2017年7月28日金曜日

米中戦争の時代 ~アメリカの対中牽制計画・共産中国の実態~

見解① 暖簾に腕押しとなりそうな米海軍の対中牽制計画

FONOPをいくら繰り返しても中国にとっては“無意味”

北村淳
南シナ海で洋上燃料補給のために待機する米海軍のミサイル駆逐艦デューイ(2017519日撮影、25日公開、資料写真)。(c)AFP/US NAVY/Mass Communication Specialist 3rd Class Kryzentia WeiermannAFPBB News

 20174月にフロリダで行われた習近平国家主席との会談以降、トランプ大統領は中国に対する強硬的態度を引っ込める姿勢をとっていた。北朝鮮のICBM開発を抑制させるために、中国が影響力を行使することを期待していたからである。
 しかしながら、3カ月を経過しても“中国の北朝鮮に対する影響力”が功を奏する気配はない。北朝鮮のミサイル開発が抑制されるどころかICBM試射は成功してしまうし、そもそも中国が北朝鮮に対して本気で圧力をかけようとしているのか? という疑念が深まってきた。
 その結果、トランプ大統領は大統領選挙期間中に口にしていた中国に対する“強面”な政策を復活し始めた。そのうちの1つが、かねてより海軍から提出されていた南シナ海での積極的行動計画である。先週、トランプ政権がその中国抑制計画を承認したことが明らかになった。
 その計画とは、「南シナ海に海軍艦艇や各種軍用機を送り込んで、『公海での航行自由原則維持のための作戦』すなわちFONOPを頻繁に実施し、恒常的にアメリカ海洋戦力の南シナ海におけるプレゼンスを維持する」というものである。
 アメリカ海軍が「南シナ海でのFONOPを恒常的に繰り返す」といっても、それが直ちに中国による南沙諸島や西沙諸島の軍事拠点化を中断させる可能性はゼロに近い。しかしアメリカ海軍は、FONOPに限らず南シナ海に海軍艦艇や軍用機を頻繁に展開させてアメリカ海洋戦力のプレゼンスを示すことこそが、南シナ海をはじめ東アジアでの中国の覇権確保に対する唯一の軍事的牽制行動であると考えており、海軍の存在価値を高めるためにもなんとしてでも実施しようというわけだ。
議論がかみ合わないアメリカと中国
 ところが、南シナ海に対するアメリカの立場と中国の立場は、そもそも議論がかみ合っていない。いくらアメリカ海軍が頻繁にFONOPを実施しようが、恒常的にプレゼンスを示そうが、中国による南シナ海への覇権的進出政策に対して少しも牽制にはならない可能性が高い。アメリカと中国のそれぞれの主張を見ていこう。
【アメリカの立場】
 アメリカがとっている基本的な立場は以下のとおりである。
「南沙諸島に中国が誕生させ軍事拠点化を推し進めている7つの人工島は、もともと国連海洋法条約の定義に従うと『暗礁』と定義されるため、特定の国家の領土となりうる要件を持ち合わせていない。それら“中国人工島”は中国が勝手に『海洋に建設した陸地』であって、国連海洋法条約が規定する領海や排他的経済水域などの基準とはなり得ない。
 要するに、中国が暗礁を人工島化して立派な飛行場を建設しようが、本格的軍事施設を設置しようが、それらの人工島は中国の領土とはなり得ない。
 したがって、アメリカの軍艦がそれらの人工島から12海里以内の海域を通航することはもちろん、公海上であるからには国連海洋法条約が禁止しているような行為(たとえば海賊行為)以外のいかなる行動を取っても何ら問題は生じない」
(ただし「いかなる行動も取りうる」とはいっても、これまでのところ、場合によっては中国との軍事衝突が起きかねない軍事的威嚇とみなされるような行動は差し控えている。)
 中国は、上記のように国連海洋法条約上中国の領海にはなり得ない「暗礁を改造した人工島の周辺海域」を、あたかも「中国の領海」であるかのごとく振る舞っている。加えて、国連海洋法条約に規定されていない「中国の領海内を航行するには、事前に中国当局に通告する」ことも国際社会に求めている。そこでアメリカ海軍は、「このような中国の勝手な振る舞いを見過ごしていると、やがては中国が領土と主張している南沙諸島人工島や西沙諸島などの周辺海域のみならず、南シナ海全体へと“中国の横暴”が広められてしまう」との強い危惧を抱いている。
実際に、中国は南シナ海の8割以上の海域をカバーする『九段線』という不明瞭な境界線を設定して、その内側海域を中国の歴史的な主権的海域であると主張している。
「中国による一方的な南シナ海の軍事的支配が確固たるものとなってしまうと、南シナ海を縦貫する国際社会が利用している海上航路帯や、米海軍自身も恩恵を受けている軍事的航路帯が中国にコントロールされることになりかねない。そこで、アメリカはFONOPをはじめとして南シナ海での軍事的プレゼンスを維持し、中国の横暴を抑制しなければならない」──というのが、今回トランプ政権が承認したアメリカ海軍の南シナ海での対中牽制計画の基となった論理である。
【中国の立場】
 一方、中国の立場からみると、以下のような主張となる。
「アメリカは国連海洋法条約だの国際慣習法を振りかざすが、そのような“国際法”は軍事的覇権国によって確立され国際社会に押しつけられたたルールに過ぎない。現にアメリカ自身が自らの都合によって国連海洋法条約を批准していないではないか。
 そもそも歴史的に形成されてきた『九段線』の概念は、国連海洋法条約よりも古くから存在しており、歴史的に中国の主権的海域であった南シナ海に、後から誕生した国連海洋法条約の規定を適用するのはナンセンスである。
 そのような中国の主権がおよぶ海域内にある島嶼環礁に、中国が人工島を誕生させようが、海洋交通のための各種施設を建設しようが、防衛のための軍事施設を設置しようが、それらは中国の国内問題であってアメリカなどに干渉されるいわれは全くない」
“暖簾に腕押し”となりかねない対中牽制計画
 中国にとっては、アメリカ海軍が「FONOP」と称して南沙人工島や西沙諸島の12海里以内の海域に軍艦などを派遣してきた場合、それらの行動は「中国の領海内を通航する場合には中国当局に事前通告しなければならない」という中国独自の規定には反しているものの、アメリカ軍艦が敵対的行動を取ったり軍事的威嚇を実施しない限り、「国連海洋法条約で認められている無害通航権の行使」ということになる。
 つまり、アメリカ側がいくらFONOPを繰り返しても、「中国の領海での無害通航権の行使」と考える中国にとってはまったく意味を持たないことになる。アメリカにとっては有意義でも中国にとって無意味な作戦をいくら頻繁に繰り返しても、何の役にも立たない。
 そのような無駄を避けるためには「中国側が軍事的威嚇と受け止めかねない露骨な軍事行動を実施するしかない」と主張する海軍関係者も見受けられる。しかし、そのようなオプションは、中国との軍事衝突の引き金となりかねない以上、実施される可能性は極めて低い。
 したがって、今後しばらくの期間は、アメリカがFONOPを頻繁に実施したり、南シナ海に軍艦や航空機を恒常的に展開し、それに対して中国が抗議を繰り返す、というパターンが繰り返されるであろう。
 その間に、南沙人工島や西沙諸島での中国軍事拠点の建設は、「アメリカが軍事的威圧を加えているので、防衛態勢の強化が必要である」という口実によって、さらに推し進められていくことになるものと考えられる。

《維新嵐》まず南沙、西沙諸島と周辺海域の利権こそ手放したくない。何もない西沙諸島に掘っ立て小屋をたて、一人で独力で生活をはじめ、精神障害を患っても任務完遂してきた人民解放軍の一兵士から共産中国の南シナ海覇権支配はスタートしています。三世代の内に国家目的を達成すればいい、という国家戦略に我が国は対抗していけるのか?


米空母、南シナ海に=中国をけん制か
時事通信20172/19() 1:07配信 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170219-00000003-jij-n_ame

【ワシントン時事】米原子力空母カール・ビンソンは2017218日、南シナ海での活動を開始した。
 米軍は発表で「通常の作戦行動」と説明しているが、軍事面を含め南シナ海への進出姿勢が顕著な中国をけん制する狙いもあるとみられる。
 カール・ビンソンを中心に編成した空母打撃群は20171月初めに米西海岸のサンディエゴを出航した。これまでハワイとグアムなどの沖合で訓練を実施してきた。打撃群の司令官は「(作戦)能力を明確に示し、(域内)同盟国との強固な関係をさらに強めたい」と述べた。

《維新嵐》決して明言できない軍事行動。牽制のための軍事作戦であることは誰にでも分かる話でしょう。

米爆撃機、対北朝鮮攻撃訓練=ICBM発射でけん制
 20177月7日、米空軍は、米爆撃機「B─1B」2機が南シナ海の上空を飛行したと声明で発表した。中国が領有権を主張する南シナ海について、国際領域とみなしていることを示した形となる。提供写真(2017年 ロイター/U.S. Air Force/Airman 1st Class Gerald R. Willis(ロイター)
【ソウル時事】米B1B戦略爆撃機2機が201778日、韓国北東部・江原道の演習場で、北朝鮮施設への攻撃を想定した精密爆撃訓練を実施した。
 韓国国防省当局者が明らかにした。韓国空軍機と合同で行われたという。大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を強行した北朝鮮をけん制する狙いがある。
 訓練は、B1Bが北朝鮮の弾道ミサイル発射台を爆撃し、さらに韓国軍のF15K戦闘機が地下施設を攻撃するという想定で実施。B1Bは精密誘導爆弾を投下したという。
 また、B1Bは韓国での訓練後、グアムのアンダーセン空軍基地へ戻る途中、九州周辺の空域で日本の航空自衛隊のF2戦闘機2機と共同訓練を実施。防衛省航空幕僚監部は「日米韓の強固で緊密な連携の一環」と説明した。
《維新嵐》北朝鮮問題にかこつけて、実際は共産中国への示威行動でしょう。共産中国にステルス爆撃機を作戦に投入できる力はありません。

見解②【石平が解く「米中衝突」】
中国は南シナ海をあきらめない。アジア支配をあきらめることになるからだ。それを米国は許さない


石平

拓殖大学客員教授。1962年、中国四川省成都市生まれ。80年、北京大学哲学部に入学後、中国民主化運動に傾倒。84年、同大学を卒業後、四川大学講師を経て、88年に来日。95年、神戸大学大学院文化学研究科博士課程を修了し、民間研究機関に勤務。
2002年より執筆活動に入り、07年に日本国籍を取得。14年『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』(PHP新書)で第23回山本七平賞を受賞。著書多数、共著に『リベラルの中国認識が日本を滅ぼす 日中関係とプロパガンダ』(産経新聞出版)など。
※この記事は、アメリカのアジア政策と米中関係の歴史から、トランプ政権の「中国潰し戦略」を読み解く『トランプvs.中国は歴史の必然である 近現代史で読み解く米中衝突』(石平著、産経新聞出版刊)から抜粋しました。

●台湾問題は中国にとっての「宗教問題」

 中国は「一つの中国」原則によって、台湾の外交を完全に封じ込めてきました。たとえばオリンピックがそうですが、政府だけでなく、民間団体も締め出しました。台湾の選手は、中華民国としてオリンピックに出場できません。「チャイニーズタイペイ」代表として出場せざるを得ないわけです。
 それほどまでに中国がこだわる台湾問題とは何なのか。
 以前、中国の軍人が、中国人にとっての宗教とは何かについて書いていたのを読んだことがありますが、それが的を射ていると思います。
 西洋人にはキリスト教があり、日本人には神道がありますが、中国には本当の意味での宗教がありません。しかし、中国には宗教の代わりになるものがあり、それが「祖国統一」という信仰だというのです。
「統一教」こそが中国の宗教なのです。宗教ですから理屈ではありません。いずれ台湾を完全に中華人民共和国の一部として統一しなければならない。だから中国は台湾を国として絶対に認めません。


「祖国統一」信仰の布教戦略は、台湾が中国抜きでは生きていけなくなるように仕向けるというものです。柿が熟して落ちてくるように、統一のタイミングを見計らっています。台湾経済の中国依存度は確かに高まっているので、現在の習近平政権も台湾問題は急がず、ゆっくり待って、必ず統一しようと考えているわけです。
 しかし中国のその戦略は、アメリカをはじめとする国際社会が、台湾が国家であることを認めない構図の上に成り立っています。その構図、枠組みが台湾問題の最後の一線であり、これが崩れると、中国は台湾を失う可能性が出てきます。ですからその構図の維持には、共産党指導者は誰であろうと、本気にならざるを得なくなります。彼らにとっての宗教問題だからです。
 中国は毛沢東と周恩来、●(=登におおざと)小平から現在の習近平まで、この構図の中で外交を続けてきました。しかし、トランプが簡単にそれを引っ繰り返してしまったので、中国の対米関係が崩れてしまっただけでなく、中国の外交戦略は台無しになりました。
 トランプは習近平の一番痛いところをわきまえているのです。
 彼が示した行動で非常に大事なことは、トランプは習近平やキッシンジャーの指図を一切、受けるつもりはないということです。既存の枠組みを一切認めない。
 そうして彼は一気に中国の首を押さえる「カード」を手に入れたのです。


「タブー」が「カード」に

 タブーは一度破られるとタブーではなくなります。
 トランプは次期大統領として台湾の蔡総統と電話会談を行いましたが、それによって何が起こったわけでもありませんでした。そうなるとトランプからすれば、今度は大統領として電話会談を行ってもよいではないかという話になります。もちろん、簡単ではありませんが、習近平に圧力をかけたいときには、そのような行動に出る可能性もある。
 それでもトランプは台湾問題を簡単に解決しようとはしないでしょう。いきなりリスクを冒して台湾と国交を結ぶようなことをトランプはしない。もし解決しようとしたら、本当に戦争になる可能性も否めないからです。中国にとっては、台湾問題は外交問題ではなく内政問題であり、宗教問題なのです。台湾が中国の一部であるという原則が本当に崩れてしまったときに共産党指導者が何も行動に出なければ、国内を統治することは不可能になります。だからこそ、台湾問題を解決しようとすれば、中国は過激な反応を示さざるを得ません。
 しかし、トランプは今後、習近平を揺さぶることができる一番有力なカードを手に入れたのは確かです。これまでのアメリカ大統領は、誰もこの台湾カードを持っていませんでしたし、カードを持とうという発想もありませんでした。


 中国との関係において台湾問題を持ち出すのはこれまではタブーでしたが、トランプの行動により、現在は「カード」に代わりました。中国からすれば「問題」ではなかったはずの台湾問題が掘り起こされてしまったということになります。しかもこの問題は、中国の根本を揺るがす大問題で、中国は劣勢です。
 2016年12月5日、トランプの経済顧問、スティーブン・ムーアはトランプと台湾総統との電話会談で中国からの反発を招いていることについて、中国の感情を害しても「知ったことではない」と言い放ち、こう述べています。
「台湾は我々の同盟国だ。自由を信奉する人々だから、これまでも支援してきた。我々は同盟国を支援しなければならない。中国がいやがっても、無視すればいい」(CNN)
 習近平のアキレス腱はどこなのかが、これで白日の下に晒されました。台湾カードを手に入れたことによって、トランプは貿易問題と南シナ海問題で中国を攻めることができるようになったのです。
 トランプ大統領が誕生したことによって今、アメリカの政策の不確実性を世界中が懸念しています。しかし、じつはトランプのアジア政策は、近代になってアジアにやって来てから一貫しているアメリカの政策そのものです。伝統的なアメリカの姿だということです。


 本書で歴史を振り返れば、オバマ政権ですらも伝統的なアメリカのアジア政策に沿った戦略を立てていたこと、そこから中国に対する幻想をそぎ落として純化したものがトランプ政権だということがわかるでしょう。
 一方で中国大陸の数千年の歴史を振り返れば、たとえトランプ大統領の奇襲によって守りに回ったとしても、中国が南シナ海をあきらめることは絶対にないということもわかります。南シナ海をあきらめることはアジア支配をあきらめることになります。アジア支配は中国共産党という王朝の存続にかかわってくる中国にとっての大問題ですから南シナ海をあきらめるわけにはいかないのです。
 伝統的なアメリカは中国のアジア支配を絶対に許しません。一方で、自らの生存をかけてアジアの覇権掌握を強硬に進める中国も絶対に手を引かない。必然的に米中という大国は衝突することになります。歴史を振り返ればそれは明らかなのです。
 そしてそのとき、じつは日本こそが中国の侵略を警戒しなければなりません。

「習政権の国際戦略と米中対立の行方」
石平氏講演会


《維新嵐》大国同士の間では、今や軍事力を伴う戦争、実弾がとびかう戦争はおこるべくもないでしょう。同盟関係が深化していたり、経済相互依存関係が寝深かったりする現状があるからです。こうした中での軍事力保有とはどういう意味をもっているのでしょうか? 共産中国の侵略が本格化するのなら、外国人土地買収問題や外国人参政権、留学生による技術「窃取」、サイバー攻撃という形で深化していくのでしょう。


見解③【米中戦争】「航空強国」を宣言した中国の弱点
独力では優秀なエンジンを製造できず…ロシア製を使わざるを得ない現状

中国のステルス戦闘機「殲-20」(ロイター)

 中国の習近平国家主席は「わが国を航空強国にする」と宣言したが、同時に「富国強兵戦略のための重要な措置として、航空エンジンの自主開発と製造生産の実現を加速す
る」とも宣言した。つまり、中国航空機産業の最大の弱点は、独力では優秀なエンジンを製造できないことだ。(夕刊フジ)
 中国は2016年10月、ロシアから戦闘機用エンジン「AL-31」と、爆撃機や輸送機用エンジン「D-30」を輸入する、総額10億ドル(約1150億円)に上る契約を締結した。この契約で、中国は3年以内に、ロシアから合計約100台のエンジンを入手することになる。
 中国は10年から、D-30エンジンを調達していて、人民解放軍の「轟-6」爆撃機や、「運-20」輸送機に搭載している。
 また、1990年代から、AL-31エンジンを搭載した「Su-27(スホーイ27)戦闘機」「Su-30(スホーイ30)戦闘機」を輸入してきた。2000年代からは「殲-10(J-10)」(=イスラエルの支援を得て開発した国産戦闘機)や、「殲-11(J-11)」(=Su-27をライセンス生産した戦闘機)にも、AL-31が搭載されるようになった。
 中国は、国産エンジン「WS-10」の開発を進めてきたが、期待通りの性能を達成できず、ロシア製のAL-31を使わざるを得ない現状がある。一方で、WS-10の後継であるWS-15の開発を進めていて、国産エンジン開発への執念を感じる。


2016年11月、中国が第5世代ステルス戦闘機だと宣伝する「殲-20(J-20)」が公開された。中国のメディアは「このJ-20は、米空軍の第5世代戦闘機『Fー22』(ラプター)や、『F-35』(ライトニング)に対抗できる」と主張しているが、大きな性能差があると主張する専門家が多い。
 J-20が素晴らしい戦闘機であれば、他の戦闘機は不要なはずだが、ロシアから最新の「Su-35E」(スホーイ35E)を24機購入する契約を結び、16年末までに4機を取得し、残りは3年以内に納入される予定だ。
 中国がSu-35の購入を急いだ理由は、同機に搭載されている最新エンジンAL-41や、最新のレーダーや電子戦機器を獲得するためだ。ロシア側は知的財産の保護を強く主張し、それに違反すると多額の違約金を課す契約だ。しかし、中国は徹底して最新技術の窃取を図るであろう。
 また、中国のエンジン開発における最近の動向として、「中国航空発動機集団(AECC)」が昨年8月末に設立され、資本金7700億円、従業員約10万人の巨大企業となり、ロールス・ロイスやGEに対抗する航空エンジン企業を目指すという。

 中国の国家ぐるみの、エンジン開発体制の整備を侮るべきではない。

■渡部悦和(わたなべ・よしかず) ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー、元陸上自衛隊東部方面総監。1955年、愛媛県生まれ。78年東京大学卒業後、陸上自衛隊に入隊。その後、外務省安全保障課出向、ドイツ連邦軍指揮幕僚大学留学、第28普通科連隊長(函館)、防衛研究所副所長、陸上幕僚監部装備部長、第2師団長、陸上幕僚副長を経て2011年に東部方面総監。13年退職。著書に『米中戦争そのとき日本は』(講談社現代新書)など。

《維新嵐》殲-20は、テスト段階という印象を大きく受けます。自前で航空技術を開発する能力のない国ですから、留学生として若者を我が国に留学させて、技術を学ばせるか、サイバー攻撃でアメリカなどの最新軍事情報をゲットしてくるか?




2017年7月21日金曜日

米中戦争の時代 ~「海軍戦略」という戦い~

東アジアで中国海軍と米海軍の力が逆転する日

明確な海軍戦略を描く中国、かつての栄光にすがる米国

北村淳


今年だけでも既に2隻が誕生した中国海軍の054A型フリゲート

 トランプ大統領は「強いアメリカの再現」のシンボルの1つとして、大統領選挙中から一貫して大海軍再建を標榜し、国防予算、とりわけ海軍関連予算の大増額計画を打ち出している。
 しかしながら、トランプ政権発足後半年を経過した現在まで、大海軍再建の司令塔となるべき海軍長官(海軍と海兵隊の最高責任者でシビリアンのポスト)人事が決定していない(これまでは代理海軍長官としてシーン・スタックリー氏が代行してきた)。トランプ大統領は20176月初旬に元投資会社役員のリチャード・スペンサー氏を海軍長官候補に指名し、あと数週間以内には上院で指名認可がなされる見込みとなっている。だが、大海軍再建計画が順調に滑り出すまでにはまだまだ時間がかかる状況と言わざるを得ない。
順調に進んでいる中国の大海軍建設
 一方、中国においても、「中国の国益を保護するための大海軍建設」が喧伝されている。共産党独裁国家である中国では、党が打ち出した「大海軍建設」はアメリカと異なり極めて順調に進んでおり、今後も加速度的に海軍力が強化されていくものと思われる。
 ちなみに、2017年上半期に誕生した中国海軍艦(小型艇を除く)は以下の10隻である(表)。

 2016年に大小取り混ぜて30隻ほどの艦艇を誕生させた中国海軍の戦力強化は、少なくとも数の上では目覚ましいものがあるとアメリカ海軍側も認めている。
 新鋭艦艇の質に関しては「見かけ倒しではないか」「恐るるに足りない」といった評価を下している海軍首脳も少なからず存在する。だがそれに対して、「確実な情報がない以上、そのように楽観視しているととんでもないことになりかねない」「アメリカも含めて世界中から最先端技術を取り込んでいることを忘れてはならない」と警戒を促す人々も少なくない。
 いずれにせよ、対中戦略を専門とする海軍関係者たちは、「敵を過大評価して恐れおののくのは慎むべきではあるが、敵を過小評価するのはさらに良くない姿勢である」との基本姿勢を尊重している。


中国国産の001A型航空母艦

海軍戦略達成のために強化される海軍戦力
 人民解放軍は昨年より抜本的再編成を進めている。中国国営メディア(人民日報、環球時報)によると、その一環として陸軍人員数の大幅削減を実施するという。また、海軍、ロケット軍(かつての第二砲兵部隊)、そして新設された戦略支援部隊の人員数は、今後それぞれ大幅に増強するという。空軍は現状維持とされている。
 人民解放軍再編成の方針に基づき海軍力増強が推進されていくことは間違いないものと思われる。実際に、2017年上半期だけでも上記のように多数の軍艦が誕生している。
 そもそも、中国海軍が近代的海軍(海上自衛隊など西側海軍と肩を並べるような海軍)となりうるきっかけとなったのは、1980年代に鄧小平軍事委員会主席の片腕として活躍した海軍司令員(海軍のトップ)、劉華清が打ち出した防衛戦略である。
 毛沢東時代の中国の防衛戦略は、基本的には敵勢力を中国大陸内部に引き込み、ゲリラ戦も交えつつ殲滅していくというものであった。それは自然と陸軍が中心となる戦略であった。当時はアメリカの核恫喝に自力で抵抗するため核搭載大陸間弾道ミサイルの開発運用にも多大な資源が投入された。そのため、海軍や空軍を充実させることは後回しにされ、鄧小平によって国防改革が開始された当初は、中国海軍は沿岸警備隊(それも時代遅れの)に毛が生えた程度の極めて貧弱な海軍に過ぎなかった。
 このような状況に対して劉華清は、「鄧小平による経済発展策の根幹となる幅広い交易活動を支えるには強力な海軍戦力が必要である」と力説した。そして、劉華清が打ち出したのが、「近海積極防衛戦略」と呼ばれる海軍戦略であった。
 すなわち、日本列島から台湾、フィリピン諸島、そしてカリマンタン島(ボルネオ島)を経てシンガポールに至る、いわゆる第1列島線内の東シナ海や南シナ海に進攻してきた敵(=アメリカ海軍や海上自衛隊をはじめとするアメリカ側海軍)を、それら海域のできるだけ遠方で撃破し、中国沿岸域には敵を寄せ付けない──そして、いずれは第1列島線に接近させないようにする、という戦略である。
「積極防衛戦略」の“積極”というのは、「島嶼や海岸線を防衛するには、待ち受けるのでなく、こちらから出撃しできるだけ遠方洋上で敵を迎え撃たねばならない」という海洋国家防衛の伝統的鉄則を意味している。そこで、その戦略を実施できるだけの実力を持った海軍を建設することが急務となり、1980年代後半から近代海軍建設に努力が傾注されたのである。
 海軍建設には少なくとも四半世紀はかかると言われているが、21世紀に入ると中国海軍は近代海軍の呈を成し始め、2010年を過ぎるといよいよ強力な海軍として世界中の海軍から一目置かれる存在になってきた。
 そして、昨年から正式に推し進められている人民解放軍の再編成と平行して、海軍戦略も「近海積極防衛戦略」からさらに歩みを進め、「外洋積極防衛戦略」とも表現しうる戦略へとバージョンアップされた。
 中国国防当局はアメリカや日本を強く刺激することを避けるため、この戦略を単に「積極防衛戦略」と称している。だが、要するに敵を撃破する海域を東シナ海や南シナ海からさらに遠方の西太平洋へと拡大させた戦略ということになる。

海軍戦略を欠いているアメリカ
 このように、中国の軍艦建造の目を見張るほどの勢いは、明確な海軍戦略を達成するために必要不可欠の動きということができる。
 ところが、トランプ政権が打ち出している350隻海軍建設は「偉大なアメリカの再建」という政治的目標の道具の1つとはなり得るが、確固たる海軍戦略に基づいているわけではない。
 そもそも、「近海積極防衛戦略」そして「(外洋)積極防衛戦略」といった具体的な海軍戦略を策定してきた中国軍とは異なって、アメリカ軍は「エアシーバトル」「マルチドメインバトル」といったコンセプトを打ち出してはいるが、いずれも戦略というレベルのものではない。
 達成すべき海軍戦略を構築し、それに向かって海軍戦力増強にいそしむ中国。片や、確固たる戦略なしにかつての栄光を取り戻すために大海軍を再建することを標榜しているアメリカ。これでは、少なくとも東アジア海域における海軍力バランスが逆転する日が現実のものとなってしまったとしても不思議ではない。

《維新嵐》確かに共産中国の軍事力は、著しい予算ののびと防衛力の整備、兵士の質的向上をはかりながら、急速にかつ効率的に拡大しています。しかしアメリカは、共産中国とは違う意味で軍事力の整備、強化をしているところはまちがいないようです。北村氏とは別の視点からアメリカ軍の対中戦略をみていきましょう。

中国軍の急拡大にイノベーションで対抗する米軍

米海兵隊がドローン、3Dプリンタ、人工知能の本格活用へ

2017.7.14 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50452?utm_source=editor&utm_medium=self&utm_campaign=link&utm_content=recommend
部谷直亮

一般社団法人ガバナンスアーキテクト機構研究員成蹊大学法学部政治学科卒業、拓殖大学大学院安全保障専攻修士課程(卒業)、拓殖大学大学院安全保障専攻博士課程(単位取得退学)。財団法人世界政経調査会 国際情勢研究所研究員等を経て現職。専門は米国政軍関係、同国防政策、日米関係、安全保障全般。
海兵隊は、強襲揚陸艦から垂直離着陸が可能な大型無人戦闘機を開発中だという。写真はワスプ級強襲揚陸艦の飛行甲板に並べられたMV-22B オスプレイ(資料写真、出所:Wikipedia

 圧倒的な質、量を手に入れつつある中国軍に対し、米海兵隊は軍事イノベーションを活用して対抗しようとしている。今回はその取り組みの内容と意味するところを紹介しよう。
中国軍の攻撃で在日米軍は瞬時に壊滅?
 2017年629日、米シンクタンクのCNAS(新アメリカ安全保障センター)注目すべき発表を行った。トーマス・シュガートとヤビエル・ゴンザレスの2人の現役米海軍中佐が公開情報とシミュレーションを駆使して分析したところ、在日米軍は中国軍のミサイル攻撃で一瞬にして壊滅してしまうというのだ。
 彼らは日本各地の在日米軍に関係する飛行場、港湾、司令部、通信施設、燃料タンク、その他の重要インフラを500カ所リストアップし、それらに中国軍がミサイルを撃ち込むというシミュレーションを行った。
 まず、発射から15分以内に、沖縄、西日本、北陸、岩手以北等を射程に収める1200発の短距離弾道弾と、日本全土を射程に収める200300発の中距離弾道弾が日本列島を襲う。その後、爆撃機と地上発射型巡航ミサイルが第2波として襲来する。これに対し、日米のPAC-3とイージス艦は物量で圧倒され、一部を除き迎撃はほとんど不可能である、というのが2人の見立てである。
 そして、彼らが導き出した結論は、「米軍はTHAADをさらに調達し、日本に事前配備しておくべきである。数十億ドルのミサイル防衛は、数十億の船舶、航空機、施設、人命を救えるのだから」というものであった。
 実は米国ではこうした見解は今や決して珍しくはない。実際、ミサイルだけではなく、艦艇でも中国軍の戦力強化は目覚ましい。2016年に中国海軍が就役させた主力艦艇は11隻だった。それに対して、米海軍は3隻、海自はたった1隻である。

 質でも同様だ。米軍事アナリストのカイル・ミゾカミ氏をはじめ多くの専門家が、今年進水した中国軍の55型駆逐艦を、米海軍の主力艦であるアーレイ・バーグ級に匹敵すると評価している。
強襲揚陸艦を「ドローン空母」に
 こうした状況に対しイノベーションで対応しようとしているのが、米軍の「第3の相殺(オフセット)戦略」である。特に米海兵隊は「ドローン空母」や「3Dプリンタ」で対抗しようとしている。
 73日の米外交専門誌「ディプロマット」でトビアス・バーガースとスコット・ロマニウクが海兵隊のドローン空母構想を紹介している。その概要は以下のとおりである。
・海兵隊は、強襲揚陸艦から垂直離着陸が可能な大型無人戦闘機を開発中である。これは「MUX」と呼ばれるシステムである。
・この機体はV-22オスプレイと同じ速度・航続距離を持ち、その護衛が可能である。またF-35と同じミサイルを搭載することができ、空対空戦闘、電子戦、指揮統制、早期警戒、航空攻撃も可能である。2017年に最初のテスト飛行が行われ、2026年以降に運用システムが完成する見込みである。
・中国や北朝鮮が対艦弾道ミサイル等によって米空母に深刻なリスクをもたらそうとしている。そうした時代において、こうした小型艦艇と無人機によるシステムは南シナ海、東シナ海で有効性を発揮するだろう。
・日本のいずも級ヘリ搭載駆逐艦にもこのようなシステムを搭載させれば、日本は堅牢な無人機艦隊を得ることができ、本土周辺を超えて航空戦力を展開・強化できる。米海軍の負担も軽減できる。
 大型無人機は戦闘機に比べて予算的にも人的にもはるかにローコストである。それらを、やはり空母に比べると予算が少なくて済む強襲揚陸艦に搭載することで、中国の非対称戦略(安価な手段で、高価値目標を破壊する)に対抗しようというのである。
3Dプリンタによる兵站革命は新次元へ
 また、こうした構想と並んで海兵隊が強力かつ急速に推進しているのが3Dプリンタの軍事転用である。海兵隊の3Dプリンタ活用はドローン、AI、ブロックチェーンといった最新のテクノロジーと結び付けることで新たな段階へ踏み込みつつある
 海兵隊がこれほどまでに3Dプリンタの導入を目指す理由は、第1に、海兵隊が旧式兵器を抱えた組織だからである。要するに、補充が難しい装備を抱えているということだ(これは自衛隊も同様である)。海兵隊の担当者は、「金属製部品の製造は数週間から数カ月かかっていたが、3Dプリンタならば数時間で可能だ。これによって海兵隊の侵攻作戦は一気に容易になる」と述べている。
 そしてもう1つの大きな理由は、中国等の現実の脅威への対応である。中国軍はA2/AD戦力を強化することで、米軍の前方展開拠点と本国からの来援を防ごうとしている。つまり米軍にとっては、有事の際に破壊された部隊や装備を早急に回復するための補給が困難になるということである。最初に述べたように、中国軍はミサイル戦力だけで在日米軍を壊滅することが可能だ。となれば、米軍が3Dプリンタという兵站革命に力を入れるのは当然であろう。米空軍も2019年に3Dプリンタ製部品を積載した軍事衛星を打ち上げる予定だが、これも短期間で生産することで中国などの衛星破壊に対抗するためである。
 では、実際にどのような取り組みが行われているのだろうか。
 第13Dプリンタをドローンと組み合わせることだ。海兵隊は今夏にも、3Dプリンタで生産した偵察用ドローン「ニブラー」を実戦配備する予定である。これは前線で生産可能であり、随時新しい部品にアップデートすることができる。将来的には偵察以外のドローンも同じ方式を導入していくとされ、まさに相手の物量には3Dプリンタによる物量で対抗しようというのである。
 また、3Dプリンタでよく問題視されるのが、生産データの流出である。つまり、サイバー攻撃等で生産データが盗まれると、相手側がそのまま同じ兵器を生産できてしまう危険性があるのだ。
 この対応策としては、ビットコインやフィンテック等に使用されている「ブロックチェーン」技術(P2P技術を活用してデータを分散管理する技術)の導入が国防総省全体で進められている。ブロックチェーンで3Dプリンタデータを保護する取り組みは、DARPA、米海軍のDON Innovatorが既に試験を開始している。米海軍はこの夏に試験を実施し、9月に詳細な報告を発表する予定だという。この試験によって生産データ流出問題の解決に一定の目途が立てば、3Dプリンタはより導入が本格化するだろう。

 最後は、人工知能(AI)との組み合わせである。海兵隊副司令官(兵站担当)のマイケル・ダナ中将は、今年6月、「Military.com」誌の取材に対し、将来的に海兵隊のトラックは、人工知能によって消耗寸前の部品を診断・発見し、自動的に注文を行い、消耗する前に3Dプリンタで生産した部品が自動的に届けられるようになると明らかにした。
 ダナ中将は、「将来的に海兵隊は、工場で作られた部品が届くのを待つのではなく、瞬時に3Dプリンタで生産・交換できるようになる最初の軍隊となる」と言う。人工知能と3Dプリンタの組み合わせが実現すれば、海兵隊の兵站効率は予算・時間共に大幅な効率化が図られるだろう。

自衛隊は「ファッションショー」に夢中?
 これらの方向性は2つに総括できる。
 第1は、非対称戦略の採用である。海兵隊はドローンと3Dプリンタを装備体系の中核に据えることで、膨大かつ安価なシステムを構築し、中国軍の質量ともに膨大な兵器群に対抗しようとしている。特に、いずもへの無人戦闘機導入は注目すべきアイデアであろう。
 第2は、民生技術の転用である。人工知能も、ドローンも、3Dプリンタも、ブロックチェーンも民生発技術である。民間の低価格・高性能な技術をいち早く転用することで、質における優位性を確保しようというわけだ。
 実際、ダナ中将は「将来的に海兵隊は、工場で作られた部品が届くのを待つのではなく、瞬時に3Dプリンタで生産・交換できるようになる最初の軍隊となる。テスラの自動車はソフトウエアが自動的にアップグレードされているし、私の妻のレクサスはオイル交換が必要な時期を教えてくれる。これは既に民間にある技術であり、それを軍隊に組み込みたいのだ」と述べており、民間の優れた技術の確保を重視しているのは明らかだ。
 海兵隊と同規模の自衛隊はこうした柔軟な発想を見習うべきである。しかし、装備庁・自衛隊にその姿勢は見られない。一部を除いた技官の多くは非常に狭いタコツボ型知識に拘泥しており、自衛隊も「軍隊かくあるべしという形式主義」から抜け出せていない。
 先頃、陸自は各駐屯地で、新しい制服は黒・紫・濃緑の3種類のどれが良いかというアンケートを行った。新制服はデザインもストライプを入れたり、制帽の装飾を増やしたりするなど現行から大きく変化している。だが、陸自の17万人分の制服変更ともなれば、膨大な予算と時間が浪費されるのは言うまでもない。形式主義の最たるものであり、隊員の多くがこれに反対している。自衛隊に、こうした余裕はもはやないはずだ。今こそ、発想の転換と外部を巻き込んだ自由な議論が求められている。



《維新嵐》量で「攻めてくる」共産中国に対し、アメリカは「量より質」かな。
特徴は民間業界の優れた技術を導入することにより、軍事兵器に応用されますね。
発想の柔軟性で、逆に解放軍を抑止したいところです。なおAIの進化形については、以下のような事例があります。AIは軍事兵器への応用でも切り札になる予感は大きいです。

AIがカメラの再発明を可能にする
川手恭輔 (コンセプトデザイン・サイエンティスト)
 一眼レフカメラは「素晴らしい写真」を撮ることができます。明るい交換ズームレンズ群、大きなイメージセンサー、高速シャッターなど、プロのカメラマンが一眼レフを使う理由は少なくありません。
 一眼レフカメラには、絵文字が付いたダイヤルやボタン、そして液晶画面で設定できる機能が満載されています。しかし、初めての子供が生まれた、海外旅行に行くなどのきっかけで一眼レフを購入しても、せっかくの機能を使いこなすことができずに、「スマートフォンでもいいや」ということになってしまっている人も多いのではないかと思います。「一眼レフは素晴らしい写真を撮ることができる」という見解には、「プロのように使いこなすことができれば」という前提条件がつきます。

米国のベンチャー企業が発表したArsenal(アーセナル)という、一眼レフのアクセサリシューに取り付ける小さなデバイスは、AIによって、その前提条件を一眼レフから取り払おうとしています。そして、それは一眼レフカメラを再発明するヒントにもなりそうです。
 プロのカメラマンは、目の前のシーンのいくつかの特徴に着目し、残したいイメージの写真を撮影するためのカメラの設定を考えます。そして、フレーミングをして、タイミングを見極めてシャッターを切ります。
 フレーミングとは、目の前のシーンから、被写体をどのように切り取って画面を構成するかということです。ファインダーを覗いて、被写体をアップで撮るのか全体を撮るのか、ズームを使うのか自分が近寄る(遠ざかる)のか、さらに地面に屈んで下から撮るのか、あるいは上の方から覗き込むように撮るのかなどを決めます。動いている被写体をカメラで追いかけながら撮るのか、カメラを動かさずに撮るのかを考えることもあるでしょう。
 残したいと思うイメージは、人の感性によって異なります。フレーミングやシャッターを切るタイミングも、撮る人の感性が頼りです。いろいろなシーンで、たくさんの写真を撮影をすることで「素晴らしい写真」を撮るための感性が磨かれて行きます。一眼レフカメラは、写真に表現できるイメージの幅が広いのです。しかしカメラの機能や、その設定の方法を理解して操作することは作業です。それらの作業が好きな人もいますが、子供が成長する姿を残したい、海外旅行の思い出をたくさん残したいと考えている人にとっては無用のことです。

 デジタルカメラで撮影された写真には、Exif(イグジフ)と呼ばれる撮影情報が付属しています。インターネットで共有されるプロの写真でも、Exifが付属していれば、使用されたカメラやレンズと、露出モード、絞り、シャッタースピード、ISO感度、焦点距離、ホワイトバランスなど、その写真がどのような設定で撮影されたかを知ることができます。
 しかし、プロのカメラマンが撮影した写真と、そのExifの情報とを見比べてみても、そのシーンのどこに着目して、それぞれの設定をしたのかはわからないでしょう。複数の要素から一つの設定を決めたり、一つの要素によって複数の設定を調整したり、あるいはカメラマン自身も明確に説明することができない、豊富な経験からくる勘のようなもので設定していることもあるかもしれません。
 Arsenalのチームは、数百万の写真を学習したAIを搭載したと言っています。そこでは、畳み込みニューラルネットワークという、特に画像認識に大きな力を発揮しているAIが使われています。
 学習を終えてArsenalに搭載されたAIは、カメラのライブビューの画像を解析し、プロのカメラマンが撮影した数千の解析済みの写真の中から、もっとも似ている30の写真を選びます。似ていると判断する基準は、AIが学習の過程で学んだものです。そして、30の写真のExifの情報からカメラの設定を計算します。
 しかし、選ばれた30の写真が撮影されたときの条件と、現在の条件には必ず違いがあります。カメラやレンズが異なるでしょうし、被写体が動いていたり、風などの影響でカメラが振動しているかもしれません。Arsenalは振動のセンサーを備えており、カメラやレンズの情報も取得し、それらの条件を考慮して再計算した推奨の設定を、ユーザーのスマートフォンの専用のアプリに送ります。
 アプリでは、被写体の一部だけにフォーカスをあてたい、あるいは画面全体を鮮明に写したいといった、撮影するユーザーの意図によって設定を変更できます。そして、アプリからカメラのシャッターを切ります。
公開されている情報やブログを読む限りでは、Arsenalは三脚に固定したカメラに装着することを前提にし、そのAIは風景の撮影に特化した学習をしているようです。それは、カメラに取り付ける外部デバイスという制限によるものかもしれません。
 AIの性能は、どのような学習をしたかにかかっています。ライブビューの画像に似ている写真の撮影情報からカメラの設定の推奨値を導くというアイデアも含めて、Arsenalの実用性は、製品が出荷が予定されている20181月まで未知数です。しかし、そのチャレンジや良しと期待したいと思います。
畳み込みニューラルネットワークというAIは、クラウドや自動車などの、コンピューターのパワーを十分に使える環境で稼働するものでした。しかし、AIを動かすための省電力で小さいチップの登場や、AI自体を軽くする取り組みによって、Arsenalのような小さいデバイスでも稼働させることが可能になりました。ArsenalAIは、お勧めの設定を提案するに止まっていますが、一眼レフカメラにAIを搭載すれば、より積極的な活用が可能になるはずです。
 AIの活用とは、人間が知能を使って行う作業を自動化することです。写真の撮影で、自動化すべき作業とは何でしょうか。ベテランのプロカメラマン、チャーリー・ハウスが、自身のキャリアを振り返って次のように言っています。
 「あまりにも長い間、素晴らしい写真は技術的に優れていなければならないと考えていました。しかし技術的側面は、芸術的側面あるいは構成的側面よりも重要ではないということに、私はようやく気がついたのです」
 ファインダーを覗きながら子供と会話したり、目の前の風景に感動してカメラを取り出したりしながら、シャッターを切る前に、残したいイメージを創ることが、写真の芸術的あるいは構成的な側面です。そのとき、カメラの設定を考えて操作することは、AIに任せて自動化すべき煩わしい作業です。
 絞り、シャッタースピード、ISO感度、ホワイトバランスといった言葉を、カメラのユーザーインターフェースから排除しなければなりません。それには、ファインダーを覗きながら、あるいは液晶画面のライブビューを見ながら、残したいイメージをAIに伝えるための新しいユーザーインターフェースを発明する必要があります。それは、一眼レフカメラの再発明です。
 しかし、その新しいカメラは、子供が成長する姿を残したい、海外旅行の思い出をたくさん残したいと思う、一般の人たちだけのものではありません。
 1976年にキヤノンが露出の設定を自動化したAE-1を発売して、一眼レフカメラの本格的な電子化が始まりました。1985年にミノルタ(2006年にカメラ事業をソニーに譲渡)が発売したオートフォーカス(AF)機能を備えたα-7000は、一般向けの一眼レフの市場を席巻しました。いまではAEAFは、プロのカメラマン向けの一眼レフにも搭載されています。

 AIが技術的側面を担当できるようになっても、芸術的側面や構成的側面はプロフェッショナルの仕事として際立つはずです。チャーリー・ハウスの言葉は、彼の弟子のジェシー・ジェームス・アレンが作成した6分間の動画(英語)のなかで語られています。https://vimeo.com/220393249