2015年10月23日金曜日

米中大戦勃発か!?アメリカの虎の尾をふんでしまった共産中国

(北村淳『アメリカの軍艦派遣は打つ手が遅すぎた~南シナ海の軍事バランスはもはや圧倒的に中国が優位http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44978より)
そもそも南シナ海の南沙諸島に共産中国によって「人工島」が構築され、軍事要塞化される懸念が出てきたことがあるが、2010年の尖閣諸島沖合での中国漁船衝突事件以来の共産中国の尖閣諸島領有の主張も在日米軍や第7艦隊の体制強化を促す原因であったことは間違いない。

【アメリカ第7艦隊の強化】

 空母ロナルドレーガンの横須賀配備に続き、空母打撃群の防空体制強化のために最新イージス艦艇が、横須賀に入港した。
①2015618日、イージス艦チャンセラーズビルが入港した。横須賀配備は平成10~18年に続き2回目で、29年までに同基地に追加配備される予定のイージス艦3隻のうち最初の到着。
 チャンセラーズビルは全長約172メートル、約350人乗り。最初の横須賀配備後の改修で、空母打撃群の直接支援に必要な防空、水上戦、対潜戦の最新鋭システムを搭載した。こうした能力を備えた艦船が米国外に配備されるのは初めてという。http://www.sankei.com/politics/news/150618/plt1506180014-n1.html)

20151019日、イージス艦ベンフォールドが配備された。平成29年までに追加配備が計画されているイージス艦3隻のうち2隻目。
 ベンフォールドは全長153・9メートル。空母打撃群の支援に必要な防空、潜水戦や弾道ミサイル防衛能力など、最新鋭のシステムを搭載している。http://www.sankei.com/politics/news/151019/plt1510190005-n1.htmlより

 在日米海軍によると、中国や北朝鮮をにらんだ米国のアジア重視戦略「リバランス(バランス調整)」の一環。米海軍は、太平洋に配備している艦船を32年までに全体の50%から60%に引き上げる予定。

【南シナ海・南沙諸島「人工島」】
米「近く艦艇を派遣」東南アジア関係国に伝達   中国を強く牽制 
2015.10.18 22:50更新 http://www.sankei.com/world/news/151018/wor1510180030-n1.html


南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島で中国が「領海」と主張する人工島の12カイリ(約22キロ)内に近く米海軍の艦艇を派遣する方針を、オバマ米政権が東南アジアの関係国に外交ルートで伝達したことが2015年10月18日、分かった。複数の外交筋が明らかにした。

 派遣方針は複数の米政府高官が公に示唆しているが、関係国に意向を伝えたことは、オバマ政権の強い決意を物語る。人工島を中国の領土と認めない立場を行動で示し、実効支配の既成事実化を進める中国を牽制する狙い。
 中国は「領海や領空の侵犯は絶対に許さない」(華春瑩・外務省副報道局長)としており、実際に派遣されれば、米中の緊張が高まるのは必至だ。
 外交筋によると、10月に入り米政府は「航行の自由」確保のため、海軍艦艇を派遣する方針を決めたと関係各国に伝達、理解を求めた。早期に派遣するとしているが、具体的な時期には言及していない。
※大統領自らが決意しました、という事実が重要ですね。


既成事実化を許すな 米国は人工島12カイリに入れ

20151022日(Thu http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5505


2015917日に米上院軍事委員会(マケイン委員長)で公聴会が開催され、ハリス太平洋軍司令官とシェアー国防次官補の発言により、南シナ海の係争海域12カイリ以内における米艦船の航行が、2012年から現在に至るまで行われていない実態が明らかになっています。
まず、マケイン委員長の冒頭発言の要旨は、次の通りです。
 すなわち、アジア太平洋地域における米国の国益は根強く永続的なものである。我々は、自由社会、自由貿易、自由市場、そして空・海・宇宙・サイバーにおける公共の自由を平和的に広げるため、バランス・オブ・パワーの維持を追求している。
 これに対し、中国の軍事的近代化は、戦力投射、米国の軍事力への対抗、そして西太平洋における米国のアクセス、作戦を拒否することを目的とする先進システムに力を入れている。米国に対するサイバー攻撃も、その範囲、規模、頻度が日に日に増している。このような増大する脅威は、東・南シナ海における広範かつ国際法と相容れない領有権主張と相まって行われているものだ。8月、中国外交部長は南シナ海における埋め立て活動を停止すると述べたが、最近公表された衛星画像によると、その発言が偽りであったことは明白である。中国は、埋め立てた土地の軍事化を急速に進めており、港湾、情報監視インフラ、そして軍用機を支援しうる滑走路が少なくとも3つ建設されている。
 5月にカーター国防長官は、米軍が現に世界中でそうしているように、国際法が認めるいかなる場所も、飛行し、航行し、作戦を実施する、と発言した。
 しかし残念なことに、カーター長官の演説から4カ月が経った今でも、オバマ政権は中国の人工島から12カイリ以内で米海軍が行動するのを制限し続けている。これは、中国が人為的に生み出した主権要求を認めるという既成事実を生み出す危険な誤りである。
 我々は、商業的および軍事的な航行の自由を維持しなければならない。そのコミットメントを示す最もよい証は、南シナ海の人工島の12カイリ以内で航行の自由作戦を実施することである。
 我々は、中国の急速な軍事的近代化の意味を直視し、新たな技術的優位を通じて、競合的環境の遠方から、あるいはそうした環境の中で作戦を行う戦力投射能力を保持しなければならない。そして、我々の強靭な前方展開戦力を強化するための投資を続け、アジア太平洋地域の海洋能力を強化するため、地域の同盟国・パートナー国への支援を続けなければならない、と述べています。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5505?page=2
疑応答の要点は次の通りです。
 すなわち、マケインが「“12カイリ以内”で航行の自由作戦を最後に実施したのはいつか」と尋ねたのに対し、シェアー国防次官補は、2012年のことである、と答えた。また、ジャック・リード筆頭委員が「人工島の上を飛行したのはいつか」と聞くと、ハリス司令官は、「最近は、当該地域上空の飛行はいかなる形でも行っていないが、数あるオプションの1つとして机上に上がっている」と答えている。ハリスは「太平洋軍として、国防長官には南シナ海におけるあらゆる可能性を含む軍事オプションを提示しており、指示を受ければ作戦を実施する準備ができており、指示を待っているところだ」とも言っている。

出典:John S. McCain, Harry B. Harris & David B. Shear,Maritime Security Strategy in the Asia-Pacific Region’(United States Senate Committee on Armed Services, September 17, 2015
http://www.armed-services.senate.gov/hearings/15-09-17-maritime-security-strategy-in-the-asia-pacific-region


***

 この公聴会は、南シナ海問題、北朝鮮、米国の海洋法条約未批准、米中の軍事力比較など、多岐にわたりましたが、最も注目を集めたのは南シナ海の係争地域12カイリ以内で、米国が「航行の自由作戦」を行うかどうかについての質疑応答でした。「航行の自由作戦」とは中国が建設を進めている人工島は海洋法でいう島ではないので、12カイリ以内でも自由航行ができることを示すため、米国が船舶を航行させる作戦のことです。
 5月末カーター国防長官がシャングリラ会議で、中国の島嶼埋め立てに強く抗議し、米国はどこでも航空機を飛ばし、船舶を航行させる、と述べたので、「航行の自由作戦」の実施は時間の問題と考えられましたが、今回の公聴会で、太平洋軍のハリス司令官は、オプションをホワイトハウスに提示しており、今検討されていて、支持を受ければ作戦を実施する準備ができており、指示を待っているところである、と述べ、「航行の自由作戦」の現状が明らかになりました。
 南シナ海での「航行の自由作戦」の実施は、中国の主張は認められないとする米国の立場からすれば当然のことですが、中国が自らの主張を変えるとは思われず、作戦が実施されれば軍事衝突の危険があり、オバマ政権が躊躇しても不思議ではありません。
 米中首脳会談後も、軍事衝突のリスクを考えて実施にはなかなか踏み切れないとすれば、中国の立場を事実上黙認することになりかねず、また中国の行動は許せないと主張してきた米国のクレディビリティの問題にもなり、オバマ政権は苦境に立たされることになるでしょう。
※オバマ政権は、「航行の自由作戦」を決断したということですね。
【共産中国側の人工島についての主張】
【北京=川越一】中国軍制服組トップの范長龍・中央軍事委員会副主席は17日、北京で開かれた安全保障フォーラムで、中国が南シナ海で造成を進める人工島について、「主に民間利用が目的であり、南シナ海の航行の自由に影響することはない」と述べ、軍事利用可能な施設の建設などを正当化した。
 中国は、造成した人工島から12カイリ(約22キロ)内を領海だと主張。3000メートル級の滑走路や艦船が接岸できる施設の建設が確認されている。こうした中国の動きに対し、オバマ政権は12カイリ内での米海軍艦艇の航行を検討しているとされ、米中間の緊張が高まっている。
 范氏は「領土主権の問題において、われわれは軽率に武力に訴えたりはしない」と武力衝突を避ける姿勢を強調した。また、「中国は一貫して、当事者間の友好的な話し合いで、相違や争いを解決しようと努めている」と述べ、米国の介入を牽制した。http://www.sankei.com/world/news/151017/wor1510170046-n1.htmlより)

【シンガポール前外相は政治的な立場からアメ
リカを批判】
20151021日、環球網によると、南シナ海での活動をめぐって米中の緊張が高まる中、シンガポールのジョージ・ヨー前外相は米国に対して苦言を呈した。
 中国・北京市でこのほど開かれた会合に出席したヨー前外相は、「中国の人工島12カイリ内に米軍が進入を計画」との報道に関して「米国は南シナ海問題に過度に関与すべきではない」との見解を表明。米国がこの問題に関心を持つ原因は、フィリピンやベトナムなど中国と同海域の領有権を争う東南アジア諸国との関係があると指摘した上で、「米国が過度に関与すれば中国はさらに態度を硬化させる。もし米国が再三の関与をやめれば中国とフィリピン、ベトナムとの交渉がしやすくなる」と語った。

 さらに、中国には「寛大な精神」による対応を要請。当事者同士の妥協、譲歩が紛争解決への道となるとの考えを示した。(翻訳・編集/野谷http://news.livedoor.com/article/detail/10738250/より 


米中の南シナ海での「戦争」がついにはじまりました!


米駆逐艦・南シナ海の中国人工島12カイリ内へ

http://www.msn.com/ja-jp/news/world/%e7%b1%b3%e9%a7%86%e9%80%90%e8%89%a6%e3%80%81%e5%8d%97%e3%82%b7%e3%83%8a%e6%b5%b7%e3%81%ae%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e4%ba%ba%e5%b7%a5%e5%b3%b612%e3%82%ab%e3%82%a4%e3%83%aa%e5%86%85%e3%81%b8%ef%bc%9d%e7%b1%b3%e5%bd%93%e5%b1%80%e8%80%85/ar-BBmsVjW?ocid=spartandhp
© REUTERS 米駆逐艦、南シナ海の中国人工島12カイリ内へ=米当局者

[東京/ワシントン27日ロイター]米国防当局者は米国時間20151026日、米海軍のミサイル駆逐艦「ラッセン」が、南シナ海で中国が造成した人工島から12カイリ(約22キロ)の境界に接近しており、12カイリ内に数時間とどまる見通しだと明らかにした。

 中国は人工島から12カイリの海域を領海と主張している。
ラッセンは現地時間27日早く、スプラトリー諸島のスビ礁とミスチーフ礁付近を航行。これらの岩礁は、中国が2014年に大規模な埋め立てプロジェクトを始める前までは満潮時に海面下に沈んでいた。

米国防当局者はロイターに対し、「オペレーションが始まった。数時間以内に完了するだろう」と述べた。

※オペレーション=アメリカ海軍の「フリーダムオブオペレーション(航行の自由作戦)」

中国が米国を強く批判・南シナ海人工島への米駆逐艦派遣で
http://www.msn.com/ja-jp/news/world/related-中国が米国を強く批判、南シナ海人工島への米駆逐艦派遣で/ar-BBmsINu

© REUTERS 中国が米国強く批判、南シナ海人工島への米駆逐艦派遣で 

[ワシントン 26日 ロイター] - ワシントンの中国大使館は20151026日、南シナ海で中国が「領海」と主張する人工島12カイリ内に米軍が駆逐艦の派遣を計画していることについて、航行の自由を力の誇示の言い訳にすべきでないと批判した。

 中国大使館の報道官は「米国は挑発的な言動を一切控え、地域の平和と安定を維持するため責任ある行動を取るべきだ」と主張した。
さらに「航行や上空通過の自由を言い訳に力を誇示し、他国の主権や安全を脅かすべきでない」と批判した。




【とまらない共産中国によるサイバー攻撃】


「中国にとって外交とは、他の手段によるサイバースパイの継続である。」~敵対国の中枢をステルス的に攻撃することで政治的に優位に立とうとする共産中国の国家戦略~
自国と自国以上に攻撃相手国に極力破壊行為が及ぶことなく、戦略的に有効な社会インフラ、技術インフラを奪うことができるのがサイバー攻撃です。
サイバー、南シナ海…国賓待遇にも「ゼロ回答」で逃げ切った習政権~深まる米中の溝
2015.10.1 08:53更新 http://www.sankei.com/column/news/151001/clm1510010008-n1.html

宮家邦彦

  みやけ・くにひこ 昭和28(1953)年、神奈川県出身。栄光学園高、東京大学法学部卒。53年外務省入省。中東1課長、在中国大使館公使、中東アフリカ局参事官などを歴任し、平成17年退官。第1次安倍内閣では首相公邸連絡調整官を務めた。現在、立命館大学客員教授、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。

 先週末の米中首脳会談は予想通りの結果に終わった。オバマ大統領はサイバー・南シナ海問題を取り上げ、中国側に直接譲歩を迫ったが、習近平国家主席は実質的にゼロ回答だった。数年来、ワシントンは首脳会談の度に北京を追い詰めようと試みたが、今回も中国側は逃げ切ったようだ。なぜ米中間でこんなイタチごっこが続くのか。今回はそのメカニズムを解明する。
 最大の理由はこの種の首脳会談に対する両国の思惑が異なることだ。米側の発想は単純である。人民解放軍を含む中国の巨大党官僚組織は自己増殖する。事務レベルで何度申し入れても全く効果はない。止めるにはトップダウンの介入が必要だ。米国が最も懸念する問題を習主席に直接働きかけ、解放軍など官僚組織が中国全体の利益を損ねていることをリーダーに理解させる必要がある。いかにも米国らしい発想ではないか。
 対する中国の発想は米国と大きく異なる。首脳会談は議論の中身よりも形式が大事だ。今回の首脳会談でも第1の目的は習主席の国際的権威を高めることにより、国内の政敵と反対派に対し権力を誇示することである。そのためなら使えるものは何でも使う。世界の大国・米国の首都で21発の礼砲という最大限の敬意が示され、国賓として大歓迎を受ける。これこそが中国国内で政治的権威を誇示する最善の方法なのだろう。


逆に言えば、このような晴れの舞台で中国の最高指導者がメンツを失うような事態はタブーである。だからこそ、習主席訪米の直前にローマ法王訪米日程が組まれることを知った中国側は米側に法王の日程を変更するよう強く求めたのだろう。さらに彼らは内容面でもメンツを重んじる。今回の第2の目的は、中国共産党が指導する中国を、米国と対等の正統な国家として米国に受け入れさせ、その核心的利益を認めさせることだ。ここで習主席が譲歩することはあり得ない。譲歩したとなれば、国家主席のメンツは失われ、国内の政敵と反対派が黙っていないからだ。
 今回の米中首脳会談はこのような環境の中で開かれた。米側は中国側の儀礼上の要求を中国側が内容面で譲歩することを期待しつつ、可能な限り受け入れたに違いない。しかし、結果は散々だった。サイバー問題では米側が過去2年間首脳レベルで何度も要求したにもかかわらず、今回中国側は「私企業の秘密を盗まないことを確認し、閣僚級の対話メカニズムを創設する」ことしか約束しなかった。経験則では中国がこの種の約束を完全に履行する可能性は極めて低い。どうやら中国側はまんまと逃げおおせたようだ。


南シナ海についてもほとんど成果がなかった。オバマ大統領が南シナ海における中国の巨大人工島建設に「重大な懸念」を伝えたのに対し、習主席は「古代からこれらの島々は中国固有の領土」だと強く反論した。米側は中国側が熱望する「新型大国関係」なる用語は一切使わず、オバマ大統領は台湾問題を取り上げ、従来の「一つの中国」政策を維持しつつも、「台湾関係法」に言及した。米国政府は習主席訪米に合わせ夥(おびただ)しい量の「ファクトシート」を発表し、米中首脳会談での合意を公表したが、その中身はあまりに乏しかった。
 鳴り物入りの国賓訪米だったが、米中の溝は埋まるどころか、むしろ深まったのではないか。共同記者会見での両首脳は明らかに楽しそうではなかった。米国からの厳しい追及に対し、中国はまたしても逃げ切った。外交用語で「率直な会談」とは、「互いに言いたいことは言い合ったが、合意には程遠い」状態を意味する。習主席はサイバーについて米国の経済制裁を阻止し、南シナ海で譲歩せず、国内向けのメンツを保った。中国は今後もかかる戦術を繰り返すのか。いずれ北京は国際政治がそれほど甘くないことを悟るだろう。


サイバー合意への遠い道のり 平行線たどる米中

岡崎研究所 20151104日(Wedhttp://wedge.ismedia.jp/articles/-/5551

 ウォールストリート・ジャーナル紙は2015927日付社説で、先般の米中首脳会談でサイバーに関し合意が成立したと発表されたが実際は何も合意されていない、と述べています。すなわち、米中首脳会談に関するホワイトハウスのファクトシートは、
(1)いずれの政府もサイバーによる知的財産の窃盗はしない。
(2)それぞれの国内法に従ってサイバー犯罪を調査する。
(3)ハイレベルの合同対話メカニズムをつくる。
(4)問題がエスカレートした場合のホットラインを設ける。
ことに合意したと記している。
 これは、双方が何も合意しなかったことを入念に言っているにすぎない。
サイバースパイ続ける中国
 習近平は、中国政府はいかなる形でも商業機密の窃盗はしていないし、民間会社に慫慂もしていないと言っている。そうとすれば何が問題なのだろうか。
 合意事項の実行可能性については、「それぞれの国内法に従って」というが、中国では共産党が法を超越しており、党が支配している企業もそうである。習近平が問題の存在を認めないなら、子分たちも認めないだろう。そうであれば米国政府も、中国のサイバースパイについて知っていることの多くを明らかにしたがらないだろう。米国の情報源と手段に関する秘密を漏らす恐れがあるからである。
 要するに、中国は、サイバー窃盗をやめないだろう。かつて、2007年にF-35戦闘機製造の契約社をサイバー攻撃し、それで得た情報に基づいて中国がJ-20J-31のステルス機を作ったような成果は捨てないだろう。
 習近平はサイバーの合意で、南シナ海に関し、中国が長年得意としてきた外交上のゲームをする機会を得た。すなわち、アジアの近隣諸国と領有権と行動規範につき、終わることのない交渉を行う一方で、領有権を争う環礁を支配し、島を作り、海洋交通に干渉する。クラウゼヴィッツを借用すれば、中国にとって外交とは、他の手段によるサイバースパイの継続である。
 オバマ大統領は習近平との共同記者会見で、サイバー犯罪には、制裁を含むあらゆる手段で対処すると言ったが、オバマは大統領就任以来、言行が一致したことがない。中国はオバマ後の政権で代価を払うまで、サイバースパイは続けるだろう、と指摘しています。
出典:‘The Obama-Xi Cyber Mirage’(Wall Street Journal, September 27, 2015
http://www.wsj.com/articles/the-obama-xi-cyber-mirage-1443387248
***
 米中首脳会談の中心議題は、南シナ海とサイバーでした。南シナ海に関して、習近平は南シナ海の島々は太古の昔から中国領であると述べ、オバマの懸念に耳を貸しませんでした。両者の議論は平行線をたどり、対立が浮き彫りにされました。
 サイバーに関しては、両首脳は、両国政府は商業機密窃盗のためのサイバー攻撃はせず、そのような攻撃は支援しないと述べ、サイバー攻撃に対処するためのハイレベルの対話の場を設けることに合意しました。
 この社説は、習近平が首脳会談に先立つ同紙とのインタビューで、中国政府はいかなる形でも商業機密の窃盗はしていないし、民間会社に慫慂もしていない、と言ったことに触れ、そうであればこのような合意は意味がないとして、サイバーに関する合意は蜃気楼であると述べています。果たしてそうなのかは、合意事項が実際に実施されるかどうかによります。
 中国の言行は往々にして一致しません。最近の代表例は、南シナ海に関する習近平の発言です。習は首脳会談後の共同記者会見で、「中国は善き隣人として近隣諸国との協調を重視する…南シナ海での平和と安定の維持にコミットしている…国際法に基づく航海と航空の自由を尊重し、維持する…」と述べています。
 これが中国の行動といかに乖離しているかは明らかです。サイバーに関しては、社説が言うように、これまでサイバー攻撃で多大の利益を得てきた中国が、攻撃を完全に止めるとは思えません。米国の反応を見極めつつ、得意のサラミ戦法で、サイバー攻撃による米国の商業機密の窃盗を続ける可能性が高いでしょう。その場合、米国はオバマが共同記者会見で明言した通り、制裁を含むあらゆる措置を取るかどうかが注目されます。そして、そういうことになれば、サイバーに関する今回の一連の合意は意味がなかったことが明白になります。
標的は民間企業・政府機関~ロシアも共同
戦線か!?
中国の“面従腹背”首脳会談後も米企業にサイバー攻撃
米社が暴露

2015.10.20 00:06更新 http://www.sankei.com/world/news/151020/wor1510200006-n1.html

米サイバーセキュリティー企業クラウドストライクは20151019日、先月の米中首脳会談で、サイバー空間で企業秘密などの知的財産の窃盗をしないと合意した後も、中国政府につながりがあるハッカーによるサイバー攻撃が米企業7社に対して行われたと発表した。
 攻撃が確認されれば、オバマ米政権が中国に対する制裁を発動する可能性もある。米紙ワシントン・ポストに米政府高官は「コメントできない。中国のサイバー攻撃に関する監視を続けている」と回答した。
 クラウドストライクによると、米中首脳会談翌日の9月26日から10月16日の間に、ハイテク技術や製薬関連企業7社に対する攻撃を検出、撃退したという。
 以前から米政府や企業への攻撃を続けていた中国のハッカーらが企業秘密を盗もうとした形跡があり、同社は中国側に「サイバー空間での窃取行為を中止する意図がないことは明白だ」としている。(共同)

潜水艦情報狙いサイバー攻撃~中露のスパイ行為の疑い 豪紙報道

2015.11.9 10:10更新 http://www.sankei.com/world/news/151109/wor1511090010-n1.html

オーストラリアが進める次期潜水艦選定手続きに参加する日本、ドイツ、フランスに対し、過去数カ月、潜水艦の機密情報を狙ったサイバー攻撃が仕掛けられていると9日付の有力紙オーストラリアンが報じた。中国とロシアによるスパイ行為が疑われているという。情報流出は確認されていない。
 オーストラリアは次期潜水艦に求める技術的な規格を3カ国に提示しており、こうした情報もスパイ対象とみられる。ドイツの関係者は「(潜水艦の建造拠点)ドイツ北部キールで一晩に30~40回」のサイバー攻撃があったと明らかにした。
 選定手続きでは今月末が潜水艦建造計画の提出期限。サイバー攻撃を受け、機密情報のやりとりは担当者の手渡しにする対応が取られた。(共同)


”攻守統合”部隊を創設した米国 一触即発の米中サイバー戦
小原凡司 (東京財団研究員・元駐中国防衛駐在官)

20151015日(Thu) http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5479
 2015925日にワシントンで開かれた米中首脳会談は、習近平夫妻訪米中の民間との交流活動等と併せて、中国では「米中協力」の象徴のように報道された。中国は、米国から一方的に非難される状況を避け、米中が軍事衝突を回避する意図を見せ、米中の協調的姿勢を強調したかったのだ。
 実際、米中首脳会談では、サイバー問題に関して、「両国政府は知的財産に対するサイバー攻撃を実行、支援しない」こと、軍事分野では、「空軍間の偶発的衝突回避のための行動規範」、経済分野においては、「米中投資協定の交渉を加速する」こと、気候変動についても、「中国が2017年に全国で排出量取引を導入」することが合意された。
首脳会談での「米中協調」はみせかけか?
 しかし、中国が強調する「米中協調」を鵜呑みにする訳にはいかないだろう。問題は、サイバー問題や軍事分野における合意が、何ら問題の解決になっていないことだ。それどころか、米国にとっては、中国との衝突に備える内容になっているのではないか、とさえ思える。
 サイバー攻撃に関して、安全保障上のオペレーションや軍事行動に直結するオペレーションに、全く触れられなかった。その結果、米国は中国とのサイバー戦に備えることになるだろう。もともと、米国は、中国に対して、安全保障に関する情報収集を目的とするサイバー攻撃について非難したことはない。
 米国にとって、安全保障に必要な情報収集は、行われて当然の行為なのだ。米国が、中国のサイバー攻撃を許せないのは、産業スパイのように米国企業に実質的な損失を与えたり、「米国の目を潰す」衛星に対する攻撃のように安全保障環境を悪化させるものであったりするからだ。
中国によるサイバー窃盗に「怒りを露わにする」
 相手国が米国の安全を脅かさない限り相手国に損失を与えず、また、自ら安全保障環境を悪化させることのない、米国のサイバー攻撃とは目的が異なる、という訳である。米国務省顧問のスーザン・ライスは、米中首脳会談に先立つ828日に訪中し、習近平主席をはじめ、範長龍中央軍事委員会副主席らと会談した 。中央軍事委員会副主席と会談したことからも、彼女の訪中の主な目的の一つが、安全保障に関わるものであったことは明らかである。
 このとき、彼女は、習近平主席に対して、中国の米国に対するサイバー攻撃に関する詳細な証拠を提示し、中国が米国に対するサイバー攻撃を止めるよう要求したと言われる。しかし、中国は結局、譲歩しなかったようだ。会談後の彼女の発言が、中国のサイバー攻撃を強く非難するものだったからである。
 2015921日に、ジョージ・ワシントン大学で行ったスピーチにおいて、彼女は、中国政府が関与した莫大な数のサイバー窃盗について、「イラついている」と、怒りを露わにした 。彼女は、「これは、経済的かつ安全保障に関わる問題である」とし、「米中二国間に極めて強い緊張を生んでいる」と、中国を非難した。米中首脳会談前に、中国をけん制したものでもある。
 中国は、「中国もサイバー攻撃の被害者である」と繰り返す。中国にとってみれば、産業スパイも、自国の安全保障に直結する問題である。中国には近代化された武器を製造する技術はない。ここからの理論の展開が、日本や米国とは異なる。中国は、最新技術を手に入れる他の手段がないのだから、サイバー攻撃によって窃取しても仕方がない、ということになる。権利意識が先に立つのだ。
 中国は、もちろん、自らがサイバー攻撃による産業スパイに加担しているなどとは言わない。産業スパイが違法だということは理解しているからだ。しかし、実際に口に出さなくとも、同様にサイバー攻撃を世界各国に仕掛けている米国なら、中国の言わんとするところは理解できる、と考えているのではないかとさえ思わされる。建前と本音を使い分けているつもりなのだ。
 日本人には理解されにくいかもしれないが、米国にもその他の国にも、建前と本音はある。それでも、米国の本音は、中国が考えているものとは異なる。中国が、美しい正論で飾った表向きの議論とは別に、水面下で米国と手打ちが出来ると考えているとしたら、危険な目に会うのは中国の方である

サイバー攻撃とサイバー防御を統合

 米国は、口で言っても中国が理解しないのであれば、実力をもって分からせようとするだろう。20155月に、米軍はコンピューター・ネットワーク空間の専門部隊「サイバーコマンド」を発足させた。この部隊は同年10月から本格運用されたが、この部隊が展開する作戦の本質は、「攻守の統合」である。
《維新嵐》共産中国は、解放軍系のサイバー戦部隊よりも、ハッカーによるサイバー攻撃の方が頻度が高いのかもしれません。
 いずれにしても官民ともに被害が低くはないのでしょう。この国家中枢部を狙った新たな攻撃に対してアメリカは柔軟に対応しています。経済依存の強い国どうしであるほど、実弾のとびかう戦争はおこりませんね。あるのは、ネット空間という仮想空間における熾烈な戦いです。
 サイバー戦争に「専守防衛」はありません。いかに質の高い攻撃で、中枢を破壊し国力をそぐか、です。

二枚舌の中国サーバー攻撃 米国は制裁に動け

20151124日(Tuehttp://wedge.ismedia.jp/articles/-/5625

20151021日付ワシントン・ポスト紙社説は、中国は習近平の約束にもかかわらず、米企業に対するサイバー攻撃を続けているようだが、もし習近平が約束を守るつもりがないのであれば、米国は再び制裁を課する準備をすべきである、と述べています。
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履行されぬサイバー合意
 すなわち、先般の訪米の際、習近平は米国企業の商業機密や知的財産権に対するサイバー攻撃はしないと約束したが、米サイバーセキュリティ会社CrowdStrikeの共同設立者のDimitri Alperovitch氏は、同社が、米国企業のネットワークに対する中国のサイバー攻撃が続いていることを見出したと述べた。Alperovitch氏は、企業ネットワーク――主としてハイテク関連と医薬品会社――に対するサイバー攻撃の時系列を公表した。Alperovitch氏によれば、攻撃者は「中国政府と関連」していると考えられると述べた。Alperovitch氏によれば、攻撃は阻止されたとのことである。
 習近平の約束にもかかわらずこのようなことが起きているのは、長年広範にわたり実施されてきた計画を止めることに対し、内部の抵抗があるためかもしれない。あるいは、ハッカーたちには国の監督が行き届かないのかもしれない。しかしこれらは言い訳にはならない。習近平はハッカーたちに止めろと言えなければならない。彼はハッカーたちが止めるか止めないかで評価されなければならない。
 もし習近平が約束を守るつもりがないのであれば、米国は再び制裁を課する準備をすべきである。米中首脳のサイバーセキュリティに関する合意は転換点になりうるものであり、言葉でだけではなく、行動で実現すべきである、と主張しています。
出典:‘Will China keep its cyber promises?’(Washington Post, October 21, 2015
https://www.washingtonpost.com/opinions/will-china-keep-its-cyber-promises/2015/10/21/c0c8e422-7775-11e5-a958-d889faf561dc_story.html
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サイバー攻撃継続の如何によっては対中制裁も
 社説が引用しているCrowdStrike社は、サイバー攻撃を検出し、撃退するサービスを提供しており、全世界の攻撃者に関する情報をデータベース化しているといいます。業界で確固たる地位を築いているようであり、共同設立者のAlperovitch氏の言は信用できると考えてよいでしょう。
 中国がサイバー攻撃を続けていることに関し、米国政府のコメントは未だありません。米国政府は、中国が実際に攻撃を続行しているかどうかについては、事の重要性にかんがみ、慎重に調査、吟味するでしょう。このようなサイバー攻撃を止めるには一定の時間がかかるとの説もあります。
 もし米国政府が攻撃の続行を疑う、あるいは行われたと判断することになれば、先般の米中首脳会談の評価がさらに低下することになります。ホワイトハウスは首脳会談後に発表したファクトシートで、サイバーセキュリティについての合意をかなり詳しく説明し、今後の両国の協力への期待をにじませていました。もっとも927日付ウォールストリート・ジャーナル紙社説は「もともと中国はサイバー攻撃をしていないと言い張っており、していないことに合意するのはおかしく、約束が守られる信憑性はない」と冷ややかでした(114日付本欄ご参照)。
 習近平が米企業を対象とするサイバー攻撃はしないと約束した、その舌の根の乾かないうちにサイバー攻撃が行われたとすれば、事情の如何にかかわらず、習近平の信頼性を損なうものです。
 今後米国政府が中国のサイバー攻撃継続を確信すれば、対中制裁の可能性が再び浮上してきます。そうすれば、南シナ海への米艦艇の派遣問題と相俟って、米中関係の緊張は高まるでしょう。

 ちなみに中国は首脳会談についての中国側の発表で、米中の「新しい形の大国関係」をうたい、中国国内へアピールしましたが、その直後に米中関係が緊張すれば、中国国内で、米中首脳会談が中国政府の言うように成功であったかどうかについての疑念が生じることになるでしょう。


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