2015年5月20日水曜日

あくなき共産中国による「アジア太平洋覇権戦略」 ~東シナ海&南シナ海の現況~

【中国・尖閣近海に軍事拠点整備】

レーダー&滑走路設置…日米との有事想定

2014.12.22 02:02 http://www.sankei.com/world/news/141222/wor1412220004-n1.html


中国軍が東シナ海の沖縄県・尖閣諸島から約300キロ北西にある浙江省・南●(=鹿の下に机のつくり)列島で、軍事拠点の整備に着手したことが21日、分かった。複数の中国筋が明らかにした。最新鋭のレーダーを既に設置、ヘリポートを整備中で、軍用機の滑走路建設計画も浮上している。

 日米との有事を想定して危機対応能力を高めると同時に、東シナ海上空に設定した防空識別圏の監視を強化する狙いとみられる。南●列島は自衛隊や米軍の基地がある沖縄本島よりも尖閣に約100キロ近く、尖閣防衛に向けた日米安全保障戦略に影響を与えそうだ。

 海洋生物が多様なことから南●列島は国連教育科学文化機関(ユネスコ)の生物圏保存地域「エコパーク」に登録された自然保護区で、軍事利用推進の妥当性をめぐり議論を呼ぶ可能性がある。
 南●列島の関係者や軍事情報に詳しい関係筋によると、大小52の島からなる同列島で最大の南●島には今年秋、軍事拠点整備のため、数百人の軍関係者が上陸。軍が利用するための超高速インターネット通信網の敷設も始まったという。

【新軍事基地急造・レーザー兵器導入】 
尖閣強奪に動き出した中国の魂胆
2015111 150http://news.livedoor.com/article/detail/9663058/

 ついに、中国が尖閣強奪を本格化させる軍事的な動きを見せ始めた。沖縄本島より尖閣諸島に100キロも近い、中国浙江省温州市沖の南キ列島に新軍事基地を建設しだしたのだ。
 「軍が基地を建設し始めた南キ島は、界隈にある52の島々のうち最大級の大きさを誇るが、ここに数百人の軍人が昨年秋に上陸。今では島の高所に複数の大型レーダーが設置され、軍事用の超高速通信網の敷設も始まっているという。また、ヘリポートや大型巡視船の艦載機に使用されると見られる滑走路の建設も始まっており、今年中の完成を目指していると伝えられているのです」(自衛隊関係者)

 この南キ島には将来的に陸海空軍が駐留する予定だが、狙いは「ズバリ長年中国が目論んでいた尖閣諸島の強奪」()ともっぱら。そのため、日本政府も大慌てしている状態なのだ。
 「すでに防衛省や自衛隊筋では、これが尖閣奪取に向けた方策と評判になっている。日米両国では緊急会議を開き、この軍事施設への対応を協議しているほどなのです」(防衛省関係者)

 もっとも、尖閣奪取を狙う中国の動きはこれだけではない。昨年11月には中国政府傘下の軍事企業である『保利集団』が、「WB-1」と呼ばれるレーザー兵器を開発。これが南キ島の新軍事基地に配備される可能性も高まっているのだ。
 「この兵器は強力な電磁波を発し、人体の水分を沸騰させる新兵器。ビームを当てられた人間は命に別状はないものの、電子レンジに入れられたような耐え難い熱さを感じ、ヤケドを負った感覚になる。中国軍は東シナ海や国内でのデモ排除に活用するとうそぶいているが、尖閣上陸作戦の折にこれを阻止する海保隊員らに用いるのに最適で、『中国軍はこの兵器を使って尖閣を実効支配する青写真を描いている』と評判なのです」(前出の自衛隊関係者)

 ちなみに、昨年11月に広東省で開かれた航空ショーでは、最新鋭のステルス機『殱31』も公開された。抗日戦争終結70年の節目にあたる今年は、中国軍の動きが活発化すること必至といえそうだ。

石平氏&惠隆之介氏


中国の基地建設を騒ぎ立てるよりも日本は自ら防衛拠点を建設せよ
国際常識から見れば中国の行動は当たり前

南麂島の航空写真。2000メートル滑走路(写真の黄色線)を無理やり設置することは可能かもしれないが、本格的航空基地や軍港の建設は地形的に極めて難しいものと考えられる。(作図:CNS
 2014年暮れから日本のいくつかのメディアは、中国人民解放軍が「尖閣諸島から約300キロメートル北西の南麂(なんき)列島に軍事拠点を建設中である」と報道している。
 それらの報道によると、南麂列島の最大の島である南麂島(浙江省温州市平陽県南麂鎮)に、高速通信施設や最新レーダー施設それにヘリポートなどの整備が進められており、軍用機の発着が可能な滑走路も建設される計画だという。

若干「オーバー」な日本の報道

 日本メディアでは、中国の尖閣侵略脅威論の一環として関心が持たれているようであるが、中国側からは、中国脅威論を煽る「オーバーな表現の」報道ではないか、といった批判も出ている。一方、アメリカでは軍関係メディアが日本メディアの報道と中国側のコメントを共に簡単に紹介しただけで、主要メディアはさしたる関心を持っていない。
 日本メディアの報道では「尖閣諸島は日米の軍事基地が存在する沖縄本島からおよそ400キロメートル離れているため、尖閣諸島より300キロメートルの南麂島に軍事基地が建設されると、人民解放軍のほうが自衛隊・米軍よりも100キロメートル尖閣諸島に近い位置に軍事拠点を手にすることになる」といった点が強調されている。
そのため、南麂島に軍事施設が完成すると、人民解放軍の尖閣諸島に対する脅威が飛躍的に高まる、といった印象を与えている。さらに南麂島基地は「尖閣防衛に向けた日米安全保障戦略に影響を与えそうだ」というコメントを加えているため、あたかも南麂島に人民解放軍の強力な戦略拠点が出現するように受け止められかねない。
 確かに、中国本土沿岸からおよそ50キロメートル程度とはいえ、沖合の島嶼部に軍事施設を建設することは、人民解放軍の戦力にとってなにがしかのプラスになることは間違いない。しかし、南麂島に大規模な軍港や航空施設を建設することは地形的に考えて極めて難しい。そのため、南麂島基地を『中国軍が日米との有事を想定して尖閣近海に軍事拠点を整備』といったニュアンスで報道する日本メディアの姿勢は、中国側の批判が当てはまらなくもない。そして、そのような日本メディアの論調はアメリカ軍関係メディアは黙殺しているし、アメリカの主要メディアでは取り上げてもいない。

現時点でも劣勢な日本

 そもそも南麂列島に軍事拠点が誕生しようがしまいが、尖閣周辺海域・空域に対する軍事的優位性は、少なくとも距離の問題に限定するならば人民解放軍が自衛隊に対して現時点でも優勢と言える(ただし、アメリカ軍が本格的介入した場合はそう単純ではないが)。
 人民解放軍は上海から福州に至る東シナ海沿岸域に少なくとも6カ所の航空基地(戦闘機や爆撃機が発着可能な)を設置しており、5カ所の海軍基地・軍港を保有している。
例えば、近年建設された福建省の水門空軍基地から尖閣諸島へはおよそ370キロメートル、宮古島(尖閣諸島よりも人民解放軍の侵攻可能性が高い)へはおよそ570キロメートルである。このエリアの航空基地で最も遠距離に位置する上海から尖閣諸島へはおよそ640キロメートル、宮古島へはおよそ800キロメートルである。それに対して自衛隊の那覇航空基地(那覇国際空港と共用)からは宮古島まではおよそ285キロメートル、尖閣諸島(魚釣島)まではおよそ420キロメートルといずれも人民解放軍航空基地より短距離に位置している。

 しかし、那覇航空基地の次にこれらの島嶼に近接している航空自衛隊基地は新田原基地(宮崎県)であり、宮古島まで1010キロメートル、尖閣諸島まで1040キロメートルと、人民解放軍の6カ所の航空基地よりもはるかに遠方に位置している。したがって、人民解放軍の6カ所の航空基地に対峙できる自衛隊基地は那覇航空基地だけであり、明らかに日本が劣勢と言える。
 海軍施設の場合、温州から尖閣諸島へはおよそ360キロメートル、宮古島へはおよそ560キロメートル、遠方に位置する船山諸島の象山海軍基地からは、尖閣諸島へはおよそ500キロメートル、宮古島まではおよそ660キロメートルである。一方、海上自衛隊は沖縄に掃海艇基地を有しているものの、本格的海軍基地(駆逐艦やフリゲートといった主力艦の母港)は佐世保である。その佐世保軍港から尖閣諸島ならびに宮古島までは1020キロメートルと、距離的には圧倒的に海上自衛隊が不利な状況である。
 もちろん、戦力バランスは『距離』だけでなく航空機や軍艦の性能や数も加味して比較しなければならないが、海洋戦力の増強が著しい人民解放軍のそれら装備の多くの性能は自衛隊に迫りつつあり、一部は凌駕するものも現れるに至っている。そして、それらの主力兵器のこのエリアでの投入可能数に関しては、人民解放軍が自衛隊を圧倒している。
さらに、日本側にとって不利な状況なのは、長射程ミサイル戦力である。人民解放軍は、中国本土や、航空機それに艦艇から南西諸島のみならず日本全土を攻撃できる多種多様な長射程ミサイル(弾道ミサイル、巡航ミサイル)を多数(1000基前後)保有している。それに対して、日本はそのような攻撃兵器は保有していない。
 このように、尖閣諸島から先島諸島にかけての空域・海域における日中戦力バランスは、アメリカ軍の本格的軍事介入というシナリオが現実のものとなる以前の段階では、南麂島基地が誕生しようがしまいが、人民解放軍が自衛隊より優位に立っているのである。

自国周縁に軍事施設を設置するのは国際常識

 もちろん、人民解放軍としては東シナ海沿岸域に1つでも多くの軍事拠点を設置すれば、ますます東シナ海侵攻戦略を実現していくためには有利になる。また、中国本土よりわずか50キロメートル程度とはいえ、東シナ海に張り出した位置を占める南麂島に最新レーダー施設を設置すれば、昨年、中国が設定した東シナ海上空「ADIZ」(防空識別圏)の警戒監視に必要なレーダー網の強化になる。そして何よりも、自国領域の周縁部にできるだけ多数の、何らかの軍事施設を設置することは、国際的軍事常識に合致している。
 このような意味合いでは、中国領域の東シナ海沿岸域の島嶼部に、レーダー施設や通信拠点、それに本格的な航空基地とはいえないまでもヘリポートや滑走路などを設置していくのは、人民解放軍にとっては当然の作業である。南麂列島以外の沿岸部島嶼にもこの種の軍事施設が増設されたとしても、何ら不思議ではない。
 むしろ不思議なのは、「なぜ日本は南西諸島という最高の地形をフルに活用して各種軍事拠点を設置せずに、人民解放軍の侵攻戦略や戦力強化に一喜一憂しているのだろうか?」という日本政府・防衛当局それに日本メディアの防衛姿勢である。

南西諸島に防衛拠点建設を急げ

 日本の国防当局自身によって「島嶼防衛」の重要性が指摘され始めてから10年近くも経過しているにもかかわらず、日本政府がイメージしている島嶼防衛は「島嶼奪還作戦」、すなわち「占領された島嶼を取り返す」というロジックである。これは真の島嶼防衛戦略から大きく逸脱していると言わざるを得ない。そして、「島嶼奪還に必要」との妄想からオスプレイ中型輸送機や中古のAAV-7水陸両用強襲車をアメリカから大量に買い付けようとしている。
 しかし、そのような装備購入に大金を投じる前に、南西諸島にさまざまな軍事拠点(レーダー施設、航空施設、地対艦ミサイル部隊、地対空ミサイル部隊、小型~中型軍港など)を設置して日本各地から陸海空の部隊を配置転換して鉄壁な防衛態勢を築く戦略を実施することこそが先決事項である。これは、島嶼攻防戦それに水陸両用戦の戦例や理論から導き出せる鉄則である。
 東シナ海沿岸域における人民解放軍の新基地建設に対抗するという近視眼的理由ではなく、長く伸びている島嶼地形という日本の地理的特性に合わせた防衛戦略構築の第一歩として、遅ればせながらも南西諸島のいくつかの島に各種防衛拠点の設置を進めることが急がれる。
北村 淳氏
戦争平和社会学者。東京生まれ。東京学芸大学教育学部卒業。警視庁公安部勤務後、平成元年に北米に渡る。ハワイ大学ならびにブリティッシュ・コロンビア大学で助手・講師等を務め、戦争発生メカニズムの研究によってブリティッシュ・コロンビア大学でPh.D.(政治社会学博士)取得。専攻は軍事社会学・海軍戦略論・国家論。米シンクタンクで海軍アドバイザーなどを務める。現在安全保障戦略コンサルタントとしてシアトル在住。日本語著書に『アメリカ海兵隊のドクトリン』(芙蓉書房)、『米軍の見た自衛隊の実力』(宝島社)、『写真で見るトモダチ作戦』(並木書房)、『海兵隊とオスプレイ』(並木書房)、『尖閣を守れない自衛隊』(宝島社)、『巡航ミサイル1000億円で中国も北朝鮮も怖くない』(講談社)等がある。

もうどの国にも止められない中国の人工島建設

~米海軍に手出しをさせない仕組みとは~


南シナ海・南沙諸島(スプラトリー諸島)のジョンソン南礁で中国が進めている工事を写したとされる写真。フィリピン外務省提供(撮影日不明)。(c)AFP/DEPARTMENT OF FOREIGN AFFAIRS (DFA)AFPBB News

中国がすでに736億元を投入して建設を推し進めている南沙諸島のファイアリークロス礁人工島で、3000メートル級滑走路の本格的な建設がいよいよ始まった。
本コラムでもたびたび取り上げているように、この他にもクアテロン礁、ジョンソンサウス礁、ヒューズ礁、ガベン礁、スービ礁が“人工島”として生まれ変わりつつあり、ミスチーフ礁も中国がコントロールしている(参考:「中国のサラミ・スライス戦略、キャベツ戦術の脅威」「人工島建設で南シナ海は中国の庭に」「結局アジアは後回し?中国の人工島建設を放置するアメリカ」など)。
 このような動きを受けて、先週ドイツで開かれたG7外相会合で発せられた声明には、南シナ海や東シナ海での中国による軍事力を背景にした拡張主義的海洋戦略に対する“強い懸念”が盛り込まれた。当然のことながら、中国外務省はじめ中国共産党政府はこの声明に対して反発し、とりわけ日本とアメリカに対して強い不満を表明している。

中国に自制を求めたG7外相会合

 G7外相会合声明では、以下のように南シナ海と東シナ海での領域紛争に関連する懸念が書き込まれている。
G7(アメリカ、日本、カナダ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア + EU)は、領域あるいは海洋(における権益)に関する紛議を威嚇、強制、軍事力を用いて解決しようとする試みには断固として反対する。関係諸国には、国際法や国際調停システムを利用するなど平和的な紛争解決を図ることを呼びかける。G7は、永続的な地形の変化を海洋環境に加えてしまうような一方的行動に対する沿岸諸国の反対意思を尊重する」
 こうした原則的表明に加えて、次のように具体的な“名指し”に近い表現で中国に強く自制を求めた。
G7は、東シナ海と南シナ海における、大規模な埋め立て作業のような、現状維持を崩して緊張を高める一方的行動を憂慮し観察を続ける」
アメリカに対する中国の反駁

 このG7外相声明が発せられる直前にも、アメリカのオバマ大統領やケリー国務長官らが、南シナ海での中国による軍事力を背景にした威圧的政策を批判した。それらの批判に対して、中国外務省や共産党系メディアは下記のように強く反駁していた。
「南シナ海での領域紛争では、中国こそが被害者なのだ。中国の領域である南シナ海のいくつかの島嶼をフィリピンやベトナムは占領しており、飛行場まで設置している島嶼もある。ところが、これら諸国はあたかも中国の圧迫を受けているかのように見せかけることにより国際社会にアピールしている。そして、その見せかけを百も承知でアメリカ政府は南シナ海の領域紛争に干渉しようとしている。アメリカ政府は、第三国間の領土紛争には関与しないとしているにもかかわらず、南シナ海だけでなく東シナ海でも日本と中国の領域紛争に口出ししている」
「このようにアメリカ政府が干渉する真意は、南シナ海や東シナ海での紛争をあおり立てて、アジア太平洋地域におけるアメリカの影響力を確保しようという魂胆からであることは誰の目にも明らかである。アメリカの政治的指導者たちによる無責任な主張は、南シナ海での領域紛争をさらに引っ掻き回して地域の平和と安定に打撃を加え緊張を高める以外のなにものでもない」

日本に対しても強烈に非難

 G7外相会合声明が発せられると、中国共産党系英文メディアは上記のようなアメリカへの反駁に加えて、日本に対する強烈な非難を展開している。
G7外相会合声明に、わざわざ南シナ海における領域紛争が取り上げられたのは、日本がこの問題を書き込むように執拗に根回しをした結果である。日本はG7外相会合という多国籍枠組みを利用して、南シナ海で中国が周辺諸国を脅かしているかのごとき印象を国際社会に宣伝することによって、東シナ海でも日本が圧迫されているかのごとき演出をなそうとしているのだ」
「このような動機に加えて、日本は、安倍首相による第2次世界大戦降伏70年声明や、戦時の残虐行為に対して懺悔をしないという方針から国際社会の関心を薄れさせる、という意図もある。日本政府が自己中心的な利益と目的のためにG7という国際的舞台を利用したことは、まさに恥ずべき行為と言えよう」
「このような日本の動きは、中国が最近、ASEAN諸国、とりわけベトナムと平和的に領域紛争を解決しようとしている努力に水を指すものである。日本による南シナ海問題への介入は地域の安定と平和の維持を危殆(きたい)に瀕せさせようとするものである。・・・日本は、再び、誤ったタイミングで誤った地域に口出しするという愚かな過ちを犯しているのだ」
「人工島には民間施設を設置する」と説明

 上記のような日本やアメリカに対する反論・非難と同時に、中国共産党政府は「南シナ海に建設中の人工島には数多くの民間用施設が設置されることになり、中国のみならず南シナ海周辺諸国や南シナ海を利用する国際社会にとり大きな貢献をなす」という説明も公表した。
 中国当局による人工島建設に関する公式発表は極めて珍しい。中国外務省によると、南シナ海のいくつかの環礁での埋め立て作業によって誕生する人工島では、科学的研究活動、気象観測、環境保護活動、漁業活動などが許可されることになるという。
そして、それら非軍事的諸活動のために、航海用設備や施設、緊急避難施設、捜索救難用施設なども建設されることになることが明らかにされた。

中国海警や公船を配して「中国の海」を拡大

 もちろん、南シナ海に続々と誕生する中国人工島が、中国海軍を中心とする軍事拠点として利用されることは当然である。ただし、それらの人工島に非軍事的な民間施設が多数建設されることにより、人工島は単なる軍事施設ではなくなることになる。したがって人工島には海軍施設が存在することになるものの、人工島周辺海域の警備は第一義的には人民解放軍ではなく「中国海警(China Coast Guard)」が任じることになる。
 中国海警は法執行機関であるとはいうものの“第2海軍”として位置づけられている。実際に中国海警の巡視船は質量ともに強化され続けており、第5軍と位置づけられている「アメリカ沿岸警備隊」を凌駕して“世界最強”の沿岸警備隊になりつつあるとアメリカ海軍では警戒を強めている。
 しかしながら、中国海警はあくまで法執行機関である以上、中国海警の公船に米海軍や自衛隊の軍艦が先制的にアクションを起こすことは絶対に避けねばならない(たとえ防御的攻撃をなしても、軍艦による“非軍艦”に対する先制攻撃となってしまう)。
 したがって、人工島の“運用”が開始され、中国海警による警戒活動が実施されると、たとえ人民解放軍艦艇や航空機が人工島を本拠地にしていても、南シナ海周辺諸国やアメリカなどの軍艦は、中国人工島周辺海域に接近することをためらわなければならない状況となってしまうのである。
 そして、尖閣周辺海域のように人工島周辺海域にも中国海警その他の中国公船や民間船が常時姿を見せつつある状況を続けることにより、名実ともに「中国の海」は拡大していくのである。


共産中国が急速に「拠点化」を進める南シナ海


暴挙止められるか、中国の南シナ海「埋め立て」…「ストップ・チャイナ」へ転換を

 中国が埋め立てを進める南シナ海のファイアリクロス礁。左は2014年8月、右は今年3月撮影(米戦略国際問題研究所/デジタルグローブ提供・ロイター=共同)

2015.5.25 10:00更新 http://www.sankei.com/column/news/150525/clm1505250007-n1.html
南シナ海で中国が埋め立てを強行する岩礁の12カイリ内とその上空に、オバマ米政権が米軍の艦船と航空機を“突入”させるか否か、判断が注目されている。
 スプラトリー(中国名・南沙)諸島のファイアリークロス(永暑)礁などは今や、人工島に姿を変え、施設も形状をくっきりと現している。米政府もようやくここにきて、中国の軍事動向に関する年次報告書(国防総省)や、議会の公聴会での高官による証言などを通じ、若干のデータを交えながら現状を公式に明らかにし始めた。
 例えば、埋め立ての総面積が現在、約8平方キロにのぼり、昨年12月末時点から4カ月余りで4倍に拡大していることや、ファイアリークロス礁に建設されている滑走路は3千メートル級とみられ、「2017~18年に完成するとみている」(シアー国防次官補)ことなどである。そして「国際法の下では、どんなに(岩礁を)浚渫(しゅんせつ)しようとも、領有権の主張を強化することにはならない」(ラッセル国務次官補)と、牽制(けんせい)することしきりだ。
 だが、こうした政府の分析と見解は、国際軍事専門誌IHSジェーンズ・ディフェンス・ウイークリーなどが、衛星写真に基づきとっくに公表済みだ。内容も同誌などに比べると見劣りし、中国に配慮し続けてきたオバマ政権の脆弱(ぜいじゃく)性が見て取れる。

http://www.sankei.com/column/news/150525/clm1505250007-n2.html

 中国が人工島を「不沈空母」として軍事拠点化し、周辺海域を「領海」、その上空を「領空」と主張して、「防空識別圏」も設定することは火を見るよりも明らかだ。艦船と航空機、大型レーダー、ミサイルなどを配備し「不沈空母」の運用段階に入ることは、もはや時間の問題となっている。
 こうした動きと並行し、中国海軍の呉勝利司令官は4月下旬、米海軍のグリナート作戦部長に対し、米国など第三国に将来、人工島を開放することも可能だ、と初めて打診している。クセ球である。狙いが、自らの「領有権」を米国などに事実上、認めさせることにあることは論をまたない。
 2013年1月、国際法違反などでフィリピンに提訴された中国は、仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)での審理を、木で鼻をくくったかのように2年半近くにわたり無視し続けている。南シナ海での紛争回避を図るための「行動規範」の策定にも、食指をいっこうに動かさない。
 オバマ政権は中国をなだめすかすことに腐心してきた。だが、中国が確固たる意図と能力に基づき、人工島を急ピッチで建設している厳然たる事実に鑑みれば、外交で中国の暴挙を止められると期待することは、もはや幻想に近い。

http://www.sankei.com/column/news/150525/clm1505250007-n3.html

 オバマ政権のリバランス(再均衡)戦略も現時点では、中国に対する抑止力とはなっていない。米軍艦船の6割をアジア太平洋地域に移し、フィリピン軍基地などを共用するために整備を施したうえで、運用・即応体制を構築するまでには、なお時間を要する。その前に中国は、人工島を完成させ運用に着手する腹づもりなのだろう。
 「尻に火が付いた」と言わんばかりに、カーター国防長官は最近、岩礁の12カイリ内に米軍の偵察機や艦船を投入することを検討するよう、海軍などに指示した。12カイリ内は国連海洋法条約に基づく領海にほかならず、そこで米軍の艦船などを活動させることで、人工島の周辺は「中国の『領海』でも『領空』でもない」という、軍事的なメッセージを送ろうというわけだ。
 それも手遅れといった観がある。それでも人工島を「砂上の楼閣」と化すべくいちるの望みをかけ、政権がリスクを覚悟し継続的な示威行動に踏み切り、中国の威圧的な行動に手をこまねき暴挙を許してきた遠慮がちな対応を、転換することに期待したい。 ワシントン支局長・青木伸行)



【関連リンク】
「共産中国の脅威」から沖縄を守れるのか?~新たな島嶼防衛の動き~


0 件のコメント:

コメントを投稿