2016年10月28日金曜日

【アメリカはアジアでの海洋権益を守ることができるのか?】4回目のFON作戦、深まる対中不信、進まない朝鮮半島の非核化

オバマの腑抜けFONOP、“中国の”島に近づかず

はるか沖合を通航するだけ、米海軍周辺からは怒りの声

北村淳
2016.10.27(木)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48218
4回目となるFONOPを実施したアメリカ海軍イージス駆逐艦ディケーター(出所:Wikipedia

20161021日、アメリカ海軍イージス駆逐艦ディケーターが南シナ海西沙諸島の永興島(ウッディー島)とトリトン島(中建島)それぞれの沿海域を航行して「航行自由原則維持のための作戦」(FONOPを実施した。
5カ月ぶりに実施された4回目のFONOP
今回のディケーターによるFONOPは、オバマ政権がようやくゴーサインを出して20151027日に行われた第1回「南シナ海でのFONOP」以来、4回目のFONOPとなる(なお、アメリカは南シナ海だけでなく世界中の海でFONOPを実施している。本稿での「FONOP」は南シナ海で実施されたFONOPを意味する)。
 第1回目のFONOPでは、イージス駆逐艦ラッセンが、中国が人工島を築き3000メートル級滑走路を建設していた南沙諸島スービ礁の沿岸から12海里内海域を通航した(現在、スービ礁の滑走路はすでに完成している)。
 それからおよそ3カ月後の2016130日、西沙諸島のトリトン島12海里内海域で、イージス駆逐艦カーティス・ウィルバーによって第2回目のFONOPが実施された。その後、中国は、西沙諸島が多大な軍事的脅威を被ったとして、地対艦ミサイルや地対空ミサイルをトリトン島などに配備した。
 再び3カ月と10日が経った510日、イージス駆逐艦ウィリアムPローレンスが南沙諸島のファイアリークロス礁沿岸12海里内海域を通航して、第3回目のFONOPを行った。スービ礁同様にファイアリークロス礁も中国が暗礁を埋め立てて誕生させた南沙人工島の1つで、やはり3000メートル級滑走路や大型艦船が使用できる港湾設備も建設されている。
 その後5カ月が経過しても一向に第4回目のFONOPが実施されないため、オバマ政権の弱腰の対中姿勢を嘆いていた米海軍関係の戦略家たちは怒り心頭に達していた。彼らは次のように主張する。
「中国の南シナ海の軍事的支配を牽制するためのFONOPならば、そもそも1カ月に1度でも少なすぎる。極論すれば、1日おきに軍艦やら軍用機を派遣するとともに、中国による領有権を暗に認めないことを示すために、何らかの軍事的デモンストレーションを実施するくらいの覚悟が必要だ」
 そのような状況下で、フィリピンのでドゥトルテ大統領が中国を公式訪問したタイミングで、5カ月と1週間ぶりにようやく第4回目のFONOPが決行されたのである。
これまでのFONOPとの違い
これまで実施された3度のFONOPでは、「中国の領海」と中国当局が定義している海域(スービ礁沿岸12海里内、トリトン島沿岸12海里内、ファイアリークロス礁沿岸12海里内)を米海軍駆逐艦が航行した。
 ただし多くの海軍戦略家たちは、アメリカ軍艦がそれらの海域をただ単に通過しただけでは、「もともと国際法上軍艦に付与されている無害通航権を行使しただけに過ぎない形だけのFONOPであり、中国に対して何らインパクトを与えることにはならない」と批判していた。
 ところが、今回のFONOPでは、駆逐艦デュケーターは永興島やトリトン島の12海里“領海線”にすら近づかず、それらの“中国の島嶼”のはるか沖合を通過しただけである。そのため、海軍関係の対中強硬派の人々の(オバマ政権に対する)驚きと怒りと失望はかなり大きいものとなっている。


アメリカがFONOPを実施した島嶼環礁


FONOPの当初の意図は何だったのか
国連海洋法条約によると、領海は「海岸線(基線)から12海里」ということになっている。そして海岸線が複雑に入り組んでいる場合などは、現実の海岸線ではなく入り組んだ海岸線や海岸線から至近距離にある島などの適当な地点を直線で結び、その直線を基線として領海を設定することが認められている(直線基線)。
直線基線の例(出所:海上保安庁)


ただし、領海の範囲があまりにも広大になるよう意図した直線基線は認められない。だが、少なからぬアメリカの国際海洋法の専門家たちは、「中国は南沙諸島や西沙諸島での領海を設定するにあたって、直線基線を大ざっぱに用いて、極めて広大な領海を設定している」と指摘している。

 それを踏まえて、国際法の専門家の中には次のように4回目のFONOPを擁護する者もいる。「アメリカが今回のFONOPで永興島やトリトン島の沿岸から12海里以上離れた海域を航行したのは、中国が直線基線を過度に用いていることに対して警告をするためである。12海里は根本的な問題ではない」
 しかしながら、もしオバマ政権がそのような意図によってディケーターにFONOPを実施させたのならば、それは中国当局による“直線基線の設定の仕方”に対する警告ということになり、中国による南シナ海の島嶼(少なくとも西沙諸島)の領有権の主張が正当であることを前提としていることになる。
 つまり、西沙諸島に対するベトナムや台湾の領有権の主張をアメリカが無視し、中国の領有権の主張を認めた上で、しかしながら「直線基線の引き方に問題がある」と技術的な疑義を呈するためにFONOPを実施したことになるのだ。
 そもそも南シナ海でのFONOPにオバマ政権がゴーサインを与えたきっかけは、中国が南沙諸島に7つもの人工島を建設し、それらを軍事拠点化しようとしている動きを牽制するためであった。そして究極的には、南沙人工島に加えて、すでに軍事拠点が出来上がっている永興島を中心とする西沙諸島や、軍事拠点の建設が始まるものとみなされているスカボロー礁など、南シナ海全域にわたる中国による軍事的支配に対してストップをかける、というのがアメリカ当局の意図であった。

しかしながら、直線基線に対する警告のためにFONOPを実施したとなると、アメリカ側の中国による南シナ海の軍事的支配に待ったをかけるという警告の意図は消え失せてしまうことになる。
 多くのアメリカ海軍関係戦略家たちが驚き、かつ失望しているように、イージス駆逐艦ディケーターが永興島やトリトン島の遙か沖合を通過しただけのFONOPは、中国に対して何らのメッセージを与えることにはならないのだ。
「オバマ政権は“臆病者”」と考える中国
オバマ政権により認可されて実施されてきたFONOPは、実際のところ中国側に対して脅威を与えるどころか、何ら牽制にすらなり得ない程度の“腰の引けた”レベルのものである。そして、今回のFONOPでは12海里海域に入り込むことすらしなかった。
 対中強硬派の戦略家たちは、この状況に対して次のように危惧している。「こんなFONOPが“アメリカの強い軍事的覚悟を見せつけた”状態であるならば、中国共産党指導者たちはアメリカ側を『臆病者集団』と侮り始めかねない」
 敵側を「なかなか油断ならない」と警戒している場合には、戦争や軍事衝突が勃発することは極めてまれである。だが、敵側を「たいしたことはない」「臆病者」「弱虫」と侮蔑している場合にこそ戦争につながっていくということを、古今東西の歴史は雄弁に物語っている。

《維新嵐》 共産中国が人工島を建設した南シナ海の島嶼群は、既に国際仲裁裁判所にて「法的根拠なし」「違法」の判決がだされています。つまり共産中国の南シナ海への海洋覇権主義に正当な大義名分はありません。法的に保障されていないのなら、遠慮しなくともアメリカは航行自由のための作戦をさらに数多く、堂々とすべきであるとは思います。
 さらに下の論文はさらに米中関係の将来を心配させる内容です。実効効果のある対処ができないものなのでしょうか?



相互不信を高める米中

岡崎研究所

中国の国際協調派の代表格である北京大学国際研究学院院長王緝が、China US focus2016919日付けで掲載された論説で、米中関係の本質と難しさを指摘しています。論旨、次の通り。
3つの脆弱性とリスク

 中米関係は徐々に成熟しているが、依然として脆弱であり、戦略的判断ミスのリスクを孕んでいる。脆弱性とリスクは三点にまとめられる。
 1)経済や貿易、文化、グローバルガバナンス面では相互協力は深化。だが、アジア太平洋地域の安全保障面では、戦略的競争が高まっている。
 2)メディアは、戦略的な競争の側面をポジティブなニュースよりも多く取り上げ、ソーシャルメディアが普及したことにより、大衆の関心を高めている。
 3)多くの中国人にとって、米国は最大の戦略的脅威であり、容易に米国も中国を同様に脅威と見なしていると考えてしまう。中国の台頭は米国が世界で直面している大きな挑戦のうちの一つに過ぎない。長期的には、米国が中国を最大の戦略的脅威とみなすことを防止することが中国の対米政策の目標となるべきである。
 中米関係は「新常態」に入った。競争と協力の双方が同時に大きくなり、国内要因が外交に大きな影響を与えるようになった状態である。しかし、だからと言って、中米関係が「量的変化から質的変化へと変わった」、「負のスパイラルに入った」などと結論づけるのは間違っている。
多くの分野において、中米は同じルールを堅持している。だが、新常態においては、原則やルールをめぐる争いが中米対立の焦点となり始めている。政治面において、中国は「国際関係の民主化」を支持している。それは国際システムの中での国レベルでの民主化である。一方米国は「リベラル国際秩序」を支持し、「世界の民主化」を推し進めている。これは個人の自由と権利に関するものであり、両者は異なる考え方である。
 経済面において、米国は国有企業の制限、労働基準の向上、情報の自由化、環境の保護、知的財産権の保護などの国際ルールの強化を目指している。しかし、国有企業の制限など一部のルールは中国にとって受け入れられないものである。米国がやろうとしているのは、中国の国内および対外経済政策を統制し、米国のみが得をするルールを作り守ろうとしていることである。両国の経済モデルの不一致はかつてよりも大きな障害となっている。
 国際安全保障面において、中国の人たちは南シナ海を「先祖伝来の自分の海」だと考えている。南シナ海は中国の主権、領土保全に直結する問題だと考えている。それに対して米国は南シナ海が国際的な海であり、国際法に基づく航行の自由があると主張する。地政学的な闘争が論争の背後に隠れている。サイバーに関しても両国の焦点はずれている。
 新常態においては何がなされるべきなのだろうか。筆者(王)はかつて2012年にリバソールとの共著で“中米戦略的不信”に関する報告書を執筆している。その中で、政府、シンクタンク、市民社会が対話をし、相互疑念を緩和すべきだと論じた。しかし、4年経った今日、互いに対する疑念や不信は緩和されるどころかより増幅され、深刻になっている。戦略的相互不信の増大は中米関係の新常態に埋め込まれているようである。
 2012年の報告において、相互不信を緩和する手段が有効でない場合でも、両国の指導者は、相手の長期的な意図に関する深い不信の下で、それでもなお、協力を最大化し、緊張と対立を最小化しなければならないと結論した。新常態において、両国は自らの国民に対して、対立を回避し、協力を追求するという戦略的な意図を明らかにすることに努めなければならない。それは両国政府が幾度となく互いに確認したことであり、混乱した世論の干渉を抑え、国内の政治的な合意を形成することにつながる。
 キッシンジャーは『中国』という本の中で、中米両国が「共進化(co-evolution)」の関係を築くべきだと提案している。筆者は、「共進化」は「平和的な競争」をも意味していると考える。どちらがより国内問題を上手く処理し、国民を満足させられるかというのが最も意味のある競争である。
出典:Wang Jisi,China-U.S. Relations Have Entered A New Normal”’(China US focus, September 19, 2016
http://www.chinausfocus.com/foreign-policy/china-u-s-relations-have-entered-a-new-normal/
 バランスのとれた意見であると言えるでしょう。しかし、何をなすべきかについては弱いと言わざるを得ません。「自らの国民に対して、対立を回避し、協力を追求するという戦略的な意図を明らかにすることに努めなければならない」と言っているだけです。最後はキッシンジャーのco-evolution に逃げ込んでいます。そして「どちらがより国内問題を上手く処理し、国民を満足させられるかというのが最も意味のある競争である」ということで締めくくっています。これが、中国の国際協調派の限界でしょう。
中国側とのすりあわせ
 米中の戦略的対立が、ますますルール作りに集約されているという判断は正しいです。現状は、それぞれが自分の意見の言いっ放しで終わっています。中国は、どこをどう変えたいと思っているのか整理して、国際社会に自分の考えを問う必要があります。中国自体が未整理の部分も多くあります。例えば国有企業について、国有企業改革はほとんど進んでおらず、むしろ大型合併を進め、寡占化が進んでいます。それは「市場に資源配分の決定的役割を与える」という党の決定との整合性の面で疑問符がつきます。国際社会としては、具体的事項についてすりあわせを行うことで、中国の真意を探ることが不可欠になりました。
 習近平は、ようやく人民解放軍をほぼ掌握できたようです。対日関係を含む対外関係は、少しは落ち着いてくるでしょう。来秋の中国共産党の党大会後には、中国側との「すりあわせ」ももっと意味のあるものとなるでしょう。

《維新嵐》  習近平が共産中国の最高責任者として地位を確立し全軍を掌握できることはある意味のあることであろうが、政治的、軍事的圧力がこれからも続くことはないでしょうか?


北朝鮮の非核化、見込み少ない=米国家情報長官
BBC News

ジェイムズ・クラッパー米国家情報長官は20161025日、北朝鮮の非核化を目指す取り組みは「おそらく成功しない」と述べた。
ニューヨークで講演したクラッパー長官は、米国ができることは北朝鮮の核能力抑制に留まると語った。
米国が長年目標としてきた非核化政策の実現性について、米政府関係者が公に疑念を示すのはまれだ。
しかし、米国務省は政策に変更はないとしている。
専門家らは、国際社会からの非難や厳しい経済制裁にも関わらず、北朝鮮の核・ロケット開発が近年急速に進んでいるようだと指摘している。
北朝鮮は先月、過去最大で5回目となる核実験を実施した。国際社会は強く反発し、韓国は「自滅行為」だと非難した。
クラッパー長官は2014年に平壌を訪問している。
外交問題評議会が主催したセミナーでクラッパー長官は、北朝鮮指導部が「被害妄想」に陥っており、核兵器が「生き残りの道」だと考えていると語った。「したがって、核能力の放棄という考えは、どんな形であっても、彼らにとってあり得ない」。
クラッパー長官は、金正恩朝鮮労働党委員長に対しては、核兵器を制限させる経済的なインセンティブを提案する方が良いと語った。
これに対し国務省は、米国は6カ国協議の再開を依然として目指していると述べた。北朝鮮は2009年に協議から離脱している。
米国は、韓国に地上配備型迎撃ミサイルシステム「終末高高度防衛(THAAD)ミサイル」を近く配備しようとしているが、中国と北朝鮮は反発している。
米韓両政府は、THAADの配備は北朝鮮の脅威に対する防衛措置だと主張している。

《維新嵐》 北朝鮮の核兵器による攻撃を受ける前に、外交力、情報力を発揮して彼らにミサイルを打たせない努力、攻撃オプションの確立は不可欠でしょう。六か国協議は、北朝鮮に極秘裏に核ミサイルを研究し、開発させる隙を与えるだけの代物です。何も話が進まないうちに北朝鮮は核実験をおこない強制しました。









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