2016年7月26日火曜日

南シナ海で決して妥協しない共産中国・「民主主義の価値観」外交で封じ込めよ!

欧州も警戒し始めた中国の独善

岡崎研究所
20160725日(Monhttp://wedge.ismedia.jp/articles/-/7348

 仏戦略研究財団アジア部長のニケが、Diplomat誌ウェブサイトに2016611日付で掲載された論説において、先のシャングリラ・ダイアローグにおける中国の態度があまりにも悪かったことも手伝って、最近では従来アジアの安全保障に関心の低かった欧州の認識が変わってきていると述べ、仏がその牽引役となることを歓迎しています。要旨、次の通り。

istok

演説の荒々しいトーン
 今年のシャングリラ・ダイアローグにおいて、中国の孫建国副参謀総長は「アジア太平洋地域の文明は、調和の中で混ざり合い、相互の順応も活気に満ちている」と述べた。だがこうした人々を安心させるような言葉にもかかわらず、演説の荒々しいトーンや南シナ海で繰り返される領有権主張、仲裁裁判判決をあらかじめ拒否するといったことは、地域の大きな懸念になっている。しかもこうした懸念は、アジア太平洋の安全保障の中心から離れた国にまで広がっている。従来これらの国々は、中立ではないにせよ、バランスをとるのを好んでいたはずだ。
 その姿勢の変化は、「ハードな安全保障」に取り組まないことで知られていたEUに顕著である。中東や移民、テロといった自分たちの地域で高まる問題にもかかわらず、EUは徐々にアジアにおける利害の大きさを認識しつつある。
 こうした変化をもたらしている主要要因は、言うまでもなく中国による南シナ海での主張、国際規範の拒絶、近隣諸国に強制しているヒエラルキーシステムである。また、中国がよりアグレッシブな戦略的選択をすることは、内政要因や体制変革への懸念と直接的に関係している。シャングリラでの中国の演説は、今まで以上に主張が激しく、イデオロギー的なものであった。
 EUを含む国際社会にとっての主要課題の1つは、中国が、自らも批准している国際合意に基づくいかなる制約にも強い拒否反応を示すという点である。これは国連海洋法条約や中比仲裁裁判の判決について顕著である。これは、条約や国際約束を遵守するのは、共産党指導部が狭く規定する国益に適う場合のみだということであり、大きな不安定化要因となる。
 この点、ル・ドリアン仏国防大臣がシャングリラで述べたようなフランスの明確な立場は歓迎されるべきものだ。海洋における法の支配の原則が脅かされていることについて、ル・ドリアン大臣は、国連海洋法条約の不遵守問題は地域を越え大西洋から北極にまで影響しうることを想起させた。
 欧州における主要軍事国の1つであるフランスは、インド太平洋地域に及ぼしうる十分な軍事プレゼンスをもっている。そして、国連海洋法条約が認める航行や上空飛行の自由の原則に対する脅威は受け入れられない。伊勢志摩サミット後の共同声明でも言及されたように、ル・ドリアン大臣は、ルールに基づく海洋秩序、国際法の尊重、対話が脅しや強制、武力の行使によって妨げられてはならないことを述べた。
 欧州の海軍間で調整を行い連携することで南シナ海で欧州による航行の自由作戦を行うとの提案は、歓迎された。もしそれを実行に移せば、同提案は、すべてにおいて重要な意味を持つ地域の安定に貢献する欧州の取り組みとしてポジティブなシグナルになるだろう。
出典:Valérie Niquet,France Leads Europe's Changing Approach to Asian Security Issues’(The Diplomat, June 11, 2016
http://thediplomat.com/2016/06/france-leads-europes-changing-approach-to-asian-security-issues/
 アジアの安全保障問題について、これまで比較的関心の薄かったEU諸国が、中国の南シナ海への海洋進出に対し、強い懸念を示し始めたことは、当然とはいえ、歓迎すべきことです。特に、フランスが率先して海洋分野における法の支配を重視する言動を取り始めたことは高く評価できます。伊勢志摩サミットの首脳宣言において、海洋秩序の維持のために国際法の諸原則に基づくルールを遵守することの重要性が強調されたことの意味は大きいものがあります。
強硬かつ独善的な態度
 その後のシンガポールのシャングリラ会議において、中国側の態度が強硬かつ独善的であったことが、関係諸国の間に中国に対する警戒感を一層高めることとなりました。
 ドイツも最近、これまで以上に中国の南シナ海進出に対し、警戒感を示すようになりました。これは、先日のメルケル・習近平会談においても見られた通りです。欧州はこれまで全体としてアジアから離れているという地理的要因に加え、経済関係を通じ中国との関係を強めてきたため、中国に対し、比較的微温的な対応をとってきました。しかし、ル・ドリアン仏国防大臣の指摘するように、南シナ海の問題はやがては、大西洋から北極に至る海域でも同様のことが起こり得ることを欧州の国々に想起させることとなりました。


 フィリピンが提訴した国際仲裁裁判所の判決については、日本としては、あくまでも国際法、国際ルールに基づき対処するとの立場で、米、ASEAN諸国、EUと協力しつつ対処すべきです。日本にとっては、南シナ海が東シナ海、台湾海峡に隣接し、かつシーレーンにあたる戦略上の要衝の地であることに何ら変わりはありません。

《維新嵐》 ドイツやフランスがアジアでの共産中国による権益奪取に脅威感を覚えているであろうことは、オーストラリアへ配備される潜水艦の売り込みの動きをみても理解できることでした。特に中部太平洋に領土権益をもつフランスにしてみれば、島嶼が奪われる危機感よりも、南シナ海の自由航行権の喪失の方に脅威を感じたことが潜水艦売り込みにつながったものです。南シナ海、太平洋の自由航行権あってこその島嶼権益ということですね。
 EU版のFON作戦については、以下の記事にもみられます。共産中国の海洋進出により、アメリカや欧州にも不利益を与えてしまうようです。


EUFOP作戦になるのでしょうか?
「海軍艦艇を派遣しよう」中国に対抗、フランス国防相がEU各国へ呼びかけへ
2016.6.5 16:50更新 http://www.sankei.com/world/news/160605/wor1606050016-n1.html
フランスのルドリアン国防相は201665日、欧州連合(EU)各国に対し、南シナ海の公海に海軍艦艇を派遣し、定期的に航行するよう近く呼び掛ける考えを明らかにした。シンガポールで開かれたアジア安全保障会議で述べた。

 ルドリアン氏は、EUは「航行の自由」によって経済的利益を得ているとし、南シナ海情勢を懸念していると主張。「EU各国の海軍は、アジアの海域で目に見える形のプレゼンスを確保するため協調できるのではないか」と話した。(共同)

桜林美佐さんの国防ニュース最前線

中国の「南シナ海」判決無視には強硬な対応を

岡崎研究所
20160812日(Frihttp://wedge.ismedia.jp/articles/-/7456


米下院軍事委員会シーパワー・戦力投射小委員会のランディ・フォーブス委員長(共和党)が、National Interest誌ウェブサイトに2016712日付で「ハーグは中国に対し判決を下した。それを執行する時である」との論説を寄せ、南シナ海仲裁裁判所の判決を中国が無視すれば、強硬に対応すべし、と論じています。フォーブスの論旨、次の通り。

力は正義と考える北京
 2016712日の比・中間の領土紛争についての仲裁裁判所の判決は、中国がどう反応するかによって、アジアの安全保障と戦後のリベラルな国際秩序のあり方に大きな影響を与える。第2次大戦後、米などは紛争の平和的解決、国際法順守、強制力の使用を拒否する国際的枠組みを作ってきた。この秩序は中国とアジア・太平洋の繁栄に力強く貢献した。
 中国は「責任ある利害関係者」になりたいと言ってきたが、中国の最近の行動はソ連崩壊後、この秩序に対する最も深刻な脅威になっている。中国の経済力、拡大する軍事力、常に他国の侵略意図の被害者であったとの主張は、国際システムに特に困難な問題を提起する。東シナ海から南シナ海、インドとの陸上国境において、中国は力により現場の状況を変えようとしている。南シナ海での人口島建設、東シナ海での不法な防空識別圏設定、インドのアルナチャル・プラデッシュでの挑発など、領土問題が先鋭化している。北京は国際政治では「力は正義」との考え方をとっていることを示してきた。
 判決は北京への基本的な叱責である。フィリピンが海洋法の裁判所に提訴したことは、戦後世界で米やパートナーを活気づけた原則や価値と軌を一つにしている。小さなフィリピンが巨大な中国に対し、国際法に基づき訴訟を起こし成功することは、中国の元外相の中国の行動を正当化する有名な発言、「中国は大きな国で、他の国は小さな国である。これは事実である」に対する反論でもある。
 中国がこの判決を無視すれば、中国は国際社会の建設的メンバーとして行動するとの約束の空虚さを一挙に示すことになる。しかしそれは同時に、世界第2の経済力、最大の軍を持つ国が、紛争の平和的解決を含むリベラルな国際秩序を公に反駁し、国際秩序自体に大きな脅威を与えることになる。国際安全保障への影響は大きい。米は中国による判決の拒否、あるいはマニラとの紛争の軍事的解決追求に対し、準備し、強い決意をする時である。最近、2個の空母打撃群を地域に送ったのは適切であった。もし中国が思慮のない行動をすれば、米は同盟国の側に立ち、侵略に抵抗し、我々の価値を守ることに何の疑問もないようにすべきである。
 この判決は戦後の国際秩序の価値と中国の修正主義の衝突という点で、中国の台頭の歴史の屈折点である。中国がどう反応するかは中国の問題である。しかし米はただ一つの選択肢しか持たない。フィリピンや地域の友人と共に、普遍的価値および軍やGDPの規模にかかわらずどの国も法の上に立たないとの信念を擁護するということである。
出典:J. Randy Forbes,The Hague Has Ruled against China. Time to Enforce It.’(National InterestJuly 12, 2016
http://nationalinterest.org/feature/the-hague-has-ruled-against-china-time-enforce-it-16939
今回のフィリピンと中国の紛争に関する仲裁裁判所の判決は、中国の南シナ海でのいわゆる9段線に基づく管轄権主張を国際法上根拠がないと断じ、人工島を基盤にEEZなどの海洋権益を主張することはできないとしています。
 この判決は比と中国との係争にかかわるだけではなく、南シナ海での中国の主張を全体的に否定するものです。また、航行の自由など、比以外の国、国際社会全体の利益にもかかわるものです。
国際秩序への挑戦
 さらに、この論説でフォーブスが論じているように、中国がどうするかは中国の国際法に対する姿勢、ひいては国際秩序に対する姿勢を判断する大きな材料になります。中国は、判決の受け入れを拒否し、南シナ海は歴史的に中国の領土という議論を展開し、比に働きかけてこの仲裁判断のインパクトを弱め、問題を矮小化しようとするでしょう。それが成功するか否かは、比の対応もさることながら、米、日、越、印、さらに欧州諸国が今後どういう対応をしていくかによります。
 この判決を無視することは現在の国際法秩序に挑戦することです、紛争の平和的解決の原則に反するものであるとして、議論をしていくことが肝要です。それがこの地域で「力ではなく、ルールによる国際秩序」を守っていくために必要であり、中国による「拡張主義」を抑えていくことにつながるでしょう。
 この判決で好都合な機会が出てきたと思われます。十全にこの機会を利用すべきです。中国が反発し、南シナ海でADIZ設定をするような場合、直ちにそれを無効化するような行動を取るべきです。緊張の激化を恐れると、より悪い緊張が出てくるでしょう。
《維新嵐》 自分たちに都合の悪い国際判決だったからといって、これを「紙屑」よばわりしている共産中国の態度は、とても国連の常任理事国とは思えない自己中心的な態度です。はっきりいって国際仲裁裁判所をなめていますね。要するに既存の国際法に対する公然とした「挑戦」でしょう。あくまで自国中心の政策を貫くのなら共産中国は、国連の常任理事国からおりるべきです。台湾に譲るべきです。
オバマが訴える民主主義の団結

岡崎研究所
20160811日(Thuhttp://wedge.ismedia.jp/articles/-/7455

オバマ米大統領は、201678日付の英フィナンシャル・タイムズ紙に、論説を寄せ、NATO首脳会議に向け、かつ英国のEU離脱を踏まえ、欧米民主主義陣営の団結を呼びかけ、団結すれば勝利する、と論じています。オバマ大統領の論旨は、次の通りです。

NATOにとって重要な時
 今は、冷戦後、大西洋同盟にとって最も重要な時かもしれない。オーランド、パリ、ブリュッセル、イスタンブールでIS(イスラム国)のテロ攻撃があった。アフリカ、シリア、アフガンの紛争は難民の波を欧州に送っている。ロシアのウクライナ侵略は自由で平和な欧州のビジョンを脅かしている。英国のEU離脱は欧州統合の将来に疑問を提起している。
 ワルシャワでのNATO会合では、NATO諸国が政治的意思を奮い立たせ、問題に具体的に対処するコミットメントをすべきである。英国とEUは秩序だった移行に合意するだろう。英EU関係は変わるが、変わらない側面も想起する価値がある。米英間の特別な関係は続くだろう。英国がNATOの最も有能なメンバーの一員であり続けることに、私は何の疑問も持っていない。
 同様に、米国にとりEUは不可欠なパートナーであり続ける。米EU投資・貿易関係は世界最大であり、米国の世界との関与の要石であり続ける。英国のEU離脱が不確実性をいくらか作り出したが、我々の繁栄は岩のように固いNATOを基盤に続いて行くだろう。ワルシャワで我々は、すべてのNATO同盟国を守るとの条約5条の義務を再確認しなければならない。また、中・東欧の同盟国の防衛を強化し、サイバー攻撃を含む新しい脅威への強靭性を高めるべきである。EUNATOの安保協力を深め、ウクライナへの支援を増やす必要がある。ロシアとの建設的な関係にはオープンであるが、ロシアがミンスク合意を完全に履行するまで、制裁は維持されることに合意すべきである。
 NATO域外では、もっと世界の安全保障のために、特に欧州の南でより多くのことをやらなければならない。ISや難民を搾取する犯罪組織の問題がある。私は今週アフガンの駐留米軍のレベルを維持すると決定したが、これはアフガン部隊の訓練というNATOの任務に同盟国も協力することを奨励する。
最後に、NATO諸国は共同防衛にもっと投資すべきである。NATO諸国の防衛支出は減少から増加に転じてきているが、この進歩は維持されるべきである。
 大西洋同盟は70年間成功してきた。一緒にやることでもっと安全になる。我々は単に軍事的な同盟国ではない。我々は民主主義などの共通の価値で団結している。過去70年の教訓は、我々が団結し、民主主義の価値に忠実であれば勝つということである。
出典:Barack Obama Americas alliance with Britain and Europe will endure (Financial Times, July 8, 2016)
https://next.ft.com/content/ededcb24-4444-11e6-9b66-0712b3873ae1
この論説は、西側民主主義陣営の指導者として、米国大統領が言うべきことを言ったもので、評価できます。難民問題で引き裂かれ、英国のEU離脱で分裂し、金融・経済の不確実性に見舞われ、各国で極右勢力が力を得、EU統合の理念に疑問が提起される中で、オバマ大統領が共通の価値で結ばれた大西洋同盟の団結を呼びかけ、その強靭性についての信念を表明したことは歓迎されます。
分裂はプーチンを利する
 英国のEU離脱を含む欧州の問題は、冷戦後、フランシス・フクヤマが「歴史の終わり」で宣言した自由民主主義の最終的勝利との命題を、否定するような様相を呈してきています。中露が代表する権威主義的な、不自由ではあるが効率的な政治のあり方が有利になってきているとの論説も多いです。主として米国が作ったリベラルな国際秩序が退潮しているとの論も多くあります。欧州の混迷、分裂は、ロシアのプーチン大統領を大きく利するものです。
 しかし、自由民主主義陣営の混乱が少し大げさに論じられ過ぎている感は否めません。経済の面でも、多くの国にとってのあるべき姿を示していますし、ソフト・パワーの面でも、自由民主主義陣営は今なお相当に強靭であると判断して間違いないでしょう。変化に目を奪われがちになるのは人の常ではありますが、オバマ大統領が言うように、変わっていることのほかに変わっていないことを想起することも大切です。西側や自由民主主義陣営の没落の予言は当たらないでしょう。
 今の時点でオバマ大統領が西側の団結と力への自覚を呼びかけたのは、時宜を得ています。実際、NATO首脳会合では、4000人の移動部隊が新設される等で合意がなされ、団結を謳い上げるなど、オバマ大統領の言うような結果になりました。
《維新嵐》 アメリカとNATOとの関係のお話しですが、民主主義と自由主義による「価値観外交」により、アジアもうまくまとまれないものかと思います。少なくともASEANは、ハーグの裁定とという点においてはまとまれませんでした。日米同盟がアジアでは安全保障の「核」ですね。
NATO・軍事訓練を開始!
NATOにロシアを加盟させて、アジアでは日露において安全保障条約が締結され、日米露による安産保障体制が確立すれば、それが共産中国への封じ込めになるかと思うのですが、日露の間にクサビを入れるかのような「北方領土問題」がある限り、この「夢の三国同盟」は実現しそうもありませんな。

0 件のコメント:

コメントを投稿