2016年11月29日火曜日

防衛省・陸上自衛隊のネットワークへのサイバー攻撃 ~我が国の軍事システムも「誰かに」狙われている現実~

陸自システムにサイバー攻撃、情報流出か
国家関与も?被害の全容不明

■サイバー攻撃 
 政府機関や企業の情報通信システムに不正侵入し、機密情報を盗み出したり、データを破壊したりする行為。電子メールでコンピューターウイルスを送りつけ、感染したパソコンを遠隔操作する手口が目立つ。大量のデータを送信してサーバーに過大な負荷をかけ、サイトを閲覧できないようにする手法もある。2011年には国内で防衛産業を狙った大規模攻撃が明らかになり、セキュリティー対策が進む契機となった。http://www.sankei.com/affairs/news/161128/afr1611280003-n3.html


防衛省と自衛隊の情報基盤で、駐屯地や基地を相互に結ぶ高速・大容量の通信ネットワークがサイバー攻撃を受け、陸上自衛隊のシステムに侵入されていたことが201611月27日、複数の同省関係者の話で分かった。防衛省が構築した堅固なシステムの不備を突く高度な手法と確認された。詳細な記録が残されておらず、被害の全容は判明していないが、陸自の内部情報が流出した可能性が高い。
 複数の自衛隊高級幹部は「危機的で相当深刻な事態だ。早急に再発防止策を講じる必要がある」と強調。一方、情報セキュリティーを担当する防衛省の斎藤雅一審議官は「個別の案件には答えられない」とコメントした。
 防衛省は外部接続を制限するなど防御態勢を強化してきたが、今回はそれを上回る高度な手法から国家などが関与した組織的攻撃の疑いが強い。同省は深刻な事態と判断。9月ごろに確知し、直後にサイバー攻撃への警戒レベルを引き上げた。
 関係者によると、攻撃を受けたのは、防衛省と自衛隊が共同で利用する通信ネットワーク「防衛情報通信基盤(DII)」。接続する防衛大と防衛医大のパソコンが不正アクセスの被害に遭ったとみられる。このパソコンを「踏み台」として利用した何者かが、陸自のシステムにも侵入した可能性が高い。防衛省は確知後、防衛省・自衛隊全体でインターネット利用を一時禁止した。

防衛大と防衛医大は、全国の大学が参加する学術系のネットワークにも入っている。このネットワークを経由して攻撃されたもようだ。
 DIIはインターネットに接続する「部外系システム」と、関係者が内部情報をやりとりする「部内系システム」に分かれている。電子メールを通じてコンピューターウイルスが入り込むことなどを防ぐため、二つのシステムは分離して運用されている。
 ただ、個々のパソコンは両方のシステムに接続し、切り替えながら利用する仕組みで、切り離しは完全ではなかった。攻撃者はこの仕組みを悪用したとみられるという。


「第五の戦場」攻防激化
入念な準備と専門家指摘

 世界では、陸、海、空、宇宙に続く「第五の戦場」とも呼ばれるサイバー空間を舞台にした攻防が激化。強固なはずの自衛隊ネットワークに侵入された事実は重い。
 多くの国の軍隊はサイバー空間での防衛能力を高めるだけでなく、攻撃能力も開発しているとされる。各国では政府機関や軍隊の情報ネットワークに対する攻撃が多発しており、「日本も例外ではない」(自衛隊幹部)ことをあらためて印象付けた。
 ただサイバー攻撃では決定的な証拠が得られないケースがほとんどで、実際に誰がやったのかを特定するのは困難だ。米連邦大陪審は14年、米企業の情報を盗むスパイ行為をしたとして中国軍当局者5人を起訴した。中国側は「米国が捏造した」などと抗議した。

サイバーセキュリティーの専門家は「攻撃者は防衛省や自衛隊、防衛大などのシステムを徹底的に調査し、どういう攻撃手法を採用するかなど準備に相当な時間を費やしたのではないか」と推測する。

「中国、ロシア、北朝鮮、国家の関与疑わざるを得ず」
慶応大・土屋大洋教授



◆サイバー攻撃の国際事情に詳しい慶応大の土屋大洋教授(国際関係論)の話

 「重要な機密が外部に漏れた可能性もあり、国家の防衛を脅かす極めて深刻な問題だ。2008年に米軍のネットワークがサイバー攻撃を受けて以降、日本の防衛省・自衛隊も警戒を強め、侵入を防ぐ態勢を構築してきた。
 それでも侵入されたとすれば、国家の関与を疑わざるを得ず、中国やロシア、北朝鮮といった日常的に日本の軍事的情報を必要とする国が想定される。サイバー攻撃は形を変えたスパイ戦争であり、自衛隊関係者には日常的にマルウエア(悪意のあるソフト)が世界中から送りつけられている。
 100パーセント防ぐのは容易ではないが、万が一の流出に備えて内部データを暗号化するなど、二重三重の対策が必要だ」

「承知していない」萩生田光一副長官「日頃から数多くの不正な通信は受信」

 萩生田光一官房副長官は201611月28日午前の記者会見で、防衛省・自衛隊の通信ネットワークがサイバー攻撃を受けたと報じられたことに、「日頃から数多くのサイバー攻撃と思われる不正な通信を受信している。報道にあったような事実は承知していない」と語った。

 報道によれば、今年9月、同省・自衛隊が共同で利用する通信ネットワーク「防衛情報通信基盤(DII)」へのサイバー攻撃が覚知された。同省が強化した防御態勢を上回る高度な手法から、国家などの組織的関与が疑われている。

《管理人》 政府もサイバー攻撃については、認めていますね。その上でどう対処するのか?によります。少なくとも防衛省のサイバー防衛隊を一軍種にしてはどうでしょう

【関連動画】
陸自サイバー攻撃
南北朝鮮によるサイバー攻撃合戦について

年金機構情報流失と共産中国からのサイバー攻撃


サイバー戦争が制御不能になる可能性

岡崎研究所
20161117http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8186
 フィナンシャル・タイムズ紙の20161014日付け社説が、米国はロシアの最近のサイバー攻撃に措置をとるとしてもサイバー攻撃による反撃はすべきでない、と述べています。要旨は次の通りです。
対抗措置の選択は簡単ではない
 米国の主張が正しければ、ロシアはハッカーのグループを通じて米大統領選挙に前代未聞の介入をしてきている。国土安全省と国家諜報委員会によれば、全国民主党委員会などから4カ月前に盗まれた情報は、その後タイミングを見計らってウィキリークスに暴露されている。
 米国はこれにどう対応するかという極めて重要な決定に直面している。米国に対する国家支援のサイバー攻撃(イラン革命防衛隊、中国、北朝鮮等)が増加している。西欧諸国は敵のコンピューターネットワークを無能化するようなマルウェアの開発などサイバー能力の強化に努めている。2009年、米国は軍の中にサイバー司令部を設立した。
 しかし、ロシアにサイバー対抗攻撃を仕掛けることは問題を孕んでいる。マルウェアが間違った者の手に入った場合、電力網、航空管制など死活的に重要なインフラの破壊に使用されかねない。
 対抗措置の選択は簡単ではない。クレムリンに対する制裁(ソフトオプション)は、本質的に非対称的な措置であり、サイバー戦争のエスカレーションに繋がる可能性は低い。しかし問題はある。国際的な支持を得るためには米国は主張の裏付けを開示するよう圧力を受けるだろう。
サイバー攻撃による反撃には危険がある。サイバーのやり取りについてのルールは定まっていない。米国にとって有害なエスカレーションが起こらないようにしてロシアに損害を与えることができるとの保証はない。
 今、米国や西欧の国々がすべきことはサイバーに対する強靭性と防衛を強化することである。同時に、米国は、ロシアに対して、このような行動は決して容認しないことを明らかにすべきだ。中国との間には緊密な経済関係があるため、中国にはある程度の梃子があった。ロシアについては、クリミア制裁により経済関係は既に大きく縮小されている。制裁といっても現行の制裁の強化に過ぎず、しかもそれは米国の独自の措置としてやらねばならないことになるかもしれない。
 米ロ中の三国が理解すべきことは、サイバー攻撃は新たな形の戦争でありそれを制御不能にしてはならないということだ。それを制約する国際的約束はいまだ可能となっていない。しかし何とかして新たな努力をする意思を見つけ出さねばならない。
出典:‘Americas dilemma over Russian cyber attacks’(Financial Times, October 14, 2016
https://www.ft.com/content/8a75f954-9151-11e6-a72e-b428cb934b78

 FT紙らしい正論です。対ロ制裁に慎重と思われる欧州のムードも反映しています。今回のロシアによるサイバー攻撃は由々しきことです。米国はロシアに対する「均衡的な措置」を検討中といわれますが、上記社説は、対ロ措置の必要性は基本的に認めつつも、サイバーに対する攻撃的な報復措置は制御不能なサイバー戦争への道を開きかねず、行ってはならないと主張します。大事なことは、それぞれの国がサイバー強靭性と防衛力を強化するとともに特に米ロ中が国際的な規制を作るために努力すべきだと主張しています。
 米国で取るべき対ロシア措置については種々の意見が出されています。対抗措置のオプションとしては、経済制裁(しかし欧州に悪影響を与えるので欧州が同調するかどうか)、金融制裁、ロシア関係者の訴追(しかしシリアに関する外交協議は益々できなくなるかもしれない)、米司法省によるハッカー関係者訴追(中国人民軍に対して行ったような)、ロシアの選挙へのサイバー攻撃(しかし有効性は分からない)、サイバー反撃(ロシアのサーバーの無能化)、プーチンの金融コネクションの暴露などが考えられます。1011日、ホワイトハウス報道官は、大統領は一連の措置を検討中であるが、事前にそれを公表するようなことはないだろう、米はサイバー防衛能力とともに攻撃的能力を持っている、対応措置は当然ながら「均衡的」なものとなる、と発言しています。これらを踏まえた上で、大事なことは次のようなことではないでしょうか。
1)ロシアに対しては、今回のようなことは容認できないことを強く伝えるとともに、それに信頼性を与えるため何らかの「非対称的な」制裁措置を取る。
2)措置にはソフトな措置(人的制裁、経済制裁、金融制裁などの非対称的措置)からサイバー分野での対称的な制裁措置(マルウェアで相手のサイバー能力の無能化、破壊)までがあり得るが、後者の措置は、サイバー戦のエスカレーション、サイバー軍拡という未知の段階に公式に足を踏み入れるものであり、望ましくない。FTの言う通り、未知の世界に踏み出すことになる。
3)措置を取るにあたっては、米の優位とエスカレーション・ドミナンスを損なわないようにすることが重要である。そのためにも「静かに」措置を取るべきである。

トランプ政権下のアメリカの安全保障の行方、そして我が国の国防はどうあるべきか?

トランプ政権が日本に突きつける「2%」の
試練
同盟国も無縁ではいられない米軍再興計画


米ニュージャージー州に自らが所有するゴルフ場「トランプ・ナショナル・ゴルフ場」のクラブハウス前で写真撮影に応じる(左から)ドナルド・トランプ次期米大統領と、ジェームズ・マティス元海兵隊大将、マイク・ペンス次期副大統領(20161119日撮影)。(c)AFP/Don EMMERTAFPBB News

「トランプ政権に“史上最強”の海軍長官が誕生か?」では、大統領選挙前から直後にかけてのトランプ陣営における安全保障関係アドバイザーたちの顔ぶれから、海軍長官にランディ・フォーブス下院議員が登用され、海軍拡張を中心とした米軍再興計画がスタートするであろうとの見通しを紹介した。
 加えて、ジェフ・セッションズ上院議員が国防長官に就任する可能性が取りざたされている状況もお伝えした。
国防戦略の舵取りをする長官職、候補者は誰か
以上の先週の情報は、アメリカ海軍筋の情報を元にしたものであったが、それから10日ほど経過し、セッションズ氏は国防長官ではなく司法長官に就任することとなった。
 米海軍関係者は残念なことと受け止めているが、上院国防委員会のメンバーであったセッションズ上院議員が国防長官ではなく司法長官に就任というのは、トランプ次期政権の不法移民対策に関する基本的スタンスを考えると納得のいく人事と言える。というのも、トランプ陣営では不法移民対策は安全保障の一環であるとしている。よって、その責に任ずる法務長官にセッションズ上院議員を起用することは理にかなっている。トランプ陣営の不法移民対策への意気込みの表れとも考えられるのだ。
 そのセッションズ氏に代わって、国防長官にはジム・タレント前上院議員ならびにジェームズ・マティス退役海兵隊大将の名前が浮上してきている。また、国防長官と共に大統領の安全保障政策を左右する国家安全保障問題担当大統領補佐官には、陸軍を中将で退役した後、国防情報局長官を努めたマイケル・フリン氏が起用された。
 そして、国防長官を直接補佐する国防次官をはじめとして、海軍長官、陸軍長官ならびに空軍長官といった国防政策・国防戦略の舵取りをする長官職の有力候補者も具体的に名前が浮上してきた。
アメリカ軍事政策における文民統制(日本の歪んだ文民統制と違う)のシステムでは、軍事組織全体を統括する国防長官の下に、海軍と海兵隊は海軍長官、陸軍は陸軍長官、そして空軍は空軍長官がそれぞれ掌握することになっている。それら4長官はいずれも(現役の)軍人のポストではない。
 現時点(20161121日)で、取りざたされているトランプ政権におけるそれらの長官職へ起用される可能性が極めて高い候補は以下の表の通りの顔ぶれである。


長官職の候補者とされている人物
(注)第2次世界大戦後アクティングを含めて27名の国防長官のうち、軍歴がある人物は多いが、将軍ランクの経験があったのは第3代国防長官ジョージ・マーシャル陸軍大将のみ

フォーブス氏の主張が支えるトランプ次期政権の国防路線
国防長官をはじめとする上記候補者のうちワイン氏、ヒップ氏、マッコイ氏はいずれも米国防衛産業界とのつながりが強く、トランプ陣営が打ち出してきた「経済と軍事を強化しアメリカを再興する」政策推進への貢献を期待されての候補者と考えられる。
 マティス大将は、ファルージャの激戦の指揮を執った海兵隊きっての名将である。そのマティス大将はもとより、タレント前上院議員とフォーブス下院議員は、防衛産業界のつながりではなく、国防政策・戦略面での活躍を期待されての候補者と考えることができる。
 とりわけフォーブス下院議員は、米軍再建の主柱としての海軍力の大増強、それに欠かせない“適正規模”の国防予算の復活を長年にわたって唱導し続けてきた。司法長官に指名されたセッションズ上院議員と共に、トランプ政権の基本的安全保障戦略である「PEACE THROUGH STRENGTH」を強力に推し進めようとしている人物である。
 このようなフォーブス氏の主張は、大統領選挙の期間中からトランプ陣営の安全保障戦略のバックボーンとなっていた。トランプ勝利後もフォーブス氏は一貫して海軍長官候補とみなされている。トランプ次期大統領の安全保障政策は、フォーブス氏(それにセッションズ氏)がトランプ次期大統領にすり込んできた路線が現実化していくものと考えてよいだろう。
 では、日本にとってはどのような影響が出てくると考えられるのであろうか?
日本は「GDP2%レベル」を求められることに
大統領選挙前後の日本の主要メディアには「トランプ勝利により日米同盟がぐらつきかねない」という論調が氾濫していたようである。しかしながら、この見方はまったく的外れと言わざるをえない。フォーブス氏をはじめとするトランプ陣営の安全保障関係アドバイザーたちの顔ぶれからは、「トランプ陣営の誕生によって日米同盟は強化される」と考えるのが至当である。
 トランプ陣営が打ち出している海軍力増強を中心に据えた米国軍事力再興策には、莫大な国防予算を必要とする。そのため、オバマ政権下でGDP3.5%以下まで低下してしまった国防費をGDP4%レベルまで引き戻すことをトランプ陣営は明言している。
 ただし、国防費をそのような水準にまで引き上げて米軍戦力を大幅に強化したとしても、1次世界大戦以降最弱レベルまで落ち込んでしまったと言われているアメリカ軍が、自前の戦力だけでアメリカ自身の国防を全うできるほど国際社会は平和ではない。同盟国や友好国との連携は、再興した米軍にとっても欠かせない状況となっているのだ。
 その際、同盟国の軍事力が弱体では、同盟関係を維持しておく意味がなくなってしまう。かつて米国は巨額の軍事予算を投入して同盟国や友好国を全面的に防衛する戦力を確保していた。しかし、もはやそれは望めない。必然的に同盟国には国防費の増加が求められることになる。

 既にトランプ陣営からは、次のような声が上がっている。
「軍事的脅威が次から次へと出現する現在の国際状況では、世界中の同盟国も軍事力強化のために国防費を増大させなければなない。NATO諸国でも、GDP2%を支出しているのは5カ国に過ぎない。アメリカは現在3.5%程度だ。アメリカが国防費をGDP4%水準に引き戻すからには、NATO諸国も少なくとも国際平均の2%のレベルに引き上げて同盟国全体として軍事力を強化する必要がある」
 その要求が日本にも向けられることは必至である。トランプ次期政権がフォーブス議員をはじめとする対中強硬派の人々の路線を採用して、「中国封じ込め」という軍事政策を推進していく場合、最大の共同事業パートナーと位置づけられる日本の軍事力が弱体では、この共同事業は成り立たない。トランプ政権は、GDP1%を堅持しようという“非常識”な日本に対して、自主防衛力強化のための国防予算の大増額要求を求めてくるであろう。
 以下は、2015年の国防支出額の順位と、国防費のGDPに対する割合の順位(上位15カ国)を表にしたものである。
 2015年の国防支出額の順位
国防費のGDPに対する割合の順位(2015年)
トランプ陣営から次のような要求を突きつけられることを、日本は覚悟する必要がある。
「それぞれが強力な自主防衛能力を有した国家同士の同盟関係こそが、同盟関係の強化である。その原理を認識して、口先だけの日米同盟の強化ではなく、国防費を少なくとも国際平均のGDP2%レベルに引き上げて自主防衛能力を高めてほしい」

《維新嵐》 これまでの我が国の防衛行政は、軍事が嫌いな財務省により、防衛予算を抑制されてきたところがあります。しかし財務省の考え方については、時代に応じたマクロ経済政策にあわない省益優先のものであることははっきりしています。我が国の経済規模からいえば、防衛予算のGDP枠2%ないしは3%は至極納得できる数値といえるでしょう。また公明党をはじめ反対派の批判にさらされた「国防軍構想」も再検討に値するといえます。
「対等な」意味での同盟国関係にこの機会に近づけられるチャンス到来です。
内閣直轄の情報機関のたちあげ、サイバー防衛隊の「軍種」へのひきあげ、巡航ミサイルの配備などこれまで構想だけであった戦略を再検討するところからはじめるのが最も手堅いことかと思います。

【米中戦争を考えてみよう!】

トランプの懐刀が描く「米中戦争」の可能性
沖縄の米軍基地は「非対称兵器」の標的に

東洋経済オンライン
飯田将史
© 東洋経済オンライン 在日米軍の撤退はあるのか? 日本の防衛に穴は?(写真:c Sipa USA/amanaimages 


 「日本は米軍の駐留経費を全額負担せよ。さもなければ、米軍の撤退もいとわない」との発言を繰り返してきたドナルド・トランプ氏。そんなトランプ氏の政策顧問(Policy Advisor)であるカルフォルニア大学教授の書いた『米中もし戦わば』(原書名:Crouching Tiger)が日本の防衛省、自衛隊幹部の間で話題になっている。
 著者であるピーター・ナヴァロ氏は、トランプ次期大統領の政権移行チームでも引き続き政策顧問を務め、経済、貿易、そしてアジア政策を担当している。元々の専門は経済学で、「中国の不公平貿易が、アメリカ経済とその製造業にどんなダメージを与えているか」を研究していた。その過程で、そうして得た経済力をもとに、中国が軍事力を増強し、南シナ海や東シナ海で様々な軍事行動を起こしていることに着目。それがこの本の出発点となった。
 今年平成283月、日本の防衛省防衛研究所も中国の海洋進出を分析した「中国安全保障レポート」を出している。その執筆責任者である主任研究官の飯田将史氏が執筆した解説全文を掲載する。

かつて北海道を中心に展開していた自衛隊

 日本の自衛隊がソ連軍による着上陸を念頭に置いて、北海道を中心にして展開していたのは、今は昔の話である。
 現在、陸・海・空の各自衛隊は、東アジアの海洋でプレゼンスを強化している中国軍をにらみつつ、南西地域に重点を置いた展開を推進している。
 本書は、近年の中国の海洋進出にともなって、変化する太平洋地域の戦力バランスを分析しながら、「米中戦争はあるか」「あるとすれば、どのように防ぐことができるのか」を、一般読者に向けてわかりやすく論じた優れた地政学の本である。
 本書ではもちろん尖閣諸島をめぐる日中のつばぜり合いや日本に展開する米軍の基地(佐世保、横須賀、横田、嘉手納など)の脆弱性などが、米国の立場から書かれているが、日本の自衛隊がどのような戦略のもとに、中国の海洋膨張政策に対峙しているかにはあまり紙幅が割かれていない。本稿では、「解説」の形をとりながら、日本から見た防衛戦略について記したいと思う。
 尖閣諸島周辺の日本の領海に、中国の政府公船が初めて姿を現したのは、200812月のことである。ほぼ同じころに、中国が島嶼(とうしょ)の領有権や海洋権益をめぐってフィリピンやベトナムなどと争っている南シナ海でも中国公船の活動が活発化していることから、この時期から中国の海洋膨張政策が、さまざまな衝突をうみながら、国際社会に立ちあらわれたということがいえるだろう。
 尖閣諸島周辺に莫大な石油が埋蔵されている可能性を指摘する調査結果が、1968年に発表された。急速な成長の結果として、中国経済は、中東やアフリカから輸入される石油への依存を強めており、その輸送には、米国の制海権下にあるマラッカ海峡をとおらねばならない。この「マラッカ・ジレンマ」を緩和することも、中国が尖閣と東シナ海にまたがる海底に存在している石油の確保を目指す、理由の一つになっている。

尖閣の領有を実現するために

 その尖閣の領有を実現するために、本書にもあるようにまずは地図を書き換え、漁船を送り込み、サラミをスライスするように徐々に支配を拡大していくというのが中国の戦略である。
 中国は、1996年の台湾における総統選挙に際して、中国が独立派と見なしている李登輝に投票しないようメッセージを送るために、台湾の近海に弾道ミサイルを撃ち込む演習を行った。これに対して、米国は空母インディペンデンスと空母ニミッツを中心とするふたつの艦隊を派遣し、中国は矛を収めざるをえなかった。
 この時の蹉跌が、中国に、アメリカの空母打撃群に対抗する対艦弾道ミサイルなどの「非対称兵器」の開発を促したという本書の見方は的を射たものである。
 ハッキングによって先進諸国から軍事技術の主要部分を盗み、そのコピーによって高性能な国産兵器をつくりあげる。黄海、東シナ海、尖閣諸島、南シナ海を内側に含む第一列島線への進出を、本書に書かれてあるように、移動式で精密攻撃が可能な弾道・巡航ミサイル、潜水艦などの強化によってなしとげつつある中国に対して、自衛隊はどのような対応をとってきているのだろうか?
 冒頭で書いたように、もともと自衛隊はソ連による侵攻を念頭に置いていた。しかし、冷戦の崩壊と、経済成長にともなう中国の海洋進出が顕著になった2000年代以降、自衛隊の態勢は北から南へと重点をシフトしてきている。
 福岡の築城基地に所属していた主力戦闘機F15、約20機からなる飛行隊を沖縄に移転したのはそのひとつである。これは、東シナ海上空における中国軍機の活動が活発化していることに伴って、南西空域におけるスクランブル(緊急発進)の回数増大に対応するためである。また、陸上自衛隊は与那国島に沿岸監視部隊を設立しており、今後は南西諸島への地対艦ミサイル部隊の配置が検討されている。佐世保の西部方面普通科連隊を中心とした水陸両用部隊の整備も進んでおり、陸自は離島奪回能力を向上させつつある。
 海上自衛隊は、保有する潜水艦を16隻から22隻へと増加させつつある。より多くの潜水艦を南西海域で運用することにより、中国の潜水艦や水上艦艇などに関する情報収集や偵察監視能力が向上することが期待される。また有事においては、南西海域での海上優勢を確保するうえで、これらの潜水艦が重要な役割を担うことになろう。海上自衛隊は、高性能のレーダーを装備し、多数の敵戦闘機や対艦ミサイルなどに同時に対応できる高い防空能力を有しているイージス艦の改修も進めている。特に弾道ミサイル防衛能力の強化が図られており、日本本土に対する弾道ミサイル攻撃への対処能力の向上につながるだろう。
 拡張する中国に対して、米国は、アジア太平洋地域における同盟国との防衛協力を強化している。その結果、日米の防衛協力はこの数年で顕著に進展している。たとえば、東京都の府中にあった航空自衛隊の航空総隊司令部を、在日米空軍の司令部がある横田に、2012年に移転したのもそのひとつだ。陸上自衛隊で有事における初動対処を担うことになる中央即応集団も、その司令部を、在日米陸軍司令部がある座間キャンプへ移転した。米軍と自衛隊が、主要な部隊の司令部を同じ場所に置くことで、作戦時における相互の連携強化が目指されている。
 本書は、米軍が日本や韓国などアジア地域で運用する基地が固定されているために、中国のミサイル攻撃に脆弱である旨を指摘している。これは鋭い指摘で、PAC3などの地対空ミサイルを配備し、迎撃しても、異なる方向から多数のミサイルが飛来した場合、そのすべてを打ち落とすことは難しい。したがって、そうしたミサイルが着弾しても基地が稼働できるよう、主要な施設や装備を非常に厚いコンクリートで保護することや、破壊された滑走路などの施設を早急に復旧させる能力の向上といった、「抗たん化」の推進が必要になっている。

日本にとっては死活問題のオフショア・コントロール

 本書の中ではもうひとつの戦略思想の転換が提示されている。すなわち空母主体の現在の米海軍の態勢を改め、潜水艦を主体にし、第一列島線の海峡(チョークポイント)で中国を封鎖するという「オフショア・コントロール」の考えである。
 この潜水艦への戦略移行は、たしかにアメリカにとっては安上がりな解決かもしれないが、第一列島線上に位置する日本にとっては死活問題になる。これは第一列島線で、石油などの輸入を阻止することで、中国を干上がらせるという発想だが、そうした事態まで中国を追い込むには相当の時間がかかる。その間に中国は、封鎖の突破を目指して、本土で無傷のまま温存されているミサイルなどの兵器を用いて、第一列島線に存在する敵の軍事基地や政経中枢への攻撃を行うことが想定される。
 また、中国領内に進入できる長距離爆撃機を米側が持つことが、事態の安定につながるという本書の主張の妥当性はどうだろうか?
 中国の内陸部にある軍事的なアセットを着実に破壊できる能力を持つことによって、中国による挑発的な行動、挑戦的な行動を抑え込む。それが「エアシーバトル」の抑止の考え方だ。そのためには長距離を高速で飛行し、敵のレーダーから探知されにくいステルス性能を備え、中国の内陸部も攻撃できる爆撃機を持つというのは合理的な結論である。実際、ステルス性の高い長距離爆撃機をアメリカは保有しており、それが中国本土をたたくことができるという事実が、抑止力の一部となっているのである。
 それでは日本も持てばいいではないか、と読者は思うかもしれない。しかし、日本がこうした長距離爆撃機を持つことは想定できない。なぜならば、憲法9条の下で、性能上もっぱら他国の国土を壊滅的に破壊するような攻撃的兵器を日本は持てないからだ。自衛隊は「専守防衛」の思想のもと、攻撃されないための防衛的な兵器のみを所有しているということになる。
 こう考えていくと、米軍のアジア太平洋地域におけるプレゼンスは、日本にとっては是が非でも必要な傘ということになる。

戦後初めての試練のなかにある

 第二次世界大戦では、アジアの覇権国になろうとした日本を、アメリカは石油の禁輸などの手段をつかって抑止しようとしたが、結局は失敗し、戦争になった。その後のアジアで、強力な海軍力をもった国は、中国が2000年代に南シナ海や東シナ海に進出するようになるまでは、出現しなかった。
 その意味で、現在アジア地域は、戦後初めてアメリカ以外の国が覇権国たるべく拡張してきたその試練をうけている。
 本書が記す、フィリピンが領有権を主張しているスカボロー礁を失った経緯に愕然としたかたもいるのではないか。20124月に「中国漁船団」の侵入によって始まったこの奪取劇。中国は、フィリピン製品の輸入制限や、フィリピンへの事実上の渡航制限によって中国経済に依存していたフィリピンを追い込む。アメリカの仲介で、20126月に両国は当該地域から撤退することが決まったにもかかわらず、中国はそのまま居座り続け、礁のコントロールを握ることになった。
 本書『米中もし戦わば』は、米国、中国のみならず、ベトナム、フィリピン、台湾、韓国、北朝鮮、そして日本といった国々のパワーバランスのなか、中国が何を狙い、何が同盟国の側に足りないのかを、わかりやすく書いている。
 沖縄の基地問題や集団的自衛権の問題も、こうした大きなコンテクストのなかで考えていくと、その糸口が見つかるかもしれない。
 アジア地域へのアメリカ軍のプレゼンスを軽視する候補が大統領になった今こそ、日本人に読まれる書というべきだろう。

【沖縄、南西諸島を警戒し、あらゆる情報収集に余念がない共産中国】

中国のSu-30や爆撃機、情報収集機が先島諸島の周辺を飛行、空自機が対応

配信日:2016/11/26 07:54
http://flyteam.jp/airline/japan-air-self-defense-force/news/article/72154
Su-30戦闘機
TU-154情報収集機
Y-8情報収集機

防衛省は20161125()、中国のSu-30戦闘機を含め爆撃機、情報収集機が沖縄本島と宮古島の間、先島諸島の周辺を飛行したと発表しました。航空自衛隊の戦闘機がスクランブル発進し、対応にあたりました。この飛行による領空侵犯は確認されていません。

飛行経路は、Su-30戦闘機2機が東シナ海方面から南下、沖縄本島と宮古島の間を抜け、その後フィリピン海を南西に進路を変え、さらにUターンしました。あわせて先島諸島の南、フィリピン海を北東に進んできたH-6爆撃機2機、TU-154情報収集機1機、Y-8情報収集機1機の計4機が、UターンしたSu-30戦闘機と合流し、北西方面に進路を変え、沖縄本島と宮古島の間を抜け、東シナ海へ飛行しました。

航空自衛隊が撮影、公開された画像は、Su-30Y-8情報収集機は不鮮明、H-6爆撃機は2016925()に撮影した「20015」の資料公開で、TU-154情報収集機は胴体下部にフェアリングを備えており、SARレーダー、ELINTシステムを装備するとみられる「B-4015」と記されています。

この「B-4015」は、2016925日にも確認されており、その際はTU-154情報収集機1機、Y-8情報収集機1機、H-6爆撃機4機、戦闘機と推定される2機と飛行しています。当時、中国軍は東シナ海防空識別圏をパトロールしたと発表していました。

《維新嵐》 明らかに南西諸島、沖縄本島周辺の情報収集活動です。特に在日米軍と自衛隊の即応能力をみるための目的は必ずあるでしょう。海洋気象のデータ取得や自衛隊の通信情報の取得もあるでしょう。このあたりの情報収集については、海洋民兵や中国海警では精度の高い調査は見込めないでしょう。




2016年11月24日木曜日

【戦闘攻撃機の時代】敵地上部隊を壊滅せよ! ~現代戦における「空対地攻撃」のパターン~

現代戦は、空から地上に対しての攻撃によって大勢が決する。

「交響曲のような攻撃」(orchestrated attack

 いくつもの軍、様々な機種を統一的指揮の下に攻撃に参加させる作戦.
第二次大戦以降確立した制空権確保のための空対空戦闘の勝利の重要性は変わっていないが、空を完全に制するために、敵空軍の戦力を無効化する作戦能力が求められている。

〈湾岸戦争〉(1991年)の時の対地攻撃

6隻の航空母艦+計空軍地上基地(サウジアラビア、トルコ、ディエゴガルシア)による対地攻撃。

 1991117日深夜の攻撃で、アメリカのみで合計617ソーティ(出撃)、英空軍なども含めた開戦初日の出撃数は1300ソーティに達する。

〈アメリカ軍の対地攻撃のパターン〉

   まず制空権を奪う。
   地上攻撃によって相手の兵力をそぐ。
   地上部隊がとどめを刺す。
※できるだけ自国兵士の損耗を抑えるということと、地上戦が長期化することを避けるという狙いがある。

〈航空戦理論から分類した空対地攻撃〉

  戦略航空攻撃(strategic air strike
 敵中枢の破壊、相手の政治、経済、人口の中枢を直接攻撃して、戦争継続能力や意思を低下させる。
発電所、都市の司令部などをピンポイント攻撃する。(F-117など)肉眼で発見されにくい夜間の攻撃が多い。

  戦術航空攻撃(tactical air strike
前線兵力への直接攻撃。相手の野戦兵力や補給を攻撃して、戦闘能力を低下させる。
飛行機や道路などを爆撃する。肉眼で発見しにくい夜間の攻撃が多い。(B-2など)
戦略爆撃機が遂行する作戦が「戦略爆撃」ではない。作戦距離が長いのが「戦略爆撃」で、短いのが「戦術爆撃」ということではない。

   航空阻止(Air Interdiction

   戦場航空阻止(BAI/Battle field Air Interdiction
 航空阻止よりは距離が短く、最前線より少し後方にいる敵部隊を攻撃する。前線に到着直前の増援部隊、波状攻撃の第二波をたたく作戦。

   敵防空の制圧(SEAD/Suppression of Enemy Air Defense
敵の防空用レーダー、地対空ミサイル(SAM)、対空火器(AAA)を攻撃して機能を失わせ、味方機の侵攻を容易にする(進入ルートを啓開する)作戦。(F-16Cなど)
電子戦闘用機(Electronic Combat Aircraft)により、敵のレーダーや通信に電子妨害をかける。(EA6Bなど)
敵の電波源を探知したり、レーダーを逆攻撃できるような特殊な装備などが使われることもある。

   近接航空支援(CAS/Close Air Support
敵の最前線の兵力を直接攻撃して、地上部隊の戦闘を助ける作戦。地上部隊の要請と指示の下に行われることが多い。目標となるのは、敵の戦車、トーチカ、砲兵陣地、機関銃陣地などとなる。
※臨機目標(Target of Opportunity
地上からの要請なしに攻撃機が戦場を滞空して、手ごろな目標を発見しては攻撃することもある。
CASの欠点
敵、味方が入り混じった最前線で攻撃が行われるため、時に目標を誤認して味方部隊を誤爆してしまうことがある。
そのため前線航空統制官(Forward Air Controller)を派遣してこうした事態をさけるようつとめている。攻撃機を誘導することが役割である。
・無線で攻撃機と連絡 →目標を指示 →攻撃方法、兵器を指定
FACは、高台や観測機により、上空より指示を行う。

   対航空戦(Counterair
F-15など制空戦闘機が戦域上空に侵入し、敵戦闘機や攻撃機を撃墜して、制空権を確保する。

   戦術航空偵察(TAR/Tactical Air Reconnaissance
攻撃の効果を確認するために、戦術航空偵察システム(TARS)を搭載したF/A-18Cが単機で進入する。
・無人機(UAV)は、RQ-1プレデターなど偵察と索敵に使用されるが、武装型はヘルファイア対戦車ミサイルによる対地攻撃も可能。

   航空支援(AI
最前線の兵力ではなく、前線への増援や補給をたちきって前線部隊を弱らせることを目的とする作戦。目標は増援部隊、補給集積地への攻撃、交通インフラの破壊により、前線への移動を困難にする。AIは即効性はない。戦闘が長引くなら効率のいい作戦である。
・爆弾を投下して鉄道や道路などの交通手段を破壊(B-1など)
・増援部隊を攻撃する(A-10)と補給集積地や飛行場を攻撃する(F-15
・山岳地帯に造られた軍事施設を攻撃する(F-15E
・補給集積地や港湾などの交通手段を破壊する。非ステルス攻撃機(F/A-18C)は電子戦機(EA-6B)が電子妨害、地対空ミサイル破壊を実施した後に進入する。

B-52爆撃機がスタンドオフ兵器、巡航ミサイルで敵の後方基地や軍需工場などを攻撃する。


F-16 ・F-15E・A-10による空対地攻撃

A-10対地攻撃、機銃掃射


三沢基地航空祭2016模擬空対地攻撃、空砲訓練






 わが航空自衛隊には、国産支援戦闘機であるF-2が配備されています。空対空でスクランブルもこなしていますが、本務は対艦攻撃といえるでしょう。新しい防衛計画により、離島防衛が防衛任務となり、島嶼に上陸する侵攻軍に対する対地攻撃にもますます重要度があがってくることが考えられます。三沢基地航空祭でのイベントを通じて、F-2支援戦闘機の役割をみることができます。納税者としての国民は、自衛隊のオーナーです。通常戦力の装備だけでなく、用途、運用についても知識としてはもっておきましょう。


2016年11月19日土曜日

ドナルド・トランプ新大統領の構想する「強いアメリカ」はまず海軍力の増強から・・・共産中国はアメリカの都合では動きません!

トランプ政権に“史上最強”の海軍長官が誕生か?
海軍を中心に「強い米軍」の復活を誓うトランプ新大統領
北村淳
米軍関係者はトランプ氏の軍事力強化策に大きな期待を寄せている。バージニア州のノーフォーク海軍基地で整列する潜水艦乗組員(出所:米海軍、photo by Chief Petty Officer Darryl I. Wood/Released

アメリカの「反トランプ」メディアが垂れ流す報道を受け売りし、トランプ候補の“暴言”を興味本位に取り上げていた日本のメディアにとって、トランプ大統領の誕生は「青天の霹靂」といったところであったようだ。
 しかしながら、トランプ陣営による「350隻海軍の建設」や「フィラデルフィア海軍工廠の復活」をはじめとする海軍増強策や、その他の軍事力強化策に期待を抱いていたアメリカ軍関係者やシンクタンクの研究者たちにとって、クリントン氏の敗北は青天の霹靂でもなんでもなく、まさに期待していた通りの結果であった。
 トランプ陣営が打ち出す軍事力強化策や国防政策は、88名に及ぶ現役の提督や将軍たちに公的に支持され、幅広い国防関係者たちの間でもトランプ支持が広まっていた。そうした状況を、日本の多くのメディアは把握していなかったようだ。
トランプ次期政権の軍事力強化策
 トランプ陣営が打ち出す軍事力強化策は「350隻海軍」だけではなく、より広範囲にわたっている。選挙期間中にトランプ候補が直接公言した施策や、トランプ陣営の軍事アドバイザーたちが語った増強策などのうち、主だったものは以下の通りである。
1)オバマ政権によって45万まで削減されることになっているアメリカ陸軍兵力を、54万のレベルにまで増強する。
(現在の兵員数はおよそ49万だが、オバマ政権の削減案が達成されると、2018年度には45万になる。)
2)現在のところアメリカ空軍は、戦闘機を1113機しか保有していないが、それを1200機以上のレベルに増強する。
3)アメリカ海軍と行動を共にする“アメリカの尖兵”であるアメリカ海兵隊はオバマ政権下で兵力18万まで削減されたが、それを20万まで戻す。
4)最先端のサイバー技術への投資を加速し、サイバー防衛能力ならびにサイバー攻撃能力を飛躍的に強化する。
5)最新の弾道ミサイル防衛能力を強化する。
6)現在およそ250隻の主要戦闘艦艇を350隻レベルに増強する。
7)フィラデルフィア海軍工廠を復活させ、「アメリカの鉄で、アメリカの技術者・労働者の力で、アメリカの軍艦を建造する」能力を飛躍的に増大させる。
8)海軍関係の艦艇船舶建造費として、毎年200億ドル(およそ2兆円)の予算を計上する。
9)タイコンデロガ級巡洋艦の近代化改修を急ぎ、すべての巡洋艦に弾道ミサイル防衛能力を付与する。
(未改修22隻の巡洋艦にこのような改装を施すには、およそ50億ドルと数年間の時間が必要となる。)
10)オバマ政権が建造数を40隻程度に削減してしまった、21世紀型海軍戦略での活躍が期待される沿海域戦闘艦(LCS)を50隻レベルに引き戻す。
11)財政的理由により新規建造が足踏み状態に陥ってしまっていた攻撃原子力潜水艦を毎年2隻のペースで建造し、配備数を速やかに増強する。
 これらの軍事力増強策のなかで最も予算を必要とするのは、言うまでもなく、多数の新鋭軍艦を建造することになる海軍力増強策である。海兵隊も海軍とともに海軍省の一員であるため、トランプ次期政権の軍事力増強案の根幹は「海軍力増強」であると言っても過言ではない。
 アメリカが地政学的には広大な疑似島国である以上、海軍力の強化を中心に据えて「強いアメリカの再興」を計る方針はごく自然なものであると言えよう。
海軍長官の筆頭候補、フォーブス議員
アメリカ海軍をはじめ、海軍関係専門家たち、それにアメリカ軍指導者たちや軍需企業関係者たちは、トランプ陣営が打ち出す海軍増強策が現実のものとなるであろうと考えている。その理由は、トランプ次期大統領の軍事政策顧問の1人にランディ・フォーブス連邦下院議員が名を連ねているからである。
 バージニア州選出のフォーブス下院議員は、下院軍事委員会・海軍遠征軍小委員会委員長の重責を担ってきており、海軍政策のエキスパートとして海軍関係者や海軍戦略家・研究者などからも高い評価を受けている人物である。
 かねてよりフォーブス議員は「350隻海軍」「200億ドル建艦費」を唱道してきており、トランプ陣営はフォーブス議員の提案を全面的に受け入れていることが明白だ。そして、このような海軍増強策を前面に押し出してきたランディ・フォーブス氏が、トランプ政権における海軍長官の筆頭候補と目されているのだ。
 だからこそ、海軍首脳や海軍関係者たちはトランプ政権の誕生を期待し、選挙で勝利した現在、“大海軍建設”計画が始動する可能性がほぼ確実になったことに胸をなで下ろしているのである。
中国海軍にとっては“最悪の海軍長官”
アメリカ海軍関係者たちとは逆に、中国人民解放軍とりわけ中国海軍は、フォーブス議員が海軍長官に就任することに関しては大いに当惑しているはずである。
 というのは、海軍戦略に造詣の深いフォーブス議員は、当然のことながら中国海軍の動向にも精通しており、アメリカならびに日本などの同盟諸国の安全保障を全うするためには中国が推し進めている覇権主義的海洋拡張戦略を食い止めなければならないと主張しているからである。海軍戦略分野における対中強硬派の代表格であるフォーブス議員による、中国に対して封じ込め的なスタンスをとるべきであるとする主張は、以下のように本コラムにもしばしば登場しているので再確認していただきたい。
・「ホノルル沖に出現した招かれざる客、中国海軍のスパイ艦「北極星」」(2014724日)
・「国産地対艦ミサイルの輸出を解禁して中国海軍を封じ込めよ」(20141113日)
・「窮地に立たされ日本を利用しようとする米国」(201579日)
・「オバマ政権も海軍も 中国と波風を立てたくない米国」(201593日)
・「中国潜水艦がフランスを見習って米空母を“撃沈”」(20151224日)
・「大迷惑な中国海軍、またもリムパックに堂々参加」(201669日)
・「リムパックで海上自衛隊を露骨に侮辱した中国海軍」(201684日)

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48398?page=5
国防長官候補のさらに強力な助っ人
トランプ陣営には、フォーブス議員以上に強力な軍事政策顧問が控えている。アラバマ州選出のジェフ・セッションズ上院議員である。上院軍事委員会委員であるセッションズ上院議員は、トランプ陣営が安全保障政策の根幹に据えているPEACE THROUGH STRENGTHすなわち「強力な軍事力こそが平和な国際関係を実現するための原動力となる」という平和哲学の権化であり、トランプ政権における国防長官の筆頭候補と目されている。
 同議員はリアリストの立場から、アメリカの国防政策、そして軍事力の再編を推し進めようとしており、フォーブス議員が提案している海軍拡張計画を財政的に実現化させるべく、国防戦略のレベルにおける諸提言を展開している。
 セッションズ“国防長官”とフォーブス“海軍長官”が誕生すれば、トランプ次期大統領の「偉大なアメリカの再現」の原動力となる「強い米軍の復活」が極めて現実的なものとなることは間違いない。

 ただし日本にとっては、アメリカから大幅な防衛費の増大自主防衛能力の強化が強力に求められることになるのは確実である。その事情については次回に述べさせていただきたい。

《維新嵐》 トランプ氏の安全保障戦略はよく練られているかと思います。我が国の防衛費の増大と自主防衛力の強化が求められるですか、望むところですね。我が国の防衛費は、GDP2~3%はあってもいいくらいです。実質世界第2位の経済大国にみあった軍事力の整備を今実現するときです。「国防軍」創設を果たすべく政府は邁進すべきでしょう。そのためには、在日米軍の駐留経費はおさえなければなりません。アメリカ依存型の安全保障から自立型の安全保障へ。そして官庁利権に牛耳られている情報セクションを内閣の直下におくことを実現すべきです。内閣情報局をたちあげるのもいいし、国家安全保障局に情報戦略を執行させてもいいかと思います。核武装より国家の情報戦略を確立し、サイバー軍の創設を実行すべきです。

稲田防衛大臣いいこといいますね!駐留経費を増やす余裕はどこにもありません!


「日本の貢献を明確に伝えよ」

ケント・カルダー米ジョンズ・ホプキンズ大教授談話

 トランプ次期米大統領が主張する海軍力の強化は、中国が台頭しているアジアに最もふさわしい政策といえる。日本からペルシャ湾に至るシーレーン(海上交通路)を維持する米軍のプレゼンスの費用はそれほど高くつかない。
 トランプ氏が、オバマ大統領やクリントン前国務長官と同様に尖閣諸島が(米国の日本防衛義務を定めた)日米安全保障条約第5条の適用範囲と言うのか、南シナ海をどうするかは何も語っておらず分からない。
 トランプ氏はディール(取引)の豊富な経験があるというが、同盟の運用は最適な価格を追求するディールとは異なる。責任感を持って、核兵器について無責任なことをいうのはやめてほしい。トランプ氏が、アジア諸国が(米国に)ただ乗りしていると信じているのも、駐留米軍に対する日本の貢献について知らないからだろう。


 安倍晋三首相が201611月17日にトランプ氏と会談するのは良いことだ。レーガン元大統領が就任したとき、日本の人々はどのような人物か分からず、「危険なカウボーイ」と思っていた。それが中曽根康弘元首相と会い、良好な友人関係を築いた。トランプ氏とも同じことができる可能性がある。
 「米国を再び偉大にする」ために協力できる分野はインフラの整備だ。安倍首相は米国への新幹線システムの導入に言及すると思う。日本にとり同盟がいかに重要か、日本がどれだけ同盟に貢献しているかも明確にする必要がある。
 幸いにも安倍政権が集団的自衛権行使を容認したことは、日米が協力する機会を作り、同盟を強化する。日本が持つ世界最強の掃海能力は米軍の空母戦闘群にとり重要であり、真っ先に取り組むべきは米海軍と海上自衛隊の協力だ。(談 ワシントン 加納宏幸)

《維新嵐》 アメリカが第二次大戦で大日本帝国から得たアジア・太平洋での権益を守りたければ、日米安全保障体制を崩してはなりません。もう日米は「相互防衛援助協定」にしてもいいくらいの関係ではないでしょうか?
 軍事同盟は、お互いを「補完しあう」関係です。そこを日本人は特に忘れないようにしましょう。


【中国共産党は待ってはくれません!冷静に迫ります

中国、覇権実現へ「取れる状況になるのを待つ。それだけだ」


「今日、われわれは中華民族の偉大な復興の新局面を切り開かねばならない」

 米大統領選で共和党のドナルド・トランプ氏が勝利宣言した2日後の今月11日、北京の人民大会堂で孫文の生誕150周年を祝う式典が開かれ、中国の習近平国家主席は同じ表現を4度繰り返した。欧米列強による国土の蚕食に抵抗した「救国の英雄」をたたえる重要講話の中で、習氏は台湾を念頭にした「祖国の完全統一」とともに、世界に君臨する超大国復活に向けた新たな展開を予告した。
 長期戦略として世界の“核心”を目指す中国は、トランプ次期米大統領という世界秩序に生まれた変数をどう捉えているのか。多くの対米専門家はその外交政策の不確実性を強調するが、ほぼ共通するのは「米国によるアジア太平洋地域への関与の低下と、経済利益における米中の衝突」が生まれるとの予測だ。前者は中国が地域で突出した影響力を持つチャンスの到来を意味する。
 中国人民大学米国研究センター主任の時殷弘教授はオバマ政権が進めたアジア重視の「リバランス(再均衡)政策」の行方についてこう語る。「トランプの経済孤立主義によって、再均衡政策の背骨だった環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)はへし折られた。その世界観から判断しても、外交面でも同盟国などへの影響力は弱まるだろう」


 オバマ政権の再均衡政策は、習指導部が進めてきた露骨な海洋進出の封じ込めに失敗した。米国はアジアでの存在感強化を図る一方で、北朝鮮やイランの非核化、リーマン・ショック以降の世界経済の立て直しなど世界的な課題解決に向けて中国に協力を求め、その影響力増大を歓迎してきたためだ。
 こうしたオバマ政権の融和姿勢は、中国の最高指導者、●(=登におおざと)小平が打ち出した「韜光養晦(とうこうようかい)」(姿勢を低く保ち、強くなるまで待つ)の外交戦略を中国に放棄させた。
 時氏は、南シナ海の領有権をめぐって争うフィリピンやベトナム、マレーシアなども米国への信頼が低下し、「そう簡単に中国に対抗することはできなくなる」とする。
 ただ、安全保障面で米国が軍事力を大幅に削減するとの見方には、次期政権が共和党主導であることなどから否定的だ。
 実際、トランプ氏の顧問であるアレクサンダー・グレイ、ピーター・ナバロ両氏は米外交専門誌「フォーリン・ポリシー」で、オバマ政権の再均衡戦略が「(中国の)侵略と不安定を地域にもたらす結果になった」と批判した上で、こう表明した。
 「トランプ氏は米海軍の艦船を増強する。海軍力はアジア地域の安定にとり最も重要だ。現在も南シナ海を通じた巨額の貿易を保護し、中国の膨らむ野望を抑制している」


 トランプ氏が発言通りの政策を展開すれば、中国が期待するような米国のアジア太平洋での関与低下は起きないかもしれない。
 一方、オバマ政権が中国との間で南シナ海、サイバー攻撃などの問題を抱える中、両国関係の決定的な悪化を防いできたのは、米中間の貿易関係だ。
 しかし、トランプ氏は選挙期間中、中国からの輸入品に「一律45%の関税を課す」と“脅し”をかけており、南シナ海問題への姿勢と併せ、中国に対してはオバマ政権より強い姿勢に出るとみられている。
 だが、中国は貿易黒字で得たドルを注ぎ込み1兆2千億ドル(約130兆円)近い米国債を保有する。米国は、中国がこうした「人質」を確保する中、どこまで対中政策で大胆な行動がとれるのか。
 中国でも、トランプ氏の経済保護主義が米中の経済・金融関係に打撃を与え、苦境に陥っている中国経済に追い打ちをかける恐れがある、との懸念は根強い。
 ある軍事関係筋は「中国の戦略は極めて単純だ」と指摘する。「いま取れないものは棚上げし、取れる状況になるのを待つ。それだけだ」(北京 西見由章、ワシントン 黒瀬悦成)

中国海軍の海洋覇権をどうみるか? 川村純彦氏