2015年9月30日水曜日

【戦闘ドクトリン講座】標的型ウイルス(メール)攻撃

《国家による武力攻撃の本質》

 他国から奪いたいものが領土や地下資源、知的財産、金融などの経済資本の場合、武力行使による攻撃の効果は大きい。
 しかし激しい実弾のとびかう戦争によって狙っていた資産自体が失われる可能性がある。
 また武力行使によって国際間の同意が得られず孤立する可能性が大きい。

合理的に相手国の国力を奪うことができて、外交戦略を自国に有利に進められる手段が必要となる。

《サイバー攻撃の恐怖~21世紀型植民地主義~》

 政治、経済、外交、科学技術、企業秘密などの情報が盗まれたり、壊され続けて、日本の世界における優位性が失われ、最後には国民の豊かさのすべてが奪われてしまうこと。
 個人でも組織でも攻撃をしかけられる。
相手の正体、意図、目的が判明しなくても戦争をしかけられている状態となる。今の日本の状態は、国家による「緊急事態宣言」が出されてもおかしくない状態である。

《サイバー攻撃の動機》

☆侵略国にとっての日本のメリット

   アジアでの軍事上の要衝(チョークポイント)であるが、武力侵攻が難しい国である。
   個人や企業の経済的資産
   最先端の科学技術、高い製造技術
   サブカルチャーとしての芸術文化と創造性
   高い労働者の資質(勤勉性、誠実さ、道徳的水準、スポーツ面での優秀性)
以上の要素がインターネット空間に蓄積されたもので活用されている。(資源化されている。)

☆ネット上の資源化されているソフトパワーへの攻撃

 ネット空間に作られたスパイインフラ(情報筒抜け基盤)を通じて行われる。
ハッキング、クラッキング、を行うだけではなく「兵器」に変化して経済や生活基盤を破壊していく。

《標的型ウイルス(メール)攻撃》その悪夢の実態

   PDF添付ファイルにウイルスを付着させて送信される。
メールの件名に受信者が「開いてしまう」ような文言が入力されている。ウイルス対策ソフトが役にたたない新開発のウイルスが付着されている。

RAT」ウイルス = 「Remote Access Trojan
PCを内部から破壊する「トロイの木馬」型ウイルス。ターゲットとなるPCに侵入して裏口(バックドア)を設定、本隊となる外部ウイルスを招き入れる。
PC内の必要な情報を外へ持ち出していく。PCをコントロールして盗撮、盗聴、周辺ネットワーク探査などを行う。


   攻撃者が事前に用意した「交信用サイト」に指令の手紙をおいておく。
   PC内部に侵入した「RAT」が「交信用サイト」にアクセスして、手紙を読むことで、外部からのPCのコントロールが可能となる。
RAT」がPCと接続するネットワークを調査し、外と通じる予備経路を複数確保する。(数週間から1年以上にわたって継続される。)
   「ネットワーク管理者パスワード」を盗む。ネットワーク内の情報が自由に外へもちだせる。(「情報筒抜け基盤」の形成)
   攻撃者より外へもちだすファイルを「暗号化」する。(攻撃者の正体、盗まれたファイルがわからないようにする。)
   「情報筒抜け基盤」を「形成」したRATは、絶えず勢力の拡大を図り、対象組織内部を徹底的に調べあげる。

   RATの動きからわかる攻撃者の「特性」(貪欲に活動するRAT)~金銭目的タイプの泥棒ハッカー、主張者タイプの活動家
   「勤務をするように」活動するRAT

優れたハッカーを大勢集めて統制できる、資金力のある大きな組織が存在。


《サイバーディフェンスの基本》

サイバー攻撃から身を守るには、まず攻撃側がサイバー戦を重視する理由を知る必要がある。

中国が平時にも攻撃をしかける理由は、自国のサイバー攻撃能力を誇示しつつも、各国の能力に関する偵察活動を行っているからだろう。

平時の情報収集は、有事の際の敵の行動予測を可能とする。

敵の制度的・技術的弱点を知り、敵がサイバー攻撃を「戦争行為」と認識する限界を試すことも重要だ。平時の活動は、より高度な「本番」の際の攻撃の予行演習でもある。

サイバー防衛の基本は、侵害された利益の特定からはじまる。

いまどきサイバー攻撃を受けない企業はないだろうが、実際には株価などへの悪影響を懸念し、被害を報告しない企業も少なくないという。被害情報公表が企業評価を高めるような発想の転換が必要だろう。

悪質なサイバー攻撃をしかける国家・国民は限られている。

こうした攻撃の対象となっている国々との連携を深め、日常的な情報交換とサイバー防衛手段の共同開発などを思い切って推進すべきだろう。

(『語られざる中国の結末』 PHP新書893 宮家邦彦著 2013年11月 (株)PHP研究所 より引用)


2015年9月27日日曜日

【ついに始動!安全保障関連法】日本の「国防軍」自衛隊の存在感を世界に示せ!

 決してアメリカのための安全保障法規の改正、立法ではない。
しかし世界、とりわけ北東アジアは、軍事面でのパートナーシップが強く希求されている。
 経済面での無関税での自由貿易と自由主義理念をベースにした国際的価値観を共有しながら軍事的協力を拡大する声が大きくなっていることも、アジア国際社会での要求である。

共産中国の「海洋覇権主義」と南シナ海、南沙諸島の「要塞化」、東シナ海の台湾と尖閣諸島へのあくなき野望から生まれてきたといえる「自由主義」価値観を共有しようという各国の動き
 
「国際社会で名誉ある地位を占めたい」我が国としては、TPPや対共産中国「覇権」抑止の機会を戦略的にとらえて、アジアの責任ある一等国をめざして、しがらみに左右されない「大国家戦略」を策定、実践し、戦前のような「超大国」をめざしてほしい。

世界は、アジアは、日本を、日本軍の再来たる「国防軍」自衛隊を待っている!


現実味ない「巻き込まれ論」 古森義久

2015.9.27 11:30更新 http://www.sankei.com/column/news/150927/clm1509270012-n1.html

集団的自衛権という言葉から国際的にまず連想されるのは、北大西洋条約機構(NATO)だろう。
 東西冷戦の長い年月、北米と西欧の諸国が「一国への攻撃は全加盟国への攻撃とみなして共同で反撃する」という集団自衛を誓約した多国間同盟である。集団的自衛権の行使可能な態勢でソ連の強大な軍事脅威をみごとに抑止し、東西両陣営間の平和を保った。
 米国のブッシュ前政権時代、そのNATOに国防総省首席代表として駐在したブルース・ワインロッド元国防次官補代理に日米の集団的自衛権について問うてみた。日本の安全保障関連法に対し「日本は自国の安全に関係のない米国の戦争に巻き込まれる」という日本側の一部の主張への考察だった。
 「たとえ米国独自の戦争や紛争への他国の支援が必要な場合でも米国の軍事能力は全世界的であり、その対象地域を主眼に米軍主体の態勢を組むため、その地域に直接関わりのない国の軍事支援を求める必要がありません。例えばバルカン半島の紛争に日本の軍事支援を要請する理由がないのです」


ワインロッド氏は「ジャパン・ソサエティー」研究員として日本に約半年滞在し、日米防衛問題を研究した。その経験を踏まえた感じでさらに語った。
 「もし米国が軍事的支援を要請しても、今回の日本の安保関連法では日本の安保利害を左右する、あるいは存立にかかわる事例でなければ、日本はなにもできない。さらには拒むことができる。実際に米国のその種の要請を同盟国が断ることは頻繁にあります」
 同氏は米国が日本を自国への意味の少ない軍事紛争に無理やりに関与させる可能性は現実にはないと明言するのだ。米国が日本に支援を求めうる事態としては同氏は日本の安全保障に明らかに重大な影響を及ぼす中国や北朝鮮による軍事攻勢、日本自体にも害を与える国際テロだけを指摘した。
 同氏は米側がオバマ政権はじめ議会でも超党派で日本の今回の安保関連法の成立を日米同盟の強化、さらには年来の片務性の縮小として歓迎していることを強調した。そのうえで日本側の同法反対派の主張どおりに日本の集団的自衛権の行使禁止を続けた場合の危険について語るのだった。


「米国側でも従来、米国自体のグローバルな安保上の責任を日本に支援してほしいという期待はまったくなかった。しかし日本の防衛に直接に資する米国の安保努力への日本の支援への期待はずっとありました。日本自体の国家安全保障が影響を受ける状況下での米国の防衛努力にも日本が集団的自衛権の禁止を理由に協力をしないという状態がこのまま続けば、米国民や議会の多数派は自国が日本防衛のためになぜこれほどの軍事関連資産を投入し続けるのかという疑問を必ずや提起することになったでしょう」
 同氏はそして「もし日本がいつまでも集団的自衛権の行使容認を拒むならば、日米同盟の基盤はやがて確実に深刻な侵食の危険に直面することになったでしょう」と強調した。
 だが奇妙なことに日本では同盟相手の米側のこうした一枚岩といえる反応は与党からもまず提起されないようなのだ。(ワシントン駐在客員特派員)

安全保障法と自衛隊派遣恒久法



【成立「安保法制」】危機対処へ自衛隊の即応力示せ
帝京大学教授・志方俊之

2015.9.24 05:01更新http://www.sankei.com/politics/news/150924/plt1509240003-n1.html

 《人員救出のための新たな任務》

 安全保障関連法案の成立はゴールではなくスタートである。現場の部隊が、新しい法律で可能となる任務を遂行するのに必要な態勢をとるため、何をどのように準備するかを検討しなければならない。少なくとも「行動基準(ROE)」を決め、追加が必要な装備、変えるべき編成、訓練の基準を定め、実際に訓練を繰り返さなければならない。
 今回の法整備で自衛隊の現地部隊に追加される任務の細部までは不明だが、次の6つの活動について考えておく必要があろう。
 (1)存立危機事態(機雷掃海や弾道ミサイル迎撃)(2)重要影響事態(空中給油や弾薬の提供)(3)武器等防護(米軍などの武器を防護するための武器使用)(4)外国における人員救出(いわゆる駆け付け警護)(5)国際平和共同対処事態(国際的紛争に対処する米軍や多国籍軍への後方支援)(6)国際連携平和安全活動(国連が直接関与しない紛争後の人道復興支援)-である。


これらのうち、(1)(2)(3)のケースは、いきなり現地の部隊指揮官が微妙な判断を求められるものではない。それまでに国会での審議があり、内閣レベルで支援の範囲や程度が論じられて決定される。
 また海上自衛隊や航空自衛隊が活動する場合には、現地部隊の司令部に作戦立案上の難しさはあろうが、部隊の活動そのものは通常の作戦要領と大きく変わらない。
 ある海域で他国の艦艇に給油するとか、飛行場から別の飛行場まで人員や物資を空輸するわけで、現地の一隊員が自分の判断を求められることはない。
 もっとも注意すべき活動は(4)の「外国における人員救出」のケースである。時間に余裕があり、計画的に救出作戦をできるケースもあるが、一般に現場は相手との距離が近く、数人の自衛隊員がいきなり救出を要請されるケースもあり得る。

 《解消される「片務性」》

 現在、南スーダンに派遣されている陸上自衛隊の国連平和維持活動(PKO)派遣部隊には半年以内にこの任務が追加される可能性もある。もし、そうであれば、次に派遣を予定されている部隊のため、直ちに「行動基準」を決めなければならない。


これまでのPKO部隊やイラクでの人道復興支援部隊の活動で、このような微妙なケースは実際にあったのではなかろうか。
 近くで活動している外国のPKO部隊は、自衛隊が危険にさらされたときには救援を行うが、その逆の場合、自衛隊は見ぬふりをすることとして派遣されてきた。危険を伴うPKO部隊間の相互支援におけるこうした「片務性」を、自衛隊の指揮官は心苦しく感じていたといわれている。しかし疑問をとなえることは「政治的発言」となるため、控えていた。
 安保法制の審議において自衛官のリスクが論議されたことは歓迎するが、野党はPKO派遣で自衛官のリスクはこれまで皆無であったと思っていたのだろうか。もしリスクを真剣に考えたのだとすれば、大いに成長の跡がみられる。
 今回の法整備によって、現地に派遣される部隊は、想定される事前の訓練が可能となり、指揮官も現場で遅疑逡巡(しゅんじゅん)せずに即応できることから、全体としてリスクは低減するものと考えられる。


 《南西防衛への「戦力開発」を》

 安保法制の背景にあるのは、中国における急速な軍備拡大に対する危機感である。
 尖閣諸島で相次ぐ海警船舶および潜水艦の領海侵犯、海自護衛艦に対する射撃管制レーダーの照射、空自偵察機への戦闘機の異常接近、日中中間線近くでの多数の採掘施設の建設、南シナ海における滑走路建設など、中国は「力による現状変更」を強行してきた。
 さらに9月3日に行われた「抗日戦争勝利70周年」軍事パレードでも分かるように、核弾道ミサイル戦力の強化を顕示した。非核政策を堅持するわが国としては、米国の核抑止力に全面的に依存することから、日米の協力体制を強化する必要性を多くの国民が感じとったはずである。
 野党が学生や知識人を使って安保法制の成立を阻止しようとしたが、それをなし得なかったのは議席数のせいだけではない。中国の軍事的拡大にいかに対応するのか、野党としての政策や、そのための法整備の代案を国民に示し得なかったことによる。
 自衛隊が今回の法制に盛られた新しい任務に関して準備することは、先に示した「行動基準」という狭い意味のものだけではない。とくに陸上自衛隊は、南西諸島防衛に適した「戦力開発」を行わなければならない。監視部隊やミサイル部隊を配置するだけではなく、上陸した敵を排除し島を奪還する「水陸両用団」、空自の新型輸送機で全部隊を運べる装備と編成を持つ「即応機動連隊」を開発し、西への備えを強化しなければならない。(しかた としゆき)


【戦闘ドクトリン講座】潜水艦音響監視システム(SOSUS)

最新型の潜水艦音響監視システム(SOSUS)とは?


複数の防衛省、海自幹部らによると、最新型のSOSUSは両観測所から海底にケーブルを延ばし、水中聴音機などで潜水艦の音響、磁気などを収集、動向を監視する仕組み。

日米で中国潜水艦監視網
沖縄を拠点 太平洋をカバーリング

中谷元・防衛相は2015年9月25日の記者会見で、最新型の潜水艦音響監視システム(SOSUS)について「海上自衛隊の沖縄海洋観測所(沖縄県)と下北海洋観測所(青森県)には、存在しないと(海上幕僚監部から)説明を受けた」と述べた。

 両観測所について、中谷防衛相は、
「水温や塩分、潮海流、海中雑音など海洋環境の測定を行っており、SOSUSとはまったく異なる」と説明。
「日米で一体運用している事実はない」と強調した。
 両観測所に関する説明を受けたのは「防衛庁長官時代にはなく、今回、防衛相に就任してから受けた」と語った。

2015年9月25日金曜日

北極海から南シナ海・西太平洋へ・・・拡大する中国共産党の野望

「中国は朝鮮半島や沖縄も影響圏に…」京都「正論」懇話会

村井友秀・東京国際大教授が講演
2015.9.28 19:20更新 http://www.sankei.com/west/news/150928/wst1509280069-n1.html
  京都「正論」懇話会の第48回講演会が28日、京都市上京区の京都ブライトンホテルで行われ、東京国際大教授の村井友秀氏が「『中華民族の偉大な復興』とは何か」と題して講演。中国について「世界一の大国というイメージを持っており、歴史的に朝貢国だった朝鮮半島や沖縄県までは影響圏に置きたいと考えている」と分析した。
 村井氏は、安全保障に関して「集団的自衛権というのは攻撃された他国を見捨てずに助ける“いい国”になることだと国際的には考えられている。国連憲章にも記載されており、国連加盟国にとって義務ともいえる」と述べた。
 安保関連法が成立したことについては「自衛隊員が戦争に行くリスクは確かに高まったが、東シナ海での米国のプレゼンスが高まり、日本が直面する戦争の可能性を減らした」と評価した。

《維新嵐コメント》めざめてください!日本国民のみなさん
安全保障関連法は、アメリカ合衆国の軍事力を共産中国以外のアジア各国の軍事抑止力として担保するとともに、我が国の「国防軍」たる自衛隊が、我が国の国防線ならびにアメリカの西側の国防線を防衛するための法律と考えていいでしょう。いくらアメリカ追随が嫌だ、といってもアメリカの軍事力なしにアジアの海洋、資源、領土権益を防衛することはできません。まさに我が国の「国益」を守り、「侵略戦争」をおこさせないための法律枠なのです。

人工島に軍用滑走路出現、南シナ海が中国の手中に

米国の批判も時すでに遅し、誕生しつつある南沙基地群

北村 淳 2015.9.24(木)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44833
ファイアリークロス礁での基地施設建設状況(写真:CSIS/AMTI

 9月に入ってから撮影された南沙諸島の航空写真(CSIS/AMTI発表)によると、中国が南沙諸島に建設している人工島のファイアリークロス礁とスービ礁、それに中国が以前より占拠しているミスチーフ礁の3カ所で、軍用基地として使用可能な3000メートル級滑走路がそれぞれ建設されているのが確認された。

急がれていた南沙諸島への拠点確保

 これまでのところ、人民解放軍の南シナ海に対する前進拠点は、西沙諸島の「永興島」であった。
 永興島は、軍・政府関係者ならびに漁業関係者をはじめとする民間の人々も居住して1500名ほどの人口を抱え、南シナ海の“中国の海洋国土”を管轄する三沙市行政機関が設置されている。
 そして、人民解放軍海軍部隊と武装警察部隊が常駐しており、2700メートルの滑走路を有する航空施設(ちなみに沖縄の米海兵隊普天間基地の滑走路も2740メートルである)と5000トン級の艦船が接岸できる港湾施設が設置されている。
 したがって、中国海軍の各種戦闘機はすべてこの航空施設を利用することができ、中国海軍フリゲートやコルベットも永興島港湾施設を前進拠点とすることができる。

このように、海南島の海軍基地や航空基地からはおよそ400キロメートル、そして中国本土広東省の航空基地からはおよそ600キロメートル南シナ海に前進した永興島は、海軍の前進拠点と考えることはできた。
 しかし、その前進拠点からでも南沙諸島の中心海域までは750キロメートル(400海里)前後はある。そのため、万一フィリピン沿岸域にアメリカ空母が展開した場合には、人民解放軍戦闘機は圧倒的に「距離の不利」に直面してしまう。また軍艦、とりわけコルベットやミサイル艇など小型軍艦の場合、永興島から南沙諸島まで急行しても半日以上かかる。このように南沙諸島での作戦行動には、何と言っても「距離の制約」がつきまとっていた。
 したがって、中国海軍や海軍よりも頻繁にパトロール活動を展開することになる中国海警(沿岸警備隊)にとっては、南沙諸島に前進拠点を確保することは絶対に必要であり、それも急務とされていたはずだ。



あっというまに姿を現した人工島

 本コラムでも2013年以来しばしば南シナ海問題を取り上げてきたが、中国による人工島建設を直接取り上げたのは20146月であった。それは、「ジョンソンサウス礁での埋め立て作業が確認され、ファイアリークロス礁での埋め立て計画も明らかになった」という状況であった(本コラム、2014626日「着々と進む人工島の建設、いよいよ南シナ海を手に入れる中国」)。


その後、中国による南沙諸島での環礁埋め立て、すなわち人工島建設は急速に進展し、201410月にはファイアリークロス礁に加えてジョンソンサウス礁、そしてガベン礁での人工島建設が確認された(本コラム20141016日)。それから半年後には、さらにクアテロン礁、そしてヒューズ礁でも人工島建設が確認された。そして、ファイアリークロス礁には3000メートル級滑走路や港湾施設が建設されるであろうとの予測も紹介した(本コラム、2015312日「人工島建設で南シナ海は中国の庭に」)。
 引き続き20154月にはスービ礁でも人工島建設が確認され、南沙諸島での中国による人工島建設は6カ所に達した。この他、人民解放軍が占拠しているミスチーフ礁でも埋め立て作業が活発になっている状況も確認され、中国による7カ所の人工島建設作業が確認されたのだ。
 ことここに至って、ようやくアメリカ政府は中国に自制を求め、G7外相会合でも懸念が表明されるに至った(本コラム、2015423日「もうどの国にも止められない中国の人工島建設」)。
 もちろん、中国にとっては“外野からの雑音”など何の影響も与えることにはならず、人工島建設は急ピッチで進められた。しかし、ファイアリークロス礁に建設されていた滑走路が着々と完成に近づき、その他の人工島でも滑走路や港湾施設それにヘリパッドなどが次々と建設されつつある状況に業を煮やしたアメリカ海軍が、CNN取材陣を搭乗させて「人工島建設状況の実況中継」をするや、ようやくアメリカ政府も強く中国を批判するに至った(本コラム、2015528日「中国の人工島建設に堪忍袋の緒が切れつつある米軍」)。
 それからしばらくすると、中国政府は人工島建設打ち切りの意向を表明したが、実際にはほぼ完成に近づいていたのである。
まもなく“南沙基地群”が誕生

 その後も人工島内の航空施設や港湾施設それに格納庫をはじめとする様々な建造物の建設が続けられ、冒頭で述べたように9月上旬に撮影された航空写真には、3つの人工島にそれぞれ滑走路が誕生しつつある状況が確認された。中でもファイアリークロス礁の航空施設は滑走路や格納エリアなど稼働が間近に迫っているのが明らかである。
 いずれも3000メートル級滑走路であるため、人民解放軍の戦闘機や爆撃機それに哨戒機や早期警戒機などあらゆる航空機の発着が可能である。それらの環礁・人工島には、航空施設と同時に港湾施設も建設されており、少なくとも3カ所の統合海洋基地が出現することになるのは確実だ。
 また、他の人工島にもヘリパッドや小型機用の滑走路と港湾施設が建設されているため、人工島をネットワーク化することにより、極めて強力な「人民解放軍南沙基地群」が誕生する運びとなるであろう。


日本にとって鬼門となる南シナ海

「南沙基地群」を拠点として幅広い活動を展開するのが、沿岸警備隊である中国海警の巡視船ということになるであろう。
 そして、巡視船の背後で睨みをきかせるのが中国海軍だ。中国海軍は「南沙基地群」にコルベットや高速ミサイル艇それに哨戒機などを配置して、南シナ海中部から南部にかけての海洋統制力が格段に強化するものと思われる。
 また、中国空軍の早期警戒機も配備され、人工島に設置されるレーダー施設とあいまって、南シナ海全域の航空統制力も確実に中国優位になるものと考えられる。米軍関係者の多くは「中国が南シナ海の広範囲にわたる空域に中国版ADIZを設定するのは時間の問題」と覚悟を決めている。
北村04
このように人民解放軍が「南沙基地群」という前進拠点を手にすることにより、南シナ海はますます名実ともに“中国の海”と化すことは避けられない。
 そして有事においては、人民解放軍のミサイル爆撃機や戦闘攻撃機が南沙基地群を拠点にすることにより、フィリピンやインドネシアはもとよりオーストラリア北西部も攻撃圏内に収めることとなる。そのため、それらの海域のシーレーン(日本にとっては南シナ海シーレーンの迂回航路)も完全に人民解放軍のコントロール下に入ってしまうこととなる。

 このように、南沙諸島の人工島に姿を表しつつある「南沙基地群」の誕生によって、南沙諸島をめぐり中国と紛争中の諸国のみならず、日本やアメリカにとっても南シナ海は極めて厄介な海となることは確実である。

「北の海」に進出した中国海軍艦艇 その意図は? 日本の備えは?
吉富望 (日本大学総合科学研究所教授)

20150922日(Tue)  http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5397

 米国防省は92日、アラスカ州沖のベーリング海の公海上で中国海軍艦艇5隻を確認したと発表し、その後、この中国艦隊がアリューシャン列島周辺の米国領海12カイリ内を通航したことを明らかにした。近年、中国の海洋進出はアジアの枠を超えて活発化しているが、日本では(米国でも)東シナ海、南シナ海およびインド洋という「南の海」における中国の活動が関心の的となっている。
Getty Images

 その虚を突くように突如、ベーリング海という米国本土に隣接する「北の海」に初めて出現した中国艦隊の行動に込められた意図は何か、そして日本(日米)が中国海軍の「北の海」への進出を踏まえて講じるべき備えとは何か、考えてみたい。 
アリューシャン列島地図(iStock

 まず、ベーリング海に進出した中国艦隊の内訳はミサイル駆逐艦1隻、フリゲート2隻、揚陸艦1隻および補給艦1隻とみられる。これら5隻は820日から28日までの間、日本海でロシア海軍との共同訓練に参加した後、829日に宗谷海峡を東航してオホーツク海に入ったことが海上自衛隊によって確認されている。
 中国艦隊はその後、カムチャツカ半島とアッツ島との間の海域を北上してベーリング海に入り、93日の夜にアリューシャン列島を通過(南下)して北太平洋に入る際に米国領海内を通航した。中国側は本領海内通航について米国側に事前に通知していないが、米国防省は本領海内通航を無害通航とみなし、国際法上の問題は無いと述べている。なお、中国艦隊がベーリング海で行動した時、オバマ大統領はアラスカを訪問中(831日~93日)であった。
 この中国艦隊の行動に関する中国国防省のコメントは「通常の訓練としてベーリング海に入ったものであり、特定の国に焦点を当てた訓練ではない」である。ちなみに、中国艦隊が米国領海内を通航した93日は北京の天安門広場で大規模な軍事パレードが実施された日でもある。

中国艦隊の行動に込められた意図とは

 米国は現在、安全保障分野で中国に対する苛立ちを強めている。その背景は中国による南シナ海での大規模な埋め立てと基地建設の動き、および米国政府機関や企業に対するサイバー攻撃である。中国の習近平国家主席は922日から28日まで米国を訪問するが、この際には安全保障分野でオバマ大統領との厳しい応酬が予想されている。
 そのオバマ大統領がアラスカに滞在しているタイミングで中国艦隊がベーリング海に進入し、米国領海内を航行することは、国際法上は問題が無いとはいえ米国の苛立ちを逆撫でしかねない。加えて、93日の軍事パレードで米本土を攻撃できる大陸間弾道弾を誇示すると同時に米本土近くで海軍艦艇が示威的な行動を行うことは、一種の挑発と言える。

習近平の意図か、海軍の単独行動か?
 こうした挑発的な行動に込められた意図に関しては様々な見方ができる。まず、訪米前に安全保障問題での強硬姿勢を暗示して米国を牽制しようとする習主席自身の意図の反映との見方ができる。
 他方、もし今回の中国艦隊の行動が軍の独断で行われたのであれば、軍の対米強硬姿勢を習主席に見せつけ、安全保障分野での対米譲歩を許さないとする政治的圧力であったとも受け取れる。また、中国軍が米本土近海でも行動できることを米国に見せつけ、中国近海における米軍の行動を控えるよう促す意図があったとの見方もできる。さらに見方を変えれば、93日の軍事パレードでの海軍の露出度が小さいため、政治指導部、軍中央、あるいは海軍が海軍だけのアピールの場を設けたとも想像できる。
 こうした外交的、内政的、組織的意図とは別に、今回の中国艦隊の行動は北極海への進出に向けた中国の動きの一環との見方もできる。近年、地球温暖化によって北極海の結氷海面は徐々に減少し、それに比例して中国にとっての北極海の経済的価値は徐々に高まっている。
 第一の価値は北極海航路である。北極海航路は欧州と中国との間をスエズ運河経由の南回り航路に比べて短い距離で結ぶため、運航コストの削減が期待できる。また、南回り航路が政情不安、テロ、海賊、領土を巡る紛争などの危険を孕んだ海域を通航する一方、北極海航路は比較的安全性が高い。そして、第二の価値は埋蔵されている資源である。米国地質学研究所は、地球上の未発見資源の22%の石油と天然ガスが北極に眠るとの調査報告を2008年にまとめている。
 中国は1990年代以降に北極での科学的調査を本格化させ、2004年には北極研究所をノルウェーのスバールバル諸島に設置した。2012年に中国は北極評議会の常任オブザーバー資格を取得し、同年には中国の砕氷調査船が北極海航路を航行してアイスランドとの間を往復した。他方、中東からの原油輸入を含む貿易面で、中国にとって南回り航路が最も重要であることに変わりはない。資源開発に関しても、中国海洋石油総公司が2013年にアイスランドの企業と石油・天然ガス開発の共同企業体を設立したが、開発の成否は不透明である。
日本(日米)が講じるべき備えとは
 今回の中国艦隊の行動に込められた意図の特定は困難であるが、日本(日米)は今後想定される様々な可能性に対処できるよう備えておく必要があろう。まず、中国の意図が米国への対抗意識の表明である場合には、米国自身が引き続き地域の平和と安定に関与する意志と能力を強調することが重要であり、日本としては米国を強力に支える姿勢を示すべきだ。この点で、日本が安全保障分野で米国とより密接に協力する根拠となる平和安全法制が成立した意義は大きい。
 一方、中国の意図が北極海への軍事的関与の序曲である場合、日本(日米)の備えはより具体的なものとなる。もちろん、中国の軍事的関与が北極海の安全保障に資するものであれば歓迎できる。しかし、東シナ海や南シナ海での高圧的で一方的な中国の海洋活動を見れば、その北極海での軍事的関与を楽観視はできない。
 では、日本(日米)の北極海の安全保障に関する方針を確認してみよう。米国は「包括的な北極政策」(2009年)、「北極圏での作戦と北西航路に関する報告書」(2011年)、「北極圏国家戦略」(2013年)などの文書で北極圏の安全保障への関与を明示し、軍や沿岸警備隊が警戒・監視等を実施している。
 日本では「国家安全保障戦略」が北極海について「航路の開通、資源開発等の様々な可能性の広がりが予測されている(中略)同時に、このことが国家間の新たな摩擦の原因となるおそれもある」との認識を示しているものの、具体的な取り組みへの言及は無い。また「平成26年度以降に係る防衛大綱」の中には「北極海」の文言も見当たらない。これらが示すように日本は北極海での安全保障に関して方針も具体的な備えも欠いている。
 中国軍の北極海への軍事的関与を見据えた場合、日本としても自衛隊に何らかの備えをさせる必要性が浮上する。まず北極海とその周辺に係る情報収集・分析能力の向上が課題となる。この分野では米国との協力が鍵だ。
 また、自衛隊がこの地域でプレゼンスを示し、作戦能力を高めることも重要となる。航空自衛隊はアラスカで毎年実施される米軍主催のレッドフラッグ演習に継続的に参加しており、20158月の同演習では航空自衛隊に加えて陸上自衛隊(第1空挺団)も初めて参加した。海上自衛隊にも当該海域で米軍との共同訓練等を行うことを期待したい。なお、北極海航路のチョークポイントであるベーリング海峡は機雷等で封鎖された場合の影響が甚大であることから、同海峡の安全確保について米国、ロシア等の関係国と協議し、訓練を行うことも検討に値する。
 他方、中国本土と北極海を結ぶシーレーンは、バシー海峡を通航する場合を除き日本周辺の海峡(宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡、大隅海峡、宮古海峡など)を経由することとなる。特に、宗谷海峡と津軽海峡は中国本土と北極海を短時間で結ぶ重要な海峡である。日本がこの地政学的アドバンテージを生かすためには常続的に警戒・監視を行い、敵対的な通航を拒否できる態勢が不可欠だ。
 近年、自衛隊の体制は南西諸島方面へのシフトが顕著であるが、中国軍が「北の海」にも目を向けるのであれば、宗谷・津軽両海峡の防衛を含む「北の備え」は今後重要になる。加えて、日本周辺海域から北極海に至る経路のオホーツク海と北太平洋において海空自衛隊が米軍とともに警戒・監視等を行える体制を構築することも必要となる。
 こうした「北の海」を睨んだ体制は自衛隊に更なる活動範囲の拡大と新たな能力の保有を求めることとなる。日本政府はまず、米国等と協調しつつ北極海の安全保障に関する方針を確立し、それに基づいて自衛隊への資源配分を適切に行う必要がある。同時に、自衛隊にも統合の進展および陸海空各自衛隊の合理化・効率化を推進し、資源を捻出する努力が求められる。
 中国が東シナ海や南シナ海で高圧的で一方的な海洋活動を行っている現実を踏まえれば、日本としては北極海での中国の活動に警戒感を持たざるをえない。他方、中国の平和的な海洋活動については大いに歓迎し、これと協力する姿勢も重要である。同時に、航行の自由を確保するための国際的な取り組みに中国を巻き込み、国際協調へと誘う努力も忘れてはならない。グローバルな海洋国家である日本は、こうした硬軟取り混ぜたアプローチによって相応の役割を果たすべきだ。
 このように、北極海での中国の経済権益は今のところ限定的であり中長期的にも不透明だ。しかし、米国やロシアなどの大国が北極海に目を向ける中、大国を自認する中国が北極海への関与を大国の証と考えても不思議ではない。したがって、中国艦隊が北極海につながるベーリング海に入った意味は、中国が軍事的に北極海に関与する序曲との見方もできる。


【「沖ノ鳥島」を持ち出す中国の暴論】

南シナ海での横暴は棚上げ~権益奪い取ろう

と虎視眈々~
2015.10.1 11:00更新 http://www.sankei.com/west/news/151001/wst1510010001-n1.html
2014年6月に土台の設置が確認された海洋プラットフォーム(第6基)
(防衛省提供)
 南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島で人工島を造成し、国際的な批判を受けている中国が、日本の沖ノ鳥島を持ち出して反論している。自らの行いを正当化するために、「沖ノ鳥島を『人工島』にしようとしている日本には、われわれ中国を批判する資格はない」といっていることになる。だが、その中国は早くから沖ノ鳥島の戦略的重要性に気がつき、虎視眈々とその権益を奪い取ろうとしているという。

中国が注目する島

 「日本はコンクリートで沖ノ鳥島を人工島に仕立て上げ、それを根拠に排他的経済水域を主張している。他国を批評する以前に自分の行いを見つめるべきだ」
 今年8月にマレーシアのクアラルンプールで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)閣僚会議で、中国の王毅外相が南シナ海における人工島埋め立てに懸念を表明した日本をこう牽制(けんせい)した。
 国連海洋法条約では、島の場合は領海、排他的経済水域(EEZ)、大陸棚を設定できるが、岩の場合は領海は設定できるものの、EEZと大陸棚は設定できない。沖ノ鳥島に関しては、日本が島だとしているのに対し、岩だと反論してきた中国はここにきて、人工島だと言い始めたことになりかねない。
 ちなみに人工島の場合は領海は設定できない。王毅外相の発言は、これまでの岩だとする主張を転換し、中国政府が「沖ノ鳥島は人工島だ」との見解に変更する意図があるかは今のところ不明だ。
だが、その中国は沖ノ鳥島の戦略的重要性に誰よりも着目している。沖ノ鳥島は東京から約1700キロ、小笠原諸島の父島から約900キロ離れたわが国最南端の島で、東西約4・5キロ、南北約1・7キロ、周囲約11キロのサンゴ礁だ。
 日本政府は沖ノ鳥島の周囲に海洋資源を独占できるEEZを設定しており、その面積は国土面積(約38万平方キロメートル)を上回る約40万平方キロメートルにもなる。漁業資源ばかりでなく、レアメタル(希少金属)などの存在が期待されている。

沖縄本島から1100キロ 軍事的戦略的な価値

 ただ、中国が沖ノ鳥島を評価しているのは海洋資源の存在だけでない。むしろ、その軍事戦略的な価値に注目しているといっていい。中国は沖ノ鳥島周辺のEEZで海洋調査活動を続け、2010年4月には計10隻の中国海軍艦艇が沖ノ鳥島西方海域で軍事訓練を実施した。
 また、福島の原発事故による放射性物質の影響を調査するということを名目に2011年6月に海洋調査船を沖ノ鳥島周辺に派遣した。この同時期に中国海軍艦艇計11隻が沖ノ鳥島南西海域で射撃や洋上給油などの訓練を行った。
 中国は空母機動部隊などを擁する米軍の接近を阻止する「Anti-Access(接近阻止)/Area-Denial(領域拒否):A2AD」という戦略をとっている。
日本列島から台湾、フィリピン、インドネシアなどを結ぶ第1列島線、さらに伊豆・小笠原諸島からグアムを含むマリアナ諸島などを結ぶ第2列島線を設定し、軍事防衛上のラインとしている。
 沖ノ鳥島はその第1列島線と第2列島線の間にあり、沖縄本島から約1100キロ、米領グアムから約1200キロとほぼ中間に位置している。沖縄本島と宮古島の間の海峡を通過した中国海軍艦艇がそのまま進むと沖ノ鳥島周辺海域に出ることになる。2004年11月に中国の漢級原潜がグアムへの偵察行動を展開した際には、原潜が沖ノ鳥島近海を通過していることが確認された。
海洋調査→資源採掘→海軍艦艇の派遣という海洋進出パターン
 中国の海洋調査は資源探査だけでなく潜水艦の航行に必要な海底の地形、潮流、水温などに関するデータの収集を目的としているという。
 中国は2000年代に入って西太平洋で海洋調査を実施しており、すでに十分なデータを収集しているとみられる。

沿岸諸国の非難を無視しての海洋調査、そして資源採掘の強行、さらには資源採掘保護を名目にした海軍艦艇の派遣というのが中国の海洋進出のパターンだ。沖ノ鳥島がその標的にならないという保証はない。




2015年9月24日木曜日

陸上自衛隊「戦車削減論」

「戦車に冷房必要なし」日韓の共通認識


20150915 05:55http://blogos.com/article/133924/

韓国の戦車、内部温度は56度!なのに指揮官の車両はエアコン付き=韓国ネット「暑すぎて戦争なんてできるか」「これには実は深い意味がある!」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150913-00000001-rcdc-cn

>韓国合同参謀本部と防衛事業庁が11日、国会国防委員会のセヌリ党議員に提出した資料「戦車・装甲車冷房装置に関連する所要決定現況」によると、2006年の性能改良事業当時、軍の作戦要求性能に、作戦指揮任務のため将校が主に搭乗するK277指揮装甲車への冷房装置取り付けが反映された。

>「酷暑時、装甲車内部の温度上昇(4043度)による戦闘疲労を抑え、戦闘効率を向上させるために必要である」というのがその理由だ。また、 K277指揮装甲車と同様の車輪型指揮所車両にも戦闘指揮の効率化、運用利便性などを考慮して1000万ウォン(約100万円)台の冷房装置が装着された。しかし同時期、兵士が搭乗するK200歩兵戦闘車には、陸軍は冷房装置の必要性調査すらしておらず、合同参謀会議で議論がなされていなかった。

>また、合同参謀は陸軍が要求したK1A2戦車への冷房装置設置を最終決定していたが、事業推進中だった20082月、突然この決定を撤回することを防衛事業庁に伝えた。
費用対効果と戦術的運用に問題があるというのが理由だった。

>合同参謀は、K1戦車と戦闘環境が類似した最新型K2戦車には、「酷暑時、戦車内部の温度が56度まで上昇するため、冷房装置を技術的・付随的性能に反映することにした」としており、明らかに二重基準ではないかという批判を受けている。

 奇しくも戦車の冷房に関しての認識は日韓同じようなものです。もっとも指揮通信車には冷房つけるだけ韓国軍の方がマシでしょう。更に申せば装軌式の指揮通信車すらない自衛隊の現状はどうよ?と思いますが。


 各種装甲車を更新している韓国陸軍に対して、陸自は戦車だけは大好きで、新型戦車を導入しておまけに「装輪戦車」まで大量導入しますが、指揮通信車、歩兵戦闘車、自走迫撃砲、工兵車輌、偵察車輌など更新はおろか、既存車両の近代化すら行っておりません。このため電気系統やエンジンなどでトラブルが多く、稼働率はかなり下がっているようです。

 当然ネットワーク化なんぞは遠い世界のお伽話です。

 陸幕のメンタリティは新しくて「つおい玩具」を集めてはしゃいでいる程度の悪い軍オタレベルということです。


http://tompei.la.coocan.jp/aIMG_0996.jpgより)

 仮に10式に冷房を入れるにしても大変です。まず補助動力装置の出力を上げないといけません。現状は今の仕様でギリギリのようですからパワーの余裕はないでしょう。まず新品の補助動力装置を捨て新しい物に変えないといけない。また冷房の出力をミニマイズするためには、イスラエルように密閉した被服にダクトを通して、冷気を送る方法がありますが、車内が狭い10式にその余裕があるでしょうか。



(清谷試案)

 前から申し上げておりますように、陸自の機甲科は大幅に減らすべきです。
 まともに使える機甲旅団程度を1個、その他独立戦車大隊を1個程度の戦力まで減らすべきです。浮いた金で装甲車両の近代化、野戦救急車など本来装甲化の必要車車輌などに回すべきです。第7師団なんて実態は第7戦車博物館に近いでしょう。
 また更に浮いた金で海自や空自の近代化を行い、浮いた人員は海自あたりに回せばよろしいでしょう。

 ところが、戦車を減らすのは嫌だとゴネて、思考停止状態で、その上金がないのにオスプレイやらAAV7やら必要性が怪しい玩具を大人買いです。

 社内政治至上主義、「火の出る玩具」偏愛が許されるような胡乱な組織には未来はありません。


《維新嵐コメント》軍事ジャーナリストの清谷氏の自衛隊批判は、毎度辛口なものがありますが、よく的を得ているとも思えます。
 かねてから我が国の陸上自衛隊は「海兵隊化」すべきということは、持論ではありますが、新しい防衛大綱でも戦車の数は、大きく減らされており、北海道と九州に10式戦車、90式戦車をして配備されていくようです。
 陸自の防衛戦略が「島嶼防衛」に主眼をおいてきた点については、「海兵隊化」にむけて大いに評価できる点かと思いますし、本州の部隊の戦車を「機動戦闘車」に切り替える方針に動き出した点も大きな前進であろうと思います。
 戦車、長距離砲による「大陸陸軍」=アメリカの国防圏守備隊から「島嶼防衛」戦略を基本とする「海兵隊」へシフトするために戦車のあり方を変えていくことには大いに賛成できます。
 ただ「第7戦車博物館」とは手厳しい評価ですね。
 戦車への「冷房設置」については、ネットワーク化、ハイテク化を進める以上、戦車の車内温度をさげる観点から不可欠の要素と考えます。
 ハイテク機器は熱に弱いからです。エアコンでなくとも通気性をあげる工夫は継続すべきでしょう。戦車の防御性を下げないように、という矛盾した条件の中になりますが・・・。