2018年2月5日月曜日

「最強」ステルス戦闘機F-35AライトニングⅡ配備で強化されるか我が国の防空体制

 開発段階のソフトウェアにサイバー攻撃をしかけられて配備が遅れていたF-35Aステルス戦闘機がようやく我が国に配備される運びとなりました。最強戦闘機の称号を冠されたF-35戦闘機が、開発コストにみあった機能を発揮して我が国の防空の要となるかどうか、については、イタリアと並んで最終組み立てをまかされている我が国の運用スキルにかかっているといえるでしょう。
 またこの最新ステルス戦闘機については、初の「国際共同開発」によるステルス戦闘機という側面もあります。F-35のような開発、生産体制が今後継続、定着していくのか、の成否がかかっているともいえるでしょう。
 なおこの「国際共同開発」の背景については、「超大国」アメリカが、自国航空装備を同盟国間で共有することにより、同盟国を逃がさないようにする戦略もあるようですが、それはあったにしても、防空体制の強化のためには今の我が国には欠かせない要素といえるのではないでしょうか?
 あわせて航空機発射型の巡航ミサイルもついに導入されるようですが、仮想敵国の設定と他国を攻撃できる高い能力の構築が、効果的な抑止力につながり、我が国の安全保障につながるものと考えます。自衛隊のオーナーとしての国民の一人としてF-35Aの我が国防空体制への定着について注目していきたいと思います。

【関連記事からみるF-35Aの我が国への配備】

三沢基地のF-35A、早ければ2018年126日に配備 臨時飛行隊で運用試験へ

2018/01/23 20:55
https://flyteam.jp/airline/japan-air-self-defense-force/news/article/89575
三菱重工の名古屋FACOで製造されたF-35A、画像は「79-8705

小野寺防衛相は2018123()午前の記者会見で、航空自衛隊三沢基地に配備されるF-35A戦闘機の1機目は、早ければ126()になる見通しを示しました。このF-35Aを受け入れる臨時F-35A飛行隊は、2017121()付で編成されており、配備されるF-35Aで運用試験などに活用されます。

F-35A飛行隊は、2018年度に1個目の飛行隊が新設され、2020年度に2個目の飛行隊を新設する予定です。空自では、F-35A42機を導入することが決まっており、F-4戦闘機の後継機として第5世代の戦闘機としてステルス性能を活かし、他の航空機や海上自衛隊の護衛艦などと情報を共有しながら防空活動にあたることが可能になります。

126()に三沢基地に配備されるF-35Aは、三菱重工業の愛知県・小牧南工場内に設けられたF-35の最終組み立て検査施設「名古屋FACO」で製造された、機番「79-8706 (AX-06)」とみられます。空自向けのF-35Aはロッキード・マーティンが製造した「AX-01」から「AX-04」はルーク空軍基地で訓練に使用、名古屋FACOで製造した機能試験が行われている「AX-05」の5機はアメリカにあります。

79-8706」は三沢基地への配備で「89-8706」に改番されています。

三沢基地に「89-8706」到着、空自向けF-35Aが初配備

2018/01/26 19:15
https://flyteam.jp/airline/japan-air-self-defense-force/news/article/89726
 空自F-35A、画像はAX-05

航空自衛隊三沢基地に2018126()、 初めてF-35A戦闘機が配備されました。三菱重工業の愛知県・小牧南工場内に設けられたF-35の最終組み立て検査施設「名古屋FACO」が所在する小牧基地を946分に離陸し、三沢基地には11時に着陸しました。三沢基地では、航空自衛隊に加えアメリカ空軍関係者も出迎え、駐機場への到着時には航空自衛隊の消防車が歓迎の放水で初配備を祝いました。
配備されたF-35A1機目「89-8706」は、臨時F-35A飛行隊で運用試験などに活用され、2018年度末までに10機体制でF-35A飛行隊を編成する予定です。

F-35Aは、高いステルス性を特徴とする第5世代の戦闘機で、周辺国の戦闘機をはじめとする航空戦力の近代化、増強が急速に進む中で、安全保障上で「極めて大きな意義」があると小野寺防衛相は指摘しています。特に、防空戦闘に限らず、情報収集や警戒監視、対地・対艦攻撃など様々な任務に対応し、陸上と海上の各部隊との連携を強化、統合運用能力の強化が期待されています。

なお、2018年度予算案では、F-35Aに搭載するJSMの取得経費を計上し、対艦攻撃能力を確保します。計画では、2018年度に完成するJSMF-35Aに内装し、スタンドオフミサイルを搭載し、初期作戦能力(IOC)獲得段階での運用を見込んでいます。


【米三沢基地談空自F-35AライトニングIIの到着、安全保障の強化に一役 
2018/01/30 21:25 https://flyteam.jp/airline/japan-air-self-defense-force/news/article/89877 
  空自のF-35A 
 • 雪が積もる三沢基地に着陸したF-35A 
• 空自、アメリカ空軍ともに到着を歓迎 

 アメリカ空軍三沢基地は、2018年1月26日(金)に航空自衛隊に配備されたF-35AライトニングIIの到着した様子を公開しています。当日は、空自に加え、三沢基地に所在するアメリカ空軍も最新鋭の第5世代戦闘機の到着を歓迎しました。
 2017年度での三沢基地への配備は、臨時F-35A飛行隊が新設されたことを受け、運用試験などが進められます。さらに、2018年度に9機のF-35Aで1個目の飛行隊を新設し、2020年度に2個目の飛行隊を新設します。
 また、三沢基地のF-2飛行隊は2020年度をめどに、百里基地に移動します。
 三沢基地に所在する第35戦闘航空団(35FW)のR.スコット・ジョーブ大佐は、F-35Aの配備にあわせ、「この機種は、技術の進歩と戦闘能力だけでなく、日米関係でも大きな一歩を踏み出し、日本の安全保障が継続的に強化されることになるだろう」と祝辞を寄せています。 空自は、F-4の後継機としてF-35Aを42機、取得する予定です。三沢基地では2月24日(土)、空自F-35Aの初期展開を記念する記念式典が予定されています。

https://youtu.be/6F2_2kyO4Ok?t=13 

航空自衛隊 F-35戦闘機 初号機ロールアウト式典【初公開】 - Japan's F-35 Lightning II Rollout Ceremony 
https://www.youtube.com/watch?v=Dm2jIsPctHw

【関連サイト&動画リンク】
F-35A
第五世代戦闘機F-35ライトニングⅡはどう戦力化されるのか?



【関連論文】

F-35戦闘機の購入は本当に日本のためになるのか?

ますますアメリカの国益を増進させるだけ
北村淳
日本向けF-35A発表式典でのF-35Aと杉山良行航空幕僚長(写真:ロッキード・マーチン)


 2018126日、航空自衛隊がアメリカから調達を開始したF-35Aステルス戦闘攻撃機の一番機が空自三沢基地に配備された。小野寺五典防衛相は「優れた能力を持つF-35の配備は安全保障上極めて大きな意義がある」と語っている。だが、どれほど日本の国益に利すのであろうか?
146億円に「ディスカウント成功」
 日本国防当局は、現時点において42機のアメリカ空軍仕様のF-35Aを調達しようとしている。アメリカからの主要兵器輸入を強く推し進める日本政府は、さらにアメリカ海兵隊仕様のF-35Bを追加調達するとの噂も流れている。いずれにしても、アメリカがF-35のような主要高額兵器を外国に輸出する場合、「FMS」(対外有償軍事援助)という方式によることになっている。FMSの仕組みを一言で言うならば、アメリカ側(国防総省国防安全保障協力局──DSCAが主務官庁でホワイトハウスならびに米連邦議会の承認が必要である)の設定した“言い値”での輸出である。当然ながら、DSCAが決定する輸出売却価格は、アメリカの防衛産業を保護するためにアメリカ軍調達価格よりはかなり高額になる。また、売却価格のおよそ4%がアメリカ政府の懐に転がり込む仕組みとなっている。ただし、日本によるF-35A調達に際しては、FMSとしては異例の価格交渉が行われ、日本側は値下げを勝ち取った。これは、FMS(とりわけ気前よく言い値で買い取る日本に対するFMS)では“変事”ともいえる事態だった。
 とはいえ実際のところは、日本の価格交渉が成功したわけではない。トランプ氏は2016年の大統領選挙期間中から大統領就任後にかけて、「F-35の価格(米軍が調達する価格)は異常に高額すぎる」とロッキード・マーチン社を強く非難していた。そのため2017年初めにメーカー側がF-35の価格を引き下げざるを得なくなったことが反映したものと考えられる。トランプ大統領の圧力によって、米軍調達価格は空軍向けF-35A9460万ドル、海兵隊向けF-35B12280万ドル、そして海軍向けF-35C12180万ドルとなった。日本向けF-35A1機あたり157億円から146億円に引き下げても、円ドル為替の影響はあるにしても米国内向け売却価格がおよそ110億円前後であるため、米軍需産業と米政府の取り分はある程度は満足できるとDSCAは判断したのであろう。
アメリカの目的は国益の確保
 アメリカがF-35戦闘機を日本に輸出する目的は、言うまでもなくアメリカの国益を確保するためである。ここで「アメリカの国益」というのは、上記のようにFMSという仕組みを通してアメリカ防衛産業の収益を補填し、政府当局自身も手数料収入を得る、という直接的な売却益の確保だけではない。日本が数多くのF-35をはじめとする高額兵器を購入すれば、それらの主要兵器の米軍調達価格を引き下げることも可能になる。
 また、F-35のようなアメリカ製(F-35はアメリカ企業だけでなく多国籍企業が参加しての共同開発制作であったが、ロッキード・マーチン社が主契約者である)の主要兵器を日本に装備させることにより、消耗部品供給(やはり米政府の許可が必要となる)などの局面でも継続して利益を確保できるだけでなく、日本側をコントロールすることもできる(アメリカ側が補充部品の供給を拒むと、自衛隊は運用できなくなる)。
 さらには、自衛隊にアメリカ軍の正式戦闘機であるF-35を装備させることになれば、相互運用性の向上という美名のもとに米軍による自衛隊のコントロールも促進できる。


 すなわち自衛隊が新たに導入したアメリカ製兵器の初期訓練を、アメリカにおいてアメリカ軍が指導するという構造が継続され、指導者と生徒の関係(要するに支配・被支配の関係)も継続強化することになる。極論すれば、アメリカ側にとっては使い勝手の良い“属軍”を確保することにもなるのだ。また、かねてより国防産業こそが最重要基幹産業であるアメリカにとって、日本やドイツが航空機をはじめとする主要兵器を造り出し、アメリカ産業界の“最後の砦”である武器メーカーが圧迫される事態だけは何としてでも避けたい事態である。もちろんロシアや中国の兵器は国際武器マーケットでは手強い競争相手である。だが、売却相手の棲み分けがなされているため、脅威とはならない。アメリカにとっては日本という新規参入者だけは是が非でもブロックしたいのだ。
本当に“世界最強”の戦闘機なのか?
 現時点で米国から42機の空軍仕様F-35Aを購入することになっており、引き続いて海兵隊仕様F-35Bも購入する可能性が高いとなると、日本(とりわけ日本政府や国会)には、ますます純国産の戦闘機を開発する雰囲気が薄れてしまうであろう。これまで、日本政府はF-1戦闘機、F-2戦闘機(アメリカの強力な干渉があったため純国産とは言えないのだが)と曲がりなりにも国産戦闘機を細々と製造してきた。だが、F-35を積極的に導入する姿勢は、もはや新鋭戦闘機の独自開発は断念する腹ではないかとみなされても仕方がない。
日本が独自に開発製造したF-1戦闘機(写真:三菱重工)
基本的には日本が開発したものの無理矢理アメリカが機体の一部を製造し共同開発となった日本製F-2戦闘機(写真:三菱重工)
もっとも「日本がF-35のような最先端戦闘機を開発するとなると、莫大な研究開発資金がかかり、とても日本の国防予算レベルではまかないきれない」と主張する人々も少なくない。今回のF-35調達は、ほとんどのパーツをアメリカから持ってきて、日本企業は“組み立て作業”をするだけのノックダウン方式である。日本の国防技術伸展には全く利するところのない調達方式だが、「莫大な額に上る研究開発費を考えると、世界最強の戦闘機を入手できるという日本にとっての国益を優先させるべきである」との声も聞かれる。米空軍のF-35プログラム関係者たちは、「F-35ステルス戦闘機は、現在改良中のソフトウエア(とりわけミッションデータファイルと呼ばれる戦闘情報システム)の開発とインストールが完成すると、米空軍ドクトリンの根幹をなすOODA(監視・情勢判断・意思決定・行動)ループの回転速度(参照:拙著『アメリカ海兵隊のドクトリン』芙蓉書房出版)が、中国やロシアの最新鋭ステルス戦闘機のパイロットのそれよりも高速になるため、中国やロシアの最新鋭第5世代戦闘機はF-35の敵ではなくなる」と豪語している。したがって、F-35に搭載するミッションデータファイルなどのソフトウエア部分が完成した暁には、航空自衛隊は“世界最強”の戦闘機を手にすることになる、というわけだ。


しかし、現実には決してその通りにはならない。アメリカ国防総省運用試験評価局(DOTE)のロバート・ベラー新局長が公表した報告書によると、F-35の初度実用試験評価が完了予定時期に近づいているにもかかわらず、要求基準をするための改良作業が山積しており、心許ない状況が続いている模様である。とりわけ、F-35の“強さ”を支える源の根幹をなすミッションデータファイルの開発が難航している。このソフトウエアが完成に近づくと仮想敵の状況も変化しており、さらにアップデートが必要となるというまさに“イタチごっこ”のような悪循環に陥っており、はたして予定どおりに中国やロシアの新鋭戦闘機をものともしない“世界最強”のF-35が誕生するのかどうか、アメリカ国防総省自身が疑問符を投げかけている状態だ。このような技術的問題以上に、「ともかくアメリカから最新鋭の兵器を輸入すれば安心」としている人々は、一国の国防力とは「適正な国防戦略」「訓練が行き届き、士気旺盛な国防組織」「最先端技術を手にした国防産業」が三位一体となっていなければならないことを失念しているようだ。

 とりあえず、ある程度の数のF-35を手に入れることは致し方ないとしても、アメリカの国益に大きく貢献する一方で、せっかくF-1からF-2(若干失速したが)と積み重ねてきた国産戦闘機製造技術を萎(しぼ)ませてしまっては本末転倒といわざるを得ない。アメリカだけを同盟国として頼り切っている日本側としては、アメリカの尖兵を自他共に自認しているアメリカ海兵隊の座右の銘に「永遠の敵も永遠の友もいない」という言葉があることを決して忘れてはならない。

〈管理人より〉我が国は、かつて世界の名機零式艦上戦闘機を開発、運用した国です。このF-35Aをバネにして、国産ステルス機の開発、既に進行していますが、ステルス機を探知するレーダーの開発を完全にして、軍事面でも世界をリードできる国になりましょう。


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