合いの強いフレーズであり、中国人民政治協商会議の「2014台湾問題ワークショップ」で正式に記載されている。
 政治的逮捕についての習の指令は、台湾の人権活動家・李明哲の一件で明らかだ。同人は、ネット上のディスカッショングループを用いて中国政府を攻撃する情報や記事を拡散したとして、1128日、湖南省岳陽の地方裁判所で「国家政権転覆罪」により懲役5年を言い渡された。
 台湾の検察は、123日、中国製のソフトウェアと装備により危殆化されたおそれのある、内政局の情報サービス・情報システムの調達に関する捜査が進行中であると認めた。中国による台湾への侵入の企てに休みはないということだ。
 これらの事案は、中国の「分割征服」戦略と「統一戦線」戦術が、一見無害なスポーツイベントであれ、人的交流であれ、台湾社会への秘密裏の侵入であれ、一層複雑化し、より深くまで浸透していることを明らかにしている。
 問題は、台湾政府が中国の絶えず変化する「統一戦線」戦術への緊急対処計画を持っているか否かである。
出典:‘Chinas strategy becoming clearer’(Taipei Times, December 5, 2017
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2017/12/05/2003683436
上記は、10月の共産党大会後の中国の対台湾政策は、台湾人の多くを中国に取り込むための“統一戦線工作”の色彩を強めつつある、という台北タイムズの社説です。
 共産党大会開催までは、習近平の政治報告に「中台統一のタイムテーブル」や「武力統一」などという強硬論が現れるのではないかとの予測が米国や台湾の専門家の間で行なわれたことがあります。
 しかし、実際には、習近平自身その政治報告の中では「台湾独立勢力によるいかなる分裂活動もこれを打破する意思のみならず、能力もある」という趣旨の発言を行いつつも、「武力による統一」という強硬論ではなく、「両岸は一つの家族」という考え方に立って、「大陸における発展の機会を台湾同胞と分かち合う」という類の“統一戦線工作”を強調しました。
 中台間で「両岸は一つの家族」というスローガンを中国は強調しますが、今の台湾の人々から見ると、たとえかつての祖国や祖先が共通のものであったとしても、自由や人権無視の中国大陸は決定的魅力に欠けます。そのような台湾人の自然な反応を中国共産党幹部は十分に知らないか、あるいは知ろうとしないのが実態です。
 台湾にとって、貿易投資の最大の相手は中国であり、台湾ビジネス界にとって中国の重要性は変わっていません。しかし、その中国と統一されることを希望するか否かということになれば、話は全く別です。特に、台湾では、一党独裁体制下で蒋介石国民党政権の戒厳令の時期を経験した記憶が強く残っています。
 台北タイムズが引用した台湾人の人権活動家である李明哲の政治的逮捕の一件については、不明な点が多いのですが、中国において「国家政権転覆罪」により懲役5年を言い渡されました。このケースなどは、あらためて中国と台湾の基本的制度の違いを台湾人に認識させた直近のケースです。
 他方、習近平自身、かつて台湾の対岸の福建省で十数年間にわたり省の党書記などの地位についており、自分こそ台湾通であるとの自負が強いにちがいありません。中国共産党指導者として、さしたる実績もなく、毛沢東、鄧小平に次ぐ指導者の地位に就きました。実際に目に見えた「実績」をあげるとすれば、台湾を“統一戦線”により、中国との統一か、あるいはそれに近い状態に追い込むことでしょう。
 「中華民族の偉大な復興」というスローガンは、習近平にとっては、何よりも、台湾問題で見るべき成果を上げなければならないという課題を意味するものと思われます。

なぜ中国の潜水艦は尖閣諸島に近づいたのか

小谷哲男 (日本国際問題研究所 主任研究員)
 2018111日午前、中国海軍のものとみられる潜没潜水艦と中国海軍フリゲートが、尖閣諸島周辺の日本の接続水域に入域し、同日午後同海域から離れた。中国海軍の水上艦は20166月に一度同接続水域に入域しているが、中国海軍の潜水艦が、尖閣諸島沖の接続水域に入域するのが確認されたのは今回が初めてだ。この事案の発生を受けて、日本政府は事態を一方的にエスカレートする行為だと中国政府に抗議したが、中国政府は海自の護衛艦が先に接続水域に入ったためと自らの行動を正当化している。
 今年は日中平和友好条約締結40周年で、昨年から両国は関係改善に向けた努力を続けている。にもかかわらず、その動きに水を差すような行動をなぜ中国海軍は取ったのであろうか。以下、防衛省の発表とメディアの報道から、中国側の意図を分析する。


(写真:ロイター/アフロ)
共産党中央の指示か、現場の指揮官の独断か
 まず、今回の事案は共産党中央からの指示に基づいていたのだろうか、それとも現場の指揮官の独断によって偶発的に発生したのだろうか。前者の場合、何らかの政治的な意図に基づいて、潜水艦とフリゲートが連携して今回の動きを見せたことになる(潜没航行中の潜水艦が水上艦と通信を行う手段は限られているため、突発的に連携を行うことはまず考えられない)。現場の判断だったとすれば、潜水艦が何らかの理由で接続水域を潜没航行し、これを追尾する海自護衛艦が接続水域に入ったため、東シナ海中間線付近にいた中国海軍フリゲートも同海域に入域したのだろう。この場合、フリゲートは潜水艦の動きを把握していなかった可能性がある。
 共産党中央からの指示があったとすれば、習近平指導部は、自らが進める一帯一路構想に日本が協力の姿勢を示すことを歓迎し、日中関係全体の改善は進めたいが、日本に対して尖閣諸島に関して一歩も引いていない姿勢を見せようとしたと考えられる。あるいは、中国側に、一帯一路への協力に引き続き日本側が条件を設けていることへの反発もあるのかもしれない。または、日中防衛当局間の海空連絡メカニズムの運用開始が近いと報道されているが、中国側は危機管理の必要性を示す事態を作る中で、その運用に関しても中国側の意向の尊重を求めているのかもしれない。中国共産党第19回全国代表大会で、習近平総書記は権力をさらに固めたと見られるが、日中関係は国内的に敏感な問題なので、その改善は慎重に行う必要がある。今月中に河野太郎外務大臣が、日中韓首脳会談の調整のために訪中する予定だが、その前に日本側に政治的なシグナルを送ろうとしたのではないか。
 一方、現場の独断だった可能性はあるだろうか。中国海軍の潜水艦は2004年に一度石垣島東岸の領海を潜行したまま侵犯し、海上警備行動に基づいて海上自衛隊の追尾を受けている。その後、中国は領海侵犯を「技術上のミス」と釈明した。他に中国のものと思われる潜水艦が、2013年に3回、2014年に1回南西諸島沿いの接続水域で確認され、2016年2月には対馬沖の接続水域でも確認されている。しかし、習近平国家主席が人民解放軍の統制を強める中、日中間で最も機微な問題である尖閣諸島で、軍が独断で行動を起こすとは考えにくい。
 中国側が、尖閣の接続水域に入った場合の日本側の出方を試した可能性も考えられなくもないが、当該潜水艦は尖閣諸島沖の接続水域に入る前に宮古島沖の接続水域を潜行しており、少なくともその頃から哨戒機から投下されるソノブイと、護衛艦の艦載ヘリが投下するディッピングソナーで逐一位置を特定され、(潜水艦映画でよくあるように)艦内にはソナーの不気味な音が響き渡っていたに違いない。そのような状況で自衛隊の出方を試す必要はない。むしろ、潜水艦の艦長は一刻も早く現場海域から立ち去ることを望んだだろう。
 このため、今回の事案は共産党中央からの指示に基づいていた可能性が高い。なお、一部報道によれば、当該潜水艦の情報は米国「など」から日本に持たされたとされているが、実際の情報源は台湾である可能性が極めて高い(2004年の領海侵犯事案も、最初の情報は台湾からもたらされたとされる)。蔡英文政権が発足して以来、中国は台湾に対する圧力を強めているが、最近は中国の艦船や爆撃機が台湾を周回している。2018年に入って、中国の空母が台湾海峡も通航している。今回尖閣諸島の接続水域に入域した潜水艦が中国のどの艦隊に所属しているかは不明だが、南シナ海方面から、バシー海峡を抜けて太平洋に入り、宮古海峡から尖閣に向かったと思われる。そうであれば、習近平指導部は、海軍の作戦能力の向上とともに、台湾と日本に対する政治的圧力を目的としていたと考えられる。
日本政府が抗議よりもすべきこと
 最後に、今回の事案を受けて日本政府は中国政府に抗議をしたが、国際法上接続水域での潜水艦の潜没航行は認められており、その点で中国の行動に問題はなかった。また、日本政府は潜水艦の国籍を特定しておらず、潜水艦の行動について直接抗議をしたわけではなく、あくまでフリゲートの動きを含めた事態全体の発生についての抗議であった。ただ、日米両政府は防衛協力の指針に基づく同盟調整メカニズムを通じて、常時情報と情勢認識を共有していたはずだが、米側は国際法上問題がないにもかかわらず、日本政府が抗議をしたことに理解を示したのだろうか。米国海軍は潜水艦も含めて中国の接続水域も航行していると考えられ、そうであれば、米国政府は日本政府が中国政府に抗議をしたことを懸念している可能性がある。
 中国の行動が一方的に尖閣諸島をめぐる緊張を高めたことは確かだが、日本政府の対応として必要なのは中国政府に抗議するよりも、今回の中国の動きを可能な限り詳細に国際社会に示すことではないだろうか。現時点での防衛省の発表では、日中の艦船の細かい動向など、わからないところがまだあり、中国側の「自衛隊が先に接続水域に入った」とする主張に反論できる材料ともなっていない。国際法上の問題がないことを中国政府に抗議をするよりも、国際社会に中国が事態を悪化させる行動を取っていることを発信することの方が、同様の事態の再発を防ぐより賢明な方法ではないだろうか。

弾道ミサイルだけではない北朝鮮の反撃能力
北朝鮮政府が平昌冬季五輪大会に選手団を送る決定をしました。核兵器、弾道ミサイルをネタに自国のプレゼンスを確立したい北朝鮮ですが、隣国で開催される冬季五輪大会という戦場も見逃さなかったですね。核実験以外でどこでトレーニングしていたのか、深まる謎がありますが、スポーツ競技の祭典という名の「戦争」でも国威発揚という勝利を狙ってきます。アメリカに核大国であることを認めさせるには、核実験やミサイル実験だけではないことをよくわかっています。応援団にも気合をいれていますが、あまりメディアが美女軍団に執心しすぎることは、かえって北朝鮮の国威発揚にお墨付きを与えることになりはしないでしょうか?

【まずはここを非難】米空母に「五輪出場種目ない」=北朝鮮、半島展開をけん制
時事通信

【ソウル時事】北朝鮮の対韓国窓口機関、祖国平和統一委員会のウェブサイト「わが民族同士」は20181月13日に掲載した論評で、米空母「カール・ビンソン」が2月の平昌冬季五輪開幕前に朝鮮半島周辺水域に展開するとの報道を取り上げ、「平和と親善を目的とする五輪に、戦争と対決を招く空母が出場できる種目はない」とけん制した。


【これは常套手段かな?】東京五輪は大丈夫?平昌五輪にサイバー攻撃 

アメリカのセキュリティーソフト会社「マカフィー」が平昌五輪を狙ったサイバー攻撃を確認したと発表しました。送られてきたメールの添付ファイルを開こうとするとプログラムが作動し、そのプログラムによって、ウイルスが呼び寄せられたり、パソコンそのものが乗っ取られる可能性があるといいます。
メールは韓国の「対テロセンター」からの送付を装っていましたが、メールと対テロセンターには関連がなく、送り主は特定できていません。マカフィーの担当者は、攻撃者の目的は、五輪の情報を抜き取り、財務情報や五輪で使われている技術などの情報を売買することだといいます。過去の五輪でもサイバー攻撃の被害はありました。2020年東京五輪に向け、政府は対応に乗り出しています。2017年4月、警視庁にサイバー攻撃対策センターを新設。IoTや自動運転技術などを打ちだそうとしている東京五輪では、民間企業も同じように対策が必要だといいます。

〈管理人より〉例え金メダルがとれなくともタダでは引き下がらない北朝鮮。非合法におみやげは持ち帰ることでしょう。標的型メール攻撃という新たな軍事攻撃で。

【やはりメディア情報戦での勝利を狙うか?最強兵器?】

北朝鮮の「美女軍団」、平昌五輪へ 南北にメリット

BBC News


北朝鮮は201819日、平昌冬季五輪に代表団を派遣することを発表した。派遣されるなかには、応援団も含まれる。
北朝鮮といえばチアリーダー軍団……では決してないものの、これまで長年にわたり果たしてきた政治的役割は大きい。
どういう人が応援団に
チアリーダーなだけに、メンバーのほとんどは20代前半から20代半ばの女性たちだという。韓国の南北体育交流協会の金慶星(キムギョンソン)理事長によると、応援団は「容姿にもとづいて」選ばれるだけでなく、「イデオロギー」の適性でも審査されるという。
中国国際放送(CRIによると、大学生、宣伝隊のメンバー、音楽学校の生徒たちから厳選されるという。さらに北朝鮮政府が、事前に身元を調査し、脱北者の身内や親日派ではないことを確認するためだという。
登場の頻度は
選び抜かれた応援団は、しばしば大観衆の前に登場する。年に一度平壌で開催されるマスゲームと芸術の祭典、アリラン祭には、おそらく毎回出演している。
応援団は時折、スポーツ選手の海外遠征に同行している。2007年に開催されたFIFA女子サッカーワールドカップの際にも、中国・武漢へ派遣された。
しかし北朝鮮政府は朝鮮戦争勃発以降、韓国には3回しか応援団を派遣していない。
2002年に釜山で開催されたアジア競技大会には288人の応援団が派遣され、2003年に大邱で開催された夏季ユニバーシアードには303人の応援団が選手に同行した。2005年に仁川で開催されたアジア陸上競技選手権大会には、101人の応援団が派遣された。
2014年のアジア競技大会にも「関係改善」のために派遣されるはずだったが、経費などの諸問題について合意できず、北朝鮮は派遣を見送った。
有名なチアリーダーは
チアリーダーたちはその容姿と揃った動きが人気で、韓国にもそれなりにファンがいる。
「美女応援団 」などと呼ばれ、選手よりも注目されることが多い。一番有名な北朝鮮のチアリーダーは紛れもなく、金正恩委員長の李雪主(リソルジュ) 夫人だ。李さんは2005年のアジア陸上選手権大会で、応援団の一員として撮影されている。
平昌派遣の意義は
北朝鮮が韓国に応援団を派遣するのは、10年以上ぶり。友好と平和の印の、オリーブの枝を差し出しているかのように見える。
これまでに南北朝鮮の緊張関係は悪化を続けてきた。北朝鮮がミサイル発射を繰り返し、6回目の核実験を実施したせいで、国連や米国は制裁を繰り返し強化した。北朝鮮は核・ミサイル実験に加えて、昨年は日韓米に対して激しい挑発や脅迫の言葉を繰り返した。
魅力的な北朝鮮の美女たちが五輪大会に登場すれば、世界的な舞台で北朝鮮のイメージ改善につながるだろう。米国から大会に派遣されるチアリーダーたちとも、公式行事で共演する機会もあるかもしれない。
しかし、得をするのは北朝鮮に限らない。平昌冬季五輪の運営組織はこれまで、チケットの販売不振に頭を痛めていた。半島情勢が緊迫するなかで、主要会場が北朝鮮からわずか90キロの距離にあるのが、原因だったかもしれない。それだけに美女軍団の登場は、北朝鮮と韓国の双方にとって、状況改善にもってこいなのかもしれない。
北朝鮮・美女軍団動画



2018年1月10日水曜日

習近平体制の共産中国 ~軍事覇権大国の正体~

【安全保障戦略
ますます高まる中国の軍事的脅威と覇権拡大

習近平体制下の中国の安全保障戦略
Yoshiaki Yano昭和251950)年大阪生。昭和401965)年、大阪市立堀江中学校卒。昭和431968)年、大阪府立大手前高校卒。昭和471972)年京都大学工学部機械工学科卒。同年同文学部中国哲学史科に学士入学。同昭和491974)年卒。同年4月、久留米陸上自衛隊幹部候補生学校に入校、以降普通科(歩兵)幹部として勤務。美幌第6普通科連隊長兼美幌駐屯地司令、兵庫地方連絡部長(現兵庫地方連絡本部長)、第一師団副師団長兼練馬駐屯地司令などを歴任。平成182006)年小平学校副校長をもって退官(陸将補)。核・ミサイル問題、対テロ、情報戦などについて在職間から研究。拓殖大学客員教授、日本経済大学大学院特任教授、岐阜女子大学客員教授。著書『核の脅威と無防備国家日本』(光人社)、『日本はすでに北朝鮮核ミサイル200基の射程下にある』(光人社)、『あるべき日本の国防体制』(内外出版)、『日本の領土があぶない』(ぎょうせい)、その他論文多数
中国北京の三里屯地区の繁華街で警備に当たる武装警察。(c)AFP PHOTO / GREG BAKERAFPBB News

 201711月の中国共産党第19回党大会で習近平中国共産党総書記の報告がなされ、その中で習近平総書記の安全保障観と安全保障戦略が示された。同時に通過した新たな『中国共産党党規約』では、その冒頭で、中国共産党は、中国人労働者、人民の「先鋒隊」であるだけではなく、中華民族の「先鋒隊」であると規定されている。
 また、中国共産党の最高の理想と最終の目標は「共産主義の実現」にあると断言している。そのことは、すべてを「民主集中制」のもと共産党の「領導(指導)」の下に置く共産党独裁政治を貫徹するとの決意を内外に改めて表明したものと言えよう。今回の党大会では、50代若手の政治局常務委員が選出されないなど、習近平総書記への権限強化が図られている。安全保障、軍事面ではどうであろうか?
 また、報告された習近平の安全保障観、安全保障戦略の内容はどのようなものであろうか?
1 党大会報告にみられる習近平総書記の
安全保障観と安全保障戦略
 2017年10月に開かれた中国共産党第19回全国代表大会での習近平総書記の報告では、本党大会の主題が
 「初心を忘れず、使命を深く胸に刻み、中国の特色ある社会主義の大旗を高く掲げ、小康社会を全面的に建設し、新時代の中国の特色ある社会主義の偉大な勝利を勝ち取り、中華民族の偉大な復興という中国の夢の実現のために怠りなく奮闘すること」
 にあると、その冒頭で宣言している。
 そのための基本戦略として、以下の14項目が挙げられている。
①すべてに対する党の指導の堅持
②人民を中心に服務することの堅持
③改革の全面的深化の堅持
④新たな発展理念の堅持
⑤党の指導下での人民統治制度の堅持
⑥法に基づく国家統治の堅持
⑦社会主義の価値体系の堅持
⑧発展の中での民生の保証と改善の堅持
⑨人と自然の調和と共生の堅持
⑩総体的な国家安全保障観の堅持
⑪党の人民軍隊に対する絶対的指導の堅持
⑫「一国両制」と祖国統一推進の堅持
⑬人類運命共同体の建設推進の堅持
⑭全面的に厳格に党を管理することの堅持
 この中で安全保障上注目されるのは、⑩以降である。
⑩では、「全般的には発展と安全を図りつつも有事を忘れず、国益を擁護することを堅持し、人民の安全を第一義(「宗旨」)に、政治は安全保障を根本とし、外部と内部の安全、国土と国民の安全、伝統的安全と非伝統的安全、自身の安全と共同の安全について全般的に計画し、国家安全保障制度体系を完璧にし、国家の安全保障能力建設を強化し、国家の主権、安全、利益の発展を固く保持する」としている。
 ここには、国家の主権や安全など、至上の利益を守り抜くため、国内外の各種脅威にバランスよく隙なく備えるとの総合的な安全保障観が示されている。
 治にいて乱を忘れず、平時から戦争に備えるとともに、テロなどの国内の治安上の脅威、サイバー、宇宙などの非伝統的脅威にも備えるべきことが示唆されている。

⑪では、指揮系統を一元化し、戦って勝てる、優秀な人民軍を建設することが、第18回党大会で提起された「2つの200年」という奮闘目標を実現し、中華民族の偉大な復興という戦略実現の重要な基盤を実現することであると、軍建設の決定的な重要性を強調している。

 ただし、その際に党の指導に徹底して従うべきこととされている。軍はあくまでも党の軍隊であり、国家の軍隊ではなく、人民の安全を第一義と言いつつも、天安門事件でも示されたように、それが守られる保証はない。
 ⑫では、香港や厦門の長期的な繁栄と安定を保持し祖国の完全統一を実現することが、中華民族の偉大な復興を実現する上での必然的要求であるとしている。
 さらに、中国が「両岸関係」の政治的基礎と位置づけ「一つの中国」を体現しているとする「92共識」を堅持し、両岸関係の平和的発展を促進するとともに、両岸の経済文化交流を拡大し、両岸の同胞が共同で一切の国家分裂的活動に反対するよう促し、共に中華民族の偉大な復興の実現に奮闘しなければならないと述べている。台湾はもとより尖閣諸島についても、中国は固有の領土と主張しており、「祖国の完全統一」には、台湾と尖閣諸島の併合が含まれている。
 ⑩と⑪を考え合わせるならば、いずれ武力を用いてでも、台湾と尖閣諸島は占領し併合しなければならない、またそのため、人民軍は党の命令があればいつでも占領任務を果たせるよう、平時から備えておかねばならないことになる。
 日本としては、中国がこのような安全保障観を持っている点に留意し、日本の固有の領土である尖閣諸島に対する中国の侵略がいつかは起こり、力による、あるいは力を背景とした台湾の併合もいずれ行われることを予期し、今から備えておかねばならない。
 また、このような事態に対し米国が軍事介入も含めた対応行動を取る可能性も高く、台湾、尖閣諸島をめぐり、米中対決が生ずるおそれもある。半面、中国が米国の介入がないと判断すれば、このような侵略が生起するおそれは高まる。 ⑬では、人類の運命共同体の構築推進を堅持するとの基本戦略が謳われている。中国の夢の実現は、平和的な国際環境と安定した国際秩序に反するものではなく、「世界平和の建設者、全地球的な発展の貢献者、国際秩序の維持者となる」と表明している。中国のこのような国際協調的な姿勢は、南シナ海などでの行動に照らせば、欺瞞的なものと言わざるを得ない。
 WTO(世界貿易機関)など自国に好都合な国際取り決めには参加して受益しながら、他方では露骨に力で既成事実を作りそれを国際社会に押しつける手法を取る国家や体制は、人類運命共同体を語るに値しない。
 アメリカ・ファーストを掲げ、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)離脱など内向き姿勢を強める米ドナルド・トランプ政権を意識し、その隙に乗じて国際社会での影響力を拡大しようとするプロパガンダと言えよう。
 同様の狙いは、エコロジーへの配慮を強調した⑨にもうかがわれる。
 ⑭では、党と党員の厳格な綱紀粛正、腐敗防止、規律維持の重要性が強調されている。
 この点は軍と軍人についても同様であり、軍改革でも郭伯雄、徐才厚の粛清にみられるように、軍内の腐敗撲滅が重視されている。ただし、実質的には反腐敗闘争に名を借りた権力闘争でもあり、習近平総書記が軍内で権力基盤を固めるため仕組まれたものと言える。党大会での報告もその意向を反映している。

2 具体的なタイムテーブルとしての「2つの100年」
 また同報告では、具体的なタイムテーブルとして、第18回党大会で提起された「2つの100年」という目標の実現が中華民族の偉大な復興戦略のキーとなることを強調している。
 第19回党大会から第20回に至る間は「2つの100年」が交わる時期であるとされ、以下のように新たな100年への展望が述べられている。
 「我々は、全面的な小康社会を建設し、1つ目の100年の奮闘目標を実現しなければならないが、それとともに、勢いに乗じて社会主義現代化国家の全面的建設という新しい遠征の道のりを開始し、2つ目の100年の奮闘目標に向けて進軍しなければならない」
 さらに、国際国内情勢と中国の発展条件を総合判断すると、2020年から今世紀半ばまでを2段階に分けることができるとして、以下のように発展戦略を描いている。
 すなわち、2020年から2035年の第1段階では、「社会主義の現代化を基本的に実現」する。2035年から今世紀半ばまでの第2段階では、「社会主義の現代化強国の建設」を目指し、中国を「総合国力と国際的影響力において世界的な指導国家にする」としている。
 これに連動し軍建設については、「世界の軍事革命の発展の趨勢と国家安全保障上の要求に適応し、建設の質的量的向上と効率化を進め、2020年までに機械化、情報化を大幅に進展させ戦略能力を向上させる。
 2020年から2035年の間に、国家の現代化の進展過程に合わせ、軍事理論、軍隊組織形態、軍事人員および武器装備の現代化を全面的に推進して、2035年には国防と軍隊の現代化を基本的に実現し、今世紀中頃には人民軍隊を全面的に世界一流の軍隊にするとしている。

3 党大会報告にみる「中国の特色ある強軍の道」
「中国の特色ある強軍の道を進み、国防と軍隊の全面的な現代化を推進することを堅持」して、次のような方針を安全保障政策では採ると述べている。
 「国防と軍隊建設は新たな歴史的出発点にいま立っている。国家の安全保障環境が深刻に変化し、強国強軍という時代的要求に直面する中、新時代の党の強軍思想を貫徹し、新形勢下での軍事戦略方針を貫徹し、強大で現代化された陸軍、海軍、空軍、ロケット軍と戦略支援部隊を建設し、堅固で強い戦区聯合作戦指揮システムを生み出し、中国の特色ある現代的な作戦体系を構築し、党と人民の与えた新時代の使命と任務を担わねばならない」としている。
 そのための具体策として、以下の事項が言及されている。        
①精神的に優れた「革命軍人」を育成し、人民軍としての特性、本質を保持し、
②軍官の職業化制度、文官人員制度、兵役制度などの重大な政治制度改革を深化させ、軍事管理革命を進め、中国の特色ある社会主義軍事制度を完璧にし発展させる。
③科学技術面では、戦闘力思想を核心とし、重大な技術革新を推進し、自主創造に努め、軍事的人材育成のシステムを強化し、新機軸型の人民軍隊を建設する。
④軍を全面的に厳格に統制し、その方式を根本的に変え、法治の水準を高める。
⑤各戦略正面の軍事闘争準備を堅実に行うとともに、伝統的および非伝統的な安全保障領域での闘争準備を推進する。
⑥新型の作戦戦力と作戦基盤を発展させ、実戦的軍事訓練を行い、運用能力を高め、軍事の知能化を加速させ、インターネット情報システムによる聯合作戦能力、全域作戦能力を高め、危機を管理し、戦争を抑止し戦勝を達成する有効な態勢を作る。
⑦富国と強軍を統一し、統一的な共産党による指導を強化し、改革イノベーションと重大項目の実施、国防科学技術工業改革の深化、軍民融合の深化と各方面での発展、一体化された国家戦略の体系と能力の構築を行なう。
⑧国防動員体系を完璧にし、強大かつ安定した現代的な海空国境警備態勢を建設する。
⑨退役軍人の管理保証機構を構築し、軍人軍属の法的権利を保護し軍人を社会全体から尊崇される職業とする。
⑩武装警察の部隊改革を進め現代化された武装警察部隊を建設する。
 我々の軍隊は人民の軍隊であり、我々の国防は全人民の国防である。我々は全人民の国防教育を強化し、軍政軍民の団結を強固にし、中国の夢、強軍の夢を実現するため強大な力を結集しなければならない。
 以上の施策は軍事力建設の各方面にわたる総合的なものであり、今世紀半ばには人民軍を世界一流の軍隊にするとの長期目標達成のための個別施策を網羅していると言えよう。
 特に、軍事制度改革、法治水準の向上、退役軍人の管理保証機構の創設、軍人の社会的地位の向上などの施策が強調されているのは、今年発生した退役軍人による抗議行動など、軍改革に伴う兵員削減、粛軍などに対する不満を和らげる狙いがあるものと思われる。
 軍事作戦面での、聯合統合作戦と全域作戦の能力向上、軍の情報化を通じた現代化、軍民融合の重視などは、軍改革でもこれまで強調されてきた点であり、改めて確認したものであろう。

4 許其亮報告の内容とその特色
 党大会の政治報告である以上、当然と言えるかもしれないが、軍事に関する報告で重点が置かれているのは、作戦運用面よりも軍政関連の事項である。中国共産党中央政治局委員、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席の空軍上将である許其亮は、『習近平の強軍思想を国防と軍隊建設の指導的地位としてしっかり確立せよ』と題する報告を第19回党大会で行っている。
 しかしその内容は、上記の習近平の報告内容から出るものではなく、重複引用が目立つ。
 特に作戦運用に関する部分は、習報告の引用に終始するか習近平の軍改革の内容を繰り返しているにすぎず、新鮮味はない。
 強調されているのは、表題からも明らかなように、党の指導への絶対服従、「習近平の強軍思想」の礼賛、軍内での腐敗撲滅の成果などである。
 注目されるのは、これまでの「党の強軍思想」が「習近平の強軍思想」と呼ばれていることである。
 このことは、党と国家の中央軍事委員会主席である習近平の軍事支配権が、「思想」と称される水準にまで強化されたことを意味している。
 しかし他方で許其亮は、徐才厚と郭伯雄を名指しし、2人の「流毒の影響」を徹底的に排除することを強調しており、軍内での彼らの影響力がまだ残っていることを示唆している。
 軍歴のない習近平の軍事支配権はまだ堅固に確立されたわけではなく、今後も、軍改革の進展と並行して、反腐敗闘争に名を借りた軍内での権力闘争は続くものとみられる。
結言
 習報告の最後に、「中国の夢」と「強軍の夢」が併記されており、習近平の強軍思想に指導された「強軍」が、「中国の夢」を実現することそのものであり、「中国の夢」実現の最も重要な基盤であり前提条件であることを意味している。
 「強軍」が実現されなければ、「中国の夢」が実現されることはない。
 中国の軍事力強化と力を背景とする覇権拡大は、習近平体制のもと一層拍車がかかるものと予想される。

人民解放軍軍歌


【政治
習近平の野心、実現への舵取りは困難だらけ

岡崎研究所
 20181126日付の香港サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙で、International Crisis Groupのコブリグが、習近平の戦略について論評しています。要旨は以下の通りです。
 201710月の共産党大会で、習近平はその地位をさらに高めた。外交に関しては、国務委員の楊潔篪が政治局委員に、理論家の王滬寧が政治局常務委員にそれぞれ昇格し、習近平の野心的な対外政策を支えることになった。習の前任者たちは、内向きの中国を統治し、「韜光養晦」を続け、難しい問題は将来に先送りしてきた。しかし、習近平にとって、その「将来」は自分の任期中にやってくる。
 今日、中国は台頭中の大国であるが、人口や経済、環境など、多くの問題を抱えている。そのため、習近平の「中国の夢」や「中華民族の偉大なる復興」、地域における主導権と国際的影響力を持つ「新時代」を実現するのは容易ではない。これらの大きなビジョンは抽象的だと軽視されがちだが、中国の官僚たちはそれを実現するために着実に具体的な取り組みを進めている。習近平が「人類運命共同体」というとき、それはアジア太平洋における米国を中心とする安全保障の勢力均衡の体制からのパラダイムシフトを求めているのであり、中国経済を原動力として、中国中心の秩序への移行を望んでいる。
 習近平の外交を支えているのは、ある種の「小切手外交」であり、相互協定や相互利益である。中国共産党はこのアプローチを「大国外交」と呼んでいる。それには経済、軍事、国際組織の3つの軸がある。それぞれ宣伝、公共外交、影響力の行使と結びついており、これらは必要ならば脅しに変わる。
 経済については「一帯一路構想」が枠組みとなる。この枠組みを通して、中国は金融、建設、製造などにおける強みを生かして国際貿易および投資のあり方を作り直し、中国の地政学的、経済的利益を確保しようとしている。一帯一路は党規約に盛り込まれ、それが長期的な考えであることが示された。
 第2の軸である軍事について、人民解放軍の近代化が進められている。習近平は第1期政権において、監視とイデオロギー的統制を強化し、腐敗を叩くことで軍の忠誠を確保した。軍の制度改革も進められ、多くの幹部が習近平によって任命された。党大会を通して、習近平はさらに指揮権を集中させた。
 第3の軸は、国際組織における中国の発言力の拡大である。中国は西側主導の国際システムに疑念を抱き、今ではその体制を改革し、修正しようとしている。AIIBBRICSの新開発銀行など、中国が主導的な役割を担える組織を次々に作っていることからも分かる。しかし、これは一種の多様化戦略であり、既存の国際システムに対する革命ではない。
 中国はグローバル公共財を提供することで得られる国際社会からの尊敬とソフトパワーを切望している。また、中国は拡大する海外権益と在外国民を保護する必要がある。そのために、中国は国連を重視している。例えば、中国は安保理常任理事国の中で、PKOへの最大の派兵国となっている。
 この経済、軍事、国際組織を軸として、習近平は新時代を作ろうとしている。習近平への権力集中を進めることで、中国共産党は自らの正統性を政治目標の実現と結びつける政治的賭けに出たのである。この賭けに成功するために、習近平は多くの問題を上手く処理する必要がある。例えば、北朝鮮の核問題、貿易や太平洋における支配をめぐる米国との対立、中国の野心に懸念を持つ周辺国が連合して中国の台頭を抑制するリスクなどである。複雑な地政学的状況と習近平の野心が相まって、今後数年が平穏なものになることはないだろう。
出典:Michael Kovrig The future is now for Chinas challenges and Xi Jinpings ambitions (South China Morning Post, November 26, 2017)
http://www.scmp.com/news/china/diplomacy-defence/article/2121510/opinion-future-now-chinas-challenges-and-xi-jinpings
 筆者の主張はおおむね支持できます。要は習近平指導部自体が、多様なアジェンダを有機的に統合できておらず、それらを矛盾なく実施することは、ほぼ不可能だということです。中国の指導者にとり最大の関心事項は、国内の統治にあり、その成否の鍵は経済の持続的成長にあります。そのために協調的な国際関係が不可欠なのですが、しかし成果が経済成長だけになれば、江沢民、胡錦濤と同じことになります。ですから「政治目標の実現」を打ち出しながら、筆者が指摘するように、それは「政治的賭け」となります。しかもそれは「協調的な国際関係」を損ないかねません。実に微妙なハンドリングを求められているのです。
 例えば党大会における報告の中で欧米を刺激する言葉がありました。それは「中国の特色ある社会主義が新しい時代に入ったということは、…開発途上国が現代化に向かう道を切り開き、また発展の加速化と独立の保持を望む国や民族に対し、全く新しい選択の道を与え、人類の問題の解決に対する中国の知恵と中国の回答を与えたことを意味する」という部分です。ある意味で欧米に対するイデオロギー的な挑戦を示唆してしまいました。
 さすがにまずいと思ったのか、2017年121日に開催された中国共産党と世界の政党との国際会議において、習近平は「中国は外国モデルを輸入しないし、中国モデルを輸出もしない。他国に中国のやり方をコピーしろと要求することもない」と強調しました。諸外国の反応を気にしていると言うことです。習近平の困難な国内外の舵取りは続きます。

一帯一路構想


【経済】
中国のネット経済は経済発展の原動力にはなりえない

高田勝巳 (株式会社アクアビジネスコンサルティング代表)

 20181月3日の日本経済新聞の国際面に目を通していたら、中国に関する2つの記事が目に付いた。「世界で新規上場が増えており、全体の1700件の内、554件が中国で、5割近く増えた」という景気の良い記事。米調査会社のユーラシアグループが予測した2018年の10大リスクとして「真空状態(米国)における中国の影響力拡大」というチャイナリスクについての記事だ。まさに、チャンスとリスクが隣り合わせの内容だ。

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新規上場に関しては、最近の中国のビジネスシーンを見る限り、感覚的には、ほぼ米国のシリコンバレーの中国版を展開しているという状況だ。
 国有資本、民営資本にかかわらず、投資する資金はふんだんにあるが、良い投資先がなくて困っていて、良いプロジェクト、良い技術、良い人材を求めて、金融と大学、研究機関などが、連携しながら、そうしたリソースの囲い込みが図られているのが現状だ。
 経済体制としては、様々な矛盾点、問題点を抱えながらも、試行錯誤の中で、発展を続けている中国経済であるが、上記のような中国版シリコンバレーモデルとも言える形は、確実に中国の成長のエンジンになりつつあるように思われる。
 2つめの記事の真空状態における中国の影響力拡大は、今に始まった話ではない。経済的には、1991年以降の日本の失われた20年は、中国の経済の影響力拡大の絶好のチャンスだった。政治軍事的は、2001911日の同時多発テロにより、米国の視線が中東情勢に向けられているうちに中国は米国の警戒を受けずに影響力を拡大したことは周知の事実ではないか。
  昨年末、復旦大学経済学院石経済研究所所長である華民教授の中国のマクロ経済についてのレクチャーを拝聴したが、興味深い内容が多かったので皆さんに紹介いたしたい。中国の経済学者が中国経済全般及びネット経済の現状をどう見ているか。また、日本との経済関係をどう見ているか参考になる。日本を反面教師として見ている部分は、その分析に賛同するかどうかは読者の判断に任せるが、とても面白い。
 景気の良い中国の情勢も一筋縄にはいかない問題を抱えている。また、最近言われている、日中関係の改善についても、中国側にも、日中関係を改善する客観的な動機があることがよくわかる。私は、かねてより申し上げているように、いたずらに中国の負の側面ばかりを強調し、中国崩壊と面白おかしく囃し立てる筋には全く共感しないが、中国経済は確かに様々な問題点も抱えており、正と負の両面からそのバランスを見て行かないと先行きは見えてこないと考えている。
 以下、興味のある部分を抜粋して整理した。そのままでは日本の読者にわかりにくいと思われる部分は、適宜、私の理解に基づき一部補足した。
鄧小平の改革成功の要因と毛沢東の功績
1.  政府(計画)主導の経済を市場主導の経済に変革させたこと。改革前の失敗の要因は、政府主導の計画経済の限界からくるもので、政府の権限を市場(民間)に移譲することにより経済は活性化した。その後40年が経って、中国は全体の規模では世界第2位となる奇跡とも言える経済発展を遂げ、市場経済化の程度は相当に進んだが、国有資本による市場の独占と富の偏在は、最近逆行する傾向があり、中国経済のより健全な発展を阻害している部分がある。
2.  輸出主導型経済政策に回帰するべきだ。富がどこに偏在するかは、各国の1人当たりGDPを見ないとわからない。鄧小平の輸出主導が成功したのは、輸出のターゲットを1人当たりのGDPの高い米日に集中したことにある。中国は経済発展に成功したとはいえ、まだまだ人口の70%は所得の低い農業人口であり、そこをターゲットとして経済発展はセオリーとしてはありえない。しかしながら、最近の中国は、内需拡大を唱え、せっかく育成した民間の輸出産業の見捨ててしまった。内需拡大は素晴らしいが、そこにはあるべき順序があるはず。消費拡大は、経済成長の結果であり、原動力ではない。
3.  輸出主導から見れば、一帯一路も経済発展の原動力にはなりえない。鉄道輸送のコストは開運コストと比べてモノにならないほど割高であり貿易の主力にはなりえない。一帯一路の地域はすでに欧州の商材を好む傾向にあり、中国製品が入り込む余地は少ない。欧州各国が一帯一路に乗るのは自国の商材を売り込むため。
4.  ネット経済は素晴らしいが、経済発展の原動力にはなりえない。BAT(百度、アリババ、テンセント)は、経済発展を成し遂げた中国の富の再分配をしているだけで、自らは富を創造していない。なぜならば、それはゼロサムゲームであるからで、例えば、Eコマースが旺盛になった分、実店舗の商流と雇用機会を奪っているだけ。AI、ロボットも、使い方によっては、ゼロサムゲームになる可能性がある。米国経済は、ネット経済も発展しているが、その他イノベーションなどで実際の富を創造している部分があり中国経済とは本質的に違う。
 
【文化大革命で毛沢東がなしえた功績】
1.  負の側面がほとんどの文化大革命で、誰もその再来は希望しない。ところが、なぜ、鄧小平が改革をなしえたか、それは、毛沢東が、それまでに中国に存在していた既得権益である官僚の権益を全て破壊し尽くしていたからである。改革には常に既存の権益といかに折り合いをつけるかが必要となるが、鄧小平はほぼフリーハンドで行うことができた。
反面教師として見た日本経済の失敗
1.  田中角栄の日本列島改造論は、中国の内需拡大の反面教師。日本経済の高度成長の牽引役は、阪神、中京、関東を経済ベルトであったわけであるが、田中角栄が出てきて、全国津々浦々新幹線と高速道路でつないで地方の道路も整備することとなった。それ自体は一見素晴らしいことであるが、経済成長と税収のバランスを考えないと、将来的に重荷になる。日本は、国債という負債に頼ってそれを行ったために、それ以降の負債体質と重税政策と相まって、日本の経済成長の低迷の要因になっている。中国内陸地の開発は素晴らしいが、バランスを考えないと日本と同じ轍を踏むこととなる。
2.  1985年のプラザ合意時における日本の失敗。当時日本とドイツは2つの選択肢があった。1つは、農産品の市場開放を受け入れる事、もう1つは、通貨の切り上げを受け入れる事。両国とも通貨の切り上げを受け入れたわけであるが、その対応は大きく違った。ドイツ:①減税し、企業への悪影響を軽減した。②賃金標準の引き下げを行い、輸出競争力を維持した。日本:①急激な円高に対抗するため金利を引き下げ、通貨供給量を拡大した。②産業を国外に移転し、企業の輸出競争力を維持した。結果、ドイツは自国産業と技術の維持に成功し、日本は、バブル経済を引き起こし、産業、雇用、技術の流出をもたらした。日本は、同時に内需拡大を唱えたが、消費は、経済成長の結果であり、経済成長のエンジンにはありえない。こうした諸点はすべて中国の反面教師となるうる事象。
 上記、華民教授の分析、読者は、どのように感じられたか興味あるが、以下は、私の感想である。
 なるほど、輸出主導政策がまだまだ中国の経済発展のために必要とすれば、1人当たりのGDPが高い日本の市場はまだまだ重視する必要があるわけだ。経済の自然な摂理に基づけば、中国も日中関係の安定を希望するはず。習近平政権が安定し、対日政策の自由度が増える分だけ、具体的な動きも期待できるのではないか。とはいえ、労務コストが上がった中国が日本への輸出を増やすには、より製品の付加価値を高めることが必要で、日本の技術導入がまだまだ必要という面もある。いずれよ、両国関係の安定は必須条件となる。
 中国のネット経済の発展は、日本でも注目されているが、それだけでは中国の経済発展の健全性は確保されないわけだ。ただ、冒頭でも述べた、中国版シリコンバレー型のモデルは、真の付加価値を生み出す可能性もあり、日本の産業界がその技術を持って関わるチャンスはある。
 文化大革命を既得権益の破壊との分析は私も初めて聞いたが、なるほど、言われてみればたしかにそうかもしれない。中国は経済発展の結果、巨大な既得権益が生まれており、これからさらなる発展には、どうしてもそのことの調整が必要となるのだと思う。習近平政権の権力集中が、そうした面で発揮されることを期待したい。

 日本の列島改造論を反面教師として捉えていたとは意外であった。また、プラザ合意の対応については、中国も米国からの元の引き上げ圧力にさらされているわけであり、日本の対応が大いに参考になっているのであろう。さすが、日本のようにバブルを潰して経済も潰したというような荒療治はしていないが、通貨供給量の増加、賃金引上げ、内需拡大、消費奨励など、日本と同じことを中国も行っている部分もありそう。ただ、中国の場合は、米国との関係から言えば、国際政治のバランスから行って、より自国の立場を主張できる立場にあるので、そこは明らかに日本とは違う点であろう。