2015年7月25日土曜日

あくなき共産中国による「アジア太平洋覇権戦略」 ~アメリカ一極支配とどう戦うのか?~

米の中国分析のベテランが告白 「自分の対中認識は間違っていた」

岡崎研究所

20150612日(Fri)  http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5033
アメリカ、ハドソン研究所中国戦略センターのピルズベリー所長が、今年(2015年)2月発刊の著書“The Hundred-Year Marathon Chinas Secret Strategy to Replace America as the Global Superpower”において、中国は、2049年までに米国に代わって世界の支配国になることを目指している、と述べています。
 すなわち、米国は、中国を支援し続けていけば、中国が民主的で平和な国家になり、地域や世界を支配しようなどと考えないだろうと想定していたが、完全な誤りであった。我々は、中国内の強硬派の力を過小評価していた。強硬派は、中国建国100年の2049年までに経済、軍事、政治のすべての面で世界のリーダーになるとの計画(100年のマラソン)を有し、毛沢東に始まる歴代の政治指導者に助言することで、建国当初からそれを実施に移していたのだ。強硬派は、300年前の中国、すなわち世界のGDP3分の1を占める中国を復活させたいのだ。中国の強硬派は、天安門事件以降特に力を強めた。
 2012年以降、中国人は、「中国主導の世界秩序」をおおっぴらに議論し、「中華民族の再興」とともに同秩序が訪れると信じている。最近になって、中国人は、私及び米国政府を最初(1969年)から騙していたと実際に語った。これは、米国政府史上最大のインテリジェンスの失敗である。
 中国は、最初から米国を「帝国主義者である敵」と認識し、米国を対ソ連カードとして用い、米国の科学技術を吸収、窃取するつもりだったが、米国の中国専門家はこれに気づかなかった。中国政府は公式に多極化世界の実現を主張しているが、実際には、それは、最終的に中国が唯一の指導国となる世界に至る途中段階に過ぎない。米国は中国に多大の支援と協力をしてきたにもかかわらず、中国の指導者は、150年以上にわたり米国が中国を支配しようとしてきたと考えており、彼らは中国が米国を逆に支配するためにあらゆることを行うつもりである。彼らにとって世界はゼロ・サムである。
 このような意図を有していたにもかかわらず、中国は、欺瞞、宣伝、スパイ等を用いて、中国が後進国で、軍事的に不活発で、弱い支援対象国であるとの誤ったイメージを西側諸国の関係者に与え続けた。中国はまた、西側諸国内の中国専門家をモニターし、様々な手段で操作してきた。
 中国は、「暗殺者の棍棒」と言われる非対照戦力をもって米国の通常戦力を破る作戦を考えている。実際に、この非対照戦力は有効であり、ペンタゴンの戦争シミュレーションで米軍が初めて敗れたのはこの中国の非対照戦力に対してだった。
 中国は、高い関税を課して重商主義的政策をとり、国営企業に補助金を与え、天然資源を直接コントロールしようとしている。中国の国営企業は今でも国内GDP4割を占め、市場に反応するのではなく、中国共産党の指示に従っている。
2049年に中国主導の世界秩序の中で中国が望んでいるのは、個人主義よりも集団主義を重んじる中国の価値、民主主義への反対、米国に敵対する諸国との同盟システムなどである、と論じています。
 出典:Michael Pillsbury, The Hundred-Year Marathon Chinas Secret Strategy to Replace America as the Global SuperpowerHenry Holt and Company, 2015
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 本書は、『100年のマラソン』というタイトルや、その内容が一般の感覚では俄に信じがたいものを含んでいることから、いわゆる浅薄な「中国脅威本」の一つであると捉えられかねませんが、そういう類いのものとは全く異なります。米国の対中政策の転換に影響を与え得る書物です。
 まず、著者のピルズベリーですが、1969年から、CIA、国防総省、米上院特別委員会等に勤務し、対中政策の基盤となる中国の対米認識分析や米国の対中政策選択肢提示を地道に続けてきた人物です。2006年頃までは、米国の対中関与政策を支持する「対中協調派」の中心的人物でした。本書の中でも明らかにしていますが、ピルズベリーは、ほとんどの対中国インテリジェンスや米国内の対中国政策をめぐる秘密文書にアクセスしてきています。本書の内容、主張は、ピルズベリーが直接入手した関係者からの証言や、これまでアクセスした文書に基づいており、その信憑性は高いと思われます。
 ピルズベリーのような中国分析の大ベテランが、「自分の対中認識は間違っていた。中国に騙されていた」と本書で告白したわけですから、本書がワシントンの中国政策に関わる政府関係者や専門家に与えた衝撃は大きかったようです。
 本書の影響はすでに現れているようであり、例えば、本年3月には、米国のシンクタンクである外交問題評議会(CFR)が『中国に対する大戦略の変更(Revising U.S. Grand Strategy Toward China)」という小冊子を発表しています。同冊子は、米中関係は、戦略的ライバル関係になるとの可能性が高いとの前提で、対中政策をバランシングに重点をおくものに変更しなければならないと提言しています。米国の対中政策は南シナ海での中国の人工島建設などにより、強硬化しているように見えますが、今後どう推移していくか注目されます。

 なお、ピルズベリーは、昨年9月にも、1949年以来西側の対中観が誤って来たのは西側が中国を希望的観測から見て来たからである、と論じた論説を発表しており、20141027日付本欄で紹介しています。
人民解放軍

世論戦、心理戦、法律戦の三戦で日本と戦う中

国―米華字メディア

201302071503http://news.livedoor.com/article/detail/7389956/
   米華字ニュースサイト・多維新聞は記事「釣魚島の主導権を奪取せよ、中国は日本に“三戦”を展開」を掲載した。中国は世論戦、心理戦、法律戦という3つの手法を通じて、国際世論を味方につける方針だという。

201326日、米華字ニュースサイト・多維新聞は記事「釣魚島の主導権を奪取せよ、中国は日本に“三戦”を展開」を掲載した。
 尖閣諸島をめぐる日中の対立が続いているが、これまでのところ双方ともに節度を保っていると言えよう。安倍政権は日中関係を依然として「最も重要な二国間関係の一つ」として位置づけており、公明党の山口那津男代表、村山富市元首相が相次いで訪中し日中関係改善のシグナルを送っている。しかし尖閣問題はいまだに緊張が続いたまま。中国は2013年、「世論戦、心理戦、法律戦」の三戦を軍の重要作戦として位置づけることになろう。

まずは世界レベルで展開される世論戦だ。201298日、中国政府旗下の英字紙チャイナデイリーはニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ロサンゼルス・タイムズに「釣魚島は中国の領土」という一面広告を掲載した。アフリカ、中南米、東欧でも同様の新聞広告を掲載しているほか、各国に駐留している中国大使はテレビや新聞を通じて中国の主権を展開している。

世論戦で築いた基礎の上に実施されるのが心理戦。昨年12月、中国国家海洋局の航空機が尖閣諸島付近、日本が主張する領空を飛行した。その後も中国の軍用機が日本が主張する領空に接近している。また、中国海洋環境監視観測船隊(海監)は船舶と航空機による立体巡視を実行。日本側の阻止により偶発的な衝突が起きるリスクは高まったが、それでも中国側は依然として巡視を継続し、自信を示している。さらに中国は法律や歴史的経緯、国際条約から見ても尖閣は自国領土だと主張する法律戦を展開している。

2012年上半期には中国とフィリピンとの間で南シナ海スカボロー礁(中国名は黄岩島)をめぐる対立があったが、その際、中国は世論戦で一定の効果を収めた。今回の尖閣問題でも国際的な慣例に従いつつ、国際社会の説得を続けている。事実をもって伝えるそのやり方は国際社会に問題の由来を理解させるとともに、中国に世界での発言権を与えるものとなった。(翻訳・編集/KT

講演「沖縄を狙う中国の世論戦、法律戦」 仲村覚氏


中国の「三戦」には「反三戦」戦略を
投稿者:Chief operator 投稿日時:2013/05/07(火) 00:00
http://www.seisaku-center.net/node/554

 尖閣諸島を巡って中国との間で一触即発の危機が続いているが、そうしたなかで中国の対日戦略として「三戦」戦略が話題になっている。
 「三戦」とは世論戦、心理戦、法律戦の三つを言い、専門研究(『陸戦研究』掲載の斉藤良論文など)を参考にごく簡単に言えば、内外世論の中国共産党と政府への支持を獲得し、一方で国際世論や相手の国内世論に工作して反中国政策を抑止するのが「世論戦」。「心理戦」は、恫喝や懐柔などによって相手の意志に衝撃・抑止・士気低下をもたらす工作。国際法や敵の国内法を利用して中国に国際的な支持を集める一方、相手の違法性を主張して反中国政策を押さえ込もうというが「法律戦」である。いわば「平時の戦争」の戦略要領とも言えるものである。

 確かに、連日のように中国が公船を尖閣諸島の領海に侵入させているのは日本側がひるむことを誘う心理戦だと見ることが出来る。また、中国人学者をして尖閣は共同管理すべきだなどと日本向けに語らせたりしているが、日本の世論を揺さぶる世論戦であり、さしずめ「尖閣棚上げ」を主張している元外務省の孫崎某などはこの世論戦の先兵役と言える。
 法律戦はと言うと、昨年九月から中国首脳がカイロ宣言とポツダム宣言に言及し、敗戦国である日本が尖閣諸島の領有を主張するのは「国連憲章の趣旨と原則に対する重大な挑戦」だなどと主張し始めたが、ポツダム宣言や国連憲章を利用して旧戦勝国の支持を獲得し、一方で日本の「違法」を主張して尖閣での日本側の行動を押さえ込もうと狙う法律戦の典型だと言える。
 むろん、中国のこうした「三戦」工作は、力による恫喝であり、根拠のないプロパガンダだが、中国が「海洋強国の建設」という野望を遂げるために、軍事的圧力から恫喝、世論分断等々、あらゆる手段を使って「三戦」という「平時の戦争」を戦っているあり様が見えてくる。

 しかし、尖閣問題での最近の「三戦」はあまり効果をあげていないと言える。日本が安倍政権に代わって、まっとうな対応を始めたからである。安倍首相は自ら「先頭に立って」領土・領海・領空を守ることを宣言し、民主党時代に後退した自衛隊による警戒監視態勢を強化し、防衛力の強化にも踏み出した。その一方、日米同盟の修復、首相や主要閣僚による東南アジア歴訪などによって「中国包囲網」とも言える外交戦を展開している。言論の自由などの価値観に基づく外交、海洋は「力によってではなく」「(国際)法とルール」によって支配されるべきといった日本外交の原則も提起した。
 心理戦にはひるむことなく、毅然として主権を守る国家意志を明示し、世論戦では米国、東南アジア、インドといった国際世論をも喚起している。さらに、国際法による海洋支配という原則を打ち出して法律戦を展開している――こう見れば安倍政権はしたたかに「反三戦」を実行しているとさえ言える。

 この「三戦」は尖閣問題に限ったことではなく、むしろ歴史問題の方が深刻だと言える。最近も、麻生副総理など三閣僚の靖国神社参拝に対して、中国外交部は直ちに抗議の声をあげた。これは心理戦の一環だが、今回は安倍内閣の対応が冷静であるため効果はなかろう。
 しかし、世論戦となると、公明党の山口代表が「外交への影響は避けられない」などと反応し、新聞は「閣僚参拝は無神経だ」(毎日新聞)と安倍内閣批判を始めるなど、中国が逐一工作するまでもないほど分断工作は進んでしまっている。しかも、今年一月にはニューヨーク・タイムズ紙が安倍首相を「右翼ナショナリスト」呼ばわりしたように、米国への世論工作も進んでいる。「村山談話」を国際約束として捉え、謝罪と反省を要求するのは、法律戦の意味も含んでいよう。その上、歴史問題では韓国という「反日同盟国」も利用できる。
 今求められているのは、安倍政権の尖閣対応にならい、歴史問題についても中国の挑発に乗らず、国内世論の分断を警戒・批判し、国際世論の支持を獲得するという歴史問題における「反三戦」をしたたかに展開する覚悟だと言えよう。(日本政策研究センター所長 岡田邦宏)〈『明日への選択』平成255月号〉



中国 国際法重視の姿勢を示した背景
「法律戦」と南シナ海問題

岡崎研究所  20150610http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5031

パシフィック・フォーラムCSISのレンツ、ハイデマン両研究員が、58日付Diplomat誌ウェブサイト掲載の論説で、中国は国際法を重視する動きを示しているが、南シナ海の問題では比等が提起した海洋法条約の仲裁裁判への参加を拒んでおり、国際法を単なるガイドラインや外交政策の一手段以上のものとして認めなければならない、と中国に批判的な見解を述べています。
 すなわち、今年の初め、中国外務省は省内に国際法規委員会を設置した。この委員会は、海外に逃亡した汚職容疑者の引き渡しを実現するのが当面の活動とされているが、中国が国際法に関心を高めることは歓迎すべきことである。国際法規につき専門知識を増やすことは大国であるための必要条件である。
 注視すべき分野のひとつは、海洋法である。最近、南シナ海の領有権に関するフィリピンとベトナムの提訴に関して、仲裁裁判に参加しない権利を行使した。中国は、法的な解決を避け二国間での解決を主張する一方で、南シナ海において着々と埋め立てや施設建設を進めている。
 もし中国が徐々に国際仲裁裁判を受け入れる方向に行くのであれば、前向きなことである。中国南海研究院(南シナ海国家研究所)の呉士存院長は、「専門家が育ってくれば中国も仲裁裁判など国際法規を使って中国の国益を確保していくであろう。しかし、現在の国際法規が機能していないということであれば、中国はこれらの法規を変えていくことを求める」と述べている。かかる発言は国際法規への信頼性を損なうものである。国際法規に基づく問題解決に対する中国のコミットメントが不確かであれば、中国が今後仲裁裁判に参加したとしても、それは現場で既成事実を作り上げるための引き延ばし戦術とみなされるであろう。
 条約に基き南シナ海の紛争を解決するに当たっての障害は、中国の海洋法条約第298条宣言(海洋境界画定の強制解決は受け入れないとの宣言)である。しかも、中国は、この宣言を、1996年の条約批准時ではなく、批准の10年後の2006年に行った。これは条約上認められていることではあるが、中国の法解釈や手続きの一貫性の欠如として周辺国が懸念するところとなっている。そもそも中国は国際法について過度にプラグマティックなアプローチをとってきている。中国の一部学者は岩礁やサンゴ礁も島としての地位を持つと主張している。

中国が国際法規に一層大きな役割を果たさせるというのであれば、国際法を単なるガイドラインや外交政策の一手段以上のものとして認めねばならない、と論じています。
出典:Patrick M. Renz & Frauke Heidemann,China's Coming 'Lawfare' and the South China Sea’(Diplomat, May 8, 2015
http://thediplomat.com/2015/05/chinas-coming-lawfare-and-the-south-china-sea/
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 中国は、今や多くの条約を締結し、また、主要な国際機関に加盟することにより、国際法規の理解や実践を深めており、国際法規の専門家も増え、国全体として持つ国際法規に関する専門知識も大いに増大していると推測されます。
 開放前の時代には、中国は極めて特異な、硬直した国際法理論を取っていたと思われるので、中国が今日の国際法につき理解を深め、外交の中で国際法を使っていこうとすること自体は、一般論としては結構なことです。
 しかし、それが実際に結構なことになるのかどうかは、次のような点につき、中国の今後の行動を見ていく必要があります。
 第一に、硬直化した主権重視です。1990年代半ば、APECで具体的協力活動を進める際に中国はしばしば主権を持ち出して抵抗しました。今の国際社会でも、もとより主権は重要であり、これを軽視する国はありませんが、同時にそれを踏まえて、紛争や問題を解決し協力を進めようとしています。中国が国際協調の精神をもって国際法を使おうとしているかどうか、それを端的に示すのが紛争の司法的解決ですが、この点極めて消極的です。
 第二に、国際法の政治目的での利用です。中国は、国際法の適用に当たって極めてプラグマティックなアプローチをとっていると言われます。中国は二国間交渉による解決を好みます。最終的には、政治が優越するというのであれば、法の尊重にはなりません。
 最近の中国による国際法重視の姿勢の背景には、外交全般において「法の支配」が強調されていることと関係があるかもしれません。つまり、西側の「法の支配」論へ対処するために勉強を強化しようとしている可能性があります。仮にそうであれば、今日の国際社会の基盤をなす国際法を理解し順守しようとするよりも、西側の議論に反論するための理論武装をしようとしていることになります。
 中国南海研究院院長が示唆するように、今の国際法は西側資本主義国の作ったものだとか、途上国の意見が入っていないものだとか、そのため一部の法規は変えていかねばならないといった議論に向かうのであれば、中国の現状に対する挑戦が、地政学、経済の分野などに加え、国際法規の分野にまで拡大することを意味することになります。それが中国の目指していることであると見て間違いはないでしょう。




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