2015年12月31日木曜日

情報戦略でテロリズムを抑止できるのか?

テロ懸念で制限される米国民主主義
岡崎研究所

20151223日(Wedhttp://wedge.ismedia.jp/articles/-/5764
パリの同時多発テロをフランス当局が未然に阻止できなかったことを受け、米国では情報機関による国内監視権限の是非をめぐる議論が再燃しています。1117日付のニューヨークタイムズ紙と1120日付のウォールストリートジャーナル紙がそれぞれ賛否の異なる社説を掲載しているので、紹介します。
パリ同時多発テロを受け、連帯と犠牲者への追悼を表すメッセージ(iStock
ニューヨークタイムズ紙
 パリ同時多発テロから3日後、ブレナンCIA長官は「テロリストを見つけるための政府の役割が制約を受けている」ことに懸念を表明した。
 2011年国家安全保障局のスノーデンが、同局が米国市民数百万人の電話記録を入手していることを暴露し、国民はこれに今も憤激している。今年6月、オバマ大統領は「米国自由法」に署名した。これにより、政府は一般市民の国内通話記録の大規模収集を原則中止した。これを情報コミュニティは、テロ対策への重大な制約と見なしている。
 ブレナンが今以上にどのような権限を欲しているのかは明らかではない。パリ襲撃犯の大半は、以前からフランスとベルギー当局の情報網に引っ掛かっていた。フランスのテロ対策専門家は「我々の情報は優れている。だがそれに基づく行動に限界がある」と述べている。問題はデータの不足ではなく、データに基づいてどう行動するかにミスがあったということである。
 FBIのコミー長官も、アップルやグーグルのような企業は暗号化された顧客の通信を法執行機関が解読できるような措置を施すべきだ、と言っている。だが、そうしたバックドアを設けることは、犯罪者やスパイにとってもハッキングしやすくすることになる。
 情報機関や法執行機関が、攻撃を未然に防ぐ能力を持つべきであることは当然である。しかしそれは、市民の自由を阻害し、憲法違反のやり方を許容することにはならない。
ウォールストリートジャーナル紙
 パリでのテロがテロリスト監視問題の議論を再燃させているが、良いことである。ブレナンCIA長官は暴露と制約でテロリストの発見が難しくなっていると述べた。
 スノーデンの暴露でテロリストは用心し、その探知がより困難になっている。フランス当局がなぜテロを防げなかったのか。部分的には、情報活動の失敗があった。フランス当局の警戒対象リストには、1人以上の犯人が載っていた。しかし当局は彼らの動きを追跡するのに失敗したか、その意図を見誤った。
 グローバル・ジハードと戦うためにはグローバルな情報収集が必要である。
NSA
の通話メタデータ収集が禁止され、米国の情報能力は低下している。スノーデン事件を受け、オバマは6月、電話傍受の廃止を提案し、議会もこれを認めた。
 外国情報監視法(FISA702節、すなわち、外国人同士の通信の盗聴を許容することは残したが、通信の双方が米国人ではないことを証明するのは情報当局にとり大きな負担となっている。
 FBICIAは、携帯電話通信の全面的暗号化にも懸念を抱いている。これはテロリストが通話のモニタリングを妨害するのを容易にしてしまう。アップルとグーグルは、携帯電話通信にアクセスできないよう最新のOSを暗号化している。
 暗号化が政府当局の収集にとって障害になるのなら、多少の妥協は必要である。大量の犠牲者を出す攻撃があり、それが暗号化された電話に守られていたとすれば、これら企業のCEOは政治的逆風に晒されるから、慎重に考えるべきである。
 テロリストは自由な社会に非対称的な攻撃を加えられる有利さを持つ。尋問や情報は必要である。オバマは尋問も収集も弱体化したが、それは一方的軍縮である。
 出 典:New York Times Mass Surveillance Isnt the Answer to Fighting Terrorism
November 17, 2015
Wall Street Journal
The Decline of Antiterror Surveillance’(November 20, 2015
http://www.nytimes.com/2015/11/18/opinion/mass-surveillance-isnt-the-answer-to-fighting-terrorism.html
http://www.wsj.com/articles/the-decline-of-antiterror-surveillance-1447977687

情報機関は万能ではない
 今回のパリでのテロのような事件があると、必ず情報活動の失敗が言われ、その強化論が出てきます。ただ、テロリストは秘密裏に準備し、テロを行うのであり、情報機関がそれを把握するのはそう簡単ではありません。把握できないことのほうが多く、把握できたら、よくやったということです。情報機関への期待が大きすぎるので、その活動の失敗を言いたて、情報機関側ではそれを利用して予算、権限拡大を求める傾向があります。 情報機関も万能ではないことを認識しつつ、その強化を、民主主義の理念を尊重しつつ、図ることが重要なのでしょう。
 国家安全保障局は、スノーデンが暴露したような国内通信の傍受を再復活させるべきであるとのウォールストリートジャーナルの主張は、通信の秘密は重要な人権であり、あまり適切ではありません。それに大量にデータを集めても、十分に利用、分析できていません。もっと絞り込んだ通信傍受を考えるべきでしょう。
 今は米国内での電話の盗聴は原則禁止ですが、メールは傍受してよいし、外国との通話は傍受しても良いとされています。グーグルなどの暗号化はメールの傍受を難しくします。これをどうするか、費用対効果、通信の秘密の尊重など、検討が必要でしょう。
 脅威との見合いで、人権の尊重の理念を踏まえつつ、どのような情報収集努力をすべきかが問題です。テロ対策の必要性と、人権や生活の便宜のバランスを良くとっていくべきです。日本でも、地下鉄や新幹線のテロへの脆弱性が気になったことがありますが、乗客全員の荷物検査をするわけにもいきません。生活の便利さとのバランスをとる必要があります。
 テロとは断固戦う必要はありますが、テロに反応して大騒ぎすることはテロ組織の思う壺です。冷静な対応をすること、テロに振り回されないことが重要です。

 なお、イスラム過激派が当面の問題ですが、神の名において殺人を推奨するような主張は正当な宗教上の主張ではありません。彼らに宗教の自由に基づく保護を与える必要は全くありません。神の名において殺人を教唆する過激な説教師は、たとえモスクでなされようとも、その言論を封殺、弾圧すべきでしょう。
《維新嵐こう思う》
 テロの未然の防止と情報収集をいう時には、必ず人権の問題という壁にあたるように思います。テロリストの側もそこはふまえていて、先進国を狙う時には、比較的人権意識の高い、コンプライアンス性の高い国でテロ行為を行うことにより効果の最大化を狙う意図が感じられます。
ですから法的な人権意識の存在はテロを行う側にとっては実行を容易ならしめているといえるのかもしれません。
テロを未然に防止することは、不可能なことかと思います。しかしテロをおこさせにくい、テロがおきにくい環境を作ることはできるかと思います。それは市民、国民レベルそれぞれの意識の持ち方であろうと思います。
身近なところ、日常生活における個々の家庭環境、職場環境で不審者だな、という方には、壁を作らず気さくに声かけをしてみるとか、物を秘匿できないような住環境を意識してみることにより、草の根レベルでテロを防止できる素地はあるのではないでしょうか?
表現の自由とテロ

アメリカの「首都防衛システム」の現状について

実態は“ただの風船”…? 米国「首都防衛」システムの惨状
土方細秩子 (ジャーナリスト)

20151224日(Thuhttp://wedge.ismedia.jp/articles/-/5773

ボタンひとつで世界中にミサイル攻撃ができる今日、対空防衛は国の安全保障の要とも言える。米国では1998年から累計27億ドルを費やした「首都防衛」システムがあるが、このシステムは「ゾンビ・システム」と呼ばれ、役に立たないものの筆頭として批判を浴びている。
JLENSにおいて使用されている飛行船(Getty Images
“ガスを詰め込んだ風船”との批判まで……
 JLENS(Joint Land Attack Cruise Missile Defense Elevated Netted Sensor System)という名称の防衛システムは、レーダー搭載の無人飛行船網で空からの脅威を感知する、というもの。1998年にペンタゴンが採用を決め、レイセオン社が請け負った。
 システムは2機でペアの飛行船から成り、軍事基地や首都上空1万フィートを「パトロール」する。レイセオンによるとこの高度では飛行船の感知レーダーは340マイルの視界を保ち、1機が「サーチ」を行いもう1機が対象物の高度、速度などを感知し地上に伝える仕組みだ。信号を受けた地上部隊がそれに応じて攻撃目標を破壊する。しかし当然のことながら、これまでJLENSシステムが空からの脅威を感知したことはなく、米軍が応戦したこともない。
 このシステム、能書きとは裏腹に当初からトラブル続きだった。僚機を敵と見なしたり、飛行物体の追跡が不可能だったり、その性能には疑問符がついていた。
 2012年のペンタゴンによる評価では「4つの分野で致命的欠陥がある」と判断され、13年にも「システムの信頼性は低い」との評価が下され、5段階評価で2の結果だった。軍の内部情報をウィキリークスで公表した、として米国から国際指名手配扱いになっているエドワード・スノーデン氏は繰り返しツイッターなどでJLENS批判を行った。共和党の大統領候補者討論会でも、マイク・ハッカビー氏が「あれはガスを詰め込んだただの風船」と批判したが「あまりにも多くの資金をつぎ込みすぎたがゆえに政府は今更JLENSを廃止できない」と語った。

実践演習途上で起きた“事故”
 そのJLENS、今年10月には風に飛ばされて150マイルも進路を外れた上に、電線を遮断し木に引っかかって停止、という惨状を見せた。電線の遮断によりペンシルバニア州では35000世帯が停電。飛行船追跡のためにF15戦闘機が飛ばされ、最終的に木にひっかかった飛行船の「ヘリウムガスを抜くために」軍が機銃掃射を行う、というものものしさだった。
 それでもオバマ政権はJLENS防衛の姿勢で、来年度の軍事予算の中でこのシステムに4050万ドルの振り当てを提唱していた。しかし米下院がこれに反対、結局16年度予算としてJLENSに認められたのは1050万ドルだった。これは米国内でも驚きを持って受け取られた。民主、共和両党ともにJLENSの廃止には消極的で、10月の事故の後も「軍による事故原因究明が発表されるまで、JLENSに致命的欠陥があるという結論は出せない」という意見が多数派だったためだ。
 今回の予算の大幅カットはJLENSをゾンビから本物の死体に変えるのか? 政府内でも意見はまだ分かれている。「あのような役立たずのシステムはただちに廃止すべき」という主張があるかと思えば「今回の予算カットは小休止にすぎない。首都防衛レーダーシステムは必要」という意見まで、民主共和両党内部でも統一していないのだ。
 実はJLENS3年計画の「オペレーショナル・エクササイズ(実戦演習)」の途上にあった。しかし今年1月開始予定がシステム不具合により8月に伸び、その直後に10月の事故、ということで演習は無期停止状態なのだ。とりあえず予算をカットし、演習を続けてその結果で命運を決定する、という日和見姿勢が米政府内にある。27億ドルという巨額をかけた国家プロジェクトを廃止するのは勇気のいる決断だ。しかしゾンビシステムと揶揄される、役に立たない飛行船を首都上空に飛ばし続けることは、世界からの嘲笑を浴びかねない。今後のJLENSの命運に注目が集まっている。
《維新嵐こう思う》
アメリカの首都防衛システムに気球のよる探知網を導入しているとは意外でした。要は、システムの「完成度が低い」ということでしょう。確かに今の時点では不備が目立ちますが、所詮人間が作るシステムに最初から完璧はありません。コンセプト自体は2機の飛行船がそれぞれ役割分担をして地上に通報、戦闘機による迎撃なりの措置がとられる形で合理的で優れたものと考えられますので、地道に研究と実験を重ねて完成度を高めて将来的には、世界から称賛されるシステムにしていけばいいでしょう。多額の税金も投入していますので、簡単には変更するのは問題です。米政府が粘り強く国民に説明しながらシステムの完成度を高める、という「生みの苦しみ」の段階でしょうね。長い目でみる必要があるでしょう。どこかの国の高速増殖炉「もんじゅ」よりは未来への希望が感じられます。
アメリカの首都防衛の形、とりわけレーダーによる探知網と迎撃態勢について語るときにどうしても思い出される事件があります。おそらく気球による探知システムが考案された背景のきっかけにもなっているかもしれません。
ワシントン事件からアメリカの首都防空体
制をみる
1952719日夜午後11:40、アメリカの首都ワシントンDCにあるワシントン国際空港の管制センターにあるレーダースコープに、奇妙な七つの輝点が出現する。
 2つはいきなり消滅し、残り5つの点もすさまじいスピードでレーダーの範囲外に飛び去ったかと思うと、突然中心に現れたりと不可思議な動きを繰り返した。この光は、一度は姿を消したものの時間をおかずに再び出現する。
アメリカの首都ワシントン上空の飛行制限区域内を飛び交う8つの飛行物体を空港、そして軍のレーダーがキャッチした。付近を飛んでいた旅客機などからも、怪しい飛行物体が奇妙な光が同じような動きを見せたことを報告している。アンドルーズ空軍基地では、同事件を追跡していたレーダー操作員が、基地上空に浮かぶ燃えるようなオレンジ色の巨大な球体を目撃した。
午前3:00に米空軍のF-94戦闘機が2機が発進。迎撃にあたるが、この時に一斉に姿を消す。
ニュージャージー上空で別のUFOを調査していた迎撃機は、翌日の午前3時30分に遅れて到着したが、すでにレーダー上から姿を消していた。迎撃機がいなくなるとUFOはまた姿を現した。朝になり、市民の通報などからマスコミも騒ぎだしたが、軍は気温逆転層によるレーダー電波の乱反射が原因の可能性があると説明した。
1952726日(1週間後)、ワシントンDC上空にUFOが出現する。
ホワイトハウスで討議が行われ、大統領がアインシュタイン博士に意見を聞く。
一週間後の7月26日、午後9時半に再び謎の6〜12もの飛行物体がレーダーにキャッチされた。トルーマン大統領は、物理学者のアインシュタインに電話で相談。アインシュタインは「UFOがもしも異星人の乗り物であった場合、むやみにこちらから攻撃してはいけない」と忠告した。
午前2:40トルーマン大統領の命令で、F-94戦闘機2機が発進。前回と同じくUFOは姿を消してしまう。
午前2時に 再度迎撃機が調査に出たが、やはり飛行物体をとらえることはできなかった。飛行物体はそのうちにレーダーからも姿を消したが、10分後、迎撃機が帰投を始めるとまた姿を現した。
午前3時20分頃に新手の迎撃機編隊が到着したときは、UFOはそのままで、パイロットの一人ウィリアム・パタースン中尉は「目もくらむような青白い光の輪に取り囲まれた」と報告した。結局、射撃許可が下りる前にUFOは飛び去った。
民間航空管理局の技術開発評価センターによる調査で、レーダー反射の原因は気温の逆転層が原因であると結論づけられた。
また、レーダー・エコーが常に風と同じ方向に移動していたことも判明。レーダーアンテナが一回転する間に逆転層の渦が消えた場合、UFOが超高速で移動したように見えるのだ。
ある旅客機パイロットによれば、ワシントン周辺にはたくさんの灯りがあるので、一方を見てそこに“謎めいた”光を見つけることはたやすいことだと語っている。
しかし大勢の人間による目視を含む確認、特にパタースン中尉の証言がそれによって説明ができるのかどうかは疑問が残る。
引用文献:『完全版世界のUFO現象FILE20113月 並木伸一郎著 学研パブリッシング発行)
《維新嵐こう思う》
UFOに関する雑誌であれば、必ず採録される事件なので多くの方にはなじみの深い事件かと思いますが、アメリカの首都防空という観点からすれば、警戒レーダー網をかいくぐられ、ホワイトハウス上空まで空域への侵入を許してしまったわけですから、国防上大問題です。
アメリカという国のことですから、この事案の反省から首都防空の在り方を根本的に作り直したことが考えられます。7機の未確認飛行物体に対して、2機の戦闘機による迎撃で大丈夫かなとも思いますが、正体が最後まで不明だった点を考えれば、スクランブル発進した2機は、飛行物体のデータをとることと偵察、威嚇が目的だったかもしれません。
いずれにしろこのような首都上空へのあからさまな「領空侵犯」事案が一度でもあれば、事前に侵入物体を早期に探知して迎撃できる態勢を作っておきたい、という感覚からあらかじめ気球をとばしておくという発想になっていったのかもしれません。
首都の確実な警戒監視という観点から考えた時に、アメリカのJLENSシステムは今後参考にできるシステムといえるのではないでしょうか?

2015年12月30日水曜日

中国人民解放軍による台湾侵攻作戦が現実味? ~【野口裕之の軍事情勢】より~

中国人民解放軍による台湾侵攻作戦が現実味?
米ランド研究所による米中戦力逆転分析の衝撃

台湾有事の際、米軍の最前線基地となる沖縄県の嘉手納基地。米ランド研究所の米中戦力分析では、緒戦の中国のミサイル攻撃で基地は一旦閉鎖を余儀なくされるという

2015.12.28 14:00更新 http://www.sankei.com/premium/news/151228/prm1512280020-n1.html

台湾に潜水艦の技術を!

《金融緩和しながら増税するのはアクセルとブレーキを同時に踏むようなもの》との政権批判があるが、国家滅亡は招かない。ところが、米国が安全保障戦略でアクセルとブレーキを踏み違えると、影響は巨大津波と化し太平洋を渡り、アジアの同盟国に襲い掛かる。

衝撃の米中戦力逆転分析

 《台湾は不沈空母である》

 連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサー米陸軍元帥(1880~1964年)のメッセージに、アクセルとブレーキの操作を間違えた米国の失政が透ける。米国の「運転ミス」は後述するとして、今や不沈空母であるべき台湾は沈没の危機にある。これもまた、米国の運転ミスに端を発する。大東亜戦争(1941~45年)前より今日に至る連続運転ミスのツケは、米ランド研究所が発表した最新の米中戦力判定《米中軍事スコアカード》に現れた。恐ろしいことに、中国人民解放軍(PLA)の台湾侵攻時、台湾防衛を担う《沖縄の嘉手納基地など米軍航空基地に対するPLAのミサイル攻撃力は、2010年に迎撃する米軍と互角に、17年にはPLAが優位に立つ》。《対艦弾道ミサイルや潜水艦による対水上艦戦闘力でも17年にPLA有利になる》。


話を元帥のメッセージに戻す。朝鮮戦争勃発2カ月後の1950年8月、《米国海外戦争復員兵協会》の総会に伴い、東京発で打電したメッセージに《台湾=不沈空母》なる表現が含まれていた。
 いわく-
 《第二次世界大戦で、米国の戦略的前線は米本土や(ハワイなど)飛び地を離れ、フィリピンへと一挙に前進。太平洋全域が米国という城を守る堀に成った。アリューシャン~マリアナ列島線を軍事確保していれば、アジアで自由主義国を占領せんともくろむソ連・中共陣営の奇襲攻撃は有り得ぬ。しかし、列島線を失えば戦争は不可避だ》
 台湾有事で来援する?米空母打撃群を迎え撃つ、PLAの防衛線《第一・二列島線》に一部だぶる戦略概念だが、運転ミスとも関係する。50年1月、ディーン・アチソン米国務長官(1893~1971年)は「西太平洋における防衛線はアリューシャン~日本列島~沖縄に至る線だ」と発言し、韓国は防衛圏外との間違ったシグナルをソ連や北朝鮮、中国に送り、朝鮮戦争を引き起こす一因となった。元帥のメッセージは続く。


《陥落した台湾は敵の突出陣地と成り、沖縄への空爆力は中国本土を出撃する作戦に比し2倍の威力に増大される》

ミサイルで嘉手納は閉鎖

 今次本題はここから。
 《台湾陥落は不沈空母及び不沈潜水母艦が敵の手に有るに等しい。沖縄とフィリピンをにらむ敵の理想的出撃拠点に、同時に米軍が沖縄やフィリピンを出撃し中国大陸を攻撃する際の一大抵抗拠点にも成る》
 中国にとり、台湾の現行価値は1950年代に比べ飛躍的に高まった。資源欲しさに、東シナ海では沖縄県・尖閣諸島占領を狙い、南シナ海でも人工島を造成し軍事基地化している。東/南シナ海を分ける要衝が台湾である。中国の軍事支配を食い止めるべく、日米で戦力拡大すべき重大局面だが、ランドは《中国本土に近い台湾海峡の軍事バランスは、米軍に年々厳しく推移している》と言い切った。
 米軍航空基地攻撃力+対水上艦戦闘力の対米優勢に加え、PLAは在日米軍基地を含む日本全土を射程に収める準中距離弾道ミサイルも増強。ランドによれば《命中精度=半径必中界は90年代の数百メートルが5~10メートルへと飛躍的向上を遂げている》。


 もっと怖い分析を紹介する。台湾から最短距離に在る米空軍基地の《嘉手納基地は、少数のミサイル攻撃で数日、集中攻撃では数週間の閉鎖に陥る》。従って、緒戦で米海空軍は一旦射程圏外に下がり、態勢を整えた上で反撃する。台湾は当然、わが国も米軍反撃まで独力で戦い抜かねばならぬ。もし、日台がだらしのない戦ぶりを見せれば、米軍が来援をためらったり、戦況を注視する東南アジア諸国や韓国も雪崩を打って中国に擦り寄ったり…。
 だが《尖閣領有の日中棚上げ論》に同調する新聞が存在する日本に、土性骨が残っているのか。安全保障法制で「米国の戦争に巻き込まれた」と、戦争中に国会前でデモが行われるかもしれない。イザというとき機能せぬ日米同盟こそ中国の思うつぼ。この種のデモは中国への利敵行為に等しく、民主主義の許容限度を超える。テレビ朝日の報道ステーションやTBSのNEWS23の大ハシャギが目に浮かぶ。元帥のメッセージは、こう締めくくられている。
 《米国が台湾を守ると、中国に嫌われると説く者がおるが、太平洋における宥和主義・退却主義ほど謬論はない》


「6カ条の保証」宣言を

 今の日米両国にも通じる警告だが、米国が対中《宥和主義・退却主義》を生み落とした側面は否定しようもない。
 アクセルとブレーキの話に入る。米国は戦前、中国の謀略に乗せられ、中国を甘やかし(アクセル)日本を追い詰めた(ブレーキ)。戦後はケンポーを日本国民に「布教」し、平和を祈れば祖国の《安全と生存を保持=憲法前文》できるとする「狂信的カルト信者」を大増殖させた。牙をそぎ、再び米国に、西洋に刃向かわぬようブレーキ(洗脳)を掛けたのだ。結果、朝鮮半島の東側は安全保障上の空白となり、前述のアチソン発言もあり、朝鮮戦争を誘発。中国やソ連、北朝鮮が地球の平和をかき乱し、現在も続く。


 オバマ政権の中国甘やかし(アクセル)は目に余る。台湾への4年ぶりの兵器輸出も、中国に異常接近を謀る国民党や中国を警戒する共和党が圧力として機能しただけで、またも消極的対中牽制だった。米国の次期政権は、レーガン政権が83年に発出した《6カ条の保証》を宣言するときだ。すなわち-

(1)台湾への兵器輸出終了期限は設定せず
(2)兵器輸出に関し中国とは事前協議せず
(3)台中仲介はせず
(4)台湾関係法は修正せず
(5)台湾の主権への立場を変更せず
(6)台湾に中国との交渉を慫慂せず。


 中国をここまで傲慢で危ない帝国にした責任の全てが米国ではない。絵に描いたごとき米国の愚民化謀略を受けいれ、戦うべきときに戦えぬ国家に成り下がった日本のふがいなさも大きな要因だ。戦えぬどころか「台湾有事=日本有事」という、眼前の危機にすら気付かない。
(政治部専門委員 野口裕之/SANKEI EXPRESS




《維新嵐こう思う》
 あまり知られていませんが、1954年に人民解放軍は、台湾の金門島、馬祖島に対し攻撃をしかけていますから、共産中国に台湾を軍事力で併合するという野心があるのはまちがいないでしょう。
 かかる想定ができていて、十分な軍備を備えないという事態はありえません。
アメリカにとっては、台湾を取られれば、沖縄やグアムが直接人民解放軍の脅威にさらされることになりますし、我が国にとっても南西諸島や先島諸島への直接的な軍事的脅威レベルがあがるわけですから、事情はアメリカと変わりません。
 台湾との間にも尖閣諸島領有問題がありますが、台湾国内には親日的な政治勢力もあり、そうした反中勢力を育てながら、友好を深めながら、必要な軍事的支援、具体的には海軍力と空軍力の強化、台湾も周辺離島を抱えている点においては、我が国と変わりませんので、島嶼防衛戦略という観点から共同演習を行われてしかるべきと考えます。
 特に海軍は、台湾海峡を超えさせないだけの戦力が不可欠で、攻撃型潜水艦の更新は台湾にとっては死活問題といえるでしょう。
 近年、豪州に対する潜水艦の共同開発が行われようとしていますが、我が国と戦略を共有していくという点においては、台湾にも海自の攻撃型潜水艦を輸出すべきでしょう。
 同じ国防線を守る側としては、武器の共有は必須条件といえる。
さらに潜水艦には、ぜひトマホーク巡航ミサイルを搭載したい。さすれば、台湾周辺近海から中国大陸内部へむけて巡航ミサイルのレンジ内に収められ、人民解放軍への抑止力となる。
 空軍は、劣勢となっている大陸側への航空優勢を取り戻すことであろう。
戦闘機の更新と戦略爆撃機の保有である。これでかつてのように、福建、浙江、広東などに航空優勢を確保するための措置である。
 何よりIT大国台湾の強みを活かせるならば、標的型のサイバー攻撃により、大陸側のレーダーサイトを無力化するという発想もできる。
 いずれにしろ我が国もまともな安全保障の観点から防衛戦略の中枢である台湾、沖縄へは必要な援助は惜しむべきではない。

2015年12月27日日曜日

恐るべき人民解放軍の脅威 後編 ~市街戦ドクトリン・ミサイル戦力・空軍力~

【台北から見る中国軍事情勢】

①《両岸「安定」の背後で中国人民解放軍・台湾の総統府など模した施設造営》(都市市街戦)軍事訓練の目標に

2015.8.12 11:00更新 http://www.sankei.com/premium/news/150808/prm1508080036-n1.html

中国の人民解放軍が2015年7月、台湾の総統府やその周辺を“再現”した建物を使用して演習を行っていたことが判明し、台湾内部に波紋が広がった。最も中国は武力による台湾統一の可能性を放棄しておらず、特殊部隊による台湾の主要部制圧の選択肢は以前から指摘されていた。今回の演習はその一端を示したに過ぎない。中国軍は総統府にとどまらず、空軍基地など台湾の重要施設を再現し、着々と侵攻準備を進めている。(台北 田中靖人)
 今回、問題となったのは北部、内モンゴル自治区の「朱日和戦術訓練基地」。台湾メディアによると、総統府だけでなく、総統府前広場や目の前の大通り、近くにある外交部(外務省に相当)の建物など、周辺1ブロックほどの区画が再現されていることが、グーグルマップで確認できる。
 実際の総統府周辺には中央行政機構が集中しており、上空の飛行が禁止されるなど「博愛警備管制区(博愛特区)」と呼ばれる軍事管制区域に指定。対テロ任務も持つ憲兵隊が警備を担当している。博愛特区は、台湾海峡に流れ込む淡水河に近い。台湾の国防部(国防省)は、淡水河の河口を想定した上陸作戦は、中国軍の年度訓練の科目の一つになっていると説明している。また、台北市北部には、中台直行便が離着陸する松山空港もある。特殊部隊による総統府周辺への侵攻は、台湾の国防部にとっても恐らく「想定内」の事態だろう。

一方、演習が行われた北京軍区の朱日和の演習場は、7大軍区ごとにある師団規模の実動演習が可能な合同戦術訓練基地の一つ。面積1000平方キロ以上で「アジア最大の軍事訓練基地」(蘋果日報)とされる。山地・平地から、小さな村や住宅街、鉄道の駅、パリのエッフェル塔に似た鉄塔までさまざまな建築物があり、都市戦を含む各種演習に用いられているという。
 朱日和以外にも、台湾の基地などを模倣した施設の存在は知られている。中国北西部・甘粛省の鼎新県には、台湾中部・台中市にある台湾最大の空軍基地、清泉崗空軍基地とほぼ同じ形の施設があることが1990年代から知られている。衛星写真で直径20メートルの複数の穴が確認されており、精密誘導兵器による滑走路の破壊訓練が行われているとみられている。中国軍が滑走路の破壊能力を高めることは、有事に使用可能な滑走路が少ない日本の南西方面の防衛にとっても大きな脅威になり得る。
 このほか、中国軍は、台湾空軍が先制攻撃から戦闘機を守るため、中央山脈の岩盤をくり抜いて200機以上の格納スペースを作った東部・花蓮県の佳山空軍基地に似た施設や、戦時に総統が陸海空軍を指揮するための台北市北部の地下司令部、衝山指揮所に似た施設などを福建省に建設。中国東南部の沿岸地域では毎年、台湾を想定した水陸両用部隊による上陸演習を行っているとされる。

自国軍を「軍事脅威」として意識させない戦略

朱日和での演習が台湾で問題になった2015722日、中国国防部の新聞事務局は、台湾メディアに対し、「毎年定例の軍事演習であり、いかなる特定の目標に対するものでもない」と回答した。しかし、演習施設の存在を見るだけでも、こうした弁明が「白々しい嘘」(自由時報)であることは明らかだろう。

 2008年の馬英九政権成立以降、中台関係は安定し、軍事的な緊張は大きく低下した。中国軍の近代化の目標は今や、台湾の武力統一ではなく、南シナ海や西太平洋で米軍に対抗することだとも指摘される。だが、国共内戦は正式には終了しておらず、中国軍は、台湾にとり「最大の軍事的脅威」(国防白書)であり続けている。台湾は質・量ともに急速に拡大する中国軍にどう対峙しているのか。日本の安全保障上、参考にすべき点はないのか。そんな視点で、中国や台湾の軍事情勢を台北から伝える。

《抗日パレードで誇示した精鋭・ミサイル部隊「第2砲兵」》・台湾が注視するその実力とは?

2015.9.11 07:00更新 http://www.sankei.com/premium/news/150911/prm1509110002-n1.html

2015年9月3日に北京で行われた「抗日戦争勝利記念」の軍事パレードでは、中国の最新兵器が天安門広場を行進した。中でも戦略ミサイル部隊「第2砲兵」は、初公開の東風(DF)21Dなど7種類の新型弾道・巡航ミサイルを登場させ、近代化の成果を誇示した。第2砲兵は、米露など核保有国を対象とした核抑止だけでなく、通常弾頭による基地攻撃などさまざまな任務を担う。特に、多数のミサイルが向けられた台湾にとりは深刻な脅威となっている。(台北 田中靖人)

台湾方面に集中配備

 第2砲兵は1966年7月、国務院総理(首相)だった周恩来が命名し成立。1987年には陸海空軍と同格の第4の軍種に昇格した。人民解放軍の最高意思決定機関である中央軍事委員会の直属部隊だ。
 弾道ミサイルだけでなく、陸上発射の巡航ミサイルも運用する。パレードで登場したDF10Aは、以前は長剣(CJ)10と呼ばれていた巡航ミサイルだ。第2砲兵は、核兵器による抑止(中国は核の「先制不使用」をうたっている)だけでなく、通常弾頭による攻撃任務も持っていることが、他国の戦略部隊と大きく異なる。特に台湾侵攻の際には、一斉射撃により「ドアを蹴り破る」(米ランド研究所)役割を担う。

国防部(国防省に相当)は8月31日、中国の軍事力に関する年次報告書(非公開)を立法院(国会)に送付。産経新聞が入手した報告書によると、第2砲兵の総兵力は約15万人で、配備済みの弾道・巡航ミサイルは約1700発。うち約1500発が台湾方面に配備されている。与党、中国国民党の立法委員(国会議員)によると、過去4年間は「14万人、1600発」で推移しており、旧式のミサイルから新型ミサイルへの更新が終わり、さらに拡大傾向に入った可能性があるという。

米国全土が射程

 国防部が公開している2002年の研究論文によると、中国は射程1000キロ以上を「戦略ミサイル部隊」1000キロ以下を「戦術ミサイル部隊」とし、任務を明確に分けているという。戦略部隊は核弾頭搭載型による核抑止が主な任務で、ミサイルの数も相対的に少ない。
 今回のパレードでは登場しなかったが、最近の報道で注目されるDF41は、米国全土を射程に収める固体燃料、車両移動式の大陸間弾道ミサイル(ICBM)。発射までの時間が短い上、多弾頭化で米国のミサイル防衛(MD)網を突破する可能性があり、「開発を継続中」(台湾・国防部報告書)とされる。
 パレードで登場したDF31AとDF5Bはいずれも米国が標的の核ミサイル。DF31Aは固体燃料の車両移動式で、米国本土の大半を射程に収める。一方、DF5Bは旧式の液体燃料式だが米国本土全域を射程に収め、中国国営中央テレビ(CCTV)は「多弾頭個別誘導式(MIRV)」だと紹介した。

パレードでは、米国防総省が毎年公表している中国の軍事力に関する報告書で、外国メディアなどの情報として間接的にしか記述されていかなったDF26も初公開された。軍事情報会社ジェーンズなどによると、DF26は射程3000~4000キロで、中距離弾道ミサイル(IRBM)に分類される。西太平洋における米軍の拠点グアムを射程に収め、「グアムキラー」とも呼ばれる。核弾頭と通常弾頭の両用だと紹介された。

通常型ミサイルの脅威

 使用に政治的な「敷居」が高い戦略核ミサイルと比べ、通常弾頭のミサイルは多用途で“使い勝手”が良く、脅威として見過ごせない。中国は、1990年代中頃から急速に通常型のミサイル戦力を拡充しており、今や米軍が警戒する「接近阻止・領域拒否(A2AD)」戦略の中核を担っていると言っても過言ではない。
 特に、初公開のDF21Dは「空母キラー」と呼ばれる対艦弾道ミサイルで、射程約1500キロ。西太平洋上の米空母を攻撃できるとされる。2010年の台湾の国防白書で「すでに初歩的な空母攻撃戦力を備えている」と記されていたが、中国が今回、一度に12発を公開しことで、米海軍が中国沿岸への接近に、より慎重になる可能性がある。

また、同じく初公開のDF16は射程800~1000キロ。台湾向けのDF11、DF15の後継だが、台湾だけでなく沖縄も射程に収めるため、香港メディアは「沖縄エクスプレス(快速便)」と呼んでいる。米国防総省の15年版年次報告では「通常型のミサイル戦力」に分類され、沖縄の米軍や自衛隊の基地に対する攻撃に使用されるとみられる。パレードではDF15Bと並び、精密攻撃に使用すると紹介された。

馬政権の反応鈍く

 今回のパレードと台湾の報告書からは、第2砲兵が質、量ともに増強されていることが明らかになった。台湾向けのミサイルだけでなく、米国に対する抑止力や接近阻止・領域拒否能力を誇示することで、台湾有事での米軍の介入を躊躇させる狙いもある。
 2000年の就任以来、中国優先政策をとってきた馬英九政権だが、中国側は着々と台湾侵攻能力の増強を図ってきた格好で、1日付の自由時報は「馬政府の開放政策の結果、脅威は減らずに増えた」と揶揄(やゆ)。習近平国家主席が掲げる「両岸(中台)は一つの家族」というスローガンにも、野党、民主進歩党の頼清徳台南市長は「ならば、なぜミサイルの照準を当てるのか」と批判している。パレードで公開された最新兵器について、馬政権は3日、何のコメントも出さなかった。


《あなどれない通常型ミサイル》台湾・沖縄射程に計1500発・弾頭も多種多様でその威力は…

2015.10.11 16:00更新 http://www.sankei.com/premium/news/151008/prm1510080006-n1.html

2015年9月3日に北京で行われた軍事パレードで、その威容を誇った人民解放軍の戦略ミサイル部隊「第2砲兵」。核弾頭と通常弾頭の双方を配備する特異な部隊編成については前回の本欄でも触れた。通常弾頭型の弾道ミサイルの威力は、核ミサイルに比べ軽視されがちだ。だが、台湾などの研究は、質・量ともに近代化されたミサイル部隊がさまざまな機能を持つ通常弾頭を運用し、戦略的に重要な役割を果たすことを示している。(台北 田中靖人)
現実的な脅威
 安全保障に関する日本の研究は、米国の公開資料に頼ることが多い。米国の関心は当然ながら、中国でも北朝鮮でも、米国に届くミサイルに偏りがちだ。ただ、こうした長距離弾道ミサイルには核弾頭を搭載するのが“常識”通常弾頭型のミサイルの分析は、空母を標的とする対艦弾道ミサイル、東風(DF)21Dなど米軍への直接の脅威となるものはよく見かけるが、それ以外はやや専門的になる。
 だが、台湾向けには約1500発もの通常型の弾道・巡航ミサイルが集中配備されており、むしろこちらの方が現実的な脅威の度合いが高い。沖縄などが射程に入る日本にとっても同様だろう。

部隊の全容は…

 第2砲兵の部隊編成で、最も大きなものは「基地」と呼ばれる。台湾の国防部(国防省に相当)が公開している複数の研究論文によると、実際にミサイルの発射を担当する部隊6個(51~56基地)が中国各地に分散配置されているほか、訓練や装備の管理などを担う部隊2個(22、28基地)の存在が確認されている。基地の下には、「基本作戦単位」である「旅(旅団)」がそれぞれ2~7個あり、合計で二十数個のミサイル旅団がある。運用するミサイルは旅団ごとに決まっており、それによって戦略、戦術の任務が分かれている。
 国防部の「中共軍力報告書」は、二十数個のミサイル旅団のうち、山東、浙江、江西、福建、広東、広西の各省に配置されている12個旅団を台湾向けと分析。うち山東省などの3個旅団の射程に、沖縄、九州、西日本がそれぞれ含まれている。
 主に通常弾頭を扱う戦術ミサイル旅団では通常、1個旅団の下に4~6個の発射営(大隊)、1個営に2、3個の発射連(中隊)、1個連に2個の発射排(小隊)があり、1個排に発射機1台と支援車両が配備されているという。単純計算で1個旅団に最大36台の発射機があることになる。
 発射機は車両移動型(TEL)で、各旅団には複数の発射陣地がある。発射陣地は中国全土で最大110カ所(核ミサイル含む)とされ、事前にどの陣地から発射されるかを予測することは難しい。部隊は駐屯地から鉄道や高速道路を利用して発射陣地に移動後、目標の座標入力などを経て最長でも40分以内に発射態勢が整うという。ミサイルは江西、福建両省から発射された場合、7~10分で台湾に着弾する。部隊は状況に応じて発射後、直ちに別の陣地に移動するため、反撃の機会は少ない。

米ランド研究所が9月に発表した報告書によると、第2砲兵の短距離ミサイル部隊は、発射機1台につき最大5発のミサイルを配備しており、波状攻撃を行える態勢になっている。
多種多様な弾頭
 2011年末の台湾空軍の学術論文によると、第2砲兵の通常弾頭型ミサイル部隊は、敵の指揮所や部隊集結地点、空軍基地、ミサイル発射基地、空母艦隊、交通の要衝などの軍事目標だけでなく、政治・経済上の目標を攻撃する任務を負う。
 台湾向けの場合、短距離弾道ミサイルDF11とDF15が中心となる。ミサイルの命中精度を表す半数必中界(CEP)は、DF11で30~50メートル、DF15で200メートル以下に改良が進んでいるという。ただ、旧式の場合、CEPは最大で600メートルといい、改良型への更新がどの程度、進んでいるかは分からない。一方、山東省から西日本を射程に入れる準中距離弾道ミサイルDF21の通常弾頭型DF21Cは、CEP50メートル以下とみられる。
 通常型弾頭では、半径40メートル以内の施設を全壊させる高性能爆薬(HE)弾頭に加え、子弾をまき散らすクラスター弾頭▽滑走路や抗堪化された施設を攻撃するための貫通弾頭▽半径500メートルを焼き尽くす燃料気化弾頭▽炭素繊維をまき散らし送電網をショートさせる炭素繊維弾頭▽電磁パルスで半径75キロ以内の電子機器を1時間にわたって使用不能にする弾頭-などが目的別に使用されるという。このほか、戦術核弾頭も運用し、台湾空軍の論文は出力を90キロトンとしている。

戦略的な役割

 第2砲兵は、単独で作戦を行う訳ではない。米ランド研究所の09年の報告書は、中国は60~200発のクラスター弾頭搭載ミサイルの一斉攻撃で、台湾のほぼ全ての空軍基地の滑走路を瞬時に使用不能にできると計算。これにより台湾空軍は防空作戦を行えず、続いて侵攻してくる中国空軍機の精密誘導爆弾による攻撃で、空軍基地の格納庫やその他の軍事・産業上の重要施設が破壊されると推定している。
 同研究所は今年9月の報告書でも、在沖縄の米軍嘉手納基地は36発の弾道ミサイル攻撃で、開戦初頭の重要な時期に4日間にわたって戦闘機の離発着ができなくなると推計している。
 中国では「戦術」部隊に分類される通常弾頭型の弾道ミサイルだが、台湾有事では、死命を決する「戦略」的な役割を担っていると言える。

《中国の航空戦力は量・質ともに台湾空軍を圧倒》緒戦で壊滅の恐れも…

有事の代替滑走路確保は、台湾空軍にとって死活問題
台湾南部・嘉義県の高速道路など高速道路を戦闘機の滑走路として使用できる。
2015.12.1 08:09更新 http://www.sankei.com/premium/news/151120/prm1511200006-n1.html

201511月7日にシンガポールで行われた分断後初の中台首脳会談で、台湾の馬英九総統は、総統府を模した建物のある演習場「朱日和戦術訓練基地」や台湾向けに集中配備された弾道ミサイルを取り上げ、緊張緩和措置を求めた。本欄でも取り上げたこの2点は、今年の報道で耳目を集めたものだが、中国が台湾方面に前進配備しているのは、ミサイル部隊だけではない。多数の航空部隊が台湾海峡沿いに配置され、台湾に脅威をもたらしている。(台北 田中靖人)
 中国の人民解放軍は空軍と海軍の双方が作戦機を保有しており、台湾方面の航空戦力の全体像を公開資料から把握するのは極めて難しい。米国防総省の今年の年次報告書の別表は、中国の海空軍が「台湾を範囲」に納める位置に配備している作戦機数を、戦闘機130機、爆撃機および攻撃機200機、輸送機150機、特殊任務機75機としている。本文中には「無給油での範囲内」とあるので、無給油での作戦行動半径を指すとみられる。これらの航空機が、台湾を直接担当する南京軍区だけのものなのか、隣接する広州軍区を含むのかは分からない。
 一方、台湾空軍の2011年の研究論文によると、中国の空軍は台湾から約1000キロの範囲内に作戦機700機を配備。うち450キロ以内にあるのは150機で、最前線よりも少し下げた「前軽後重」配備の原則を取っているという。

今年の国防部(国防省に相当)の「中共軍力報告書」は、中国空軍の「主要な脅威をもたらす域内の飛行場」として浙江、福建、広東3省の11カ所の空軍基地を挙げている。広東省は広州軍区の管轄なので、台湾は脅威の対象を南京軍区に絞っていないことが分かる。
 米ランド研究所が今年9月に発表した報告書は、戦闘機が無給油で行動できる範囲を台湾から800キロとし、中国の海空軍が約40カ所の基地から作戦を行えるとしている。中国側はこれらの基地に他軍区からの増強部隊を含め戦闘機で35個、爆撃機で5個の飛行旅団を配備でき、最大で800機を台湾侵攻作戦に投入できると推計。防空作戦に回す航空機を引くと、潜在的には600機程度が攻勢作戦に参加できるとしている。
 これらの作戦の主力は戦闘機では殲10やスホイ27(殲11)、スホイ30(殲16)といった第4世代戦闘機が中心となり、攻撃・爆撃機では殲轟7、強5、轟6が担う。これらの作戦機は最も近い空軍基地から、15~30分で台湾の空域に到達する。中国空軍は戦闘機の近代化を進めており、ランドは年間70機のペースで第4世代の戦闘機が増えていると分析している。
 これに対する台湾空軍は、台湾海峡に浮かぶ澎湖諸島の馬公を含め11カ所の空軍基地に、戦闘機が配備されている。今年の国防報告書はその数を約370機としている。ただし、米国防情報局(DIA)の2010年の報告書「台湾の防空の現状評価」によると、その陣容は心細いものだ。主力はF16A/Bが146機だが、自主開発の経国126機は、「限られた作戦行動半径とペイロード(積載量)により空対空能力に制限がある」。56機のミラージュ2000は、「部品の不足などにより作戦能力は実数よりも大幅に少ない」。60機のF5は訓練用で「実際に運用できる数はさらに少ない」と酷評されている。

台湾は19年までに退役するF5に代わる戦闘機として、米国にF16C/D66機の売却を求めていた。だが、米国はこれに応じず11年9月、F16A/Bの近代改修に同意。今年10月には、改修済みの1号機が試験飛行している様子が報道された。レーダーなどが改修されるF16VはF16C/Dの性能を上回るともされるが、改修で絶対数の不足が補われる訳ではない。

 さらに、緒戦の弾道ミサイル攻撃とそれに続く巡航ミサイル攻撃、爆撃機・攻撃機の精密誘導爆撃で、台湾の空軍基地は大部分の滑走路と関連施設が破壊される可能性が高く、岩山をくり抜いた地下格納庫がある東部・花蓮県の佳山空軍基地以外は、壊滅する恐れもある。国防部は抗堪性の高い掩体で戦闘機を守る「1機1庫」政策を進めているが、10月25日付の自由時報は、予算不足で進展していないとして、監察院が是正を求めたと報じている。


《維新嵐こう思う》
 我が国政府が無償ODAや遺棄化学兵器処理と称して、多大な財政援助をしてきたツケともいえるでしょう。歴史上、先人たちが最も懸念してきた海を隔てた隣国に強大な統一軍事国家を誕生させてしまいました。
 そして経済援助を中心とした政府の中心にいる方たちが日中は「戦略的互恵関係」と称して、主義主張の異なる共産中国にさらなる援助を与えることで、日中の経済的、軍事的な「格差」はさらに拡大し、かえって領土問題をはじめとした安全保障上の危機に直面しているとはいえないでしょうか?
 我が国が、経済援助を継続することで、共産中国は自国の国内開発や周辺国、関係国への経済支援への負担が減り、軍事費につぎ込める予算が増やされているとしたら、こういう事態をはたして「日中友好」といえるのでしょうか?
 見返りかどうか知りませんが、対中利権の恩恵に預かる政治家や財界が、結果的に、ある意味確信犯的に自国の、我が国の国益を損ねてきたとはいえないでしょうか?
 
「隣国に軍事強国を作らせない」ということは、安全保障上必須命題といって過言ではないでしょう。
田中角栄政権以来の「日中友好」関係が、今日我が国をどういう状況に追い込んでいるのか?
今の政権体制に問題はないか?
 一党独裁ではなく「国民主権」の国だからこそ、草莽の庶民たちが、しっかりとした政治リテラシー、軍事リテラシーを身に着けて政治を考えて、構築していく必要があります。
 「国の主」は天皇陛下です。我が国は、政治に直接関わらない皇祖神をお祀りする天皇と国民との信頼関係に立脚した国家ですから、独裁政権は生まれません。
「男系男子」皇位継承という考え方は、我が国の歴史上誤った考えであり、皇室と日本の滅亡を招く危険な思想であることを自覚すべきです。母系社会である我が国は、早急に皇室典範を部分的に改正して、敬宮愛子さまが立太子できる道筋、愛子さまの直系で皇位継承できる道筋を法的に確立し、大陸からの「男尊女卑」の大国からの侵略に対抗しなければならないのです。
 大陸の利権ばかり目をとらわれている政治家や財界人は、庶民のためには大きな痛みを覚悟して、独自の技術を担保する中小の企業家やベンチャー企業家のために道を用意すべきでしょう。
 共産中国は、軍事国家であり、海洋国家のテリトリーを土足で踏み荒らして自らの覇権主義を実現しようとする、自分さえよければいいという事なかれ国家です。
 強固な国家戦略の下で、一部の利権主義者に身を切ってもらい、庶民のリテラシー、国家観念を高めて、本当の意味での独立国家を作っていきましょう。「草莽崛起」が求められているのは今の時代です。

恐るべき人民解放軍の脅威 中編 ~通常動力型潜水艦の戦術~

中国潜水艦がフランスを見習って米空母を“撃沈”
中国潜水艦の接近浮上は米空母攻撃の演習だった?
中国潜水艦に標的とされた米海軍の空母ロナルド・レーガン

10月下旬、九州西方沖の東シナ海で中国海軍潜水艦がアメリカ空母『ロナルド・レーガン』に接近浮上した」という情報がアメリカ海軍関係者の間で取り沙汰されていることを本コラム(「日本周辺海域も「波高し」、中国潜水艦が再び米軍空母に接近」)で紹介した。
 その情報を公開したアメリカの「ワシントン・フリー・ビーコン」が、今度は「中国潜水艦のアメリカ空母への接近事件は、じつはアメリカ空母打撃群に対する攻撃シミュレーションであった」という情報を公開し、再び海軍関係者の間で議論が高まっている。
空母攻撃訓練を実施した中国潜水艦
横須賀を母港とするロナルド・レーガン空母打撃群は、韓国海軍との合同演習に参加するため、太平洋から九州沖の東シナ海をへて対馬海峡を釜山沖へと抜けた。その途中、20151024日、東シナ海でロナルド・レーガンの直近(おそらく10キロメートル以内)に中国海軍「キロ636型」潜水艦が接近していた、という事件が発生した。
中国海軍キロ636型潜水艦
 この事件の発生直前に、アメリカ海軍駆逐艦は南シナ海の中国人工島12海里内海域を航行する作戦を実施していた(=FONOP:公海航行自由原則維持のための作戦)。そのため、ロナルド・レーガンに潜水艦で接近した中国海軍の動きは、FONOPに対する政治的デモンストレーションとみられていた。もちろん、そのような意味合いがあったことは間違いない。
しかし、それだけではなかった。ワシントン・フリー・ビーコン(1215日)によると、ロナルド・レーガンに接近した中国海軍潜水艦は、航空母艦ないしは空母打撃群に対する攻撃シミュレーションを実施した、というのである。
 もちろん、このような事実はアメリカ海軍も中国海軍も公表してはいない。とりわけ、中国との関係を悪化させたくないオバマ政権は、中国海軍潜水艦の挑発的かつ危険な行動に関する情報を隠蔽しようとしてきた、とワシントン・フリー・ビーコンは指摘している。
 ただし、対中強硬派である太平洋軍司令官のハリス海軍大将は、ワシントン・フリー・ビーコンからの事実かどうかの問い合わせに対して「否定しなかった」という。また太平洋軍スポークスマンも、中国潜水艦との遭遇事件に関してはノーコメントであったものの、「第七艦隊は中国海軍に対して十二分な備えと防御能力を保持している」とのコメントを発した。
 ちなみに、アメリカ海軍の空母打撃群(CSG)とは、空母航空団(戦闘機、警戒機、電子戦機などで編成されている)を搭載した航空母艦を中心にして、空母を護衛するための攻撃原潜(12隻)、イージス巡洋艦とイージス駆逐艦(数隻)、それに補給艦などの支援艦によって編成される海軍機動部隊である。
10月下旬に中国キロ636型潜水艦に接近されたロナルド・レーガン打撃群(第5空母打撃群:CSG-5)は、韓国海軍との演習に参加する目的だったので大編成ではなかったものの、攻撃原潜とイージス艦が護衛していた。そのため「中国潜水艦の接近は、もちろんCSG-5側は把握しており、その動向を観察していたのだ」という声も上がっていた。
フランス海軍の“戦果”を検証?
CSG-5側が中国潜水艦の動向を把握していたのか否かは明らかにされていない。しかし、中国潜水艦が攻撃シミュレーションを実施していたということで、再びアメリカ海軍関係者たちの間に緊張が走っている。
 じつは2015年初頭に、フランス海軍攻撃原潜「サフィール(サファイア)」が、アメリカ海軍「セオドア・ルーズベルト」空母打撃群を想定攻撃するというシミュレーションを北大西洋で実施したことがある。シミュレーションで、サフィールはアメリカ空母打撃群の半数の軍艦を撃沈した。
フランス海軍の攻撃原潜サフィール
サフィールに“撃破”されたセオドア・ルーズベルト空母打撃群
そのシミュレーションの概要は、3月上旬、フランス海軍の公式サイトに掲載されたが、何らかの理由によって直ちに削除されてしまった(ただし、海軍関係の外部ブログに転載されたため閲覧は可能)。
 サフィールはフランス海軍が運用している6隻のリュビ級攻撃原潜のうちの1隻で、就役してから30年も経過している“ベテラン”潜水艦である。リュビ型攻撃原潜は原子力潜水艦としては異例に小型(水中排水量2600トン、全長73.6メートル)であり、海上自衛隊の通常動力潜水艦(そうりゅう型、水中排水量4200トン、全長84メートル)よりも小さい。
 また、サフィールは小型原潜であるため、騒音が大きい。筆者の友人であるアメリカ海軍将校は「1980年代末にリュビ級潜水艦にオブザーバーとして乗り組んだ時には、それこそ世界で最も騒がしい潜水艦であった」と語っている。
「もちろんそれ以降、フランス海軍は改良に改良を重ねているので、シミュレーションの結果が真実であるならば、相当静粛性が高まったものと考えられる」
 いずれにせよ、フランス海軍潜水艦によるアメリカ空母打撃群撃破のシミュレーションは、メディアに取り上げられる前に瞬く間に闇に葬られてしまい、忘れ去られたかに見えた。
 しかし、中国では事情が違った。
中国海軍関係者たちがこのシミュレーションの結果を検討し、人民解放軍潜水艦によるアメリカ空母打撃群への攻撃への参考にしたことは間違いないようである。
 実際に海軍装備関係の雑誌「兵工科技」(2015vol.8)では、中国潜水艦アカデミー教授などへの詳細なインタビューなどで、アメリカ空母打撃群に対する攻撃成功可能性やその方法などに関する特集記事が組まれたりしている。
 その記事の中で、サフィールが小型艦であったことに中国海軍が着目していることが明らかにされた。すなわち、アメリカやロシア、それに中国の攻撃原潜よりも小型であるサフィールがアメリカ空母打撃群に近づいて攻撃を成功させたということは、攻撃原潜よりも小型で静粛性に優れている「キロ636型」や「元型」といった通常動力潜水艦で強力な対艦ミサイルを搭載している艦ならば、アメリカ空母打撃群を撃破できる可能性が十二分にある、ということになる。
このように、10月下旬に発生した中国潜水艦による攻撃シミュレーションはサフィールによる“戦果”の流れを汲んでいるものと考えられる。
このまま対中融和策が続くと何が起きるのか
アメリカ軍の対中国人民解放軍司令塔である太平洋軍や太平洋艦隊、それに太平洋海兵隊などが、いくら人民解放軍との闘いに備えて訓練に励んでいても、アメリカ軍全体を取り仕切るペンタゴンは、人民解放軍との良好な関係の構築と維持に関心を示している。
 フォーブス上院議員をはじめとする対中強硬派議員やホノルルを本拠地とする“米軍前線司令部”関係者は、そうしたペンタゴンの姿勢は「中国海軍の対米戦闘能力をますます増進させてしまう」と懸念を表明する。しかし、ワシントンDCの国防司令塔は、中国人民解放軍との関係を損なわないことを優先させている。
 その結果、中国海軍には怖いものがなくなってきて、危険な空母攻撃シミュレーションを実際の海洋で実施するようにまでなってきている。
「万が一、中国潜水艦の敵対的アクションに対して空母打撃群側が反撃した場合には、間違いなく中国潜水艦は撃沈されてしまう。だが、そのような不測の事態が発生したら、中国側は一斉に各種ミサイルを大量に発射して、空母打撃群だけでなく、日本の米軍基地や自衛隊基地を破壊してしまうだろう」と米海軍将校が心配している。
 オバマ政権(それにペンタゴン首脳)のように対中融和策を取り続けていたのでは、今後ますます中国海軍が危険なシミュレーションなどを実施して、東シナ海でも不測の事態が起きる可能性が高まることになるであろう。

《維新嵐こう思う》
 「隣に軍事大国、軍事強国を作らせない」ということは、軍事学の法則の一つといえますし、この戦略を「忠実に」実践しているのは、実は共産中国であろうと思います。
 西部太平洋、東シナ海、南シナ海、日本海、オホーツク海まで海洋覇権を拡大し、彼らのいう「清王朝時代の最大版図」を取り戻したい共産中国にしてみれば、最大のネック、壁はビンのふたのように行く手を阻んでいるアメリカ第七艦隊、太平洋軍であろうことは間違いありません。
 その中でも一番最初に脅威になるアメリカ第七艦隊の戦力の中核である空母打撃群については確実に撃破できるドクトリンは開発し、常に使えるようにしておきたいでしょう。98年の台湾海峡危機の時に共産中国が思い知らされた空母の存在が相当トラウマになっているのではないでしょうか?
 アメリカ海軍の空母を撃破するために、共産中国は、対艦弾道ミサイル(DF-21D)がありますが、これだけでは万全ではないということでしょう。攻撃型原潜よりも「静粛性」が高い通常動力型のキロ級、元級潜水艦を米空母打撃群に接近させ、対艦ミサイルや魚雷で攻撃撃破するドクトリンは、容易に考え付くことです。
核戦略を実践する戦略型原潜とそれを守る攻撃型原潜に加えて、通常動力型の攻撃型潜水艦の戦術的意義がはっきりしてきました。
 アメリカ海軍のように地上攻撃が可能な空母打撃群を未だ保持運用できない共産中国が、アメリカの空母打撃群やヘリ運用空母4隻、実質的に強襲揚陸艦も保持する我が国海上自衛隊を相手に周辺近海に覇権を拡大していこうとすれば、通常動力型攻撃潜水艦や対艦弾道ミサイル、長射程巡航ミサイルは確実に相手の動きを抑止できる装備になりますね。確実にいえるのは、こうした対米対日戦略のための装備を年々充実させていっているということです。最終的な対米戦略の要は、共産中国版の空母打撃群の構築であることは間違いないでしょう。