2017年1月24日火曜日

ドナルド・トランプ新大統領就任の余波か!?南シナ海で米海軍と新大統領を試す共産中国

もはや際限なし!中国の南シナ海の軍事化

岡崎研究所

ウォール・ストリート・ジャーナル紙の20161215日付社説が、中国は南シナ海のすべての人工島で大々的な軍事化を行っており、これはA2/AD能力を更に高めるものであり極めて重大である、と警告しています。要旨、次の通り。

20159月、習近平はホワイトハウスで南シナ海を軍事化することはないと約束したが、それにしては大規模な軍事化だ。20161215日公表の衛星写真によると中国は南沙諸島の7つのすべての人工島に強力な高射砲とミサイル迎撃システムを配備している。
 3年前、これらの所は高潮時には水没する小さな点だったが、中国は3000エーカーに及ぶ土地を造成した(空母フォードはたったの4.5エーカー)。これは小さな隣国との関係で必要とされる軍事力をはるかに超えている。シュガート中佐は「中国は恐らくもっと大きな敵を念頭に置いているのだろう」と述べている。
 同中佐は、ウェブサイトWar on the Rocksの記事の中で、三大人工島の軍事施設は本土の典型的な戦闘機基地(17000人の戦闘機部隊)に匹敵する規模であると述べている。スビ礁は今やハワイの真珠湾より大きい港湾を保有し、ミスチーフ礁の外縁は首都ワシントンの外縁に匹敵する。
 これらの空間はフィリピン、マレーシア、シンガポール等南シナ海全域を攻撃できる移動式ミサイルを展開するに十分な広さを持つ。中国は既に強力な接近阻止・領域拒否(A2/AD)能力を持っているがその能力が更に増大する。これに計画中とされる浮遊式原発施設を配備すれば永続的な基地になる。
 米国のシンクタンクCSISは、これらの人工島に高射砲、ミサイル誘導のための目標攻撃レーダー、巡航ミサイル迎撃システム、近接防衛システムが展開されていることを明らかにした。これは重大である。
 20161215日、フィリピンは「深刻な懸念」を表明したが、ドゥテルテ大統領は中国宥和の姿勢を変えていない。インドネシアは今週初めてインドとともに中国に対して国際法順守を求めた。ベトナムは管轄下にある南沙諸島の島の防衛強化に乗り出した。8月には移動式ロケット発射装置を配備した。
 トランプは南シナ海のリスクに日々直面することになる。20161214日、ハリス米太平洋軍司令官は、「如何に多くの軍事基地が南シナ海の人工島に作られようとも、国際空間を一方的に閉鎖することは決して許さない」と述べた。2年前にハリス司令官は、中国は海に砂の万里の長城を築いていると述べた。20171月になればトランプがハリス司令官の賢明な助言を求めることを望みたい。
出典:‘China Arms Its Great Wall of Sand’(Wall Street Journal, December 15, 2016
http://www.wsj.com/articles/china-arms-its-great-wall-of-sand-1481848109

中国は国際社会に対する挑戦を続けるつもりのようです。中国の「飽くなき執拗さ」に驚愕させられます。7つの人工島すべてでの予想以上の大規模な軍事化を通じて、中国は2年という短期間に東アジアの現実を一方的に大きく変えようとしています。経済発展は国際協調を高めるどころか、その増大する国力は益々強圧的、一方的になっています。状況は益々難しくなっていると言わざるを得ません。国際社会は一致して、今まで以上に強い決意を以て中国に対応していかねばならないことが益々明白になっています。
 20161215日に中国は、さらに大胆な行動に出ました。フィリピンの沖合で米海軍調査船ボウディッチの無人潜水機が中国軍によって奪取され、1217日、米国防省は米中折衝の結果、無人潜水機返還で合意したと発表しました。
極めて挑発的、危険な行為です。事件はスービックの西方50マイル(スカボロー礁の東)の公海(比のEEZ内。国際法違反とされた中国の九段線の外側)で起きました。中国は米軍の目の前400メートル位のところでこれを奪取、持ち逃げたといいます。中国は新大統領をテストしようとしています。ブッシュ大統領就任の20014月には海南島偵察機事件が起きました(米中軍用機が空中衝突、米偵察機が海南島に不時着、中国側に拘束された)。オバマ大統領就任の20093月には海南島沖で中国が米音響測定艦インペカブルの航行を妨害しました。トランプの台湾総統との電話会談に対する対抗措置だとの見方もあります。
無人潜水機奪取はルールに違反する大事件
 米国の対応はなぜか抑制的であったように見えます。米国はなぜ非合法な奪取を阻止しなかったのでしょうか。強い対応はできなかったのでしょうか。米関係者は返還合意ができたことを喜んでおり、緊張激化を望まなかった、と伝えられています。仮に軍事機密に絡むものではないとしても、無人潜水機奪取はルールに違反する大事件です。米国の力の信頼性が下がっていると指摘する向きもあります。他方ハリス米太平洋軍司令官は、1215日の豪州ローウィ研究所での演説で、「能力×決意×信号=抑止力」だと述べ、米の姿勢を強調しました。トランプは「中国には盗んだ無人機を返す必要はないというべきだ。中国にやれ」とツイッターに書きました。この意味は分かりませんが、トランプ外交の予測は困難です。
 中国による南シナ海の軍事化と無人潜水機奪取が周辺国に与える影響が懸念されます。東南アジア諸国との連携を一層強めることが必要となっています。同時に、欧州との連携もますます重要です。そのようにして国際コアリッションを作って中国に強く対処していくことが緊急に必要となっています。
《維新嵐》 共産中国側からすれば、新たなトランプ政権のアジア防衛のスタンスを大まかにもつかんで、外交的な対策を講じたいでしょうね。

南シナ海・人工島付近をアメリカ爆撃機が飛行

米潜水機奪取、中国海軍の意図的な挑発

岡崎研究所

 20161218日付の米ウォールストリート・ジャーナル紙は、「中国が米国の決意を試している」と題する社説を掲載し、中国による米国の無人潜水機奪取を非難しています。社説の論旨は次の通りです。
 米海軍艦艇ボウディッチ号の見ている中で行われた米海軍の無人潜水機の中国による窃取は、多くのことを教えてくれる。中国は米国がこれを大げさに騒ぎ立てたとしつつ、週末に無人潜水機を返還することに同意したが、中国海軍の行為は意図的な挑発であった。中国は公海での航行の自由を維持する米国の決意を試している。
 人民解放軍(PLA)は以前からこういう危険行為をしてきた。20014月、PLAは公海上で米国の偵察機を阻止しようとした。距離測定を誤り、衝突、中国のパイロットは死亡、米軍機は中国に不時着した。10日間の対決の後、中国は乗組員と機体を返還した。20093月、PLAは米艦インぺカブル号が曳いていた音響測定器を窃取しようとした。
 中国の行動は隣国を威嚇し、東アジアでの覇権を確立する意図を示している。最近、PLAは沖縄と台湾の近くで爆撃演習を行った。日本の対中スクランブル回数は2010年の96回から2015年の571回に急増した。最近中国は、南シナ海の紛争中の岩礁に、約束に反し軍事力を展開した。
 中国はこれらの基地近辺を米国の海・空軍が通過することに反対している。無人潜水機の窃盗は、トランプ政権がそういう哨戒を増やせば嫌がらせに会うとの警告かもしれない。中国はまた潜水艦艦隊を急速に拡張している。無人潜水機は潜水艦への対策に資する。
 中国による無人潜水機窃盗は、スービック湾の米軍基地から50海里のところで起こった。フィリピンのドゥテルテ大統領の反米発言で米比関係が悪化している中、中国はそれを更にひどくしようとしたのかもしれない。
 これらすべては、トランプが少なくとも当初は中国にきつい態度をとることを示す中で起こっている。トランプの目標は明確ではないが、アメリカの太平洋でのプレゼンスを強化するために米海軍を再建するとの約束は実施しそうである。中国の指導者は、これらの力の誇示がオバマと同じようにトランプを威嚇すると考えているかもしれないが、逆効果になる可能性がある。
出 典:Wall Street Journal China Tests U.S. Resolve (December 18, 2016)
URL
http://www.wsj.com/articles/china-tests-u-s-resolve-1482086206

 今回の中国による米海軍の無人潜水機奪取は、米中間の軍事衝突を引き起こしかねない事件でした。習近平の了承を得たうえで行われたものか、あるいは現場の指揮官またはその上司の独断で行われたものか、よくわかりません。中国指導部の上の方の決定でこういう国際法違反行為がなされたというのであれば、問題ですし、そうではなく軍の下のレベルでの決定で行われたというのであれば、文民統制が効いていないことを意味し、これも問題です。
 中国側はすでに無人潜水機を米側に引き渡し、「道」に変なものが落ちていたので拾って調査しただけなどと言います。しかし米艦は現場で抗議したとされており、落とし物を拾ったケースではありません。
 2001年の偵察機の海南島不時着のケースでは、乗組員と機体を人質にとられている中での交渉でしたが、今回はそういうことはありません。厳重に抗議し、再発防止の約束をさせるべきです。そうすることで、このような危険な行為に指導部であれ、現場であれ、乗り出すことを将来にわたって抑止することを狙うべきでしょう。
声を大にして騒ぎ立てるべき
 こういう不法行為には静かな解決を求めるよりも、声を大にして騒ぎ立てるのが良いです。しかるにCNNが報じるまで、オバマ政権は中国と静かに本件を解決しようとしました。いい判断であったかどうか疑問です。
 中国の海洋での不法な主張や、今回のような9点線外での行動は、航行の自由や公海利用の自由に対する挑戦です。こういう挑戦には毅然として対抗していくことが、不測の事態の生起やそのエスカレーションの危険を防ぐために必要です。中国はサラミを切るように徐々に行動をエスカレートし、相手に小さな変化になれさせる戦術をよく用います。民主国家は気が短いところがありますし、記憶も短いですが、中国は気が長いですから、こういう戦術が有効になります。そのことに我々は注意を払うべきでしょう。

 なお、ニューヨーク・タイムズ紙は、「無人潜水機の中国による奪取への静かな米国の対応はアジアの同盟国を心配させている」との論説を掲載し、米国のより強い対応が必要だと論じています。その通りです。

「南シナ海の人工島には近寄らせない。」アメリカ新国務長官が中国に警告

【トランプ大統領始動】南シナ海「占拠から防衛する」 中国の軍事化牽制:スパイサー米報道官
産経新聞
【ワシントン=加納宏幸】スパイサー米大統領報道官は20171月23日の定例記者会見で、中国が造成した人工島で軍事施設建設が進む南シナ海について「1つの国による占拠から防衛する」と語り、中国を強く牽制した。トランプ大統領が指名したティラーソン国務長官候補も、上院の指名承認公聴会で中国の人工島への接近を認めない可能性を示唆しており、オバマ前政権に比べて中国に厳しく臨む姿勢を明確にした形だ。
 中国は南シナ海のほぼ全域で自らの管轄権を主張しているが、スパイサー氏は「南シナ海は公海の一部であり、米国は自らの利益を守ることを確実にする」と述べた。中国による人工島への接近を拒否するかは明確にしなかった。
 南シナ海をめぐっては、ティラーソン氏が20171月11日の公聴会で「中国に対し、人工島建設を終わらせ、そこへの接近は認められないという明確な警告を送らなければならない」と発言。中国側は米国が南シナ海での海上封鎖を意図しているとみて、反発している。
 オバマ政権は南シナ海で米艦船を航行させる「航行の自由」作戦を実施したが、それ以上の強い姿勢は取らず軍事化を食い止めることができなかった。
 これに対し、トランプ氏は就任前の1月11日の記者会見で、中国が南シナ海で「巨大な要塞」を建設していると非難し、「私たちは非常に大きな被害を受けている」と語っていた。
 一方、スパイサー氏は記者会見で、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)掃討を重視するトランプ氏がロシアとの協力に前向きであると指摘した。また、露軍との共同作戦に関しても「ロシアであれ他のどの国であれ、ISと戦う方策があるのなら共通の国益があり、実施することになる」と述べ、否定しなかった。

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