2016年7月5日火曜日

いわゆる保守派の憲法改正論は大丈夫か?  ~桜井よしこ氏の講演に思うこと~

民主主義の「限界」を利用する中国…日本は大戦略掲げ闘うときではないか

桜井よしこ氏講演

イギリスの欧州連合(EU)離脱で冷戦後の国際秩序が根本的に変わりつつある。折しも日本は参議院選挙である。いま、英知を集めて日本の大戦略を打ち出すことこそ、政治家の本懐であろう。
 イギリスでは離脱決定を「独立」だと喜ぶ声があった。それは、英国政府の上位に位置するかのように政策を「押しつける」EU政府の姿勢や「欧州統合の深化」を否定し、「主権回復」を求めたイギリス人の声だった。イギリスで多数を占めた国民意識は他の欧州諸国にも根強く、EUの結束を揺るがしている。
 マリーヌ・ルペン氏率いるフランスの極右政党「国民戦線」、フラウケ・ペトリー氏の「ドイツのための選択肢」、支持率を高めているハンガリーのオルバーン・ビクトル首相、ローマ初の女性市長のビルジニア・ラッジ氏、ギリシャで台頭するネオ・ファシスト政党「暁の輝き」、0・06%という僅差での敗北に疑義を呈し大統領選挙やり直しを認めさせたオーストリアの極右政党「自由党」などは、いずれも反EU、反移民の旗を掲げ、排外主義をあおる。
 こうした国々では移民急増を機に、異文化、異言語の民族が社会に及ぼす深くかつ永続的影響への恐れが強まった。いずれ憲法も共通に、という統合深化の目標とは正反対に統合から分散へ、全体の利益から自国利益第一へと、遠心力が急速に強まった。


EUと北大西洋条約機構(NATO)は一体だが、イギリスの離脱でロシア(旧ソ連)の脅威からヨーロッパを守るというNATOの目標も負の影響を被りかねない。対ロシア抑止力の後退を食い止められるのは、アメリカだけである。アメリカが責任を果たさなければ、冷戦における西側諸国の勝利も帳消しとなる。だが、アメリカにNATOの支柱であり続けるよう要請する前に、アメリカが問うている。NATO諸国の大半が国内総生産(GDP)2%分を軍事費に充てるとのNATO合意を果たしていないではないかと。これではEUだけでなく、NATOの結束にもかげりが生ずるのは当然であろう。
 7人もの日本人が犠牲になったバングラデシュでのテロをはじめ、ISなどのテロリストの跋扈(ばっこ)がオバマ米大統領が世界の警察をやめたことによってひき起こされたとの見方は国際社会のコンセンサスだ。
 国際的には評価できないオバマ氏の政策を、「アメリカ第一」のスローガンでトランプ氏が訴え、1300万人ものアメリカ人が支えている。民主主義国では世論の無視はできない。離脱に反対したキャメロン首相も、国民の選択に潔く従った。だが、国民の決定や民間の意思が、国益を損ねることも少なくないことも肝に銘じたい。


とりわけ日本の憲法改正についての議論を見てそう思う。中国は南シナ海を軍事拠点化する一方で、フィリピンの常設仲裁裁判所への訴えを認めない。習近平国家主席は中国の核心的利益擁護のためには、「自ら紛争は引き起こさないが、起きたとしても恐れない」と、述べて国際法の精神に真っ向から挑戦する。
 日本の海においても同様だ。平成28年6月、沖縄、鹿児島両県の接続水域および領海に初めて人民解放軍の軍艦が侵入、同時期、上空では戦闘機がこれまで守ってきた暗黙の限界線を越えて、対日接近を繰り返した。政府は否定したが自衛隊機に攻撃動作を仕掛けていることに元空将の織田邦男氏が警鐘を鳴らした。
 日本に危機が迫っていることを認識し、憲法改正を急がなければならないが、民意の支持なしには不可能だ。国民の選択の結果、領土を失い、主権を損なう事態も起こり得る。
 中国がどのように西側の法治や民主主義の限界を利用するかについては、ドイツの事例が分かりやすい。ドイツ経済繁栄の要因の一つが中国資本の流入だ。中国は年初から毎週1社のペースで、ドイツの重要企業を買収し続けている。ドイツ第4次産業革命の中核で、最先端技術の塊といってよい産業用ロボット大手、クーカも50億ドルで買収する構えだ。ドイツの最先端技術が丸々中国の手にわたるということで、ドイツ政府は強く反対している。だが、民主主義と法治の国で超法規的反対などあり得ない。


中国は自由市場を利用して企業を買収し続けるが、その反対はないのである。日本の国土を中国が買い続ける一方で、日本は中国の国土を全く買えないのと同様である。中国との取引は、株主や民間には利益をもたらしても国益を損ねるケースが多いのだ。
 法治や民主主義は正しい道であっても、時間も手間もかかる。その限界を彼らは利用する。冷戦を経て共産主義陣営に勝利したはずの西側陣営では、容易に解決できない移民、難民、景気問題などにいらだつ人々が右翼勢力を支持し、国論を二分し、結果として全体の結束力を弱めている。民主主義と法治の価値観と、共産党一党独裁体制の価値観のせめぎ合いなのだ。
 だからこそ、日本は闘わなければならない。まず、理念において彼らに勝る価値を示すことだ。日本本来の穏やかな文明、危機に直面したときの雄々しさを発揮できるよう、憲法改正を論ずるべきだ。そのうえで経済的にも軍事的にも強い国を目指すとき、初めて日本は国際社会の現状に貢献できる。本来、参院選挙で戦わせるべきはこれらの目標を達成するための議論である。
 だが、民進党は自衛隊の否定をはじめ、根本理念の異る共産党と組んでいる。日本の長期戦略の構築が必要ないま、そんなことで民進党は政党の責任が果たせるのか。


 いわゆる保守派の憲法改正論は大丈夫か?
《維新嵐》

憲法改正をなんとしても成し遂げたい桜井氏らしい主張です。ただ桜井氏の主張も含めて、改憲を進める保守の方の意見を聞いていると、憲法のどこを具体的に改正すべきか、という点について第9条以外はわかりにくい。

 軍事的な政治力をつけなければならず、軍事力を「普通に」行使できる国家にしなければいけない、という保守派の論調は理解できる話だが、軍事学の観点からみれば、自衛隊を「国防軍」という看板にかけかえ、正面装備をいくら強化したところで、巡航ミサイルや弾道ミサイルもなく、これに対するディフェンスが単発で撃ってくる核ミサイル用のBMDシステムだけという状態で、国防のための防衛戦略やバトルドクトリンも煮詰められていない状態では、まともな国防ができるか疑問を感じざるを得ない。
共産中国には長射程の巡航ミサイルで我が国の原発を攻撃可能、各種弾道ミサイルで我が国の大都市はおろか中小の都市を標的におさめ、対艦弾道ミサイルで日米の主力艦船をも標的におさめている。

「あたらないだろう」「撃たせなければいい」それはそうである。
しかし軍事的な状況をみてもこれらの有事における攻撃手段をとめるだけの政治的な状況を我が国は現出できているのだろうか?

経済的相互依存関係は戦争抑止となりうるが、局地的な軍事攻撃まで完璧に抑止してくれるものだろうか?
実際に民間企業のかなり社内秘の内部まで、組織的なサイバー攻撃をうけている状態ではこちらもある意味「有事」であり、相互依存は形骸化しているとはいえまいか?
国内に何人の共産中国の「情報工作員」がいるのだろう?北朝鮮の工作員は200人は潜伏しているらしいが、その動向は把握できているのだろうか?
陸海空の自衛隊の運用システムは有事になったら、共産中国や北朝鮮発のステルス的なサイバー攻撃(標的型ウイルス、DDOS攻撃、APT攻撃)を防御できるのだろうか?
「情報工作員」を駆使して平時から日本人の思想や思考レベルから脅威にならないよう工作をかけてくるという「戦争」への対策は万全なんでしょうか?
「情報が最高の兵器である」とはよくいわれることだが、平時から情報戦略が相手を軍事的にも政治的にも封じ込めるための「戦術」となっていることを理解している日本人はどれだけいるのだろうか?

「憲法改正」を行う時は、日本の国家運営を根本から変えてもいいくらいの覚悟が必要であろうと考える。天皇に関する条文や自衛戦争肯定を解釈一つで固められる条文は変えるべきではない。前文にしろ「平和を愛する諸国民」解釈など国会のしがらみのない検討でなんとでもなる。「世界の平和秩序を愛する国民」とすれば「連合国の連中」などという解釈は不要だ。しかし地方レベルまで国防を固めようとすれば、地方自治の条文は改正が必要である。

軍事にしろ先進国間では「弾をうたない戦争」が常態化している現状では「専守防衛」では話にならないと考える。情報戦争への国民の意識を高めること、かつての北朝鮮の邦人拉致の悲劇が、国外と国内の敵性勢力の連携によってとられたヒューミントによる情報戦争での敗北と考えれば、憲法レベルでの国防の考え方も柔軟性をもたせた「解釈」が重要だということに気づくべきであろう。

桜井よしこ氏をはじめ保守の論客に問いたい。改正論点の明示なき憲法改正論、有事の本質をふまえない憲法改正論は、国民を惑わせるだけではないでしょうか?
まだ消費税反対、増税反対の方がわかりやすい経済的にも実効性のある政策かと思います。8%に消費税をひきあげて年金給付を減らされて、医療費も安くならず、まだ増税を願う方もみえますが、もういい加減日本人は国政や地方政治が生活に影響を直接及ぼしてくることに気づけよ、といいたくなる。政治の「主権者」は庶民なんだよ。国会議員でもなければ財務官僚でもないんだよ。


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