2015年4月28日火曜日

陸上自衛隊におけるリスクマネジメント術(任務分析METT-T)

第Ⅰ章 これからおこりうる事態を想定の範囲内におさめる自衛隊流リスクマネジメント術

① 与えられた任務の内容を吟味して達成すべき目標を明確化すること。
② 自分の直面している問題を整理し、リストアップして紙に書き出していくこと。

《手順》「作戦に臨む際には、このように状況を分析しろ。」(反復訓練として行う。)

① 自分のポジションの再確認を行う。(紙に書き出す。)
組織での役職は何か? 
組織での役割は何か?

② 「状況の特殊」を書き出す。
状況を判断するときには、最初の状況の特徴を把握しておこうということ。

1mission ~使命、任務(目的達成のための上限と下限をかく。選択肢を増やす)
2enemy ~敵、ライバル、障害
3troop ~自分たちの部隊、戦力
4terrain ~地形、戦う場所
5time ~戦う時間、期間

《指揮官のつとめ》

任務分析に従い状況を整理する。~ どんなことがおきても対処可能な具体案を複数用意しておくこと。
想定外のリスクを減らし、的確なタイミングで決断を下す。

《リーダーとしての素養》
 
問題解決のための具体案を数パターン考える。
複雑にみえる状況でも整理して単純化して把握する。

《優秀なリーダーの育て方》~アンダースタンドのすすめ~
 任務分析による状況判断とプラス思考による考え方はリーダーにとっての必要条件である。
 リーダーとして組織を運営するための十分条件は、優秀な参謀の存在である。
「上の者は下にたって考えろ。」
下積みの経験を持つ人間がリーダーになることは組織として大きな利点となる。
アンダースタンド(「理解」を意味する。)の本来の意味、「下にたて。」

任務分析

★任務とは?
指揮の基礎となるのが指揮官の決心である。
主導的な地位に立ち決心するためには継続的な状況判断が必要である。
状況判断の基礎となるのが任務である。

★任務分析で明らかにすべき事
☆任務の具体的内容
・何のために?
・何を?
・いつまでに?
・どの程度?
・どの様に?

☆指揮官(部署)の地位
全体の中での地位、主力か?サポートか?を明らかする。

☆指揮官(部署)の役割
全体の中での役割、主力ならば大局的な役割を明らかにする。
サポートならば主力に対する役割が、直接支援か?間接支援か?増援か?等を明らかする。

☆具体的な目標
任務達成のための目標を具体的する。
・指揮官(部署)が任務を達成するために必ず達成しなければならない目標。
・追加的に達成することで、他の任務、次期の任務を容易にする目標。 (典拠:作戦要務令、ノート)



《引用文献・リンク
『ヒゲの隊長のリーダー論』佐藤正久著 2011.11 並木書房 より


第Ⅱ章 アメリカ海兵隊の状況判断の技術(METT-TC分析) 
(引用リンク:安全保障学を学ぶ

 自らが置かれている状況を整理し、指揮官としての決心を下すことを、状況判断または状況見積と言います。
米陸軍の教範では、この状況判断を支援するための方法として、METT-TC分析が挙げられています。
今回はこの方法について紹介したいと思います。

 METT-TC
分析とは、任務を達成する上で重要な状況の要素を分析する方法のことで、特に戦術の計画、実施、評価を目的として考案されたものといえます。

・任務Mission
・敵情Enemy
・地形Terrain
・部隊Troops
・時間Time
・民事Civil Consideration

 これらの頭文字をとってMETT-TCと呼ばれており、戦術の教育で広く知られる分析方法です。

 第一に、任務はその行動の目標とする状態を意味しており、指揮官はこれを具体的かつ客観的に定義されなければいけません。
上官から示された命令をよく検討し、その意味するところを分析することを任務分析と言います。任務分析では、発令者の「意図」についてよく理解される必要があります。

 その理由としては、命令の文章をそのまま記憶したとしても、状況の変化によって実施するべき行動が変化する場合があるためです。
受令者は、上官の命令から自分に与えられた任務の本質が何かを状況から解釈し、上官が予想していない状況の変化に対しては、自身の責任として必要な措置を講じる必要があります。

 第二に、敵情の分析は敵の長所と短所を明確にする意味があります。
敵はどの程度の人員、武器、装備を持っているか、という客観的な事実に基づくことが敵情分析では必要となります。そして、敵の立場から、実行可能な作戦を立案します。

 その上で、敵にとって可能な行動を広く検討し、その中でも特に実施される公算が最も強いと考えられる行動を絞り込んでいきます。
こうしておくと、不測の事態に見舞われる危険を最小限に抑制することが可能です。

 第三に、地形分析では地図をよく読解し、その地形的な特性をよく把握することが重要となります。
特に、軍事的に重要な地形、基地から目標までの経路、移動が困難な地域などを特定しておきます。

 第四に、指揮官は自分が任務を達成するために使用可能な部隊を見極めなければなりません。
ここで特に重要なポイントとなるのは、部隊の人員、武器、装備、健康状態、士気、団結、規律、後方支援があります。

 第五に、時間という要素は、準備、計画から実施、そして最終的な目標の達成に至るまでに要する時間的制約のことを意味しています。
さらに、各部隊が行動する上で、どのような時間軸を設定するかという点も計画を具体化する上で重要なポイントとなります。

 第六に、民事とは「非軍事的」な状況を指す言葉です。つまり、民事とは作戦・戦闘に直接関係のない民間人の活動に関係する状況を言います。
その地域の住民が、友好的か敵対的かという問題は、作戦を進める上で継続的な影響が考えられます。

 METT-TC
分析の目的は、状況判断で検討するべき基礎事項を明らかにすることです。
状況判断は、可能な限り意思決定に要する時間を短縮するために、複雑な状況を単純化することを要求します。

 このような状況判断の要領を定式化しておけば、指揮官の間で判断が合致しないことも少なくなるだけでなく、より円滑な調整が期待されます。

KT

参考文献
U.S. Department of the Army. 2014. Field Manual 6-0: Commander and Staff Organization and Operations, Washington, DC: Government Printing Office.
特にこの文献のAppendix A, Operational and Mission VariableがMETT-TCを解説している。

アメリカ海兵隊 アフガニスタンでの車両群



第Ⅲ章 自衛隊式 最強のリーダーシップ
201397日(最強のリーダーシップ

《組織力発揮のポイントは?》 ~「上司の期待を確認し、行動せよ!」~

 東日本大震災の復興支援業務で、組織力を発揮し注目された自衛隊ですが、平素から
自衛隊員は、国土防衛や災害派遣などの究極の事態に備えて、組織力を発揮して任務が達成できるように教育訓練を受けています。
 特に、陸上自衛隊は、陸海空の3つの自衛隊の中でも、組織的な部隊行動を取ることが要求されます。その際、すべての幹部自衛官が意識している考え方が「任務分析」です。
 上級部隊が任務を達成しやすいように、幹部自衛官は自分の所属している部隊の地位と役割を確認します。与えられた任務に基づいて、「目的」を確認し、「目標」を明らかにするわけです。
 これを会社に当てはめれば、会社全体の方針を理解したうえで、自分達の部署、部門で引き受ける役割を明確にするということです。
 
 全体の方針を理解し、上位組織の役割を知っていなければ、この判断はできません。
一般方向を確認せよとも言われました。
分かり易い例を挙げます。山で遭難したら、北極星は動かないので、北極星に向かって歩けば北に向かって移動していることが保証されます。
部隊が行動する時、大局的に見れば、組織として北に向かっているのか? 民間企業で言えば、ベクトルを合わせるということです。
 任務分析の思考プロセスを踏むことによって、一貫性のある組織的な行動が取れます。状況判断(意思決定)を行う際に、判断のブレも少なくなります。
リスクマネジメントの観点からも、有事に誰かが負傷するとか、あるいは、最悪戦死しても次級者が柔軟に職務を代行できるように、仕組みができているのが自衛隊なのです。
これこそ組織力発揮の根幹だと思います。
民間企業向けに分かり易く翻訳してみると、キーワードは『上司の期待に応える』ということです。上司の期待が何なのかを確認し、目標を設定します。
 次に、具体的に目標設定を行います。必ず達成しなければならない目標と達成することが望ましい目標に区分して、目標を設定する訳です。
 必ず達成しなければならない目標はMUST目標です。 なんとしても死守しなければならない目標です。
そして、達成することが望ましい目標として、ストレッチ目標も設定します。
 私は民間企業に移ってから、何度か転職を経験していますが、強い組織ほどトップの方針は末端社員にまで行き届いていました。

 例えば、富士ゼロックスは、TQC(Total Quality Control/全社的品質管理)が徹底されている会社でした。方針展開と言う言葉を使っていました。社員は直属の上司の判断だけでなく、そのまた上の上司が何を期待しているかまで考えていました。
 会社第一(カンパニーファースト)で考え、行動できるように訓練されている組織は力強いのです。それは、メンバーが組織全体の目的を理解し、目的の達成に向けて、メンバーそれぞれの立場で最善を尽くす取り組み姿勢を持っているからです。
 リーダーであるあなたも、「上司のさらに上司」の期待にまで目を向けて、部下に指示を出すことを目指すべきです。

 自衛隊では「二段階上のレベルの役職で任務を考えると、組織全体の任務、期待されている役割がよく分かる」と言われました。有事に、最悪連絡が取れないことまで想定して、上司の立場になって考えて行動するわけです。


【関連リンク】自衛隊はどれほど強いのか-IRONNA編集部



第Ⅳ章 情報を的確に収集、報告するための5W1H 「SALUTE」

 敵軍について情報を収集、報告する場面で関わってくる「SALUTE」という言葉がある。以下の言葉の頭文字を並べた概念である。

・Size(規模)
・Activity(活動)
・Location(位置)
・Unit(部隊)
・Time(時刻)
・Equipment(装備)

 つまり軍隊が戦術レベルで使用する5W1Hのようなもので、報告すべき事柄を容易に思い出せるように頭文字略語にしたわけである。不慣れな兵士、初めて戦場に出て浮足だちそうになっている兵士に対して「SALUTEを言え!」と指示することで、少しは落ち着いて報告できるようになる効果を狙ったものなのだろう。
 指揮官は、部下からあがってきたSALUTEの情報に基づいて、指揮下の部隊をどう配置して、どう戦わせるかを判断することになる。位置、活動、時刻といった要素は、思わぬ方向から思わぬタイミングで戦術的奇襲をしかけてこようとする徴候につながるかもしれない。
 SALUTEは敵情報告で使用するものだが、対して自軍を対象としてするのが、「METT-T」(任務、敵情、地勢、指揮下の軍、利用可能な時間)である。
 SALUTEとMETT-Tが釣り合うか、あるいは自軍が優勢ならよいが、敵軍が圧倒的に優勢だと困ったことになる。


【参考引用文献】『現代ミリタリーインテリジェンス入門~軍事情報の集め方、読み方、使い方』
井上孝司著 潮書房光人社 2014年4月


アメリカ軍行進曲メドレー







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