2015年4月28日火曜日

日本人の国防意識について

  日本国憲法の第一章は天皇についての条文である。その第一条には「天皇は日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴」であることがうたわれている。

 およそ国家の憲法のはじめには、その国において一番重要なことがうたわれているのが世界の常識であるが、日本国憲法のはじめに天皇についての条文がみられるということは、我が国が立憲君主国として、天皇を国家元首にいただいていることを明確に示している。国家の象徴ということは、国家の元首であることを意味するのである。
 ただ日本国憲法の第四条には「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。」とあり、国家元首である天皇は政治的権力を行使する存在ではないことも同時に規定している。
 国家元首としての天皇が我が国の祖霊神、皇祖神をおまつりする伝統的な「権威」としての存在であることは、小林よしのり氏の『天皇論』(小学館)や所功氏の『天皇の「まつりごと」象徴としての祭祀と公務』(日本放送出版協会)に詳しいため詳述をさけるが、我が国国民の国家意識、国を守る意識を考える時に、こうした「権威」としての存在である天皇をぬきにして考えることはできない。

 つまり簡単にいえば天皇=国家なのである。
 国の執政権力を握ろうとする者、或いは組織は天皇より執政者であるお墨付きを得て、朝廷という古代以来の律令行政組織より任命をうけなければ、正統な執政者として認められなかったのである。
 戦前に南北朝時代の政治体制をとらえるとき、南朝を正統な皇室の流れととらえれば北朝が「異端」となる。しかし北朝という皇室もまた「存在」したのであり、南朝の後醍醐天皇と対立した足利尊氏が北朝の天皇より征夷大将軍に任命され執政権を与えれても、それは正統な手続きをふんだ流れなのである。決して足利尊氏が勝手に将軍を自称し、専制政治を行ったわけではない。
 また戦国時代の風雲児で朝廷をしのぐ権威を身につけようとしていたといわれる織田信長にしても、その居城安土城の本丸御殿には「御幸の御間」をしつらえたことが文献にみえるように、その政治姿勢はあくまで「勤皇」であった要素がうかがえるし、信長の政権を受け継いだ豊臣秀吉が全国の諸大名に号令を下すために、摂関家の一族になり、天皇より関白に任じられ、豊臣朝臣の姓を賜り、桐の紋章にもみられるように皇室の権威の中に身をおいた点は織田信長のめざそうとした政権のあり方を示唆していると考えられる。
 徳川家康は征夷大将軍に任じられ、江戸幕府で執政権を行使するに至り、天皇、公家を武家の法体系により管理するという政策をとるが、やはり徳川家においても幕末にペリー提督の艦隊が来航した時に、外交判断を孝明天皇に仰いだあたり、やはり「権威」として国家としての天皇の存在は無視できなかった。そしてこうした観念がベースにあればこそ尊皇攘夷の時代の風をうけて、14代将軍徳川家茂の頃に幕府の政治外交の権力を朝廷に預け、軍事動員権のみを行使する組織へと移行できたのである。すなわち明治維新以前に既に孝明天皇を頂点にした幕府という軍事組織を傘下においた政治体制(公武合体政権)が成立していたのである。明治維新は軍事動員権をもつ幕府を打倒して薩摩、長州らの雄藩連合組織がすげかわった政治体制とみることもできるのではないだろうか。

 いずれにしても日本人が国家を守るという場合には、必ず天皇の権威の下で政治や軍事の再編が行われてきたということがいえるだろう。幕末に近代軍制を導入する場合においてもこのことは変わらなかった。新選組の「誠」の隊旗は幕府に対する意味よりも国家である天皇に対する「誠」であるといえる。「誠」の信念を持って御所、京都の街を防衛するのである。新選組が民兵組織として近代装備、戦術を駆使する「近衛部隊」であるとする根拠の由来である。
 やがて幕府は倒され、雄藩連合組織の下でいわゆる明治維新が達成されても「権威」としての天皇=国家を守るという考えは踏襲された。「公」としての権威的存在である天皇を軍部統帥の最高の存在として位置づけるのである。幕末まで「軍人」ではなかった天皇を明治になって大元帥という軍人にしてしまうのである。このことについては、第二次大戦後、天皇の戦争責任の追及という形で物議をかもすこととなるが、天皇を軍人としたといってもその権限は当時の明治憲法の枠内をこえることはできず、軍部を専制的に天皇が支配したわけでもないから、「公人」としての天皇を軍の頂点におくことで国民軍としての性格をもたせようとしたものであろうから、天皇に直接、戦争の責任、敗戦の責任がかぶさることはない。

 まさに公人として皇祖神をおまつりする天皇は国民国家が一つになる「象徴」なのである。これは我が国が世界に誇れる伝統文化として、未来に引き継いでいかなければならない責務である。
 自衛隊に入隊すれば国旗国家への忠誠がたたきこまれることになる。天皇が自衛隊を観閲することはなくても、自衛隊は天皇に国家に忠誠をつくしているのである。
 国防意識というものは、軍事的なマインドだけをさすものではない。我が国に生まれ、暮らしを営むすべての国民が、その職場においてスキルを磨き職務に励むこと、家庭を築き家族、一族を守り子孫につないでいくことをも含んでいる。地域の公共の仕事にとりくむことも国防意識といえるだろう。我々国民自身が常に国家とつながる存在であることを現代人は強く自覚していく必要があるだろう。

 

陸上自衛隊におけるリスクマネジメント術(任務分析METT-T)

第Ⅰ章 これからおこりうる事態を想定の範囲内におさめる自衛隊流リスクマネジメント術

① 与えられた任務の内容を吟味して達成すべき目標を明確化すること。
② 自分の直面している問題を整理し、リストアップして紙に書き出していくこと。

《手順》「作戦に臨む際には、このように状況を分析しろ。」(反復訓練として行う。)

① 自分のポジションの再確認を行う。(紙に書き出す。)
組織での役職は何か? 
組織での役割は何か?

② 「状況の特殊」を書き出す。
状況を判断するときには、最初の状況の特徴を把握しておこうということ。

1mission ~使命、任務(目的達成のための上限と下限をかく。選択肢を増やす)
2enemy ~敵、ライバル、障害
3troop ~自分たちの部隊、戦力
4terrain ~地形、戦う場所
5time ~戦う時間、期間

《指揮官のつとめ》

任務分析に従い状況を整理する。~ どんなことがおきても対処可能な具体案を複数用意しておくこと。
想定外のリスクを減らし、的確なタイミングで決断を下す。

《リーダーとしての素養》
 
問題解決のための具体案を数パターン考える。
複雑にみえる状況でも整理して単純化して把握する。

《優秀なリーダーの育て方》~アンダースタンドのすすめ~
 任務分析による状況判断とプラス思考による考え方はリーダーにとっての必要条件である。
 リーダーとして組織を運営するための十分条件は、優秀な参謀の存在である。
「上の者は下にたって考えろ。」
下積みの経験を持つ人間がリーダーになることは組織として大きな利点となる。
アンダースタンド(「理解」を意味する。)の本来の意味、「下にたて。」

任務分析

★任務とは?
指揮の基礎となるのが指揮官の決心である。
主導的な地位に立ち決心するためには継続的な状況判断が必要である。
状況判断の基礎となるのが任務である。

★任務分析で明らかにすべき事
☆任務の具体的内容
・何のために?
・何を?
・いつまでに?
・どの程度?
・どの様に?

☆指揮官(部署)の地位
全体の中での地位、主力か?サポートか?を明らかする。

☆指揮官(部署)の役割
全体の中での役割、主力ならば大局的な役割を明らかにする。
サポートならば主力に対する役割が、直接支援か?間接支援か?増援か?等を明らかする。

☆具体的な目標
任務達成のための目標を具体的する。
・指揮官(部署)が任務を達成するために必ず達成しなければならない目標。
・追加的に達成することで、他の任務、次期の任務を容易にする目標。 (典拠:作戦要務令、ノート)



《引用文献・リンク
『ヒゲの隊長のリーダー論』佐藤正久著 2011.11 並木書房 より


第Ⅱ章 アメリカ海兵隊の状況判断の技術(METT-TC分析) 
(引用リンク:安全保障学を学ぶ

 自らが置かれている状況を整理し、指揮官としての決心を下すことを、状況判断または状況見積と言います。
米陸軍の教範では、この状況判断を支援するための方法として、METT-TC分析が挙げられています。
今回はこの方法について紹介したいと思います。

 METT-TC
分析とは、任務を達成する上で重要な状況の要素を分析する方法のことで、特に戦術の計画、実施、評価を目的として考案されたものといえます。

・任務Mission
・敵情Enemy
・地形Terrain
・部隊Troops
・時間Time
・民事Civil Consideration

 これらの頭文字をとってMETT-TCと呼ばれており、戦術の教育で広く知られる分析方法です。

 第一に、任務はその行動の目標とする状態を意味しており、指揮官はこれを具体的かつ客観的に定義されなければいけません。
上官から示された命令をよく検討し、その意味するところを分析することを任務分析と言います。任務分析では、発令者の「意図」についてよく理解される必要があります。

 その理由としては、命令の文章をそのまま記憶したとしても、状況の変化によって実施するべき行動が変化する場合があるためです。
受令者は、上官の命令から自分に与えられた任務の本質が何かを状況から解釈し、上官が予想していない状況の変化に対しては、自身の責任として必要な措置を講じる必要があります。

 第二に、敵情の分析は敵の長所と短所を明確にする意味があります。
敵はどの程度の人員、武器、装備を持っているか、という客観的な事実に基づくことが敵情分析では必要となります。そして、敵の立場から、実行可能な作戦を立案します。

 その上で、敵にとって可能な行動を広く検討し、その中でも特に実施される公算が最も強いと考えられる行動を絞り込んでいきます。
こうしておくと、不測の事態に見舞われる危険を最小限に抑制することが可能です。

 第三に、地形分析では地図をよく読解し、その地形的な特性をよく把握することが重要となります。
特に、軍事的に重要な地形、基地から目標までの経路、移動が困難な地域などを特定しておきます。

 第四に、指揮官は自分が任務を達成するために使用可能な部隊を見極めなければなりません。
ここで特に重要なポイントとなるのは、部隊の人員、武器、装備、健康状態、士気、団結、規律、後方支援があります。

 第五に、時間という要素は、準備、計画から実施、そして最終的な目標の達成に至るまでに要する時間的制約のことを意味しています。
さらに、各部隊が行動する上で、どのような時間軸を設定するかという点も計画を具体化する上で重要なポイントとなります。

 第六に、民事とは「非軍事的」な状況を指す言葉です。つまり、民事とは作戦・戦闘に直接関係のない民間人の活動に関係する状況を言います。
その地域の住民が、友好的か敵対的かという問題は、作戦を進める上で継続的な影響が考えられます。

 METT-TC
分析の目的は、状況判断で検討するべき基礎事項を明らかにすることです。
状況判断は、可能な限り意思決定に要する時間を短縮するために、複雑な状況を単純化することを要求します。

 このような状況判断の要領を定式化しておけば、指揮官の間で判断が合致しないことも少なくなるだけでなく、より円滑な調整が期待されます。

KT

参考文献
U.S. Department of the Army. 2014. Field Manual 6-0: Commander and Staff Organization and Operations, Washington, DC: Government Printing Office.
特にこの文献のAppendix A, Operational and Mission VariableがMETT-TCを解説している。

アメリカ海兵隊 アフガニスタンでの車両群



第Ⅲ章 自衛隊式 最強のリーダーシップ
201397日(最強のリーダーシップ

《組織力発揮のポイントは?》 ~「上司の期待を確認し、行動せよ!」~

 東日本大震災の復興支援業務で、組織力を発揮し注目された自衛隊ですが、平素から
自衛隊員は、国土防衛や災害派遣などの究極の事態に備えて、組織力を発揮して任務が達成できるように教育訓練を受けています。
 特に、陸上自衛隊は、陸海空の3つの自衛隊の中でも、組織的な部隊行動を取ることが要求されます。その際、すべての幹部自衛官が意識している考え方が「任務分析」です。
 上級部隊が任務を達成しやすいように、幹部自衛官は自分の所属している部隊の地位と役割を確認します。与えられた任務に基づいて、「目的」を確認し、「目標」を明らかにするわけです。
 これを会社に当てはめれば、会社全体の方針を理解したうえで、自分達の部署、部門で引き受ける役割を明確にするということです。
 
 全体の方針を理解し、上位組織の役割を知っていなければ、この判断はできません。
一般方向を確認せよとも言われました。
分かり易い例を挙げます。山で遭難したら、北極星は動かないので、北極星に向かって歩けば北に向かって移動していることが保証されます。
部隊が行動する時、大局的に見れば、組織として北に向かっているのか? 民間企業で言えば、ベクトルを合わせるということです。
 任務分析の思考プロセスを踏むことによって、一貫性のある組織的な行動が取れます。状況判断(意思決定)を行う際に、判断のブレも少なくなります。
リスクマネジメントの観点からも、有事に誰かが負傷するとか、あるいは、最悪戦死しても次級者が柔軟に職務を代行できるように、仕組みができているのが自衛隊なのです。
これこそ組織力発揮の根幹だと思います。
民間企業向けに分かり易く翻訳してみると、キーワードは『上司の期待に応える』ということです。上司の期待が何なのかを確認し、目標を設定します。
 次に、具体的に目標設定を行います。必ず達成しなければならない目標と達成することが望ましい目標に区分して、目標を設定する訳です。
 必ず達成しなければならない目標はMUST目標です。 なんとしても死守しなければならない目標です。
そして、達成することが望ましい目標として、ストレッチ目標も設定します。
 私は民間企業に移ってから、何度か転職を経験していますが、強い組織ほどトップの方針は末端社員にまで行き届いていました。

 例えば、富士ゼロックスは、TQC(Total Quality Control/全社的品質管理)が徹底されている会社でした。方針展開と言う言葉を使っていました。社員は直属の上司の判断だけでなく、そのまた上の上司が何を期待しているかまで考えていました。
 会社第一(カンパニーファースト)で考え、行動できるように訓練されている組織は力強いのです。それは、メンバーが組織全体の目的を理解し、目的の達成に向けて、メンバーそれぞれの立場で最善を尽くす取り組み姿勢を持っているからです。
 リーダーであるあなたも、「上司のさらに上司」の期待にまで目を向けて、部下に指示を出すことを目指すべきです。

 自衛隊では「二段階上のレベルの役職で任務を考えると、組織全体の任務、期待されている役割がよく分かる」と言われました。有事に、最悪連絡が取れないことまで想定して、上司の立場になって考えて行動するわけです。


【関連リンク】自衛隊はどれほど強いのか-IRONNA編集部



第Ⅳ章 情報を的確に収集、報告するための5W1H 「SALUTE」

 敵軍について情報を収集、報告する場面で関わってくる「SALUTE」という言葉がある。以下の言葉の頭文字を並べた概念である。

・Size(規模)
・Activity(活動)
・Location(位置)
・Unit(部隊)
・Time(時刻)
・Equipment(装備)

 つまり軍隊が戦術レベルで使用する5W1Hのようなもので、報告すべき事柄を容易に思い出せるように頭文字略語にしたわけである。不慣れな兵士、初めて戦場に出て浮足だちそうになっている兵士に対して「SALUTEを言え!」と指示することで、少しは落ち着いて報告できるようになる効果を狙ったものなのだろう。
 指揮官は、部下からあがってきたSALUTEの情報に基づいて、指揮下の部隊をどう配置して、どう戦わせるかを判断することになる。位置、活動、時刻といった要素は、思わぬ方向から思わぬタイミングで戦術的奇襲をしかけてこようとする徴候につながるかもしれない。
 SALUTEは敵情報告で使用するものだが、対して自軍を対象としてするのが、「METT-T」(任務、敵情、地勢、指揮下の軍、利用可能な時間)である。
 SALUTEとMETT-Tが釣り合うか、あるいは自軍が優勢ならよいが、敵軍が圧倒的に優勢だと困ったことになる。


【参考引用文献】『現代ミリタリーインテリジェンス入門~軍事情報の集め方、読み方、使い方』
井上孝司著 潮書房光人社 2014年4月


アメリカ軍行進曲メドレー







国境周辺の防衛について考える

防空識別圏(ADIZ)のもつ意味

<前提>
  防空識別権(ADIZ)とは、防空上の領空侵犯予防空域である。つまり日本国の領空に近づく航空機が敵か見方かを識別するために設定された空域である。防空識別権に何の通告、連絡もなく侵入してきた国籍不明機に対してスクランブルがかけられることとなる。

<問題点>
① 国後島の北西上空をADIZが通り、北方四島が識別権から外れる。竹島もADIZの外にある。また与那国島の真上を南北にADIZが通る。

② 北方四島と竹島上空を領空侵犯されてもスクランブルがかけられないため、実質的に領土主権の放棄に等しい。《しかし全国に配置されたSS(レーダーサイト)の防空監視網の範囲の内側には入っている。また早期警戒管制機の防空探知範囲により与那国島、竹島はカバーされている。ただ北方四島は探知外になる。

③ 東経123°がADIZの西の境界。通常ADIZの外側に設定されるべき飛行情報区(FIR)がこの空域については、東経123°線より東側にある。(東経124°線が台北FIRと那覇FIRの境界。)そのため台北より離陸した民間旅客機が那覇にむかう場合、FIR境界である124°線をこえる前にADIZをまたぐことになる。この時台北から那覇への飛行プランの通報が遅れるようだと国籍不明機とみなされ自衛隊機によりスクランブルがかけられる。

<結論>
防空識別権(ADIZ)の設定の仕方を改善していく。
 1972年の沖縄返還時にアメリカが設定した防空識別権を引き継いだことにより、与那国島の西側半分を圏外にしてしまった。また日本海中央に設定したため、日本海西側がADIZ圏外となり竹島の主権を放棄する形となっている。

早期警戒管制機の性能向上。
 北海道に配備されている早期警戒管制機E-2Cは70年代のミグ25亡命事件を機に導入された機体であることから、監視範囲に限界があり択捉島、歯舞群島までをカバーできない。最新のE-767であれば、四島すべてを監視範囲に含めることができる。

東経123°線というADIZの西の境界線を見直す。
与那国島全域が我が国のADIZ圏内に含められるよう調整すべきである。そのために台湾政府との関係を良好に保ち折衝していく。台湾が中共に併呑されるような事態を許してはいけない。(平成22年にこの東経123°線が正式に見直され与那国島の全空域が我が国のADIZ圏内に含まれるに至った。)

  陸上自衛隊が与那国島に配備されることは、南西諸島の防衛強化の上で重要なことである。周辺国を刺激するとの声もあるが、国境周辺の防衛を固めることは、国家として当然おさえておくべきことであるから、周辺国の非難があっても我が国の事情を説明し、粘り強く理解を得るようつとめるべきである。そのための外交努力を外務省には期待したい。(平成21年麻生太郎内閣の時に陸上自衛隊の駐屯が決定するも、平成218月に鳩山民主党政権に政権交代すると共産中国を刺激するということで駐屯計画が白紙に戻される。)
 そして今回のプランを南西諸島に限らず、最近韓国がいわれのない主権を主張する対馬や不法占領されている竹島や北方四島にも応用すべきであろう。   
 我が国領空、領海、領土は万全の監視体制があり、侵入すれば大きな火傷をおうのだ、という姿勢が国家の強力な抑止力につながると考える。
 できれば宮古島か石垣島に航空自衛隊の基地を整備してF-15Jの配備を進めておくとより効果的であろう。与那国島周辺でADIZ、FIRに問題を抱えている以上、南西諸島の防衛について軽く見過ごすことは致命的である。常に有事を想定し、台湾、中共に対して一撃を加えられる準備を怠ってはならない。

<参考文献>
『こんなに強い自衛隊その秘密99』井上和彦監修 2008

『MORIBITO』Vol.2 アスキーメディアワークス 2009

http://teikoku-denmo.jp/history/kaisetsu/other/adiz.htmlより

 英語表記の Air Defence Identification Zone の頭文字を採って ADIZ と略称される。「防空識別圏」とは、国家の防空上の必要性から設定される空域の事で、一般に領空を含み、その外側に設置されている。航空機が外国領空を飛行する場合には、必ず、当該国の許可を得なければならない。日本の防空識別圏内を飛行する航空機は、事前に航空交通管制機関たる国土交通省に飛行計画等を提出し、国土交通省はこれを防空組織たる航空自衛隊に通報する。防空識別圏内を飛行する全ての航空機に対し、航空自衛隊は飛行計画等に基づいて識別・確認し、所要の飛行指示を行っており、万が一、識別出来ない航空機は国籍不明機(Unknown)とし、平時は強制着陸若(も)しくは領空から退去させる等の対領空侵犯措置により処理、有事(戦時)には敵性機及び指示に従わない国籍不明機として要撃する事となっている。
 尚、「領空」とは、国家の領土・領海の上空空域を言い、領空の高度限界については、大気圏内(便宜的に高度80kmから120km辺りとされている)と言うのが一応の通説となっている。

海国防衛ジャーナル
(http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50716060.html)

 中国が防空識別圏(Air Defense Identification ZoneADIZ)を設定し、日本のADIZと重なることが報じられています。
 ADIZは各国の都合で設けるものですから、この中に勝手に入っても入られても国際法上、不法行為ではありません。また、排他的経済水域(EEZ)などとも異なり、各国の了承を得るような性質のものでもないのですが、ADIZの果たす役割は重要です。この空域があることで、飛行計画を提出している航空機は撃墜の心配がありませんし、入られる方も事前に飛行計画が提出されている航空機ならわざわざスクランブルをする必要が無いわけです。仮に誤って飛行計画とは異なる航路に入ったとしても、ADIZ内で引き返せば撃墜されることはありません。スクランブルは不測の事態を招く危険性もはらんでいることから、国籍不明機が領空侵犯をする(してしまう)前に、ADIZという一種の緩衝地帯を設けているというわけなのです。
 ただ、中国が設けたADIZには、尖閣諸島が含まれています。尖閣諸島上空は日本の領空なので、ここに中国が侵入するとなると、撃墜することはあり得ます。
 中国はこのADIZ内でスクランブルをするのだとしたら、早期警戒機の拡充が必須ですね。KJ-2000KJ-200ZDK-03KJ-500と、怠りはないようですが。





2015年4月27日月曜日

旧日本海軍の潜水艦の戦い方とその歴史

本当の潜水艦の戦い方 
~優れた用兵者が操る特異な艦種~

中村秀樹

(帯より)元海上自衛隊潜水艦長が戦争の実態に基づいて検証し、潜水艦の最適な用法作戦を示す。
海上自衛隊の作戦に疑問を投じる話題作

2007.9.30http://www.ac.auone-net.jp/~oknehira/HoutouNoSensuikanNoTatakaikata.htm

(カバーより)潜水艦は、極めて特徴的な軍艦である。それは単に水中に潜ると云うことだけではない。最も強力な軍艦であると同時に最も脆弱な目標でもある。その性質に適した作戦をすればその成果は絶大であり、潜水艦のみで大海軍国の死命を制することも可能である。海上と空を支配しても海洋を支配することは出来ないのである。

 先ずは大東亜戦争における日本海軍潜水艦作戦の失敗の原因を挙げている。連合艦隊の根本思想である艦隊決戦思想の補助兵力として潜水艦隊が規定されたために、艦隊行動へ随行する事を要求されたり、指揮権が潜水艦の特性を理解しない、新たな事態に柔軟に対応する事が出来ないまま、非効率的な任務を強要され、消耗していった、としている。
 それらの作戦の特徴として、
 ①敵警戒厳重な海域への集中
 ②厳密な散開線の形成と頻繁な配備変更
 ③潜水艦能力に合わない運用
 を挙げており、これらが潜水艦の最大の特長である”隠密性”を喪失させてしまい、敵に所在を暴露し、撃沈されるに至ったとしている。②においては、日本海軍が精確な散開線配備を命じたために、1艦見つけると散開線を想定して芋づる式に他の艦も撃沈されていくという事態も招来していたようである。
 これらを以てして、「日本海軍の勇敢で、よく訓練された潜水艦乗員は一つの偏向した方針及び近視眼的な最高統帥部によって、徹頭徹尾無益に消耗され、又実力発揮を妨げられた」とし、ニミッツの太平洋海戦史からの引用では「古今の戦争史に於いて、主要な武器がその真の潜在威力を少しも把握理解されずに使用されたという稀有の例を求めるとすれば、それこそまさに第二次大戦における日本潜水艦の場合である。」としている。

 一方、アメリカ海軍の潜水艦の運用に関しては、高性能なソナーや通信機器というハードウェアの有利さや、制空権、制海権という優勢な環境もさることながら、「実戦の体験や戦争の変貌しつつある性格に照らして、随時改善を加えていくという充分柔軟性を持った健全な戦法の採用があった」事を挙げている。即ち通商破壊に投入し、個々の潜水艦に充分な裁量権を与え、独立に作戦行動した、ということである。無理な移動も強要されなかったため、日本海軍のように危険な浮上航行を長時間続ける必要もなかった。

 本書で初めて知ったが、日本の伊号潜水艦はカタログスペック上は優秀に見える。特に高速性と航続距離である。ところが、高出力のエンジンを搭載せざるを得なかったために、騒音が大きく、被探知され易かったという欠点も有ったそうである。これは艦隊決戦思想に基づき、大艦隊と合同し、補助兵力として作戦行動する事を計画して建造されていたのでそうなったのである。だが、潜水艦の特性としては独立して待ち伏せしての襲撃が最適であり、特性への無理解が設計思想、運用の誤りへ至ったようである。
 大艦隊へ随行することを要求された「海大型」は、水上速力は23ノットあった。当時の世界の潜水艦で最高速であったという。これだけを見れば優秀に思える。艦隊決戦思想には合致する。だが、現実には機動部隊による航空主兵の時代であり、潜水艦が艦隊に随行する意味は失われていた。そして現実には、制海権、制空権を喪失した、極めて危険な敵威力圏下での作戦行動を余儀なくされた。この状況では水上速力23ノットという最高速度は被探知の危険性を高めるばかりで使い道がなかった。本書に依れば、米独の潜水艦は水上速力は最大で20ノット程度であり、この差は潜水艦戦実施上は大した影響はなく、寧ろ僅か3ノットの性能向上の為に日本の潜水艦の主機の負担は甚大だったと指摘する。或る艦の機関特性に依れば、速力を10%下げれば、出力は70%以下で済み、速力が50%ならば出力は10%以下で済むという。こうした点を考慮して設計したならば、機関の小型化、燃料の節約、静粛性の向上に貢献したであろうけれども、艦隊決戦思想に基づいて設計された結果、そうはならなかった。

 以上の旧海軍の潜水艦部隊に対する無理解、悪弊は、現在の海上自衛隊において更に悪化していると著者は嘆く。穿った見方をすれば、潜水艦隊の地位が海自内で低いままであることについての不平不満も含んでいるともとれるが、著者は、潜水艦こそ現代の海軍の中心戦力なのだ、という信念に基づいて主張してもいるようである。
 主張は尤もではあるが、護衛艦が日本の海自の構想において中心であることはやはり変わらないのではないか、と個人的には思った。何故ならば、著者は東西冷戦構造の消失により、太平洋を舞台とした広域の潜水艦戦はもう起こらないとして論じているが、中国海軍の急激な近代化・拡大、ロシアの復活、冷戦構造の復活が近年見られることを軽視しているように思う。更に、イージス艦には弾道ミサイル迎撃という、これまでの軍艦には無かった重大かつ新たな任務が付与されるに至っている。これを潜水艦が代行できる状況にはない。よって、著者が嘆く、海自の護衛艦中心の構想は、現状に於いては正しいと個人的には思うのだ。とはいえ、著者が体験に基づいて述べたと思われる、現在の海自潜水艦部隊が、対抗部隊としてのみ訓練を行い続けている、というのであればそれは確かに問題であろう。が、良くは分からないのだが、さすがにそこまで制服組も阿呆ではなかろうと思うのだ。様々な事態を想定し、訓練や図上演習で行わない想定とその時の戦術なども研究し抜いているに違いない、と、個人的には思いたい。
 著者はその他に、士気の問題も指摘する。その裏付けとなる軍事法廷の不在も指摘する。確かに厳格な規律は必要である。だが、旧海軍式の、絶対服従式だけでもダメであることは、これも歴史に学ぶべきところであろう。著者は旧海軍が、現場の潜水艦部隊の意見を取り入れず、現実を無視した無理な作戦を命令し、その事によって潜水艦部隊がむざむざ撃沈されていったことを嘆いているワケであるが、その原因が、上意下達のみで、現場から上層部へのフィードバックが行われていなかった事に有るわけである。となると、余りに上官が絶対で、部下の云うことなど聞かない、という硬直した体制はマズい、柔軟性を失う危険が大である、とも考えるべきである。米海軍の太平洋戦争時における潜水艦の運用の柔軟性、合理性を指摘しているのであるから、この点は旧海軍の伝統よりも、より現代的で機能的であることを追求すべきであろうと思う。そしてそれは、意外に良い状態に有るのではないだろうかと思うのである。

 著者は、日本の安全保障の為に良かれと思い、危機感を述べており、至当な部分が多く大変参考になるけれども、一部は同意しかねる部分もある。だが、こうした建設的な意見が方々で発せられ、それらの中から取捨選択し、実現していくことで、現状に適した体制へと柔軟に変更され得ると思う。良いところを伸ばし、劣るところを加えて行けば、著者が危惧するような事態を避け、日本の安全保障は全うされ得ると思いたい。

第一章 潜水艦とはどの様な軍艦なのか
第二章 潜水艦作戦の条件
第三章 日本海軍潜水艦作戦の実態
第四章 潜水艦作戦失敗の原因
第五章 海上自衛隊の潜水艦



【リンク】





【我が国の潜水艦の開発の歴史】

① 近代的な潜水艦の開発
1900年 アイルランドの造船技師ジョン・フィリップ・ホランドにより設計される。
1909年 日露戦争の時に失った艦艇の補充のために、アメリカより潜水艇を5隻購入、部品を分解購入して国内で組み立てて使用していた。
 各国からの輸入と海外メーカーによる設計・製造技術を使用するライセンス生産にて潜水艦を整備していた。
 こうした時にホランドよりアメリカ駐在で親交のあった井出謙治少佐に効率のよい潜水艇の設計図(青図面2面)が渡される。この設計図を元に採算性を無視して川崎造船所の松形幸次郎社長が請け負い、ほとんど独力で潜水艇を竣工させた。(第六型潜水艇、第七型潜水艇)
1919年 設計から建造まで国内で行われた「呂11型」「呂12型」潜水艦が竣工する。
1920年ワシントン海軍軍縮条約で戦艦の保有数を制限され、続く1930年ロンドン海軍軍縮条約では巡洋艦の保有数にも制限が加えられる中、航空母艦と並んで潜水艦による戦術が考案される。

② 我が国海軍潜水艦独自の戦術「潜水艦による水上艦艇への攻撃。
 水上艦艇を攻撃する上での求められる潜水艦の性能としては、戦艦なみのスピードと攻撃力が必要となる。そこで日本海軍で生み出されたのが20ノット以上のスピードを発揮する「艦隊潜水艦」だった。
 太平洋戦争当時の艦隊潜水艦の戦果としては、従来的な潜水艦の主任務である「通商破壊」、アメリカ正規空母への攻撃、艦載機によるアメリカ本土への空爆、潜水艦からの砲撃などがある。
 代表的な作戦は、潜水艦に爆撃機を搭載しアメリカ本土へ奇襲攻撃をかける作戦がある。
航空機3機搭載可能な「伊号13」「伊号14」潜水艦で潜水空母艦隊を編成して、アメリカ西海岸の艦隊、アメリカ本土、パナマ運河を攻撃目標とした。
 後にこの作戦は変更となり、19456月に西太平洋のウルシー環礁へのアメリカ軍機動部隊への攻撃となるが、作戦が始まる前に終戦を迎えた。

③ 伊号第400潜水艦について
 潜水空母の異名をとる。排水量3530トン(軽巡洋艦なみ)、全長122m、最大速力は水上18.7ノット。大きさとしては世界最大、地球を1周できる航続距離、補給なしで4ヶ月航行できる能力をもつ。


第二次世界大戦下、日本軍最大の秘密兵器と言われたのが、潜特型潜水艦でした。
この艦は爆撃機を輸送してアメリカの大都市に数百キロまで接近すべく設計され、優秀な空母でした。 現代テクノロジーを駆使して、海に沈んだ空母I-400を調べるとともに、記録映像でその脅威の姿を追います。この空母は当時としては並外れて大きく、1960年代までに製造された潜水艦より25­%も長いです。
 また燃料補給なしに地球を1周半航行することができ、これはアメリカの潜水艦の2倍の走行距離を持ちます。さらに突出していたのが戦闘能力でした。この空母は潜水艦の常識を破り、3機の特殊攻撃機(M6A1 晴嵐)を搭載することができました。

伊号第400潜水艦 カラー映像
2009/12/03 にアップロード 潜特型

④ 旧海軍潜水艦の先進的なシステム
 「自動懸吊装置」~潜水艦が停止の状態でも一定の深度を保っていられる装置。
 「重油漏洩防止装置」~艦体の亀裂から重油の漏れを防ぐ装置。

⑤ 旧海軍潜水艦の活躍がめだたないのはなぜか?
 ・「艦艇攻撃」へのこだわり
水上艦艇も技術開発により速度や装備、防御が進化しているため、潜水艦の能力がおいつかなくなった。また水上艦艇と潜水艦では建造での費用対効果が違いすぎる。水上艦艇の方が安く、効果が高かったということ。米英は潜水艦を「通商破壊」に特化した。
・戦況悪化のため南方の島嶼への補給支援が忙しくなる。
「通商破壊」や「艦艇攻撃」にまわせられなくなった。
・日露戦争以降の「潜水艦による敵主力艦隊撃滅」への想定が変わることがなかった。
さらば海底空母イ401 幻のパナマ運河大爆撃

2014/08/25 に公開



⑥ 海上自衛隊潜水艦隊として活躍
1971年に従来の水上航行を優先する船型から、水中高速をはかった「涙滴型」船型を採用した「うずしお」型が竣工。1998年に「魚雷型」船型に改良、さらに水中速度の向上がはかられ2009年に竣工した「そうりゅう」型でスウェーデン、ドイツに次いで3番目に新型のAIP推進型潜水艦が実用化される。これにより我が国周辺海域での長期にわたる哨戒、敵艦を待ち伏せのため水中待機することが可能となる。

⑦ 海上自衛隊潜水艦隊の戦果
戦後一貫してアメリカ第七艦隊、護衛艦隊と連携してウラジオストクのソ連太平洋艦隊の西太平洋への進出を抑止してきた。現在は南西諸島方面への露骨な侵略をはかる共産中国海軍の抑止に海上保安庁と連携しながら活躍している。

参考文献:『太平洋戦争の真実~知られざる旧日本軍の極秘作戦』ミリオン出版株式会社2013.6.13発行


【AIP推進型潜水艦の弱点を克服できる「リチウムイオン蓄電池」型潜水艦の開発】

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