2016年4月4日月曜日

今のままでいいのか?海洋権益を奪う共産中国にむきあう均衡戦略と海洋法規

南シナ海問題には“中国対世界”で臨め

岡崎研究所
20160401日(Frihttp://wedge.ismedia.jp/articles/-/6425?

 豪グリフィス大学アジア研究所のレイトン研究員が、豪ロウィー研究所のブログInterpreterに、今までの対南シナ海戦略は成功しておらず、(1)他の問題とリンクさせる、(2)島の開放を受け入れる、という二つの新たなアプローチが考え得る、との記事を2016226日付で寄稿(同日付でNational Interest誌ウェブサイトにも転載)しています。論旨は次の通り。

効果得られていない均衡戦略や法の支配論
 南シナ海について今までのところ中国の戦略がより成功している。なぜ均衡戦略と法の支配戦略は失敗しているのか。
 均衡戦略の例はベトナムである。ベトナムは沿岸警備隊などの近代化を図り、インド、ロシア、日本、米国との関係強化を図っている。米海軍による航行の自由作戦も均衡戦略の例である。しかし均衡戦略は中国の力に利用されるだけであり、中国により簡単に対抗されている。米国を除く地域の全ての国に対し中国は相対的に優位な力を持っている。南シナ海を通る多くの海運は中国へ向かう。中国はこの紛争につき一層大きな利害とクレディビリティーを持っている。小島を巡って中国と戦争をすることはコストに合わない。
 中国は軍事的衝突に至る口実を相手に与えないように、深慮に基づくアプローチをとっている。多くの関係国にとり中国は最大の輸出市場であり、中国はこれをバーゲンに使うことができる。
 法の支配論に対して、中国はルールは守るという。しかし中国の見解によれば、南シナ海は1943年のカイロ宣言、45年のポツダム宣言により戦後中国に返還されたものだという。さらに中国はサンフランシスコ条約の当事者ではないし海洋法署名の際に南シナ海につき留保を付したと反論する。
 中国は国際司法裁判所(ICJ)の仲裁を避けている。フィリピンはICJの仲裁を求めたが中国は結果を無視すると述べている。中国はゼロサムの結果に持ち込もうとしている。均衡戦略や法の支配論が効果的でないとすれば二つの新たなアプローチが考えられる。

第一の戦略は、中国共産党が重要と考える具体的問題を突くことである。党の最大の狙いはレジームの維持にあり、党は不満者を弾圧したり、歴史を書き直したりしている。党は現状への不満が起き、これが関係国によって利用されることを恐れている。ダライラマとの会見や人権問題、報道の自由、インターネットの開放、中国の真の歴史などは手段となる。党の正当性の問題を南シナ海の問題にリンクすることができる。
第二のアプローチは中国の将来の行動を規制しようとするものである。中国は人工島の港や滑走路を遭難救助などのために提供すると述べた。最近王毅外相はこれらの施設を他国に開放すると述べた。この申し出を受けたらどうか。国連やASEANの施設あるいは要員をこれらの島に置くことを求めることもできる。これにより島を中国の排他的財産ではなく、世界と利益を共有する新たな領域として再概念化することができる。軍事活動を規制することもできる。
 中国にコストをかけても見合う成果が得られないのであれば、中国の既成事実を認めることが賢明かもしれない。今の非効果的な対応の継続は不賢明である。中国の政策決定者は、間違った教訓を学び強硬な戦略が最も有効だと信じるようになる。それは南シナ海への支配を勝ち取った中国よりも悪いものだ。
出典:Peter Layton,South China Sea: Beijing Is Winning, but Here's How to Retake the Initiative’(The Interpreter, February 26, 2016
http://www.lowyinterpreter.org/post/2016/02/26/South-China-Sea-Beijing-is-winning-but-heres-how-to-retake-the-initiative.aspx
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南シナ海問題解決には“世界”を巻き込め
 南シナ海に直接の利害を持たない立場からの、安直な議論のように思えます。この問題には、辛抱強く、想像力を駆使して、手綱を緩めないで対応することが重要です。筆者は中国の既成事実を飲み込むことが賢明かもしれないとすら言ってのけますが、筆者の言うようなことをすれば、結局中国の思う壺になってしまいます。さらに、将来同様の行動を認めることになります。問題は中国の行動にあることを忘れてはなりません。特に筆者が最後のパラグラフで述べることは理解できません。
 第一のアプローチとして提案する中国共産党の正当性の問題を突くべきとの議論は、南シナ海とのリンクを議論する以前の問題であり、人権や報道の自由などは中国側に指摘していくべきものです。
 第二のアプローチは、中国の既成事実を認めるものとなり、賢明とは思われません。中国の主張の核心は領有(主権)にあり、真の意味で国際所有・管理といったことに同意することはないでしょう。

 現時点で均衡戦略、航行の自由戦略が間違っているとは思いません。中国の振る舞いが世界のルールに反していることを突き付けていくことが必要です。ボトムラインは世界のルールの順守です。この問題について「中国対世界」という構図ができ、世界の圧力が高まることが重要です。その意味で中国に対してソフトな欧州と対話することが重要です。その欧州も、少しずつ改善されているようにも見えます。
《維新嵐》 「南シナ海問題解決には世界を巻き込め」論には強く賛同いたします。「中国の既成事実」を認めるような姿勢では完全に中国共産党の思う壺です。彼らの戦略の基本は「戦わずして勝つ」戦略。文革時代の彼らではありません。国際法規を逆手にとって海洋覇権を追求してくるわけですから、国際社会が既成事実など認めようものなら、たちまち南シナ海は共産中国の「内海化」されて、台湾は政治統合され、尖閣諸島はおろか沖縄をも奪われることになりかねません。
むしろ均衡戦略と国際連携で封じ込められて不利になっているのは共産中国の方かと考えることができます。彼らのあくなき「海洋覇権戦略」が、経済的に緊密であった周辺国の政治関係を緊張化させ、強引な南シナ海での島嶼領有が周辺国同士の政治連携を強くしていることになぜ気づかないのでしょうか?今、共産中国に必要なことは、いたづらに緊張化を招くような「海洋覇権戦略」をやめて、「一党独裁」体制を変革させ、周辺国との「協調発展」に国家戦略を転換させることでしょう。TPPに参加することも検討すべきです。
《共産中国を警戒し、自国権益を守ろうとする周辺国の動き》
各国が軍事力を強化し、国際社会に現状を訴え、それをアメリカや我が国が支援していく、その体制が強吾になることを共産中国は恐れているようにみえます。アジア各国の軍事連携が固まらないように牽制しているのは共産中国の方でしょう。

①中国が米軍のフィリピン基地利用に反発

2016.3.22 16:46更新 http://www.sankei.com/world/news/160322/wor1603220013-n1.html

中国外務省の華春瑩副報道局長は平成28年3月21日の定例記者会見で、米軍が南シナ海に臨むフィリピン軍基地などを使用する動きに対し「米国とフィリピンの協力は、第三者の主権や安全保障上の利益を損なうものであってはならない」と反発した。
 華氏は、米国が中国による南シナ海の軍事拠点化を批判していることを念頭に「米国とフィリピンによる南シナ海での軍備強化こそ軍事(拠点)化ではないのか」と述べた。
 米国とフィリピン両政府は18日、米軍再駐留を容認する協定に基づき、南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島に近いパラワン島の空軍基地など5カ所を新たに米軍が拠点として使うことで合意した。(共同)

②海自潜水艦が15年ぶり比寄港=中国けん制、防衛協力強化
 練習航海中の海上自衛隊の潜水艦「おやしお」が平成2843日、フィリピン・ルソン島中部のスービック港に寄港した。海自潜水艦のフィリピン寄港は15年ぶり。初級幹部自衛官の研修と友好親善が目的だが、人工島建設で南シナ海への進出を強める中国をけん制する狙いもあるとみられる。
 潜水艦には護衛艦「ありあけ」「せとぎり」が同行し、参加人員は3隻で計約500人。潜水艦を率いる吉野宏昭・1等海佐は「フィリピンは海自にとって非常に重要なパートナーだ」と強調した。6日まで滞在し、護衛艦2隻はベトナム南部のカムラン湾にも立ち寄る予定。
 日比両国は中国を念頭に防衛協力を強化しており、2月には防衛装備品・技術移転協定を締結。協定に基づき、日本側は海自練習機の貸与を検討している。 

③インドネシア、密漁問題めぐり中国漁船を「見せしめ爆破」

容疑の中国人船長ら起訴へ、船返還も要求

2016.4.2 18:51更新 http://www.sankei.com/world/news/160402/wor1604020039-n1.html

 南シナ海南端に位置するインドネシア領ナトゥナ諸島沖の排他的経済水域(EEZ)で密漁をしていたとして逮捕した8人の中国人船員について、インドネシアのスシ海洋・水産相は1日夜、船長ら3人を起訴する方針を示した。中国政府は、操業場所は「中国の伝統的な漁場」として船員の早期解放を求めており、反発が予想される。
 現地からの報道によると、スシ氏は記者団に密漁の責任は船長、機関長、漁労長の3人にあると指摘。他の5人は中国に送還する考えを示した。また、中国の監視船の体当たりを受けて奪われた密漁船の「返還」を中国側に引き続き要求。その漁船を爆破処置し、密漁防止への見せしめにする考えも示した。
 中国は、ナトゥナ諸島沖合を含む南シナ海のほぼ全域の管轄権を主張し、逮捕された漁船の行為は密漁にあたらないとしている。


インドネシアで共同訓練参加へ=災害救援を想定、護衛艦派遣―海上自衛隊

時事通信

海上自衛隊は平成2845日、今月中旬に行われるインドネシア海軍主催の多国間共同訓練「コモド2016」に参加するため、大型護衛艦1隻を派遣すると発表した。災害救援活動を想定した訓練を行う。

 共同訓練は12~16日、インドネシアのパダン周辺海域で実施。東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国など十数カ国が参加する見込み。日本は2014年3月以来の2度目の参加で、呉基地(広島県呉市)を拠点にする大型護衛艦「いせ」と乗組員約360人が派遣される。全通甲板構造で複数のヘリコプターを同時発着させられる。 

④ベトナムで反中デモ「侵略的な中国を打倒せよ」政府も容認の姿勢

2016.3.15 11:14更新 http://www.sankei.com/world/news/160314/wor1603140028-n1.html

 1988年3月14日、南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島海域で中国とベトナムの海戦があり、同国の首都ハノイで14日、戦死者を悼むデモ行進が行われた。ロイター通信によると、参加者は「侵略的な中国を打倒せよ」などと訴えた。
 参加人数は、最近の反中デモでは最多とされる約150人。約90分の行進中、警察当局は取り締まらずに容認し、大きな混乱も起きなかったもようだ。
 南シナ海では今年に入り、中国による軍事拠点化の動きが、造成された人工島などで相次ぎ発覚。ベトナムは対中関係改善を目指す姿勢を再修正し、反中デモも容認したとみられる。
 ベトナムでは対中関係への配慮から、この海戦の戦死者を追悼する公式行事はなく、民間が行っている。国営メディアも例年は記念日について伝えてこなかったが、今年は報道に転じた。海戦ではベトナム海軍の2隻が沈没し、海軍兵士64人が戦死したとされる。

⑤日本政府、インド戦略拠点で支援 初の外国支援

2016.3.14 23:07更新 http://www.sankei.com/world/news/160314/wor1603140026-n1.html

 日本政府は平成28314日までに、インドの戦略拠点であるアンダマン・ニコバル諸島で、民生用電力施設整備のための基礎調査を行うと決めた。ベンガル湾の同諸島には軍事施設があり、インドは外国の支援を受け入れてこなかったが、今回、初の外国支援を日本に要請した。中国が一方的に海洋進出を強める中、日印両国が結束を示した形だ。
 日本側当局者によれば、南アンダマン島チャタン発電所にあるディーゼル発電機と関連設備の更新と整備について、インドが支援を求めてきた。日本は発電施設か送電線の整備を想定しており、調査を通じて支援する場所や内容を決める。この発電所は南アンダマン地域の重要な電源だが、住民への電力供給能力不足が深刻化している。


ベンガル湾は、マラッカ海峡を経て南シナ海につながる戦略的に重要な海域で、中国の潜水艦の動きが活発化している。インド洋周辺では、中国がスリランカやミャンマーで港湾整備を支援する「真珠の首飾り戦略」を進めており、インドは警戒を強めてきた。
 インド海軍は中国の潜水艦を監視するため、諸島の南端の飛行場を本格的な施設として拡充を図り、偵察機を展開する方針だ。ただ、日印両国政府の当局者は、今回の支援に戦略的な意味はないとしている。第二次大戦中、旧日本軍が駐留したアンダマン・ニコバル諸島は、一部地域で外国人の立ち入りが規制されている。


そしてやはり一番共産中国が警戒し、その軍事的、政治的な影響力を排除したい国はこの記事をみればよくわかります。特に「空母打撃群」は大きく海洋覇権を阻んでくる存在であるようです。

【中国が米国に警告南シナ海では「用心するように」
AFPBB News
 中国国防省は2016年331日、南シナ海(South China Sea)では「用心する」よう米海軍に警告するとともに、米国とフィリピンが先月合意に達した米比防衛協力強化協定を批判した。


© AFPBB News 提供 南シナ海を航行する米原子力空母「セオドア・ルーズベルト」。米海軍提供(2015117日提供)

 米国は昨年10月以降、南シナ海で「航行の自由作戦(Freedom of Navigation)」を展開中。米比防衛協定では米軍にフィリピン国内5か所の基地使用を認めており、中国が領有権を主張する南シナ海の係争海域に近いパラワン(Palawan)島の空軍基地も含まれている。
 中国国防省の楊宇軍(Yang Yujun)報道官は記者会見で、米艦隊が南シナ海で警戒監視活動を開始したとの報道について問われ、「やってきた米艦隊に関しては、用心するほうがいいとしか言えない」と答えた。

 さらに、米比防衛協定をめぐる質問に対しては、「軍事同盟強化というのは冷戦(Cold War)時代の考え方だ」「平和、発展、協調という時代の潮流に逆行する」と批判。2か国間の軍事的協調が「第三者の利益を損なうことがあってはならない」とくぎを刺した。【翻訳編集】AFPBB News

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