2016年7月30日土曜日

世界情勢を乗り切るために・・・「平和国家」日本国の未来

高まる中国の脅威!!東シナ海でも「同じこと」は起きる

ダイヤモンドオンライン 桜井よしこ

内向化が止まらないアメリカ、南シナ海などで膨張し続ける中国、イギリスのEU離脱、IS(イスラム国)による相次ぐテロ……この動揺する世界を、日本はいかに乗り切るべきか?前回に引き続き、人気ジャーナリスト・櫻井よしこ氏の最新刊『凛たる国家へ 日本よ、決意せよ』の中から紹介していこう。

◆前回の内容◆

アメリカのみならず、イギリスでも「内向化」がとまらない…

孤立主義と言い換えてもよい自国第一主義は、アメリカにとどまらず、ヨーロッパにも急速に広がっている。イギリスは20166月の国民投票で、EU離脱を決定した。333000人の移民が流入し、社会不安が生じ、離脱派が急速に勢いを増した結果である。
強烈に離脱反対の論陣を張ったキャメロン首相は敗れ、713日、テリーザ・メイ氏が新首相に決定し、イギリスは敢然と次の段階へ進もうとしている。
だが、その前途は決して明るくはない。EU離脱によって経済的にはおそらく縮小していくと思われる。EUに残りたいスコットランドは、イギリスからの離脱を考え始めた。仮にスコットランドが去れば、イギリスは国土の3分の1を失う。北海油田も失う。原子力潜水艦が停泊できるイギリス唯一の軍港を持つクライド海軍基地も失う。かくして連合王国のイギリスは、グレートブリテンどころか、小さなブリテンの国になってしまいかねない。
イギリスのEU離脱は、アメリカとEUの関係も弱体化させかねない。イギリスはアメリカにとってかけがえのない支持国であり、最善の理解者であった。第1次世界大戦も第2次世界大戦も彼らは共に戦った。
戦後の戦争でも、ベトナム戦争を除くすべての戦争で、両国は共に戦った。アメリカとヨーロッパの架け橋だったイギリスのEU離脱で、アメリカのEUに対する影響が低下するのは当然である。

その他の欧州諸国でも似たような動きが加速…

イギリスと同様の動きは、EU諸国でも急速な広がりを見せている。フランスでは右翼政党「国民戦線」党首のマリーヌ・ル・ペン氏が支持率を高めており、来年(2017年)の初夏に予定されている大統領選挙の最有力候補である。彼女の政策は反EU、反移民、反難民である。フランス独自の価値観とフランス独自の文化、文明を大事にしたいという自国第一主義である。
ドイツはメルケル首相が110万人の難民を受け入れ、シリアをはじめとする諸国の難民からは非常に感謝されている。悲鳴を上げているのがドイツ国民だ。110万人の難民流入で、街の様子が変化する。多大な予算も必要だ。不満と不安が高まり、反移民、反難民、反EUの気運の中で、支持を広げたのが、フラウケ・ペトリーという女性リーダー率いる「ドイツのための選択肢」という政党である。ドイツ連邦議会選挙は来年秋の予定である。
自国第一主義の右翼的な政党は、同様にポーランド、オランダ、チェコ、スロバキアなどでも台頭した。20165月に大統領選挙を行ったオーストリアは、0.6%の差でEUに背を向ける極右政党が敗れたが、この選挙に不透明な部分があったと右翼政党側が主張し、大統領選挙はやり直されることになった。

空中分解しつつある軍事同盟、それを喜ぶ「いくつかの国」

自国第一主義、排他主義の蔓延の中で、EUでは求心力よりも遠心力が働いているのである。EUの結束力は弱まると見るべきだ。EUの軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)にも必然的に影響が及ぶだろう。NATOはイギリスのEU離脱決定後の78日に会合を開いたが、予想どおり具体的な結論は得られず、結束を固めるという抽象的な合意で散会した。
NATOを支える最大の力、アメリカもNATOに対して強い不満を表明している。トランプ氏は427日の初の外交政策発表でNATOに言及し、28の加盟国のうち、GDPの2%を軍事費に充てるというNATO合意を実行しているのは、わずか4ヵ国ではないかと論難した。
大半の加盟国が義務を果たさないような軍事同盟は時代遅れであるとトランプ氏は語る。ヨーロッパ全体の団結力が、軍事力も含めて、弱体化するプロセスが始まったのではないか。
これを歓迎しているのがロシアのプーチン大統領である。同大統領が中東におけるアメリカの空白を巧みに利用して主舞台に躍り出た経緯については前回触れた。
同じ構図がアジアでも見られる。中国は日本などの西側諸国が是とする国際法を守らない。西側諸国が重要視する平和的話し合いに応じない。西側諸国が否定する力による現状変更を敢えて行う。
蛮行と不法行為を続ける中国にどう対応するかが、いまや世界と日本にとっての最重要の課題である。

参院選での与党勝利、その背後にある「人々の心理」とは?

私たちはいま、急いで日本を中国の脅威に対応できる国に変えていかなければならない。脅威が押し寄せてきたとき、現状では国土、国民を守ることは難しい。このまま基本的な構図を変えなければ、日本の文明を守ることも、やがて難しくなる。
中国の脅威への対処こそ、最も喫緊の課題である。平成28710日の参議院議員選挙で与党自民党が勝った理由もそこにあると私は考える。多くの人々が中国の脅威を感じている結果、日本の将来を任すべき政党を選んだのが今回の選挙だったのではないか。それはそのまま、民共連携が勢力を伸ばせなかった理由ではないのか。
この国をやがて社会主義に導こうと考える共産党の思想信条にいま、本当に賛同できるのか。共産党は、日本国を守る責務を引き受けている自衛隊を憲法違反と決めつけ、最終的に解散することを決めている。中国の脅威が増大する前で、本当にこのような政党に議席を与え、日本を任せられるかと言えば、大いに疑問を抱かざるを得ない。その共産党と、価値観を著しく異にする民進党が連携したことへの拒否が、参議院選挙の結果に表れたのであろう。
自民党をはじめとする改憲勢力が参議院で3分の2を勝ち取ったことで、戦後初めて衆参両院で改憲勢力が3分の2を超えた。この国民の声を活かすことが自民党の責任である。
日本国憲法を改正し、日本国を日本国として存続させるための体制をつくる時である。速やかに憲法論議を開始し、憲法改正を発議するのがよい。その際の焦点は、どう考えても、憲法前文と92項ではないか。
91項は、日本は侵略戦争はしないとするものだ。2項には、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と明記されている。
1項は日本が守るべき価値としてそのまま残し、第2項を改正して、自衛のための戦いに必要な軍事力の保持をきちんと認め、自衛隊を国軍として位置づけることが重要である。無論、緊急事態条項も必要である。その他にも急がれる改正点があるのは当然である。
折しも、714日、各紙が1面トップで、天皇陛下が「生前退位」のご意向を示しておられると伝えた。82歳になられる陛下は、ご自身の健康上の理由からご公務の削減措置がとられていることなどを心苦しく思われて、ご意向を示されたと報じられた。現行憲法では崩御前のご退位はできないためのお考えだという報道である。宮内庁はこの情報を否定したが、皇室典範の改正も含めて私たちは皇室の在り方についても考えるべきなのだ。
こうした重要項目を中心に、憲法論議を速やかに開始し、発議し、国民の意思を問うてほしい。

日本の活躍をアジア諸国も期待している

政権与党に課せられた最大の責務は、国内的には憲法改正であるが、それだけでは日本の責任は果たされない。
中国は国際社会の忠告に耳を貸さず、これからも南シナ海及び東シナ海において、国際法違反のまま自国の権益を守ろうとするだろう。1つの方法としてフィリピンの取り込みがある。様々な経済的恩恵を与えることで、国際法を事実上否定する戦術を取ると思われる。経済的な搦め取りの背後で、常に強大な軍事プレゼンスの示威も欠かさないだろう。
経済力と軍事力を前面に立てる中国の主張が国際法に合致しないのであれば、自由と法を重視する国々は、彼らに国際法を遵守するよう働きかけなければならない。彼らが他国の領土や領海を軍事力で奪うならば、それに対する抑止力を発揮しなければならない。
その先頭に日本はアメリカと共に立つべきである。南シナ海で起きることは、必ず、東シナ海でも起きるのである。南シナ海の秩序を守ることは、東シナ海でわが国の国益を守ることと同義なのである。
21世紀のアジアの秩序は国際法、平和的話し合い、各民族の尊重という普遍的価値と原則に基づくものでなければならない。中国の暴走を抑止するために、各国が助け合う仕組みを構築することだ。1つの国に対する中国の攻撃は、各国全体で受け止める。第一義的に法と話し合いを優先する。中国が応じない場合は、アメリカを中心とする軍事的枠組みを活用する。
その際、日本はアメリカと共にアジアの秩序と安定のために、全力を尽くすべきだ。日本が口先だけの国であることは許されないだろう。だからこそ、どのような形で日本がアジアに貢献し、日本の国益をも守ることができるようになるか、そのための憲法改正はどうあるべきか、これらすべてを活発に論議するのがよい。
日本は民主主義国なのである。国民の議論を元に、日本国の姿がつくられていくことを忘れてはならない。

日本の活躍はアジア諸国の期待でもある。だからこそ、世界に向けて日本の理念を掲げよう。明治維新で発布した五箇条の御誓文と十七条の憲法の、国民一人一人を大切にし、世界に視野を広げ、公正で公平な国づくりを目指した先人たちの叡智を、私たちも身につけよう。穏やかな日本の文明を基本に置いて、雄々しさと勇気を発揮できる国民として、21世紀の人類の理想を語り、その実現に力を尽くすことが大事である。(「はじめに」より)


桜井よしこ氏 安倍内閣の憲法改正の本音について


《維新嵐》 桜井さんはいわゆる憲法改正論者ですが、その意味がよくわかる論文だと思います。
現行憲法9条改正は国防の観点から、お決まりのようによくいわれることですが、桜井氏は9条1項をはっきりと「侵略戦争の放棄」と定義づけられている点は卓見でしょう。
 現行憲法は、1929年のパリ不戦条約の「侵略戦争はダメだけど、自衛のための戦争は認める」という思想を取り入れています。その具体的な自衛戦争の定義ははっきりしませんが。国家の主権と独立を守る、国家の平和秩序を守る意味での戦争が「自衛戦争」でいいのではないでしょうか?

 そして自衛戦争は「自然権」です。主権国家であればあたりまえの権利です。それを否定してすべての戦争がだめだ的な論法の左翼思想の論理は話になりませんが、9条が自衛戦争は認めているという解釈をしない「保守論者」も同じことです。
 憲法改正は粛々と進められなければなりません。ただ改正点は9条だけではありません。9条にしろ2項で禁止する陸海軍やその他の戦力は、侵略戦争のための軍事力の禁止なのです。
 地方自治のあり方の改善、地方の権限の拡大のためにも憲法改正の検討は必要ですし、天皇の「国民統合の象徴」とは「国家元首」と同義であるという解釈も確立すべき、つまり第1条のあり方の検討も不可欠です。前文は問題ないように思いますが、変えるなら「平和国家」のブランドを崩れないような改正であれば問題ないでしょう。
 天皇の「譲位」についても言及がありますが、もう日本人の天皇観は明治維新のシンドロームから脱却すべきでしょう。元来「譲位」も「皇位継承」も天皇のご意思一つで実現できることです。薩摩だ長州だという連中が作った政権が「男尊女卑」の思想に凝り固まって作った「皇室典範」などそれこそ伝統的な「萬葉一統」の国体観に反することとも考えられます。
 我が国は明治憲法にいうような「萬世一系」の皇統できた国ではありません。南北朝時代のように皇統が二つにわれた時代もあれば、信長や秀吉が出てくる前の戦国時代のように天皇や公家がないがしろにされた時代もあるのです。女性天皇は8人だけですが、女系天皇は特に古代ではかなりの数がおみえになるのです。繰り返しますが、譲位も皇位継承も天皇が決めていいことです。ご叡慮のままに、お心のままに、「承詔必謹」の姿勢で国民は受け入れましょう。臣下がいちいちうるさくいうことではありません。皇室典範の改正を政府がやらないなら「超法規的措置」で天皇陛下のご聖断を仰ぐことで解決できるでしょう。そこで反対する国民は「国賊」というだけです。

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